No.275, No.274, No.273, No.272, No.271, No.270, No.2697件]

世界観概要

〇街の特徴
舞台:糸紡ぎの街「リュシエル」
石畳と小さな工房が並ぶ、川辺の穏やかな街。
通りには「糸の市」があり、糸や布、ボタンや木片が売られ、人形師たちが材料を集める。
夜になると、窓辺に座るドールたちがランプの光を反射し、まるで街じゅうの心が灯っているように見える。

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〇ドールの「こころ」
ドールに魔力の籠った任意の宝石を埋め込み、それにキスをすることでドールは目覚める。眠りにつく時も同様である。
また、宝石を埋め込む場所は任意である。
宝石に込められた魔力の強さによってドールの髪の長さが変わる。この世界では、長い髪は魔力の象徴である。

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登場人物

〇ティアナ
病弱な少年の夢を叶えるため、生み出されたドール。
健気で穏やかで、まるでミルフィとは正反対。絵本作家になりたかった彼の夢を手伝っている。そんな自分のことを誇らしく思っているし、ミルフィのことを気高く美しいひとだと思っている。
可愛くて優しくて素直だが、その笑顔の裏にはある程度の打算が隠れている。
こうすれば相手は黙る。こうすれば相手は喜ぶ。こうすれば相手は。
なるべく痛みの少ない選択肢を選ぶことによりなるべく誰も傷つかないようにしているが、それは彼女だけがより傷つくことと同義である。
彼女がそうであるのは、ミルフィがそうであったためである。
彼女の心は、もとはミルフィのものだ。彼女はミルフィから生まれたドールだ。

彼が捨てたくても捨てられなかった打算的な優しさの部分を、ティアナが引き継いだ。
それを苦には思っていないティアナだが、ミルフィにとっては苦しいものに映るのかもしれない。

「ミルフィさまの悪口ですか!? 良くないですよ、ティアナは悲しいです」
「ミルフィさま、今日はどんなお話を書かれますか?」
「どうか、悲しまないで。後悔も、しないで。わたしはあなたのドール、あなたの夢は私の夢ですから!」

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〇ミルフィ
ティアナの主人。周囲には冷たい性格だと思われているが、言葉が足らないだけである。
病弱故に手が震えて動かず、絵を描けなくなった絵本作家。ひとりぼっちは寂しいので、旧知の仲であるノエルに頼み人形を作ってもらった。
素直でかわいいティアナのことを羨ましく、また、眩しく思っている。
それと同時に、いつだって欲しい言葉をくれるティアナに不安を抱えている。

自身と同じように、それで壊れはしないかと。
言葉が足らないのはわざとだ。もう自分としか仲良くできない。他人となんか仲良くしたくない。
だからドールを作ってもらった。自分の片割れのような存在を。
家族は、治療の金は出せど彼のことを理解はしてくれなかった。友達はみんな彼が療養している間に忙しくなって離れていった。
薄情なものだ。でも、現実というのはきっとそういうものなのだろう。

自分とたくさん対話した。彼らに諦めをつけるには、最初からなかったことにするのが一番だった。
自分しか信じなくなった。

創作は自分との対話だ。創作ばかりにかまけていたら、今度は手を壊した。
絵の描けない絵本作家に、生きている価値はない。

そう判断した彼は自死を試みようとしたが恐怖が勝ちうまくいかなかったところを家族に発見され保護された。
そこで家族に紹介されたのが―――ドールのことだった。
頼むから死んでくれるなと泣く両親の顔を今も覚えている。分かってもらえなくて悔しかったことも。

自分ともうまく話せなくなったのなら、この苦しみはだれに聞いてもらうんだ。

「自分の世界に閉じこもってる、んだってさ。それの何が悪いって言うんだよ……」
「ティアナ、声をもう少し小さくできるか?」
「馬鹿にしないで。可哀想だなんて言わないで。僕のこと、救えもしないくせに。責任だって取れないくせに!」

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〇ノエル
リュシエルで働く人形師。元気で豪胆な女性だが、自分の感情を軽く扱うところがある。
よく言えば感情の切り替えが上手い。悪く言えば我慢しがちだ。
本人はそれを自覚しながらそれで良いと思っている。切り替えられるような感情は、そう重要なものではないのだろうから。

悲しくても苦しくても、腹が立っても、笑って流せる。そう、笑って流せばいい。
そんなお荷物はいらない。歩くときは身軽なほうがいい。

美しく楽しく生きよう。全てに蓋をしても、今日という日は美しいのだから。

「あっはっは! ミルフィ、またそんなこと言ってるのか? もっと言葉を大切に使ったほうがいいぜ。」
「あたしはアンタたちに幸せになってもらえたらそれでいーの!」
「あたしが怒ったって、あんた、なんも変わんないだろ。だから怒んないよ」

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〇ステラ
ノエルのライバルとなった人形師兼魔術師。穏やかだが正直な男性。時にそれは冷たく見えるのかもしれない。
個人的に健康でありたいと思っているようでもあるので、それが甲を制しているのかもしれない。
良くも悪くも自身の正しさを貫くが為に言葉が鋭くなりがちだが、それ以外では技術としても人としてもそれなりに出来た人である。
ノエルとは幼馴染なため、彼女のことはよく知っている。彼女が感情を抑え込みがちなことも、魔力が少ないことも。

当時、髪が短くて人見知りな彼女は、いじめの格好の的だった。
それを守っていたのがステラなのだが、ノエルは段々と処世術を身につけ、一人でも生きていけるようになっていった。
気付けば人形作りの技術は先を越されていた。

それを嬉しく思いつつ寂しく思うようになってようやく、そこにあった恋心に気が付いた。
でも、今更だ。彼女は一人で生きていけるし、それを選ぶだろう。
臆病な彼は伝えることはせず、静かに日々を過ごしている。

「俺はステラだよ〜。君たちが来た理由を当ててやろう、ノエルのお使いかな。……違う? そう、残念」
「死にたいなら死ねばいいよ。怖いなら一緒に死んであげるし。俺は君の人生の責任は取れないからね。ほら、どうする?」
「……今更だよ。今更だ。ね、ノエル。そうだろ」
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〇エトワ
遠い街から、ノエルを尋ねて来た少年。
火事で家と家族を亡くした。目の前で瓦礫に挟まれた父が「リュシエルに向かいなさい、いいね、お前は決してひとりじゃない」「ノエルさん、という人形師を尋ねなさい。父さんは大丈夫だ」と言いながら彼は強く背を押した。伝わる感触を今でも覚えている。
歩き回って、時々誰かに助けて貰って、必死に歩いた先、リュシエルで働くノエルを見つけた。
父は、エトワへの誕生日プレゼントに人形を用意していた。
父の魔力の沢山籠った、少女の人形だった。

「〜〜!! う、うるさい! じゃあなんだ、お前、俺がガキだって言いてえのかよ!」
「は〜? 絵本作家のくせに、そんな簡単なことも言えねえってわけ?」
「父さんが少しでも楽に死んでたらいいなあ……! 俺のことなんか、心配しないでさ、後悔とかもなくて、なんか、……幸せだったかなあ!?」

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〇セレネ
エトワのドール。ちょっとクールな女の子。
エトワの友達になってやってくれと頼まれたので、仕方なく友達になるつもりだった。父の魔力が籠っているからか、思ったより思い入れができてしまったからか、いつか魔力が尽きる瞬間が来ることを惜しく思うようになってしまって、困っている。

彼の父のことは魔力越しにしか知らないが、エトワのことを愛していたことだけを知っている。彼の後悔を見る度に心が痛むが、何もしてやれない自分が嫌い。

「エトワ、申し訳ないけど、キミはまだまだ子供だよ。」
「ティアナ、ミルフィも、うちのがごめんね。」
「お父さんのこと、僕はちゃんと知らないけど……。ほら、キミはひとりじゃないんだろう。だから、大丈夫だって思うしかないよ。……無責任かな、ごめんね」

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