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2026年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
日記まとめ 時系列はバラバラ
世に出す作品の中に、あんまり気に入ってないものがある。
上手くできなかったとか、もっとやれるなとか、そういう向上心が元である。
でも、世に出す。それはとりあえずでも作品として形になったものだから。反応が来る。他者の需要と自分の需要はイコールでないことを知る。次に活かす。私にとってインターネットはこの繰り返しだ。
作品。私にとっては、絵だったり、漫画だったり、はたまた文だったり、詩だったり、短歌だったり。いろいろある。
絵と漫画には目標がある。簡単に、それをいつか自身の職にする、というものだ。それ以外には無い。でもなんとなく歌人にはなりたい。なりたいが、目標として掲げるには、自分の中では現実味が無い。
絵の話をする。幼少の頃から絵が好きで、ずっと絵を描いて生きてきた。逆に、それ以外のことはあまりしてこなかった。勉強とか。これは悔やんでいる。今からでも遅くない。そらそうだ。でも当時の無垢な私が学ぶことに今から学ぶこととは違う意義があったように思う。まあ、今から学ぶことにもそれとは違う意義がある。それはそうと、悔やんでいる。が、時は戻らないので諦めている。
文章も、あまり書いてこなかった。小学校の頃は好きだった。本の虫だった。本を読まなくなって、絵を描くことに没頭するようになってから、そのスキルは衰えたと思う。
考えていることや、気持ちを言葉にするようになったのも、最近のことだ。他者の気持ちを理解できるようになったのもわりと最近だ。
だから、私の短歌は拙いはずだ。もっと上手な言葉がきっとあると私は思う。好いてくれる人はありがとう。これは向上心の話だから、どうか一旦聞いて欲しい。私は私の短歌を拙いと思っているが、私も私の短歌は好きだ。
すごく昔、私の絵って素晴らしい、という話をしていたら、満足したらそこで止まっちゃうよと言葉が返ってきたことがある。正しいと思う。その言葉が出るのもわかる、なんせ下手だったから。でも私は私の絵に満足していたわけではなく、ただ今の絵も好きだという話がしたかった。
もっと上手くなれる。常にこれだ。満足する日はきっと来ない。創作物に対して、模索するのが好きだ。試行錯誤の日々が好きだ。その記録をつけるのも結構好きだし、見返すのも好きだ。
創作物に良いも悪いもなければ正解も不正解も無い。ただ、私はもっと上手くやれると思っている。ただそれだけの話である。
ーーー
・空を飛ぶ宇宙に行ける音が鳴るあなたのことを可能性と呼ぶ
簡単な短歌だなと思う。解説することもそんなに多くはないけど、なんとなく話してみたかったので書いてみる。
私は創作で空を飛びたがる。地上に留まるよりも自由な気がするからだ。ロマンでもある。美しい空を全部背負って駆けることが出来たら、どれだけ気持ち良いだろうと想像しては焦がれている。
宇宙にロマンを感じる。今だ、私たち人間の範疇では、知らないこと。分からないこと。実は他の生命体がいるかもしれないとか、綺麗な 星々も、恒星も、綺麗で見惚れてしまう。実はこれは畏怖なのかもしれない。それでも焦がれる。死ぬまでに月に行きたい。別に死んでからでもいい。
宇宙では音は鳴らない。震えるものがないから。それでも人類は、宇宙の、地球外の誰かに地球のことを知らせるために音楽を選んだ。
地球の外でも音楽が鳴れと夢を見る。音楽で世界は救われなくてもなにか通じ合うものがあれと願う。
全ては想像だ。妄想で、妄言で、現実味のない幻想だ。それが創作であると私は思う。
それを可能性と呼びたくて、この短歌を詠んだ。
ちょっと前に詠んだ短歌に、ここにある話のいくつかの要素が入っている。
・空飛びたい!いっぱい青を背負ってさ風になったらスキップしちゃお
・信じてる震える空気がなくたってなにかに震える心があると
創作の中ではロマンは自由だ。好きなだけ表現して良くて、そのロマンは、誰にも馬鹿にされるべきではない。
だから、創作を愛している。誰にも認められない世界を、誰かに笑われてしまうような世界を、愛しているのだと叫べるから。
ーーー
自分だけの星を欲している。ダジャレみたいだが、これは至極真面目な話なのだ。
安らぎの形は人それぞれだし、救いの形も人それぞれだから、この世にないなら作ればいいと思った。
人間の真似事をしている気分だと言葉にした。やってはいけないこともやるべきこともこうすれば誰かが喜ぶとかも、全部が全部打算でしかなくて、そこに私の本意はないのかもしれないと思った。だから、他の星から来たとかだったら良かったなと思ったのがこの話のきっかけだ。どこかに帰る場所があるなら、なにか目的のためにそうせざるを得ないなら、人間の真似事だって楽しいのかもしれないな、と。
ずっと帰る場所を欲している。暖かくて優しくて時に厳しくてもいつでも受け入れてくれるって信じられるような場所が欲しい。
自分の中に留めておくなら吐きたい言葉を吐いていいし、誰にでも邪魔されない創作があってもいい。頭の中は自由だから。私は自由だから。
死んだらそこに還り着きたいと祈る。これは、自分だけの宗教みたいなものなんだと思う。
目的を決めよう。何がいいかな。無難に侵略のため?
でも自分だけの星に他の人はいない。救いの中に他の人を入れると絶対的じゃなくなるから。私は侵略は望んでない。しいて言うなら、一人が寂しい。
じゃあ、交信のため。あるいは、学びのため。学びのためがそれらしいかも。勝手に発展した星の技術を行使して、観測した、地球という星の人間という生き物と交流したかった。いいじゃん。
帰る場所である星には何があるかな。花の枯れた花畑があるといいな。私が管理を怠っているから花も咲かないけど、いつか芽吹く日が来るんだ。私が自分の星の管理に興味を持ったから。
あとは、ポストがあるといいな。ポストがあるってことは家もあんのかな。もし私が先に死んだら、観測可能宇宙/うしかい座ボイド/座標零域/孤立恒星系アステリア/惑星碧海号まで手紙を送ってね。家でゆっくり読むよ。
家には簡単にノートとペンとインク、あとベットがあって、私は眠ることで旅をしている。もちろん、疲れたら旅をしないこともできる。そういう時は目を覚まして、ノートに向き合って記録したり、考え事をしたり、創作をしたりする。別に眠らなくても生きていけたらいい。帰ってきてしまえば、私はもう宇宙人で、地球の人間ではないのだから。
自分だけの星を作ろう死んだ時いつか迷子にならないように
私という醜い生き物それをただ受け止めてくれる揺り籠、が星
帰り着く星には何も無ければいい花とか咲かせられたことないし
思い出もなければいいなそれならば悲しみなんていらないからさ
欲しいのは住所、名義と眠りだけいつか書いてね、手紙、約束
無いものを、特に自分で創っている物を、ただ愚直に信じて生きるのは、世間一般的には多分ありえない話なんだろうなって思うけど、たまにそれを一緒にそうなんだって思ってくれる人と出会うと嬉しいよね。私は、これからも大丈夫になれるように、自分だけの星を自分だけの宗教にするんだと言って、いいね、と言われたのがただ嬉しかったんだ。
皆さんも自分だけの星を作ってみませんか。人間社会になじむのは大変だけど、宇宙には自分の還る場所があって、いつか星に帰れるかもしれないって思うだけで、私はちょっと楽になったから。普通に創作として出してくれたっていいよ。みんなはどんな星だったら住みたい?
私は、自分の星に好きなものを詰め込むことはしなかったけど、それは身軽でいたいからで、人によっては好きな物全部持って帰っちゃうのかもしれないなとか、想像するだけで楽しいので。気が向いたら教えてね。
ーーー
自分が落ち込みたい気分であるがためにこちらの強さを理由にしないでもらっていいか? とはずっと思ってるらしいよ
こちらにはこちらなりのそうなった理由があるわけじゃん 別になりたくてなった訳じゃないのよ私だって
慰められチヤホヤされたいのは勝手だけど人を勝手に悪者ポジに置かないでもらっていい? 私、あなたになんかしたかしら
なんかやわらかさを武器にしてて嫌ね〜って思っていま〜す!!!
それは優しさの搾取と何が違うんだ?
ーーー
可哀想であればあるほど人は味方をしてくれると知っているので意図的にそう見せているところはあるな、と思う。事実を曲げるのは嫌いだからそれだけはしてないつもり。だけど、だから、可哀想は侮辱だと言う人の心がよく分からないし、可哀想を武器にしなくても生きてこれたならいいことなんじゃない、って妬ましく思う時もある。
可哀想を武器にしないと全うに扱ってもらえなかったんだよな。私って賢いガキだから本当に苦しい時だって隠せちゃったし、馬鹿なガキだったから本当に苦しいんだってわからなかった。
同情して優しくしてね。私が欲しいのは常に優しさとか愛とかそういうものだからいつまでもこのまま可哀想を武器にするんだろうな、たとえ安くてもその場しのぎにはなるから。
こんなチラシの裏のらくがきに声を掛けてくれる方は、私が寂しいのは愛情とかそういうものを受け取る器が壊れているからであって別に愛されていないと思っているわけではないので、あまり気にしないでくださいね。それはそうと嬉しい。ありがとう。
言葉をかけて貰えるのは嬉しいよ。もっと素直に受けとって満足できたらいいのにね〜。
なんだかなあ、なんだかな。私が周りに愛されていることは知っているんだ。知っているけれども受け取れないんだ、よく分からなくて。形だけ受け取らせてもらっている。そういうものがあるという知識はあるけれど実感がなくてずっと怖い、よく分からないから。
でもそれをそうだとするとあなたの愛を否定してしまう気がしてもっとこわい。
暖かいものに触れるのは怖い。今までずっと冷たい場所にいたみたいな錯覚を覚えるから、それは知りたくない。知りたくないけど欲しい。だから可哀想を振りまいて軽い愛を受け取って満足している……。
届いてない訳では無いと思うんだ。確かに私はそれを暖かいものだと認識しているし、触れて受け入れようとしている。だから、たぶん、成長痛なんだよな……。
私も、それが愛かどうかはさておき、相手が受け取る/受け取らないのどちらを選んでもこの好意的な感情は変わらない、みたいな状態にはわりと覚えがあるから、向けることはできるんだよな。
向けることができるなら、私はたしかにそれを知っているのにな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 難しいね。
ーーー
今日は打ち合わせがあったのだけれど、私の力不足であなたを燻らせてしまっている、と言われてしまってもう本当に申し訳なかった。そんなことはない。少なくとも無駄ではなかったので、どうかそんな風に自分を責めないで欲しいと思った。力不足はこちらも同じだ。
描きたいものと描けるものとそれはそうと好きなものはそれぞれ違うなと思うから仕方の無いことなのだろう、とも思う。いや、でも、本当に良い人だな……(しみじみ)
ーーー
らくがきで納得できるラインと「絵」として認められる(納得できる)ラインは全然違うよね〜みたいな話をした。自分で言っておいてめちゃくちゃ納得したので日記に書いちゃう。ボツになった絵もらくがきとしてなら悪くないなって思うし……。
でもその分らくがきがお絵描きにカウントされてなくて毎日最近お絵描きしてないなあって思う。らくがきだけなら毎日描いてるから全然嘘だ。私は自分が納得できるものを描くことをお絵描きと呼んでいるんだろうな。もっと描きたいですね……。
ーーー
今日は一日何もしなかった。嘘。お絵描きをしながらちょっと人と喋って遊びの予定を立てた。絵を描けるのも人と遊べるのもなんだか嬉しい。なんだか嬉しいから、買ってきたバゲットをこんな深夜に食べてしまった。初めて食べるマーマレードはあんまり口には合わなかった。踊り出したいような喜びがその残念さを上回っていて、マーマレードを初めて食べたのが今日で良かったと思った。
ーーー
プリティーリズム・オーロラドリームで育ったから「ママやパパには内緒で」の概念がとても好きだ。だからフィクションでまで子供は大人が守るべきものだと言われるとウーンと思う。それってとっても窮屈だ。立派な大人という概念に偶像みを感じている、そんなものはどこにも存在しないというのにSNSではそればかりを追い求められていて大人って窮屈だなと子供みたいに思う。本当に自分がそれになれると思っているんだろうか。大人として完璧であれると思っているんだろうか。自分が出来ないことは人に強制しないと小さい頃躾られたのを思い出したりとかする。正しいがあれは過度だったと思う。
ーーー
嫌な事ばかりが言葉になる、自分がされて嬉しいことはあんまり言葉にならないのに
ーーー
これはなんか見たの文章です。
SNSの一部の人々って、親という存在を万能だと思い過ぎているなあとおすすめタイムラインを見ながら思ったので、書き出してみる。
みんなは忘れてしまったかもしれないが、親というものも自分達と同じ人間だ。強いて言うなら、自分たちよりちょっと大人なだけだ。大人だからそうあるべき? であれば言葉を変えよう。子供の延長線にあるのが大人だ。私たちと同じように、彼らもまた子供だった。私たちと同じ物質で出来ていて、同じよう中身を持っている、同じ生命体だ。
自分が親になることを想像してみて欲しい。私は、言うことを聞かない子供を怒鳴りつけない自信はないし、不登校になった子供に笑って接することが出来るかも分からないし、突然八つ当たりをされたらこちらも何かをぶつけてしまいそうだ。
しかも、それだけ頑張って何にもならないのだ。形に見える成長は子供が大人になるだけ。
考えてもみてほしい。そうやって育てた子供に嫌われたり、心無い言葉を投げつけられたり、SNSでああだこうだと言われたりする親の気持ちを。
補足するが、もちろん虐待は良くない。子供を産む以上それを保護し生かす責任が伴うのは事実であるから、そういう話は今はしてない。
私たちは子供の時、言葉を知らないから親になにかを伝える術を持たない。あれが嫌だったな、これが嫌だったな。こうすればよかった、ああすればよかった、など、不満はもちろん沢山あると思う。私もある。でも何も考えずにこちらの不満ばかりをぶつけるのは、子供から成長出来ていないのではないか思う。
家族だから理解して当然、という言説があるが、あれは幻想だ。家族とて別個体。言葉にしなければ伝わらないことは伝わらない。
親は、きっと、それでも愛していたつもりなんだ。家族として、あなたの成長のためになにかをしてくれたなら。それがこちらにとって良くなかったとしても、愛していたつもりだったのだろうという事実だけは認めてやってくれないか。
親は職業ではないんだ。これらを無給でやっているんだ。家族だからって見放されない訳じゃない。
もちろん、親が完全に悪いパターンもあるだろうが……。
親も一人の人間だ。自分と同じで、間違いだらけで、それでも上手く生きようとしているだけの、ただ一人の人間だ。
私たちと彼らは、生まれてきた時代が違うから、分かり合えないこともあるかもしれない。考えることも、感じてきたことも違うから、話しても仕方ないかもしれない。
でもせめて、話し合う心持ちを持って欲しい。なんのために言葉があると思ってるんだ。
親はあなたを育てる為だけに作られた万能な装置じゃない。覚えて帰ってくれ。
ーーー
私が誰かに愛されるために見せる形を変えなければならなかったことが許される環境が目に見えるところにお出しされて不快なんだろうな
でもこれってあくまで許容であって受容ではないと思うからいつか離れていく人間関係に過ぎないんだと思うよ
人に優しくできない、もう、誰にも
出来ないことを出来ないからと諦めるな それを認めてくれるな 私がやってきた血のにじむような努力が否定された気になるから良くない
全部が言葉になってしまった 見えるようになってしまったんだよ
ーーー
人によっては厳しい話かもしれないから、落ち込んでいる自覚がある人は読まない方が良いです。誰かや何かの悪口とかでは決してない。
これは私が知った現実の話でしかないから、あなたの周りは違うかもしれないし、必ずしも全てが当てはまる訳では無いと思って読んでね。
傷ついた時、私たちは他人に救いを求めてしまうけど、それに完璧に寄り添ってくれる他人は多少無茶していることが多いな、と思っています。
人が傷つくのには沢山の理由があるな、と思っています。自分にも、相手にも。傷つける側にも事情はあるし、思ってることもあるし、そうなるに至った環境がある。逆に、傷つけられる側にも事情があって、思ってることがあって、環境がある。だからこそ、それらが噛み合わなかった時に双方に傷が生じるな、と思っていて、だからこそ、傷つくのは確かにあなたのせいでは無い、と言えます。
でも逆に、100%傷つけた誰かのせいであるか、と言われたら、そうではない、と思うんです。
生きていく上で、自我というのは環境やそれまで受けてきた扱いで変化します。そこから理性が育ち、それが何を選びとるかが揺れるから私たちはそれぞれ違う思考を持ちます。
極端な話。例えば、家族から虐待を受けていた子供が、親を害することがあったとして、この場合は子供は100%の悪か、と言われたら、そうではない、と言えると思います。
では、家族は? もしかしたら、何らかの理由でその家族にも余裕がなかったかもしれません。
こんなに極端ではなくても、世の中の悪意は全てこういうものだと思っていて、相手を100%の悪にはしてはいけない、と私は思っています。もちろん、こちらを害することはこちらにとって良くないことなので、それに怒りを覚えたり、その後の扱いを考えたりは勝手にしたらいいですが、それでも相手は100%の悪では無いと知っておいた方が良い、と思います。
話を戻します。これは昔、私が知ってしまった事なのですが、例え自分がどれだけ傷ついて、どれだけ壊れてしまっても、その傷の責任の所在は相手にも自分にもないことを、知ってしまいました。
そうなった時、自分の尻を拭けるのが自分だけだった。自分を守るのは自分だけで、自分の人生とかいうものの責任を取れるのも、自分だけでした。
そして、他人に救いを求めるのは、他人に自分の尻拭いをさせていることに他ならない、と考えます。
多少誰かに慰めてもらう。話を聞いてもらう。結構です。素晴らしい交友関係があって良いと思います。でも、そればかりが気持ちよくなっては、良くない。それは依存と近い。
依存してはいけないの? と思われるかたがいるかもしれませんが、双方が同じだけ寄りかかって、ずっと一緒に生きていく、というのは本当に、とても難しいです。どれだけ言葉を尽くしても。
どうしてもそのバランスは崩れてしまう。依存し合うほど気が合って仲良くできる友人を、簡単に無くすことになる。
だから最初からそうでない方が良い、というのが、私の人生経験からの結論です。
なんとなく、そういう危うさを感じる方がサーバーに多くて、でも面と向かっては言葉にしにくくて、がーっと書き出してみましたが、これがなにかの思考の参考になればいいなと思うばかりです。
同じ答えでなくてもいいので、もし、気が向いたら思考を共有してください。
ただ、私と同じように傷ついて、ひとりぼっちで耐えるこどもが減るように、という思いで書きました。
サーバーに書いたように、これは私が知った現実の話でしかないから、あなたの周りは違うかもしれないし、必ずしも全てが当てはまる訳では無いと思って読んでね。デカキスやね。あなたのすこやかな安寧を祈ってるよ。
畳む
世に出す作品の中に、あんまり気に入ってないものがある。
上手くできなかったとか、もっとやれるなとか、そういう向上心が元である。
でも、世に出す。それはとりあえずでも作品として形になったものだから。反応が来る。他者の需要と自分の需要はイコールでないことを知る。次に活かす。私にとってインターネットはこの繰り返しだ。
作品。私にとっては、絵だったり、漫画だったり、はたまた文だったり、詩だったり、短歌だったり。いろいろある。
絵と漫画には目標がある。簡単に、それをいつか自身の職にする、というものだ。それ以外には無い。でもなんとなく歌人にはなりたい。なりたいが、目標として掲げるには、自分の中では現実味が無い。
絵の話をする。幼少の頃から絵が好きで、ずっと絵を描いて生きてきた。逆に、それ以外のことはあまりしてこなかった。勉強とか。これは悔やんでいる。今からでも遅くない。そらそうだ。でも当時の無垢な私が学ぶことに今から学ぶこととは違う意義があったように思う。まあ、今から学ぶことにもそれとは違う意義がある。それはそうと、悔やんでいる。が、時は戻らないので諦めている。
文章も、あまり書いてこなかった。小学校の頃は好きだった。本の虫だった。本を読まなくなって、絵を描くことに没頭するようになってから、そのスキルは衰えたと思う。
考えていることや、気持ちを言葉にするようになったのも、最近のことだ。他者の気持ちを理解できるようになったのもわりと最近だ。
だから、私の短歌は拙いはずだ。もっと上手な言葉がきっとあると私は思う。好いてくれる人はありがとう。これは向上心の話だから、どうか一旦聞いて欲しい。私は私の短歌を拙いと思っているが、私も私の短歌は好きだ。
すごく昔、私の絵って素晴らしい、という話をしていたら、満足したらそこで止まっちゃうよと言葉が返ってきたことがある。正しいと思う。その言葉が出るのもわかる、なんせ下手だったから。でも私は私の絵に満足していたわけではなく、ただ今の絵も好きだという話がしたかった。
もっと上手くなれる。常にこれだ。満足する日はきっと来ない。創作物に対して、模索するのが好きだ。試行錯誤の日々が好きだ。その記録をつけるのも結構好きだし、見返すのも好きだ。
創作物に良いも悪いもなければ正解も不正解も無い。ただ、私はもっと上手くやれると思っている。ただそれだけの話である。
ーーー
・空を飛ぶ宇宙に行ける音が鳴るあなたのことを可能性と呼ぶ
簡単な短歌だなと思う。解説することもそんなに多くはないけど、なんとなく話してみたかったので書いてみる。
私は創作で空を飛びたがる。地上に留まるよりも自由な気がするからだ。ロマンでもある。美しい空を全部背負って駆けることが出来たら、どれだけ気持ち良いだろうと想像しては焦がれている。
宇宙にロマンを感じる。今だ、私たち人間の範疇では、知らないこと。分からないこと。実は他の生命体がいるかもしれないとか、綺麗な 星々も、恒星も、綺麗で見惚れてしまう。実はこれは畏怖なのかもしれない。それでも焦がれる。死ぬまでに月に行きたい。別に死んでからでもいい。
宇宙では音は鳴らない。震えるものがないから。それでも人類は、宇宙の、地球外の誰かに地球のことを知らせるために音楽を選んだ。
地球の外でも音楽が鳴れと夢を見る。音楽で世界は救われなくてもなにか通じ合うものがあれと願う。
全ては想像だ。妄想で、妄言で、現実味のない幻想だ。それが創作であると私は思う。
それを可能性と呼びたくて、この短歌を詠んだ。
ちょっと前に詠んだ短歌に、ここにある話のいくつかの要素が入っている。
・空飛びたい!いっぱい青を背負ってさ風になったらスキップしちゃお
・信じてる震える空気がなくたってなにかに震える心があると
創作の中ではロマンは自由だ。好きなだけ表現して良くて、そのロマンは、誰にも馬鹿にされるべきではない。
だから、創作を愛している。誰にも認められない世界を、誰かに笑われてしまうような世界を、愛しているのだと叫べるから。
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自分だけの星を欲している。ダジャレみたいだが、これは至極真面目な話なのだ。
安らぎの形は人それぞれだし、救いの形も人それぞれだから、この世にないなら作ればいいと思った。
人間の真似事をしている気分だと言葉にした。やってはいけないこともやるべきこともこうすれば誰かが喜ぶとかも、全部が全部打算でしかなくて、そこに私の本意はないのかもしれないと思った。だから、他の星から来たとかだったら良かったなと思ったのがこの話のきっかけだ。どこかに帰る場所があるなら、なにか目的のためにそうせざるを得ないなら、人間の真似事だって楽しいのかもしれないな、と。
ずっと帰る場所を欲している。暖かくて優しくて時に厳しくてもいつでも受け入れてくれるって信じられるような場所が欲しい。
自分の中に留めておくなら吐きたい言葉を吐いていいし、誰にでも邪魔されない創作があってもいい。頭の中は自由だから。私は自由だから。
死んだらそこに還り着きたいと祈る。これは、自分だけの宗教みたいなものなんだと思う。
目的を決めよう。何がいいかな。無難に侵略のため?
でも自分だけの星に他の人はいない。救いの中に他の人を入れると絶対的じゃなくなるから。私は侵略は望んでない。しいて言うなら、一人が寂しい。
じゃあ、交信のため。あるいは、学びのため。学びのためがそれらしいかも。勝手に発展した星の技術を行使して、観測した、地球という星の人間という生き物と交流したかった。いいじゃん。
帰る場所である星には何があるかな。花の枯れた花畑があるといいな。私が管理を怠っているから花も咲かないけど、いつか芽吹く日が来るんだ。私が自分の星の管理に興味を持ったから。
あとは、ポストがあるといいな。ポストがあるってことは家もあんのかな。もし私が先に死んだら、観測可能宇宙/うしかい座ボイド/座標零域/孤立恒星系アステリア/惑星碧海号まで手紙を送ってね。家でゆっくり読むよ。
家には簡単にノートとペンとインク、あとベットがあって、私は眠ることで旅をしている。もちろん、疲れたら旅をしないこともできる。そういう時は目を覚まして、ノートに向き合って記録したり、考え事をしたり、創作をしたりする。別に眠らなくても生きていけたらいい。帰ってきてしまえば、私はもう宇宙人で、地球の人間ではないのだから。
自分だけの星を作ろう死んだ時いつか迷子にならないように
私という醜い生き物それをただ受け止めてくれる揺り籠、が星
帰り着く星には何も無ければいい花とか咲かせられたことないし
思い出もなければいいなそれならば悲しみなんていらないからさ
欲しいのは住所、名義と眠りだけいつか書いてね、手紙、約束
無いものを、特に自分で創っている物を、ただ愚直に信じて生きるのは、世間一般的には多分ありえない話なんだろうなって思うけど、たまにそれを一緒にそうなんだって思ってくれる人と出会うと嬉しいよね。私は、これからも大丈夫になれるように、自分だけの星を自分だけの宗教にするんだと言って、いいね、と言われたのがただ嬉しかったんだ。
皆さんも自分だけの星を作ってみませんか。人間社会になじむのは大変だけど、宇宙には自分の還る場所があって、いつか星に帰れるかもしれないって思うだけで、私はちょっと楽になったから。普通に創作として出してくれたっていいよ。みんなはどんな星だったら住みたい?
私は、自分の星に好きなものを詰め込むことはしなかったけど、それは身軽でいたいからで、人によっては好きな物全部持って帰っちゃうのかもしれないなとか、想像するだけで楽しいので。気が向いたら教えてね。
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自分が落ち込みたい気分であるがためにこちらの強さを理由にしないでもらっていいか? とはずっと思ってるらしいよ
こちらにはこちらなりのそうなった理由があるわけじゃん 別になりたくてなった訳じゃないのよ私だって
慰められチヤホヤされたいのは勝手だけど人を勝手に悪者ポジに置かないでもらっていい? 私、あなたになんかしたかしら
なんかやわらかさを武器にしてて嫌ね〜って思っていま〜す!!!
それは優しさの搾取と何が違うんだ?
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可哀想であればあるほど人は味方をしてくれると知っているので意図的にそう見せているところはあるな、と思う。事実を曲げるのは嫌いだからそれだけはしてないつもり。だけど、だから、可哀想は侮辱だと言う人の心がよく分からないし、可哀想を武器にしなくても生きてこれたならいいことなんじゃない、って妬ましく思う時もある。
可哀想を武器にしないと全うに扱ってもらえなかったんだよな。私って賢いガキだから本当に苦しい時だって隠せちゃったし、馬鹿なガキだったから本当に苦しいんだってわからなかった。
同情して優しくしてね。私が欲しいのは常に優しさとか愛とかそういうものだからいつまでもこのまま可哀想を武器にするんだろうな、たとえ安くてもその場しのぎにはなるから。
こんなチラシの裏のらくがきに声を掛けてくれる方は、私が寂しいのは愛情とかそういうものを受け取る器が壊れているからであって別に愛されていないと思っているわけではないので、あまり気にしないでくださいね。それはそうと嬉しい。ありがとう。
言葉をかけて貰えるのは嬉しいよ。もっと素直に受けとって満足できたらいいのにね〜。
なんだかなあ、なんだかな。私が周りに愛されていることは知っているんだ。知っているけれども受け取れないんだ、よく分からなくて。形だけ受け取らせてもらっている。そういうものがあるという知識はあるけれど実感がなくてずっと怖い、よく分からないから。
でもそれをそうだとするとあなたの愛を否定してしまう気がしてもっとこわい。
暖かいものに触れるのは怖い。今までずっと冷たい場所にいたみたいな錯覚を覚えるから、それは知りたくない。知りたくないけど欲しい。だから可哀想を振りまいて軽い愛を受け取って満足している……。
届いてない訳では無いと思うんだ。確かに私はそれを暖かいものだと認識しているし、触れて受け入れようとしている。だから、たぶん、成長痛なんだよな……。
私も、それが愛かどうかはさておき、相手が受け取る/受け取らないのどちらを選んでもこの好意的な感情は変わらない、みたいな状態にはわりと覚えがあるから、向けることはできるんだよな。
向けることができるなら、私はたしかにそれを知っているのにな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 難しいね。
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今日は打ち合わせがあったのだけれど、私の力不足であなたを燻らせてしまっている、と言われてしまってもう本当に申し訳なかった。そんなことはない。少なくとも無駄ではなかったので、どうかそんな風に自分を責めないで欲しいと思った。力不足はこちらも同じだ。
描きたいものと描けるものとそれはそうと好きなものはそれぞれ違うなと思うから仕方の無いことなのだろう、とも思う。いや、でも、本当に良い人だな……(しみじみ)
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らくがきで納得できるラインと「絵」として認められる(納得できる)ラインは全然違うよね〜みたいな話をした。自分で言っておいてめちゃくちゃ納得したので日記に書いちゃう。ボツになった絵もらくがきとしてなら悪くないなって思うし……。
でもその分らくがきがお絵描きにカウントされてなくて毎日最近お絵描きしてないなあって思う。らくがきだけなら毎日描いてるから全然嘘だ。私は自分が納得できるものを描くことをお絵描きと呼んでいるんだろうな。もっと描きたいですね……。
ーーー
今日は一日何もしなかった。嘘。お絵描きをしながらちょっと人と喋って遊びの予定を立てた。絵を描けるのも人と遊べるのもなんだか嬉しい。なんだか嬉しいから、買ってきたバゲットをこんな深夜に食べてしまった。初めて食べるマーマレードはあんまり口には合わなかった。踊り出したいような喜びがその残念さを上回っていて、マーマレードを初めて食べたのが今日で良かったと思った。
ーーー
プリティーリズム・オーロラドリームで育ったから「ママやパパには内緒で」の概念がとても好きだ。だからフィクションでまで子供は大人が守るべきものだと言われるとウーンと思う。それってとっても窮屈だ。立派な大人という概念に偶像みを感じている、そんなものはどこにも存在しないというのにSNSではそればかりを追い求められていて大人って窮屈だなと子供みたいに思う。本当に自分がそれになれると思っているんだろうか。大人として完璧であれると思っているんだろうか。自分が出来ないことは人に強制しないと小さい頃躾られたのを思い出したりとかする。正しいがあれは過度だったと思う。
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嫌な事ばかりが言葉になる、自分がされて嬉しいことはあんまり言葉にならないのに
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これはなんか見たの文章です。
SNSの一部の人々って、親という存在を万能だと思い過ぎているなあとおすすめタイムラインを見ながら思ったので、書き出してみる。
みんなは忘れてしまったかもしれないが、親というものも自分達と同じ人間だ。強いて言うなら、自分たちよりちょっと大人なだけだ。大人だからそうあるべき? であれば言葉を変えよう。子供の延長線にあるのが大人だ。私たちと同じように、彼らもまた子供だった。私たちと同じ物質で出来ていて、同じよう中身を持っている、同じ生命体だ。
自分が親になることを想像してみて欲しい。私は、言うことを聞かない子供を怒鳴りつけない自信はないし、不登校になった子供に笑って接することが出来るかも分からないし、突然八つ当たりをされたらこちらも何かをぶつけてしまいそうだ。
しかも、それだけ頑張って何にもならないのだ。形に見える成長は子供が大人になるだけ。
考えてもみてほしい。そうやって育てた子供に嫌われたり、心無い言葉を投げつけられたり、SNSでああだこうだと言われたりする親の気持ちを。
補足するが、もちろん虐待は良くない。子供を産む以上それを保護し生かす責任が伴うのは事実であるから、そういう話は今はしてない。
私たちは子供の時、言葉を知らないから親になにかを伝える術を持たない。あれが嫌だったな、これが嫌だったな。こうすればよかった、ああすればよかった、など、不満はもちろん沢山あると思う。私もある。でも何も考えずにこちらの不満ばかりをぶつけるのは、子供から成長出来ていないのではないか思う。
家族だから理解して当然、という言説があるが、あれは幻想だ。家族とて別個体。言葉にしなければ伝わらないことは伝わらない。
親は、きっと、それでも愛していたつもりなんだ。家族として、あなたの成長のためになにかをしてくれたなら。それがこちらにとって良くなかったとしても、愛していたつもりだったのだろうという事実だけは認めてやってくれないか。
親は職業ではないんだ。これらを無給でやっているんだ。家族だからって見放されない訳じゃない。
もちろん、親が完全に悪いパターンもあるだろうが……。
親も一人の人間だ。自分と同じで、間違いだらけで、それでも上手く生きようとしているだけの、ただ一人の人間だ。
私たちと彼らは、生まれてきた時代が違うから、分かり合えないこともあるかもしれない。考えることも、感じてきたことも違うから、話しても仕方ないかもしれない。
でもせめて、話し合う心持ちを持って欲しい。なんのために言葉があると思ってるんだ。
親はあなたを育てる為だけに作られた万能な装置じゃない。覚えて帰ってくれ。
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私が誰かに愛されるために見せる形を変えなければならなかったことが許される環境が目に見えるところにお出しされて不快なんだろうな
でもこれってあくまで許容であって受容ではないと思うからいつか離れていく人間関係に過ぎないんだと思うよ
人に優しくできない、もう、誰にも
出来ないことを出来ないからと諦めるな それを認めてくれるな 私がやってきた血のにじむような努力が否定された気になるから良くない
全部が言葉になってしまった 見えるようになってしまったんだよ
ーーー
人によっては厳しい話かもしれないから、落ち込んでいる自覚がある人は読まない方が良いです。誰かや何かの悪口とかでは決してない。
これは私が知った現実の話でしかないから、あなたの周りは違うかもしれないし、必ずしも全てが当てはまる訳では無いと思って読んでね。
傷ついた時、私たちは他人に救いを求めてしまうけど、それに完璧に寄り添ってくれる他人は多少無茶していることが多いな、と思っています。
人が傷つくのには沢山の理由があるな、と思っています。自分にも、相手にも。傷つける側にも事情はあるし、思ってることもあるし、そうなるに至った環境がある。逆に、傷つけられる側にも事情があって、思ってることがあって、環境がある。だからこそ、それらが噛み合わなかった時に双方に傷が生じるな、と思っていて、だからこそ、傷つくのは確かにあなたのせいでは無い、と言えます。
でも逆に、100%傷つけた誰かのせいであるか、と言われたら、そうではない、と思うんです。
生きていく上で、自我というのは環境やそれまで受けてきた扱いで変化します。そこから理性が育ち、それが何を選びとるかが揺れるから私たちはそれぞれ違う思考を持ちます。
極端な話。例えば、家族から虐待を受けていた子供が、親を害することがあったとして、この場合は子供は100%の悪か、と言われたら、そうではない、と言えると思います。
では、家族は? もしかしたら、何らかの理由でその家族にも余裕がなかったかもしれません。
こんなに極端ではなくても、世の中の悪意は全てこういうものだと思っていて、相手を100%の悪にはしてはいけない、と私は思っています。もちろん、こちらを害することはこちらにとって良くないことなので、それに怒りを覚えたり、その後の扱いを考えたりは勝手にしたらいいですが、それでも相手は100%の悪では無いと知っておいた方が良い、と思います。
話を戻します。これは昔、私が知ってしまった事なのですが、例え自分がどれだけ傷ついて、どれだけ壊れてしまっても、その傷の責任の所在は相手にも自分にもないことを、知ってしまいました。
そうなった時、自分の尻を拭けるのが自分だけだった。自分を守るのは自分だけで、自分の人生とかいうものの責任を取れるのも、自分だけでした。
そして、他人に救いを求めるのは、他人に自分の尻拭いをさせていることに他ならない、と考えます。
多少誰かに慰めてもらう。話を聞いてもらう。結構です。素晴らしい交友関係があって良いと思います。でも、そればかりが気持ちよくなっては、良くない。それは依存と近い。
依存してはいけないの? と思われるかたがいるかもしれませんが、双方が同じだけ寄りかかって、ずっと一緒に生きていく、というのは本当に、とても難しいです。どれだけ言葉を尽くしても。
どうしてもそのバランスは崩れてしまう。依存し合うほど気が合って仲良くできる友人を、簡単に無くすことになる。
だから最初からそうでない方が良い、というのが、私の人生経験からの結論です。
なんとなく、そういう危うさを感じる方がサーバーに多くて、でも面と向かっては言葉にしにくくて、がーっと書き出してみましたが、これがなにかの思考の参考になればいいなと思うばかりです。
同じ答えでなくてもいいので、もし、気が向いたら思考を共有してください。
ただ、私と同じように傷ついて、ひとりぼっちで耐えるこどもが減るように、という思いで書きました。
サーバーに書いたように、これは私が知った現実の話でしかないから、あなたの周りは違うかもしれないし、必ずしも全てが当てはまる訳では無いと思って読んでね。デカキスやね。あなたのすこやかな安寧を祈ってるよ。
畳む
詩まとめ
あたし今シンデレラ!
灰被りだとあたしを笑うあの子の
ガラスの靴は血まみれで可哀想!
それでも笑うし歌って踊るの
足元に咲く薔薇に誰も気付かぬように
花を踏みつける靴底が笑って、泣いて、怒って、
それでも笑うの、王子さまに見つけてもらうために
ああ、素敵な王子さま!
足元なんて見なくてもいいから、
笑顔の私をあいしていてね。
ーーー
時には落ち込むことがあったっていい
時には頼ってくれたっていい
月の影に隠れたってその分、
かがやいてみたら指輪になる
指輪をはめて!
顔を上げて!
笑って、マイディアー
いつだって美しいあなたがだいすきよ
ーーー
落ち込みがちなあの子が
珍しく自分のために怒っていて
嬉しかったことをよく覚えている。
世界の美しさを歌う人が
世界に蔑ろにされているところを
見たことがある。
それでも命は、
輝かしいきらめきを放って、
清く正しく美しくなんて
いられぬままに息をする。
清く正しく美しく、なんてなくても
輝けるんだと、きっと人々はもう、知っている。
あなたの好きな物はなあに?
どうしても許せないことはある?
守り抜きたいものってなに?
誰にも負けないきらめきをもらって、
強くなっていく私たちのバトンリレー
きらめきをあげる。
ーーー
うつくしいものになりたい、
波に削られたガラス玉みたいな。
あれ、シーグラスって言うらしいよ、
知ってた?
花火の後の余韻、
あの日頬を撫でた手のひらの暖かさ、
もらった言葉、
そういううつくしいものを集めて集めて
ひとかたまりにしたものがわたしであれ、と、願う。
願ってもかみさまは星を降らせてなんかくれないから、
わたしは削れていかずにトゲトゲしたガラスのまま誰かを傷つけている。
ああ、あ、あ、
(聞くに絶えない慟哭)、(自分に対する罵詈雑言)、
お願いだから触らないで。
そんなことを言いながらきっと誰かが、
そんなわたしの、
まだ尖りきらない平らなところをつまんで、
これなら痛くないよと笑ってくれるって、
信じてるんだよ、ごめんね。
ーーー
優しさなんかじゃないって
言えばよかった
言ってやればよかった、
どうして、だって、そんなこと、
自分がいちばん分かってるのに?
本当は、わたし、全部がどうでもいいの
このまま続くなら、
全部がどうでも良かったのに、
どうでも良かったって思わせてよ!
今、多分、怒りなんて綺麗なものじゃなくて、
もっと違う何かがわたしを突き動かしている
返せ! 返して、返してよ!
わたしは、わたしたちは、―――あなたは、
孤独だったのか、そうではなかったのか、
そうじゃないよ、そうじゃなくて、
ちゃんと泣いて怒ってよ!
胸ぐらを掴んで泣き喚いても
どうかな、多分、答えはかえってこないね
散っていった桜の花びらだって
風が行進させていくように
いずれ土に還るとしても尚、
生き足掻くことを、
変わりゆく残酷な世界を、
美しさを歌うよ
あなたの望んだ輝かしさを掴むよ
誰より遠くに飛び立って
帰って来てなんてやらないよ
寂しいって泣いてよ
どうしてって怒ってよ
物分りの良いふりで
勝手に納得しないで!
今、多分、悲しみなんて美しいものじゃなくて、
もっと違う何かがわたしを突き動かしている
ああ、もう、
自己嫌悪と同族嫌悪が
混じって混じってぐっちゃぐちゃ!
振り上げた拳は下ろす場所がなくて、
ああ、もう、知らないんだから!
ーーー
ただ、
救いを求めている。
きっと、この際、
それが多少、冷たくてもいい。
救われたい。
天国は信じてたいけど
神様は信じていられない、から
であれば、それは
不敬で罪になるのかな、と
(考えてみたり、した)
天国を信じてたいのは、
終わりに救いを求めたいから、
神様を信じていられないのは、
あなたは救いになれないから。
何もかもを救っていたら、
世界が壊れちゃうから、
あなたは救いになれない
無ければ、良かったね。
なんにも。
あなたも。
ーーー
月が食べたいって君が言うから、
月を取りに行くことにした。
しめしめ、と
男は考える。
君は人気者だから、
僕じゃなくてもいいかもね。
でも、
月を引っ提げて帰ってくる男なんて、
この世界にそういないよ。
しめしめ、と、卵を割る。
彼女を欲しがる誰かには、
羨ましがられちゃうのかも。
へへっ、ざまあみろ!
ーーー
人生には分岐点が沢山あって、
その分岐点を間違えて、
間違えて、間違えた結果、
いま、ここに立っている。
ねえ、良かったと思う?
どうかな。君はどう思う?
ええ、ずるいよ。私が聞いたのに!
ふふん、でもね。
人生まるごと大間違い!
あなたもそうでしょ、マイダーリン。
それが良いでしょ、マイダーリン!
ーーー
でもでも、だって、
仕方ないけど、
嫌だ嫌だと駄々をこねるよ
大の大人が恥ずかしげもなく!
あなたにとって、
それは間違いかもしれないけど。
それでも、
間違いでいいよ
間違いだらけのあなたが好きで、
間違いだらけのあなたを愛している
そればかりが、
そればかりが私とあなたを繋いでいる
私も間違いだ
あまり寂しいことを言ってくれるなよ
全部一緒に背負うことはできないけれど
でも、それでも、きっと、たぶん
あなたと一緒にいたいのは、嘘じゃない
嘘に、したくない
……と、思う、から
間違いがいいよ、
全ての間違いが正解を模倣しているだけで
この世は全て間違いで出来ている
ーーー
それは、
大地に、力強く根差す力。
それは、
海の水の穏やかさ。
それは、
風の静かなささやき声。
それは、
夜明け前の暖かな光。
あの日握った手のぬくもり、静かに落とされた言葉の温度、隣で人が眠る時の静けさ。
私たちは日々、祈りを探している。
祈りは、繋がり。
わたしとあなたの境界線を、少しだけ溶かすもの。
祈りは愛と隣り合わせ
わたしとあなたを結びつけ、
根を張り、
波を撫で、
風を運び、
光を齎す。
それは、
未来の保証ではなく、
それは、
現在の肯定。
それは、
矛盾ごと抱きしめるもので、
それは、
誰かに確かに残るもの。
ーーー
光が似合う人だった。
それ以外の暗くて脆くてうしろめたいものは
なにひとつも似合わないような、
太陽のような、
美しいひとだった。
本当は、なにもいらなかった。
太陽を手に入れようとした俺が馬鹿で、
誰の手にも収まらないあなたは
困ったように笑って、
困らせてしまった、と、思った、から。
……。
太陽だって闇には勝てないんだな。
眠るあなたのすこし痩せた顔を見て、
そんなことを思った。
あなたの夢が、
暗くて、脆くて、うしろめたいものでなければ良い。
頼むから、
ひだまりの中心にいてくれ。
ーーー
小さな鳥を保護した。
小さくて、可愛くて、
まだ弱くて、幼い、
綺麗な声で鳴く小鳥を。
小鳥は歌った。
「飛び立ちたい、飛び立ちたい」と、
私は困ってしまった。
小鳥の翼は、
―――翼、を?
私は思い立ってしまった。
だから、大きな翼を仕立てたの。
ああ、
あなたはきっと私の元を離れていくのね。
そうして誰よりも輝く一番星になって、
夜鷹なんかも追い越しちゃって、
私の手が、届かなくなる。
仕立てた翼は問題なく、
小鳥も嬉しそうに鳴いては飛び立って、
わたし、
ああ、どこまでも行ってしまえばいい!
と、泣いたんだった。
―――小鳥が鳴いている。
一緒に行こうと鳴いている。
私はその手を取った。
ああ、私たち、
きっとどこまでも飛べるのね
ーーー
強くならなくちゃ。
少年は思った。
小さく静まった海を前に、誰よりも大きな背伸びをした。
もう奏でられなくなった旋律を代わりに口ずさめば、海は呼応するようにさざめき立つ。
口ずさむ。
呼応する。
口ずさむ、
こちらを見る。
口ずさむ、
穏やかに微笑んだ海の、その手のひらの、先
ああ、青い青い憧憬の、その先に、
夢と、未来が―――
きっと、待っている。
夢、夢だ。
夢になる。
未来が来る!
強くならなくちゃ、ね。
信じなくちゃ。
誰よりも、自分のために、
海のために。
畳む
あたし今シンデレラ!
灰被りだとあたしを笑うあの子の
ガラスの靴は血まみれで可哀想!
それでも笑うし歌って踊るの
足元に咲く薔薇に誰も気付かぬように
花を踏みつける靴底が笑って、泣いて、怒って、
それでも笑うの、王子さまに見つけてもらうために
ああ、素敵な王子さま!
足元なんて見なくてもいいから、
笑顔の私をあいしていてね。
ーーー
時には落ち込むことがあったっていい
時には頼ってくれたっていい
月の影に隠れたってその分、
かがやいてみたら指輪になる
指輪をはめて!
顔を上げて!
笑って、マイディアー
いつだって美しいあなたがだいすきよ
ーーー
落ち込みがちなあの子が
珍しく自分のために怒っていて
嬉しかったことをよく覚えている。
世界の美しさを歌う人が
世界に蔑ろにされているところを
見たことがある。
それでも命は、
輝かしいきらめきを放って、
清く正しく美しくなんて
いられぬままに息をする。
清く正しく美しく、なんてなくても
輝けるんだと、きっと人々はもう、知っている。
あなたの好きな物はなあに?
どうしても許せないことはある?
守り抜きたいものってなに?
誰にも負けないきらめきをもらって、
強くなっていく私たちのバトンリレー
きらめきをあげる。
ーーー
うつくしいものになりたい、
波に削られたガラス玉みたいな。
あれ、シーグラスって言うらしいよ、
知ってた?
花火の後の余韻、
あの日頬を撫でた手のひらの暖かさ、
もらった言葉、
そういううつくしいものを集めて集めて
ひとかたまりにしたものがわたしであれ、と、願う。
願ってもかみさまは星を降らせてなんかくれないから、
わたしは削れていかずにトゲトゲしたガラスのまま誰かを傷つけている。
ああ、あ、あ、
(聞くに絶えない慟哭)、(自分に対する罵詈雑言)、
お願いだから触らないで。
そんなことを言いながらきっと誰かが、
そんなわたしの、
まだ尖りきらない平らなところをつまんで、
これなら痛くないよと笑ってくれるって、
信じてるんだよ、ごめんね。
ーーー
優しさなんかじゃないって
言えばよかった
言ってやればよかった、
どうして、だって、そんなこと、
自分がいちばん分かってるのに?
本当は、わたし、全部がどうでもいいの
このまま続くなら、
全部がどうでも良かったのに、
どうでも良かったって思わせてよ!
今、多分、怒りなんて綺麗なものじゃなくて、
もっと違う何かがわたしを突き動かしている
返せ! 返して、返してよ!
わたしは、わたしたちは、―――あなたは、
孤独だったのか、そうではなかったのか、
そうじゃないよ、そうじゃなくて、
ちゃんと泣いて怒ってよ!
胸ぐらを掴んで泣き喚いても
どうかな、多分、答えはかえってこないね
散っていった桜の花びらだって
風が行進させていくように
いずれ土に還るとしても尚、
生き足掻くことを、
変わりゆく残酷な世界を、
美しさを歌うよ
あなたの望んだ輝かしさを掴むよ
誰より遠くに飛び立って
帰って来てなんてやらないよ
寂しいって泣いてよ
どうしてって怒ってよ
物分りの良いふりで
勝手に納得しないで!
今、多分、悲しみなんて美しいものじゃなくて、
もっと違う何かがわたしを突き動かしている
ああ、もう、
自己嫌悪と同族嫌悪が
混じって混じってぐっちゃぐちゃ!
振り上げた拳は下ろす場所がなくて、
ああ、もう、知らないんだから!
ーーー
ただ、
救いを求めている。
きっと、この際、
それが多少、冷たくてもいい。
救われたい。
天国は信じてたいけど
神様は信じていられない、から
であれば、それは
不敬で罪になるのかな、と
(考えてみたり、した)
天国を信じてたいのは、
終わりに救いを求めたいから、
神様を信じていられないのは、
あなたは救いになれないから。
何もかもを救っていたら、
世界が壊れちゃうから、
あなたは救いになれない
無ければ、良かったね。
なんにも。
あなたも。
ーーー
月が食べたいって君が言うから、
月を取りに行くことにした。
しめしめ、と
男は考える。
君は人気者だから、
僕じゃなくてもいいかもね。
でも、
月を引っ提げて帰ってくる男なんて、
この世界にそういないよ。
しめしめ、と、卵を割る。
彼女を欲しがる誰かには、
羨ましがられちゃうのかも。
へへっ、ざまあみろ!
ーーー
人生には分岐点が沢山あって、
その分岐点を間違えて、
間違えて、間違えた結果、
いま、ここに立っている。
ねえ、良かったと思う?
どうかな。君はどう思う?
ええ、ずるいよ。私が聞いたのに!
ふふん、でもね。
人生まるごと大間違い!
あなたもそうでしょ、マイダーリン。
それが良いでしょ、マイダーリン!
ーーー
でもでも、だって、
仕方ないけど、
嫌だ嫌だと駄々をこねるよ
大の大人が恥ずかしげもなく!
あなたにとって、
それは間違いかもしれないけど。
それでも、
間違いでいいよ
間違いだらけのあなたが好きで、
間違いだらけのあなたを愛している
そればかりが、
そればかりが私とあなたを繋いでいる
私も間違いだ
あまり寂しいことを言ってくれるなよ
全部一緒に背負うことはできないけれど
でも、それでも、きっと、たぶん
あなたと一緒にいたいのは、嘘じゃない
嘘に、したくない
……と、思う、から
間違いがいいよ、
全ての間違いが正解を模倣しているだけで
この世は全て間違いで出来ている
ーーー
それは、
大地に、力強く根差す力。
それは、
海の水の穏やかさ。
それは、
風の静かなささやき声。
それは、
夜明け前の暖かな光。
あの日握った手のぬくもり、静かに落とされた言葉の温度、隣で人が眠る時の静けさ。
私たちは日々、祈りを探している。
祈りは、繋がり。
わたしとあなたの境界線を、少しだけ溶かすもの。
祈りは愛と隣り合わせ
わたしとあなたを結びつけ、
根を張り、
波を撫で、
風を運び、
光を齎す。
それは、
未来の保証ではなく、
それは、
現在の肯定。
それは、
矛盾ごと抱きしめるもので、
それは、
誰かに確かに残るもの。
ーーー
光が似合う人だった。
それ以外の暗くて脆くてうしろめたいものは
なにひとつも似合わないような、
太陽のような、
美しいひとだった。
本当は、なにもいらなかった。
太陽を手に入れようとした俺が馬鹿で、
誰の手にも収まらないあなたは
困ったように笑って、
困らせてしまった、と、思った、から。
……。
太陽だって闇には勝てないんだな。
眠るあなたのすこし痩せた顔を見て、
そんなことを思った。
あなたの夢が、
暗くて、脆くて、うしろめたいものでなければ良い。
頼むから、
ひだまりの中心にいてくれ。
ーーー
小さな鳥を保護した。
小さくて、可愛くて、
まだ弱くて、幼い、
綺麗な声で鳴く小鳥を。
小鳥は歌った。
「飛び立ちたい、飛び立ちたい」と、
私は困ってしまった。
小鳥の翼は、
―――翼、を?
私は思い立ってしまった。
だから、大きな翼を仕立てたの。
ああ、
あなたはきっと私の元を離れていくのね。
そうして誰よりも輝く一番星になって、
夜鷹なんかも追い越しちゃって、
私の手が、届かなくなる。
仕立てた翼は問題なく、
小鳥も嬉しそうに鳴いては飛び立って、
わたし、
ああ、どこまでも行ってしまえばいい!
と、泣いたんだった。
―――小鳥が鳴いている。
一緒に行こうと鳴いている。
私はその手を取った。
ああ、私たち、
きっとどこまでも飛べるのね
ーーー
強くならなくちゃ。
少年は思った。
小さく静まった海を前に、誰よりも大きな背伸びをした。
もう奏でられなくなった旋律を代わりに口ずさめば、海は呼応するようにさざめき立つ。
口ずさむ。
呼応する。
口ずさむ、
こちらを見る。
口ずさむ、
穏やかに微笑んだ海の、その手のひらの、先
ああ、青い青い憧憬の、その先に、
夢と、未来が―――
きっと、待っている。
夢、夢だ。
夢になる。
未来が来る!
強くならなくちゃ、ね。
信じなくちゃ。
誰よりも、自分のために、
海のために。
畳む
短歌まとめ
目が合った。ふわり笑って、暗闇。あ〜あ、スポットライトも恋していれば……。
ああ、ひかり。 彼らの全てを灼き尽くしどこまでも飛んでねよだかの星へ
誰にでも見つけて欲しくて鮮烈に光り続ける虫ひとり
星を統べ、世界も羨む王になる。お前の視線もあたしのものだ。
守られてばかりは嫌、けど、だから何? おまえの元には届かぬ祈り
「言わねえと分からねえのか」と宣うが、分かんねえだろ調子乗んな
金木犀甘い匂いの朝の道少し暖かな秋の訪れ
私たちも薔薇だといって咲く花壇風を味方にドレスのひらひら
おめでとう今年地球を手渡して来年は宇宙を確かな祈り
生きるため自分を許さねばその影にまた傷つく誰かよ
美しいこころを端からコピペして愛するふりをまだ諦めない
ひややかな熱を持たない画面越し言葉をなぞる、ことばをなぞる
いろいろな地獄があるよねおそろいだぐつぐつ煮込んで指輪にしようよ
たくさんの時間を言葉とともにして磨き上げたのそれ恋だったの
人間は嫌い自分は好きだが愛せない個のぬくもりをたまに愛して
わたしたち視野が狭くて嫌い合う波打つ心もささくれ立って
あなたとの夜の散歩が好きだった高い夜空の寒さとココア
部屋の隅勝手にぱちぱちペンライトアイドルだった幽霊がいる
夢を見るばかで可愛く幼い日朝の光が嫌いでしたね
静まって奏でられないその海を背負う背負うよ二人の夢を
強くあれお願いこの手に届くまで冷たく綺麗な青の憧憬
翼なら仕立ててあげるよその代わりどこまでも飛んで帰ってこないで
強さとは己の弱さを許すこと己の努力を認めてやること
努力さえ続けていれば手に届く(信じていました、ほんとうなんです)
うるさいなみじめになるから胸張れよ夢は夢のまま終わるんだから
あの頃のあなたを愛した私ごと好きが枯れればもう戻らない
空を飛ぶ船だの汽車だの翼だの自由に逃げたいここから飛びたい
空飛びたい!いっぱい青を背負ってさ風になったらスキップしちゃお
欲求を選び整え理性となり揺れているから自我と呼ぶ
情報が起こした揺れこそ自我ならば機械の揺らぎも自我と呼べるか
木で出来た誰も知らない秘密基地お父さんがね作ってくれたの
信じてる震える空気がなくたってなにかに震える心があると
とても長い旅をしてきた光です帰れませんが、見えていますか
このマヌケ聞いているのかボケカスがうるさい黙れ、私が正しい
猫かぶり可愛く被った化けの皮剥がれちゃったねしかたがないや
最初から被る気のない猫の皮バケモン来ましたほらもてなして
人間が好き、嫌いけど好き、嫌いう〜ん嫌いか、じゃあブロックで
他人が嫌いそれは自分を守るためこんなふうにはなりたくなかった
素敵だね綺麗なあなたのここが好きでもここが醜いから嫌い
そうやってばかぼこばかぼこ傷つけて自分が大事か? まあそりゃそうよな。
傷つけた?後悔してる?なら走れお前の口はなんのためある!?
御足労感謝しますね一等星返事の届く頃には私は
星の影綺麗な花には刺があるバキュンと一発恋に落ちろや
かぼちゃの馬車ティアラにドレスガラスの靴それはそうとして拳は振るう
「死にたくない」静かに涙を流してさ あ、アイシャドウにラメ入ってる
シャボン玉の中に入って浮かびたい風船みたいね割れないでよね
「一緒ならなんでも楽しいから平気」って!? 残したいからもっかい言って!
この今を必死に生きてるおれたちのの綺麗な言葉が味方にな〜れ
ミッションワン、この希死念慮をぶっ倒せ!どんな言葉を使ってもいいよ
寒いからホットミルクと希死念慮、今日からお前は冬の季語だよ
嘘つけます本音を隠して笑えますでも漢字も書けずに生きています
見せかけのインターネットの裏側にどろり濁った化け物が棲む
驚いた愛はここまでいけるのか返り血までもが綺麗に見えて
微笑んでばかでも可愛くゆるしてね愛嬌だけで生きてきました
地獄でもあなたのためなら生きていくもうこの場所にいられなくても
あたしって海割りたいんだそうしたらあなたの国まで走っていくよ
痛むほどぬくもりばかりを愛すのに私が触れたら冷めてしまうね
キラキラになってやろうかその瞳焼け焦がすほどの熱さで光るよ
橙のクレヨンで描くのが好きだった夕焼けの色、ひだまりの色
自分ごと好きすぎくらいでちょうど良い半分くらいは嘘だしハッタリ
やんやんとうるさく言ってもどうせ他人他人のこととか気にしなくていい
絵文字とか伸ばし棒とか使い分け強い言葉もやわこくなってよ
うるせえな恋だの好きだの嫌いだの一人で立つからおまえは要らない
星々の光を指輪にして笑い「運命だね」と歌い合う日々だ
他人とのお話し合いはコミュニケーション自分との対話は創作と呼ぶ
ボツにした昔の欠片も一部だし幸せになれよ創作物
空を飛ぶ宇宙に行ける音が鳴るあなたのことを可能性と呼ぶ
作品よ長く光ってうつくしのどうか汚れずそのままで
帰宅中でっかいプリンとか買っちゃって明日は休み明日は土曜日
分かりやすい詩を好む傾向にある、かしこくないからと卑下したりして
下心と甘い言葉だけの君をもう、ハーメルンみたいに拐かしちゃう
あなたへと伝える言葉アイラブユーかちかちかちとキーボード鳴らして
ああ夜鷹、燃え尽きた先に星になれあなたが幸せならばそれがいい
貫いた正しさすらも間違いとするなら信じたこれはなに、ゴミ?
大丈夫、いつか温度を忘れてもそれでも今はあなたが好きよ
あっ太陽出てきやがったな暑苦しいお前を地面に引きずり下ろす
春が来る。寒さに震えた大地さえ歓喜に震える、ああ、春一番!
救われたい、から、中途半端な神様をバン!そこに救いはないけどね
きやびやかあたし、宝石、ラグジュアリー姫と呼んでよ王子を呼びつけ
泣かないで、どうか祈って、きらめいて! メタモルフォーゼただ強くあれ
手を繋ぎ歩く親子と見守るだれか、魔法少女が置いたステッキ
えっ死んだ? 未練たらたら地縛霊死の手触りを僕にください
寂しくて詩を書いているどこまでもひとりぼっち、誘蛾灯の下
「退きなさい誰の前かを心得て?」あたしプリンセス剣を片手に
シャッターを下ろした次の瞬間の照れたように笑むあなたに向日葵
光ってるように見えてる? このあたし、全部嘘だよ、化け物だもの
あたし今スポットライトあなたの目焼いて焦がして潰しちゃうから
いつだってハートのキラキラ抱きしめて夢の中でもメタモルフォーゼ
自分だけの星を作ろう死んだ時いつか迷子にならないように
私という醜い生き物それをただ受け止めてくれる揺り籠、が星
帰り着く星には何も無ければいい花とか咲かせられたことないし
思い出もなければいいなそれならば悲しみなんていらないからさ
欲しいのは住所、名義と眠りだけいつか書いてね、手紙、約束
袖触れ合い杯交わした友人に、幸福ばかりが降り注げばいい
宇宙まで届いちゃうようなでかい声許せないから出しちゃおっかな
手に触れて指輪のサイズをたしかめて影に現る宝石の月
それは薔薇? 真っ赤なドレスが焼き付いて最期の瞬間も奪い去っていく
「月が綺麗、まるで貴方の言葉みたい」薔薇かと思った愛かと思った
私たち世界でいちばん強いから人を殺す夢だけを見ようね
深夜二時、ブランコに乗ると星に手が届くんだよね、知ってた? ふふん
滑り台、寝そべってみたら、空を見て! 星の光でプラネタリウム
私ってきらめきらしい、おら、目潰し! なんかそれくらい光ってるらしい
畳む
目が合った。ふわり笑って、暗闇。あ〜あ、スポットライトも恋していれば……。
ああ、ひかり。 彼らの全てを灼き尽くしどこまでも飛んでねよだかの星へ
誰にでも見つけて欲しくて鮮烈に光り続ける虫ひとり
星を統べ、世界も羨む王になる。お前の視線もあたしのものだ。
守られてばかりは嫌、けど、だから何? おまえの元には届かぬ祈り
「言わねえと分からねえのか」と宣うが、分かんねえだろ調子乗んな
金木犀甘い匂いの朝の道少し暖かな秋の訪れ
私たちも薔薇だといって咲く花壇風を味方にドレスのひらひら
おめでとう今年地球を手渡して来年は宇宙を確かな祈り
生きるため自分を許さねばその影にまた傷つく誰かよ
美しいこころを端からコピペして愛するふりをまだ諦めない
ひややかな熱を持たない画面越し言葉をなぞる、ことばをなぞる
いろいろな地獄があるよねおそろいだぐつぐつ煮込んで指輪にしようよ
たくさんの時間を言葉とともにして磨き上げたのそれ恋だったの
人間は嫌い自分は好きだが愛せない個のぬくもりをたまに愛して
わたしたち視野が狭くて嫌い合う波打つ心もささくれ立って
あなたとの夜の散歩が好きだった高い夜空の寒さとココア
部屋の隅勝手にぱちぱちペンライトアイドルだった幽霊がいる
夢を見るばかで可愛く幼い日朝の光が嫌いでしたね
静まって奏でられないその海を背負う背負うよ二人の夢を
強くあれお願いこの手に届くまで冷たく綺麗な青の憧憬
翼なら仕立ててあげるよその代わりどこまでも飛んで帰ってこないで
強さとは己の弱さを許すこと己の努力を認めてやること
努力さえ続けていれば手に届く(信じていました、ほんとうなんです)
うるさいなみじめになるから胸張れよ夢は夢のまま終わるんだから
あの頃のあなたを愛した私ごと好きが枯れればもう戻らない
空を飛ぶ船だの汽車だの翼だの自由に逃げたいここから飛びたい
空飛びたい!いっぱい青を背負ってさ風になったらスキップしちゃお
欲求を選び整え理性となり揺れているから自我と呼ぶ
情報が起こした揺れこそ自我ならば機械の揺らぎも自我と呼べるか
木で出来た誰も知らない秘密基地お父さんがね作ってくれたの
信じてる震える空気がなくたってなにかに震える心があると
とても長い旅をしてきた光です帰れませんが、見えていますか
このマヌケ聞いているのかボケカスがうるさい黙れ、私が正しい
猫かぶり可愛く被った化けの皮剥がれちゃったねしかたがないや
最初から被る気のない猫の皮バケモン来ましたほらもてなして
人間が好き、嫌いけど好き、嫌いう〜ん嫌いか、じゃあブロックで
他人が嫌いそれは自分を守るためこんなふうにはなりたくなかった
素敵だね綺麗なあなたのここが好きでもここが醜いから嫌い
そうやってばかぼこばかぼこ傷つけて自分が大事か? まあそりゃそうよな。
傷つけた?後悔してる?なら走れお前の口はなんのためある!?
御足労感謝しますね一等星返事の届く頃には私は
星の影綺麗な花には刺があるバキュンと一発恋に落ちろや
かぼちゃの馬車ティアラにドレスガラスの靴それはそうとして拳は振るう
「死にたくない」静かに涙を流してさ あ、アイシャドウにラメ入ってる
シャボン玉の中に入って浮かびたい風船みたいね割れないでよね
「一緒ならなんでも楽しいから平気」って!? 残したいからもっかい言って!
この今を必死に生きてるおれたちのの綺麗な言葉が味方にな〜れ
ミッションワン、この希死念慮をぶっ倒せ!どんな言葉を使ってもいいよ
寒いからホットミルクと希死念慮、今日からお前は冬の季語だよ
嘘つけます本音を隠して笑えますでも漢字も書けずに生きています
見せかけのインターネットの裏側にどろり濁った化け物が棲む
驚いた愛はここまでいけるのか返り血までもが綺麗に見えて
微笑んでばかでも可愛くゆるしてね愛嬌だけで生きてきました
地獄でもあなたのためなら生きていくもうこの場所にいられなくても
あたしって海割りたいんだそうしたらあなたの国まで走っていくよ
痛むほどぬくもりばかりを愛すのに私が触れたら冷めてしまうね
キラキラになってやろうかその瞳焼け焦がすほどの熱さで光るよ
橙のクレヨンで描くのが好きだった夕焼けの色、ひだまりの色
自分ごと好きすぎくらいでちょうど良い半分くらいは嘘だしハッタリ
やんやんとうるさく言ってもどうせ他人他人のこととか気にしなくていい
絵文字とか伸ばし棒とか使い分け強い言葉もやわこくなってよ
うるせえな恋だの好きだの嫌いだの一人で立つからおまえは要らない
星々の光を指輪にして笑い「運命だね」と歌い合う日々だ
他人とのお話し合いはコミュニケーション自分との対話は創作と呼ぶ
ボツにした昔の欠片も一部だし幸せになれよ創作物
空を飛ぶ宇宙に行ける音が鳴るあなたのことを可能性と呼ぶ
作品よ長く光ってうつくしのどうか汚れずそのままで
帰宅中でっかいプリンとか買っちゃって明日は休み明日は土曜日
分かりやすい詩を好む傾向にある、かしこくないからと卑下したりして
下心と甘い言葉だけの君をもう、ハーメルンみたいに拐かしちゃう
あなたへと伝える言葉アイラブユーかちかちかちとキーボード鳴らして
ああ夜鷹、燃え尽きた先に星になれあなたが幸せならばそれがいい
貫いた正しさすらも間違いとするなら信じたこれはなに、ゴミ?
大丈夫、いつか温度を忘れてもそれでも今はあなたが好きよ
あっ太陽出てきやがったな暑苦しいお前を地面に引きずり下ろす
春が来る。寒さに震えた大地さえ歓喜に震える、ああ、春一番!
救われたい、から、中途半端な神様をバン!そこに救いはないけどね
きやびやかあたし、宝石、ラグジュアリー姫と呼んでよ王子を呼びつけ
泣かないで、どうか祈って、きらめいて! メタモルフォーゼただ強くあれ
手を繋ぎ歩く親子と見守るだれか、魔法少女が置いたステッキ
えっ死んだ? 未練たらたら地縛霊死の手触りを僕にください
寂しくて詩を書いているどこまでもひとりぼっち、誘蛾灯の下
「退きなさい誰の前かを心得て?」あたしプリンセス剣を片手に
シャッターを下ろした次の瞬間の照れたように笑むあなたに向日葵
光ってるように見えてる? このあたし、全部嘘だよ、化け物だもの
あたし今スポットライトあなたの目焼いて焦がして潰しちゃうから
いつだってハートのキラキラ抱きしめて夢の中でもメタモルフォーゼ
自分だけの星を作ろう死んだ時いつか迷子にならないように
私という醜い生き物それをただ受け止めてくれる揺り籠、が星
帰り着く星には何も無ければいい花とか咲かせられたことないし
思い出もなければいいなそれならば悲しみなんていらないからさ
欲しいのは住所、名義と眠りだけいつか書いてね、手紙、約束
袖触れ合い杯交わした友人に、幸福ばかりが降り注げばいい
宇宙まで届いちゃうようなでかい声許せないから出しちゃおっかな
手に触れて指輪のサイズをたしかめて影に現る宝石の月
それは薔薇? 真っ赤なドレスが焼き付いて最期の瞬間も奪い去っていく
「月が綺麗、まるで貴方の言葉みたい」薔薇かと思った愛かと思った
私たち世界でいちばん強いから人を殺す夢だけを見ようね
深夜二時、ブランコに乗ると星に手が届くんだよね、知ってた? ふふん
滑り台、寝そべってみたら、空を見て! 星の光でプラネタリウム
私ってきらめきらしい、おら、目潰し! なんかそれくらい光ってるらしい
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自創作「TrendSync!」がアーケードゲームになった場合の(?)色んな人のマイキャラ創作が見たい!
🗝私の誕生日
🗝私の誕生日
SS 創作物について
僕の書くものは、大抵、不特定多数の、あるいは、特定個人の、誰かに向けている。誰かに何かを書くこと、伝わりうる言葉にすることで、取りこぼす何かを、僕は軽視しているところがある。伝わればそれでいい、と、思う。多少曲がっていても、それがどんな形でも、今だけ君と同じものを見ていて、同じものを感じていると信じられるのなら、事実がどうだろうと、それでいい。――それがいい。
誰かの言葉を引用するが、水面に映る月をそのまま手で掬ったとして、同じものを見せることはできないように。揺れては漏れて、ひび割れ、消えていく何か。手のひらの温度で水だってぬるくなる。そこに映る月だってもう丸くないかもしれないけれど、それでも尚、月を見せたい。君と同じものが見たい。
寂しいことに、そうすることでしか、僕たちは同じにはなれない。
形にすることで失われる何かを切り捨ててなお君たちと同じものを共有したい。他人と違うことは不安要素で、美しいものは誰かと共有したくて、そうやって言葉にしてこそ人と分かり合える何かがある気がして、そうやって寂しい自分を慰めているのだろう。君たちと同じ立場で、君たちと同じものを見たい。君たちと同じようになりたい。
どうしたって僕は醜いかいぶつのようだ。
――かいぶつの言葉だっていつか誰かに届くことを夢見ている。届けたいから言葉を使う。誰に伝わらなくても祈り続けたいから書き続けている、書き続けている。
誰かに届いてほしい。これは、世界に叫ぶSOSであり、I Love Youでもあるのだと思う。
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僕の書くものは、大抵、不特定多数の、あるいは、特定個人の、誰かに向けている。誰かに何かを書くこと、伝わりうる言葉にすることで、取りこぼす何かを、僕は軽視しているところがある。伝わればそれでいい、と、思う。多少曲がっていても、それがどんな形でも、今だけ君と同じものを見ていて、同じものを感じていると信じられるのなら、事実がどうだろうと、それでいい。――それがいい。
誰かの言葉を引用するが、水面に映る月をそのまま手で掬ったとして、同じものを見せることはできないように。揺れては漏れて、ひび割れ、消えていく何か。手のひらの温度で水だってぬるくなる。そこに映る月だってもう丸くないかもしれないけれど、それでも尚、月を見せたい。君と同じものが見たい。
寂しいことに、そうすることでしか、僕たちは同じにはなれない。
形にすることで失われる何かを切り捨ててなお君たちと同じものを共有したい。他人と違うことは不安要素で、美しいものは誰かと共有したくて、そうやって言葉にしてこそ人と分かり合える何かがある気がして、そうやって寂しい自分を慰めているのだろう。君たちと同じ立場で、君たちと同じものを見たい。君たちと同じようになりたい。
どうしたって僕は醜いかいぶつのようだ。
――かいぶつの言葉だっていつか誰かに届くことを夢見ている。届けたいから言葉を使う。誰に伝わらなくても祈り続けたいから書き続けている、書き続けている。
誰かに届いてほしい。これは、世界に叫ぶSOSであり、I Love Youでもあるのだと思う。
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毎日百文字以上チャレンジをしていた時のやつ
一日目¦隣で眠るあなたの鼓動まで聞こえそう
主な人物:飛鳥井慎也・鬼良稀雷
起きた。伸びをして、欠伸をひとつ、ふと隣にあるぬくもりに気づいて、そちらに目をやる。ああ、そういえば、昨日はホラー映画を見て、それを口実に一緒に寝ようと誘って。
そんな雑な理由でも、仕方がないなと一緒に寝てくれる恋人のことが、ぐうと愛おしくなった。きっとあの時、考えていることは一緒だった。
もう一度横になってみる。その整った顔を眺めていれば、ふと瞼があいた。半分しか開かない瞼、おそらくは薄い視界に自分を捉えた彼は、少し不思議そうな顔をして、そのまま腕が伸びて。ぎゅう、と抱き枕みたいに抱きしめられた。
何事かと問うても、彼はどうやらゆめうつつのようで唸るような返事しか返ってこない。
突然のことでばくばくと心臓が鳴るものだから、それで起こしてしまいそうで、慌てて抑えようと思考を散らす。隣で眠る彼の鼓動まで聞こえそうだった。
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二日目¦今日は君の全てが欲しい
主な人物:和歌月泉・欠月牙狼
「今日はさあ、おうち泊まっても良い?」
いつも通り学校に行って、生徒会の仕事を終えて、帰り道。いつも通り仕事が終わるのを待ってくれた牙狼くんと歩きながら、他愛のない話をする。
「ああ……別に構わない、俺の部屋はちょっと散らかってるかもしれん」
「とか言って、いつも綺麗だと思うけどな」
少し前に同じことを言われて、好奇心で覗いた部屋を思い出す。別に、男子高校生にしては、大変綺麗な部屋だったと思う。そういうとこも好きだけどな、とぼんやり思って、次に出てきた言葉に、あ、と自覚した。
「そう、最近はあまり2人だけの時間を取れていなかったからさ。……今日は牙狼くんの全てが欲しくて」
「……な、」
こんな小っ恥ずかしいラブソングでも歌わないようなことを、バカ正直に思ったのだから仕方がない。
動揺する恋人の手をゆっくり繋いで、ぎゅ、とちからをこめて、しばらく堪能して、それから、上目遣いで一言、「ダメなの?」と言ってしまえば、牙狼くんはなんだかんだ頷いてしまうのだから、本当に優しい人だな、と思う。
「……ダメ、ではない」
「よし! 決まりだね」
赤く染まる彼の手を引っ張って家まで走ろうとすれば、「待て」と呼び止められる。
「なあに?」
首を傾げて問えば、真っ直ぐ俺を見据えて「俺にも欲しい。……泉の、ぜんぶ」なんて、小っ恥ずかしいことを宣うものだから、ああもう、俺まで赤くさせてどうするんだ!
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二日目②¦守られるだけというのは癪なので
主な人物:三角心・キク
「あ~、真っ当に行くとしたら、君を守るためとはいえ、多少の危険がつくモンだし……俺としても、君に危険が迫ることを良しとしたいわけじゃない。」
指をピンと立て、いたずらっぽくキクは笑う。
「だからね、ひとつ提案があるんだ」
「……提案、ですか」
真面目な顔で聞き返した三角にキクは苦笑を返した。
「うん。俺がぜんぶなんとかするから、君は家の中で待機すること。そりゃまあ真っ当な手段ではないんだが、ここまで来たら仕方ねえだろ」
「マネージャーさんを納得させてくれる手段でも考えて待っててくれれば、あっという間に終わる話だ。悪くないだろ?」
「……それは」
三角はぐう、と眉を寄せた。色々言いたいことはあったが、どうせ答えてくれやしないだろうし、それはそのまま飲み込んだ。
少しの沈黙、それでも、と声が落ちた。
「私はアイドルだから、そういうことに関与したってバレたらまずいんです。」
「証拠は残さねえよ」
「いいえ。世の中に完璧なんてないでしょう、それに、万が一バレた時にあなた一人が罪を被るというのなら、それも嫌ですし……」
「……私を守るために、私が戦わなくてどうするんですか?」
「私、何も出来ないお姫様じゃない。なんでもやってみせますよ、キクさん」
にい、と今までに無い表情で笑ってみせた三角の表情と、覚悟と。それに息を飲んで、キクは少し恥ずかしそうに笑った。
「はは、アンタってやっぱカッコ良いよ。」
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三日目¦お前のためにはしてやらない
主な人物:黒瀬愛海
「あ」
「……あ、」
困ったような声が響いた。それに、やってしまった、とでも言いたげな色が重なって、そのまま黒瀬は吸っていた煙草の火を消した。
「ど~も。良い夜ね」
「……そうだね」
会いたかった。それはもちろんそう。だけれど、だけれど、もう二度と会うつもりのない人だった。
「……ねえ、」
ああ、これはめんどくさいな。わざとそれを滲ませながら続きを促す。そうして促してしまうのが良くないのだと、少し昔の彼女の言葉を思い出した。
「私のためだったの」
黒瀬は少し目を伏せて、ふ、と息だけで笑った。
それに不服そうな顔をした彼女を見て、いつも通り、そう、いつも通り笑いながら、
「そんなわけないでしょ」
そう言った。
そう、あれは私のためだった。私の感情だった。決して、決してお前のためなんかでは無く、いや、絶対に、……絶対にお前のせいにはしてやらないのだ。
「あんたには、わかんなくて良いよ」
続けてそう言えば、彼女は諦めたように息をついた。
「愛海ってそればっかり、……私だって木偶の坊じゃないんだよ」
へえ、と大して興味もなさげに言えば、一瞬、悔しそうな表情をした彼女は隠すように黒瀬に背を向けた。
「……私、あなたのことが好きだったよ」
そう言い残して立ち去った。彼女を追うことすらしない黒瀬はそんな出来損ないみたいな告白を、ただ鼻で笑って流した。
「それが何になるって言うんだよ」
どこまでも愚直で、どこまでもお馬鹿で、どこまでも賢い私の大切な君。
私もあなたが大好きだった。そのために、世界が滅んでも良いと思える程。
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四日目¦ただあなたの心をすこし和らげたい
主な人物:箒星蛍
「あ。」
休日。ちょっとしたメイクと帽子で変装をして、ウィンドウショッピングをしていた、帰り道。
たまたま目に止まった雑貨屋の、シックな色の髪飾りを手に取ってまじまじと眺める。
少しくすんだ青から水色の花々たち、アクセントに黄色が入っていて、それはまるで夜空に蛍の光が浮かんでいるような色をしていた。
あまり派手なものは嫌がるかもしれない。いや、これも少し派手だけれど、きっとこれは似合うだろうし、……夏夜さんは、あたしからのプレゼントは無碍には出来ないでしょ。ひとりで勝手に頷いて、それをレジに持ち込んだ。
たまたま、似合いそうだったから買っただけだし、要らなかったら飾ってもらおう。
ついでにお菓子とか買っていったら怒られるかな。最近はあんまり動いていないから、食べないようにしてるけど、今日だけ特別に。
今日は、ちょっとステキなプレゼントを持って会いに行くね。しばらく退屈な毎日だろうしさ。
ステージなんかじゃない、普通の日常で、上機嫌に走っていく彼女は、まるでただ一人の女の子のようで。
暗くなってきた空がひとつ、星を零したことにも気づかずに。ただ、真っ直ぐな想いを抱えていた。
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五日目¦運命とかじゃなくて良い
主な人物:満見葉月
別に俺じゃなくても良いんだろ、とかいうめんどくさい女みたいな言葉に、それはそうだろを返したら、才川が怒った。
そう、だってべつに、世の中の恋人だって最初はただの他人なわけだし、別にそこに居心地が良く収まった人が恋人になるだけで、変わりはいくらでもいるもので。だけど、それはお前にだって言えることで、俺だってお前じゃなくて良いし、お前だって俺じゃなくて良いのだから、そこに理不尽もクソもなくないか?
そんなことをつらつらと喋ったら呆れられた。
だって別に、もうそんな運命だなんてロマンティックなものが信じられるほど子供じゃないし、なにより、そうだからこそ今はお前が良いってとこあるんだけど、それじゃダメなのか。
そう首を傾げたら才川は少し唸って、何かを諦めたように首を横に振られた。
それなりにこいつには色々な感情を置いてると思うんだけど、それはどうしたら伝わるんだろうか。
どれだけ考えても出ないだろうし、一先ずそこは休戦してアイスを食べることにした。
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六日目¦嬉しいな〜って思ったんだよ
主な人物:箒星蛍
世界の全てに忘れ去られる夢をみた。
そう、夢。ただの夢だ。ただ、嫌な現実味に体をふるわせて、父親の元へと向かえばいつも通り。名前を呼んで、おはよう、と声がかかる。
それにおはよう、と返すと、どうした、と首を傾げられた。
「何も無いよ。嫌な夢を見ただけ」
「……そうか」
それ以上は深入りしてこなかった。
父が、蛍に罪悪感と不安を抱いてるのは知っている。色々なことがあったのだし、それは仕方がないと思う。
だから、だけど、あなただってあたしのことを1番に思ってくれていたのに、罪悪感なんて抱く必要はないのに、それをぶつけた日には、親というのはそういうものなのだと言われた。
「……世界から、忘れられる夢だったんだ」
「……」
「ま、ありえない話だけど。嫌な夢見た後って、なんか嫌な感じあるよね」
そう言って笑えば、父は少し難しい顔をしながら、
「……世界から忘れられる夢、」
そう呟いて、顔を上げた。
「……きっとお前程の人間であるのなら、誰もが同じ言葉で口を揃えるんじゃないのか。父さんもそれと同じで、忘れてなんかやらない」
「だから、心配しなくて良い。忘れてもどこかで残るものはあるさ」
「……」
父は、蛍の周りにある非日常のことなんか知らないし、蛍も話す気もないけれど。けれど、だと言うのに、まっすぐそんなことを言ってくるもんだから、蛍は少し気が抜けたように笑った。
「……あたしってやっぱりちゃんとお父さんの元に産まれたんだね」
「どういう意味だ」
チン、とトーストが焼ける音がする。それをお皿に移しながら、とびきりの笑顔で蛍は笑った。
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七日目¦へんなやつ
主な人物:上空明日翔・天海深月
「なあ、お前。ほんとうに神様なの?」
ずっと気になっていたことだった。同じクラスのへんなやつ。聞けば、彼に願ったことは全て叶うらしく、だから神様と呼ばれている。
「……なあに、願い事?」
返事は間を置いて返ってきた。面倒くさそうにこちらを見るその瞳は、普通の人間と同じ。
「いや? 別に。残念だけど、自分の願いは自分で叶えられるのさ」
好奇心だよ、と付け加えると、そいつはぱちくり、と目を瞬かせた。
「なんだその反応」
「いや、別に……。俺に話しかけてくるのなんて、僕の力を宛にしているやつらばかりだから。なんというか……物珍しくて?」
「ふーん。そういうモン?」
「そういうもんだよ、僕の周りはね。」
そうだなあ、と少し考える素振りを見せて、そいつは言う。
「神様とは、ちょっとちがう。」
「へえ。じゃあ何?」
「なんだと思う?」
はぐらかされたな、と思った。別に深入りするほどでもないか、とそれには特に追求せず、少し考える。
どう見ても、人間と同じ身体、人間と同じ言語。そいつの不思議な力を体感したこともなく、体感する予定もない俺にはそこに人間以外の答えも出るはずもなく、首を傾げた。
「俺と同じじゃないか?」
「は?」
「ああ、いや。俺と同じ、普通の人間。男子高校生。アンタの持ってる力のことは知らないけど、だから俺にはそう見えるよ。」
「……ふうん」
へえ、と頷きながらそいつはこちらを見て、
「じゃあ、そういうことだよ。」
そう言った。
「……ふうん。そっか、良かった。」
「良かった?」
俺の言葉に首を傾げたそいつに、今度は俺が上機嫌に人差し指を突き立て、
「俺の友達百人目! 神様はさすがに友達になれないなって思うけど、お前は人間なら俺の友達になれるだろ?」
しばらく俺の立てた指を見て、キョトン、という顔をしたそいつは、ええ、と困惑したような声を上げて、
「君、実は変なやつだろ……?」
「お前それは失礼なやつだろ!」
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八日目¦はじめてのおくりもの
ラブレターフロムロランネタバレあり 現行未通過×
主な人物:晴間翔と天使
「ほら見ろ、これ!」
そう言いながらアユムがドヤ顔で出てきたのは、所謂赤ちゃんとかの名前を決める時に使う名付け辞典。
少し前にその話題になった時の壊滅的な名前のセンスを思い出して、真面目に考えるつもりのアユムを見て、思わず笑みがこぼれた。
真面目だな、この人。
「ふふ、俺は太郎なんじゃなかった?」
「おまえ太郎って雰囲気じゃねーしなあ、オレがかっけーの決めてやるよ~」
「お、そしたら楽しみにしちゃおっかな。天使様に似合うやつにしてね」
いつも絵を描く時みたいに、向かいに座って考え始めたアユムを眺める。
天使は、そういう時間が好きだった。アユムが、真面目に、想いを込めて創作物を生み出す。そういう場所に立ち会えるのは光栄なことだ、と思っているし、そうして出来上がった創作物のことも、全部気に入っていた。
「はれま……はれまに続く名前だろ? なんかいい感じのやつ……」
それに天使はぱちくり、と目を瞬かせた。
「……俺って晴間なの」
「えっ」
きょとんとした顔でこちらを見たアユムは、まるでそれが当然であるかのように首を傾げた。
「晴間以外にあるのか?」
「……いや」
いや、べつに、アユムが良いなら良いけれど。苗字が同じっていうのは、家族とかそういう人たちだけのものじゃないのか。
そう思いながら、口にしなかった。別にそれが嬉しくないわけじゃないし、アユムは当然だと思ってるみたいだし、……口出すことじゃないか。
黙り込んた俺に不思議そうにしながら、アユムはまた本に目を落とす。しばらく目を落として、その視線は一つのところでピタリと止まった。
「はれま、……かける」
「うわ! 超天使っぽい。晴間翔だって、いいじゃん。やりぃ~~」
ハレマカケル。晴間、翔。悪くない響きだった。
「……へえ、アユムにしては良いセンスじゃん」
「オレは元々センスいいだろ??」
「ちょっと前の名付けのセンス思い出しなよ」
別に太郎でも良かったのだが、センスは無かっただろ。アユムはううんと唸った。
「太郎……もまあ、まあな。アリではあったしな」
「そう? まあでも、晴間翔、良いんじゃない? 貰ってくよ」
にい、とアユムは満面の笑みを浮かべた。
「そうだろ! これからよろしくな、翔」
「うん。よろしくね、アユム」
呼ばれた名前は初めての響きで、なんだかむず痒い気持ちになった。
畳む
九日目¦寂しそうなやつ
主な人物:上空明日翔・天海深月
意味が分からない、と思う。
ちょっと不思議な力が使えるからって神様だなんて祀られて、周りがぜんぶ変な宗教みたいになっている僕の傍には、まともなやつは近寄らない。
僕だって近寄りたくない。神様なんか信じてないし、特別に僕が神様だとも思ってないし、じゃあ、だとしたら、やっぱりこいつはどこかおかしいんだろうなと思う。
「アンタさ」
「ん?」
友達なんか、沢山いるだろうに。今日もそいつは僕の傍まで平然と来ているし、そいつが喋りたいことを次から次に話していく。
今は、テストの点が悪かった、とか、そういう話だったと思う。一通り聞き終えてから、僕は口を開いた。
「……、友達、たくさんいるんじゃないの」
「? そりゃもちろん、たくさんいるぜ」
「じゃあそっちに行ったらいいじゃん。僕じゃなくて良いんじゃないの」
きょとん、とした顔をしたそいつは、
「友達が寂しそうにしてたら声掛けるだろ」
そんなことを、当然のように言ってのけた。
「寂しそうに見えるの」
「違うか?」
大きな溜め息が出た。
「ほっといてもらった方が、うるさくなくて助かるんだけどな」
「あ! 俺うるさいってよく言われる~! でもほら、やっぱり楽しいじゃん。人と喋るのってさ」
何も気にせず「でさ、」と話を変えたそいつに頭を抱えたくなる。ふい、と視線をそらして窓の外を見た。
寂しいのか。僕は。
それが否定できなかったことが悔しくて、見透かされていたみたいで腹立たしくて、しばらくそいつの顔を見れなかった。
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十日目¦普通とは
主な人物:上空明日翔・天海深月
「お前、なんでアイツに毎日話しかけてんの?」
友人にそう聞かれた。
なんで、と言われると友達になりたいから。それにもなんでと聞かれたら、……なんでだろう。首を傾げてしまった。
「神様だとかなんだとか、俺にはよくわかんねえけど、アイツの周り異常だよ。だから、程々にしとけよ」
好奇心は身を滅ぼすって言うだろ、とその友人は指を立てて俺に言った。
帰り道。特別近くに住む友達も居ない俺は、1人でその道を歩いていく。
別に。
別に、俺と何ら変わらない。本人は至って、普通の子供だろうに。
あいつの周りが異常だと言うのなら、俺の周りは異常では無く、普通だとでも言うのだろうか。
それを言うには、俺も、友人も、あいつも、お互いのことを知らなさすぎるんじゃないのか。
そんなことを思いながら、帰りたくもない家のドアを開け、ただいま、と親に声をかけるのだった。
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十一日目¦どうか祈りが届きますように
主な人物:曾根崎獅道・???
こつん、靴音がして、ちょうどコーヒーを飲み終えた曾根崎は顔を上げた。
一人の少女が立っていた。真っ直ぐ見据える視線は、あなたに用があるのだと訴えていた。
「こんにちは」
「……どうも」
ぺこ、と頭を軽く下げ、薄く残った既視感の糸を辿る。
「あのひとの……愛海が最期に出会った人だって聞いた」
その言葉を聞いて、ハッキリと思い出す。……ああ、黒瀬の。
「愛海、なんで死んじゃったの? 誰も私には教えてくれないの。……きっとそれも、愛海の意思なんだと思うけど」
中身の入ってないコーヒーを飲むふりをして、誤魔化す。……どうしたものだろうか。
何かを言おうか。何を言おうにも黒瀬の言葉が頭をよぎって、声が止まる。
そうして1人ぐるぐるとしている俺を怪訝そうに眺めた彼女は、なに、と少し固い声で言った。
「あなたも答えられないの」
「……黒瀬に言われた」
するり、と言葉が出た。そのまま、真っ直ぐ少女を見つめた。
「警察って言ったって、資料上で見る、極わずかな分しか分かってないんだって」
「俺は、あいつのことを何も知らない。だから、あんたになにか伝えても、全部お門違いな気がする」
「……そう、」
少女は目を伏せた。少し瞳が揺らいで、それでも、目を閉じ、気を強く保つようにまっすぐあなたを見る。
似ている。
「……そっか。確かに愛海が言いそうな事だよ。私も、愛海のこと、分かっていたつもりだったのかもね」
「悔しいな。……真実を掴み取りたくても、もう本人が居ないんだもの」
無意識のうちに、拳に力が入った。
「……まあ、あなたに言っても仕方ないのは、分かってる。独り言だから、全部忘れていいよ」
「……待て」
勝手に口が動いた。何かを、言わずにはいられなかった。
「これも、独り言だが。黒瀬はたぶん、あんたのことが大事だったんだと思う。いや、……わからん。俺には何も分からんのだろうが、……黒瀬が聞いたら怒りそうだな。聞かなかったことにしてくれ。」
驚いたような表情の少女は、安堵したように笑った。
「……そう、そうね」
「痛いくらいに大切にされていたことは、知ってるの。でも、ふふ、そうね。」
「最期に愛海が会ったのが貴方で良かった。」
「あの人が、そうして案じてもらえているなら、確かに誰かが、あの人の想いを、心の淵を少しでも知ってくれていたなら、良かった……。」
「……ごめんなさい。ありがとう。私も、彼女のことを大切にしていたから。引きずってでも生きていくことにするわ。」
綺麗に笑う彼女が、そう言って踵を返した。
持っていた缶コーヒーのゴミをゴミ箱に投げ入れて、大きな溜め息をついた。
それでも。
俺が彼女に何を思うにも、鼻で笑われて終わるんだろうな。
そんなことを考えながら、仕事へと戻ることにした。
畳む
十二日目¦天使も悪魔もいなかった
主な人物:???
赤いものを見ると、あなたのドレスを思い出す。
そう言えば、貴方はきっと呆れたように笑うのだろうと思う。
私には分からなくて良い。そう言った愛海の言葉通り、彼女の死のほとんどの概要は私に知らされることは無かった。
それがすごく悔しくて、自分の足で特定しようとしてみたけど、それも結局、何にもならなかった。
だけどね、愛海。もういいの。
墓に花を供えて、手を合わせる。
私、あなたが好きだった。私にはそれだけで十分だったのかもしれない。
あなたは、私を愛してくれていたけど、だけど、だから、踏み込まれたくなかったのね。
そっと目を伏せた。
だけど、そんなのは酷い話ではないかしら。
あなたがそういう人であったのは、知っていたつもりだった。知っていて、好きだった、つもりなのに。私もあなたと対等にはなれなかったのね。
ごめんなさい、愛しかったひと。
私、あなたを引き摺って歩くことにする。最大限幸せになってみせるわ。
あなたなら、そう言うのでしょうから。
畳む
十三日目¦あなたの手を汚したかったわけじゃない
主な人物:鳥羽朔賭・鳥羽咲百合
教会。昔、自分が育った家は、今も大して変わらずそこに建っている。
扉を開けばいつも通り血を分けた姉が居るのだろうし、そこで姉は愛想でも振り撒いているのだろうと思う。
そんな大それた人間でもないくせに、やめてしまえば楽なのに。
「よう」
声をかければ、明らかに警戒した表情でこちらを振り向いた。
「……朔賭」
それに分かりやすくため息をついて、両手を上にあげながら近づく。
「まだ迷える子羊でも探して助けてんの? もう諦めたら良いのに。全部自己満だって分かってんだろ? それに、」
息をついた。
「どうせ無理だよ。全部救うなんてさ」
真っ直ぐこちらを見据えてくる姉の瞳に強く刻まれた警戒心。あーあ、嫌われてんな、と思いながらやれやれと肩を竦めた。
「……って、何度言ってもわかんねえのか。敬虔な信徒サマには」
姉は、無言でこちらを見、一言も声を発しようとしない。お人形遊びをしに来たわけじゃないんだけどな、と思いながらため息をついた。
「……はあ、何その態度。俺とは喋るだけ無駄ってこと? 悲しいな。こんなに心配してやってんのにさ」
そうして煽ってみても、こちらを探るような視線が返ってくるのみだった。
今回も、……いや、これは。もう、無理なのかもしれない。そんなことを冷静な自分が考えたが、とにかく機嫌は最高に悪かった。物分りの悪い、馬鹿な姉。そう頭で悪態を着くことでそれを発散しようとしたが、それもうまくいかなかった。
「……そうかよ」
そのまま視線を逸らして出口に向かっていく。
それでも姉は、最後まで俺と喋ろうとはしなかった。
「……ほんとうは、」
ぽつり。誰もいなくなった教会に声が響いた。
声は、続く。
神様なんて信じてない。だから、全部私が救えたら、と思ってる。
……だからね、私が神様になるって決めたの。
あなたにとってはそんな柄でも無いかもしれないけど。あなただって、私を全部知ってるわけじゃないでしょ。
目を伏せた。
馬鹿馬鹿しいと思うなら思えば良いよ。でも、
声が詰まった。息を吐いて、決意するように音を吐き出す。
わたしは。
あなたの事も救うつもりよ。
……朔賭。
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十四日目¦面倒な事に変わりは無いけど
主な人物:和歌月泉・欠月牙狼
たまたま夜遅くまで勉強していたものだから、何もかもをほっぽり出して寝てしまった。
そうして、朝起きたら髪の毛がとんでもないことになっている、なんて日が、立て続けに続いた。
どうしたもんかな、とあくびを噛み殺しながら思案する。別に伸ばしているのは頻繁に切らなきゃいけないのが面倒だからというだけだし、いっそテスト期間中は短めに切ってもらおうかな。
思い立ったが吉日、休みのうちに美容院の予約をして、ぱぱっと短くしたのが、昨日。
月曜日。学校に行くために支度をして、いつも通り恋人を迎えに行ったら、髪を見るなり眉をひそめられた。
「……何かあったのか?」
「なんでそんな反応なのさ……」
髪なんか短くても長くてもそんな変わらないだろうに。短くても似合うって言ってくれるかと思った、と少しむくれてみた。
「あ~、いや、似合うとは思うんだが……、ううん」
「……でしょ、似合うなら良くない?」
「いや、泉が良いなら良いんだが……」
「何、はっきり言いなよ。」
うぐ。もにょもにょと言葉を選ぶ様子の恋人に、今度がこちらが眉をしかめると、ガシガシと頭をかいた牙狼くんは「笑うなよ」と前置いてから、
「綺麗な髪だったから、勿体無いなと思っただけだ!」
きょとん。ぱちくり。そんな音が響いたような、予想外の言葉に、時間をかけてその言葉を噛み砕いて、笑わずにはいられなかった。
「あはは!」
「あ、おい! 笑うなっ」
「だって、そっか、そんなに俺の髪好きだったんだ?」
「……」
「じゃあ、また伸ばそっかな。」
もとよりテスト期間の間だけだしね。とつけ加えて、軽く理由を話せば、牙狼くんはそんなことだったのかと項垂れた。
心配をかけているなあ、と思いながら自分の髪を触る。
いつもより軽くて楽な髪を、初めて少し惜しく思った。
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十五日目¦十九日目、夜、暗闇
塔葬の国ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:猫田心音
俺が決めたことだから。
誰よりも先に俺が決めた。こうなることも予測した上で、彼らを見捨てることを選択したのは、俺だった。
だから、俺が一番に、腹を括るべきだった。
「選んだのは俺たちだ、……行こっか!」
そう言った時の声は震えていなかっただろうか。作った笑顔は上手くできていただろうか。今の俺に確かめる術はなく、確かめたところで何にもならない。
どれだけ慣れがあったとしても、人の命を、自分の手で。何度考えても恐ろしいことだ。
それでも。……それでも。
それをやらねば、この島に居るほとんどの人間の命は無いものとなる。
くそったれだ。
それでも、誰かがやらねばやらないことなのだ。
「嫌な島ですね」
不意に、そんな声が落ちた。
「……そうだね」
それに同意を示しながら、だけど、と、思考を巡らせる。
俺で良かった。
あの子を指名するのも、あの子を殺すのも、全部、俺ができることで良かった。
俺でさえ。俺でさえ、あの子を指名する表情はきっと固まっていたし、俺でさえ、注射器を持つ手は震えていたし、ミツオさんが乱入するまで、注射を打てなかった。
優しい、一時的でも世帯となった彼らに、そんなことをさせなくて、良かった。それが出来る俺で良かった。
それだけが今、俺の誇りだった。
本当は、と、そこまで思考が動き始めて、慌てて止めた。
俺がここで折れてどうするんだ。
まだやるべきことは残っている。こんな、こんなことを、もう二度とさせないために、この島を。
そんなことを考えながら目を閉じた。
二人に気を使ってやれるほどの気力は、残っていなかった。
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ここから散文
キュートアグレッション
主な人物:特になし
「私を殺したいの?」
そう言って、不気味なほど綺麗に笑った彼女は、ぐいと距離を詰めた。そのまま俺が手に持っている銃を左胸に当てて、「どうぞ」と囁いてみせた。
「な……っ」
「殺したいんでしょう?」
まさか撃てないだなんて言わないわよね。変わらず綺麗に微笑むその人を、そう、確かにその人を殺すことは、悲願で、喉から手が出るほど、喜ばしいことなのに、どうして、
どうしてこの人は、こんなに動じないんだ。
「ほら、早くしないと、私の愛しい番犬たちがあなたを殺しても知らないわ」
ゾッと背筋が凍った。恐ろしい。人間であるはずのその人が、なにか別の、化け物のように思えた。
ああ、ここまでしても、自分はこの人に傷一つ付けられない。
それを悟った時、頭に鈍い衝撃が届いて、そのまま俺の視界は閉ざされた。
最期に認識できたのは、その人の、薄く細められた美しく光る瞳と、その口が、「だから言ったのに、」と動いたことだった。
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なんだか違う人みたいだった
主な人物:上空明日翔、天海深月
「……い、おい」
控えめな声。揺さぶられて目が覚めた。
呆れたような顔をしたそいつと目が合う。いつの間に寝ていたんだろうか。
「……次、移動教室だけど。」
「ああ……おはよう、起こしてくれたの」
「誰も起こしてやんないみたいだったからね。友達100人作ったんじゃなかったの」
ふい、とそっぽを向き、じゃあ、と歩き出したそいつの腕を掴む。
何故かは、分からない。ただ、そういう気分だっただけ、で。
「午後、サボんねえ?」
「……は?」
ぱちくり、と大きな目を瞬かせて、そいつは思考を巡らせているみたいだったから、
「だめか?」
と、ひと押し。
「……優等生の肩書きに傷がついたらどうしてくれんの。」
「え〜、困るな。俺も一応優等生なんだけど……まあ、そしたら全部俺のせいにしていいからさ。」
「……」
そうすれば、簡単に押されてくれるのだから、優しいのかちょろいのか、分からない。
「1時間だけなら」
と言ったそいつににんまりと笑って、よし、と立ち上がり手を引く。
ただ、普通の子供みたいに遊びたかった。
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やがて鬼と成る
かいぶつたちとマホラカルトネタバレあり 現行未通過×
主な人物:沙華祈
ほら、歩けるだろう。そう言って急かしてくる大人の声を聞きながら、せめてゆっくり歩いていく。
俺は、死刑囚だ。死刑囚、だった。
世界の全部が嫌になった。だから、全部壊した。そしたら世界の外の大人たちは、あんまりにも俺が黙っているものだから、全部を俺が悪いということにした。
ざまあみろ、と思う。お前たちも結局は人間で、正しいことなんてひとつも行えやしない。
結局は、同じ穴の狢だ。
ドアを開け、扉の向こうを見る。
そこに立っていたのは、痩せた、今にも死にそうな雰囲気の男性。
「この方が、お前を引き取るんだそうだ。」
「……そう」
興味も無かったので、視線を逸らした。睨む警察様をその人は制して、そこからは淡々と手続きが進んでいるようだった。
死刑囚であるので、表向きは死んでいることにしてください。だとか、そういう話を半ば無理矢理聞かされて、難しい(お互いに良い感情は持っていないのだろう)会話が眼前で行われて、そうして、気づけば引き渡されていた。
「ねえ」
「なにかな。」
帰り道、と言っていいのかも定かじゃない。車でどこかに連れていかれながら、その人が特に何も喋らないもんだから、声をかけた。
「俺が、さ。今ここであんたを殺すとか、思わないの」
「おや。そんな元気が君にあるとも思えないけどな、そのつもりなの?」
別にそんなつもりでは無いので首を横に振った。そうしたら、そうだろ? と一言返されて、そのまま沈黙が続いた。
ただ、不思議な時間だった。
そうして、静かな時間をしばらく過ごし、車はどこかの店の駐車場に停められた。
「そうだ。君は今日からその名前じゃなくなる。具体的に言うと、君を組織に入れます。その間は、コードネームで生活してもらうよ。」
「コードネーム」
「そう。君のことは、戦力担当として連れてきたから。『鬼』だなんてどう? かっこいいでしょ」
「……」
あんまり真面目にそう思ってもなさそうな口調で言うもんだから、適当な言葉を吐いているようにも思えた。
「ま、だからそうやって名乗ってね。別に偽名であればなんでもいいけれど……そうだ、プライベートは君が好きなように動けるよう手配しよう。それでいいね?」
「……別に、なんでもいい。」
「そう?」
「……」
じ、とその人を見た。その人はじ、とこちらを見返してくるから、嫌になって視線を逸らした。
「俺は、その……組織? とやらに、入るなんて決めてないけど」
「ああ、そうだったね。まあゆっくり考えてくれればいいさ、最も、君に拒否権はないのだけど。でもほら、悩む時間は与えてあげられる……予定、だから。ゆっくり覚悟を決めてよ」
「……」
じゃあ早速、組織のメンバーに挨拶に行こう、と、幽霊を名乗るその人は言った。
とりあえず車から降りて、店の扉のドアに手をかけた幽霊の方を見て、再び声をかける。
「……ただの戦力担当なら、死刑囚だった身じゃなくても良かったんじゃない。わざわざこうやって引き抜く程、俺が必要なの?」
うーん、と困ったように笑った幽霊は、改めてこちらを見やった。
「まあ、そうだね。君が必要だ。」
「……君でなくても良かった、なんて嘘は良くないね。君だから引き抜いたんだ。」
そう言ってから、幽霊は改めてドアを開く。
特になんの変哲もない、俺にとっての日常の続きだと言うのに、何かが変わるような気がして、少し落ち着かない気持ちでドアの向こうに歩みを進めた。
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夢心地
主な人物:椿・楸
「ヒサギ、なんてどう?」
「はあ?」
ある日、ある時、ある任務で。自分に復讐すると息巻いて機会を狙い続けている彼を連れ回していた時。ふと思い出したように椿は言った。
「名前だよ名前、君、本名だって教えてくれないだろ? まあ知りたい訳でもないから良いのだけど、そのまま何も無いのは僕にとってとても不便だ。だからさ、どう?」
「……どうって」
得意げな顔をして、ついさっき人の命を奪った得物――――ナイフを手持ち無沙汰に回しながら、椿は続ける。
「木へんに秋で楸。花言葉は澄んだ心! あははっ、ほら、君にピッタリだろ?」
「……バカにしてるのか」
「やだなあ、褒めたじゃないか。心が綺麗なのは良いことだと思うけれど?」
「……お前に褒められたって嬉しくない。」
不機嫌さを隠さずそう言っても、特に、椿には怯む理由がなかった。
はは、といつも通りを崩さず笑っているのに腹立って舌打ちを一つ。それでもそんなことお構い無しと言わんばかりだ。
「そりゃそうだろうね。……ま、君がどれだけ嫌だと言っても、もう僕が決めたことだ。君には今度から楸と名乗ってもらうよ、分かったね。楸?」
「……」
ぎろ、と椿を睨みつけて、たった今楸と呼ばれた青年は、震える手を握りしめその場を立ち去ることを選んだらしい。
どうせ逆らえず従うのに、椿の言葉にいちいち反抗してみせるその姿勢がお気に入りだった。随分と、可愛らしいことだ。
ひとまず、と自分の足元を見る。白の面積が多い自身の服は特に汚れなかったが、床に落ちた死体やその痕跡は片付けねばならなかった。
痛ましいことだけれど、必要な犠牲だった。
テキパキとその場を片付けて、さっさとその場を後にすることにした。
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全部無駄になれば良い
主な人物:椿・楸
「殺してやる!」
そう言って知らない少年はナイフを椿に向けた。それを軽々と交わせば、そのまま地面へと倒れ込む。
あーあ、面倒だなあ。そんなことを思いながら、椿はにこやかな笑顔を彼に向けた。
「……君は誰? 残念だけれど、僕は殺した人間の顔なんかわざわざ覚えていないものでね。復讐だと言うのなら、愚かなことはやめた方が良いよ。」
「なっ……うるさい! 死ね!」
また交わす。はあ、とため息をついて椿は体制を崩したその人へと距離を詰めた。少年は、それにぎょっとして目を瞑った。自分も殺されるのかと勘違いしたのだろうか、全く馬鹿馬鹿しい。
その人の手を掴み、ナイフを自分の首筋へと持ってくる。そのタイミングで、恐る恐ると目を開けた彼は、愕然とした顔でこちらを見た。
「どうしたんだい。僕を殺したいのだろう?ほら、この手に少し力を込めれば僕は死ぬよ。――まさか、本当は殺す覚悟なんてありませんでした〜……なんて、言わないよね?」
はくり。少年の口が動く。
よく、知った色をしていた。彼の瞳に覚悟の色なんて無く、ただそこにあるのは恐怖と動揺だった。
「あはは、ほら、愚かだったと思わない?人は感情のままに動くべきじゃない、覚えておくと良いさ」
正義のために人を殺してきた。覚悟を決めたのは、もう覚えていない程過去の話だ。だから、椿にはもう、理解ができない。
「ほら、最後のチャンスだよ。僕を殺してみる?」
君なんかにできるとは到底思えないけれど。心の中でそう呟いて、震える手を感じながら、そっと目を瞑った。
――――銃声。
目の前の少年がばたりと倒れた。代わりに楸が現れたと思えば、そのまま照準をこちらに合わせる。どうやら随分頭に血が上っているようだった。
「あれ、楸くん。顔色が悪いよ、どうしちゃったの? ……ああ、僕が本当に死ぬとでも思ってビックリしちゃった?」
椿がわざとらしく問えば、楸は照準を合わせたまま叫んだ。
「お前っ、俺以外の誰かに殺されたら絶対許さないからな!」
「……ふふっ、あはは!」
「なにがおかしい……!」
睨みつけても怯みもしない。本当に引き金を引いてやろうかと楸は思ったが、結局指先に力は入れなかった。
「許すも許さないもないだろ、僕の命はずっと僕の手中にあるわけで、生きるのも死ぬのも、選択権はず〜っと、僕の手にある。」
そう、君が弱いから。心底楽しそうに付け足さられた言葉にイラついて、でも結局殺せていないのは事実だった。
「君だって、彼だって、奪う側に立つ覚悟どころか、人を殺す覚悟だってま〜ったく決まってないだろうに! あはは! 今の君を見たらご家族はなんて言うのかな〜! せっかく唯一生き伸びたというのにね。可哀想に!」
そう喋るのと同時、距離を詰められたと思えば銃を足で蹴り飛ばされ、それを椿は奪い取った。
別に今更物珍しくもないだろうに、まじまじと銃を観察するのを、楸は黙って見ていることしかできなかった。
「僕が先に他の誰かに殺されないように。もしくは、殺されても良いように? あははっ、せいぜい頑張ってくれよ、楸くん。」
椿は終始楽しそうな口調を崩さぬまま、銃を投げ返し、その場を立ち去った。
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これからのために、話をしよう
かいぶつたちとマホラカルトネタバレあり 現行未通過×
主な人物:NPC・鬼・魔女を中心に組織の全員
「仕方ないじゃないか。おかげで君は守れたのだし、そう思うと、安い犠牲だっただろう?」
だから、納得しなさい。
それを聞いた瞬間、鬼の中の何かが切れる音がした。
「分かった。アンタがそこまで言うんだったら俺にだって考えがあるよ。……せいぜい爪でも噛みながら、自分の命の重さでも思い知ればいいんじゃない?」
その時、自分はどんな表情を浮かべていたのか。
呆れたような顔をしたままの幽霊が少し目を見開いたのを見たがらただそれだけを伝えた後、外へと飛び出し、しばらく走った。
その場にあったのが、穏やかな感情でなかったのは確かだった。
・
・
・
「……それからずっと、鬼殿が行方不明、と」
「そう。」
簡潔にまとめた狼の言葉に、幽霊が頷く。不安そうな天使が幽霊を見た。
「鬼くんは無事なのでしょうか?」
「まあ、あの子ならどこかで元気にやってそうだとは思うけど? 悪魔さんの件もあるし、裏切りと断定するには早いんじゃないかしら。」
あなたの子供でしょう、と付け足された魔女の言葉に苦い顔をした幽霊は、だからこそだよ、と全員を見た。
「必ず、あの子を見つけ出して欲しいんだ。僕の見てないところで、危険な目にあってたらと思うと……」
そう肩を落とした幽霊の顔は確かにやつれていて、目の隈を化粧で隠しているのも、組織の誰も――――特に初期メンバー3人――――が察していた。
「いつ助けを求めてくるんだとは思ってたけどよ、こんな早ェとは思わなんだ、なあ? えーっと……狼。」
「アナタはそろそろ慣れてくださいよ。……でもまあ、そうですね。考えたくもありませんが、億が一裏切りであった場合が怖いので。捜索するのはワタクシも賛成ですよ。」
「僕も賛成なのです! 鬼くんが危険な目にあってたら大変! そうですよね、人魚ちゃん!」
「……おに、ゆうれい、けんか? ……マアナ、なかなおり、てつだう」
「……だそうよ、良いんじゃないかしら」
全員の意見が出揃ってようやく安心したような顔をした幽霊は、テキパキと指示を出し、よろしく頼むよ、と言ってその場を解散とした。
・
それからしばらく、狼のツテを使っても、魔女のハッキング技術を使っても鬼は見つからなかった。
ここまで掴めなくなるものだろうか。まさか、本当に……と、幽霊は焦りに焦っていたが、時間は刻々とすぎていく。
普段は指揮をする立場の幽霊が、自身も前線に出て積極的に探そうとするものだから、組織の全員はそのサポートに回ることにした。
「今日も、見つかりませんでしたね」
「なんの痕跡もなかったのです……」
「……スゥ、」
不安そうな天使の手をマアナが握る。それを眺めてから、魔女は幽霊の方を見た。
「そろそろ打ち切っても良いんじゃないかしら。ここまで姿を表さないんだから、組織が嫌になって逃げている、なんて可能性も無いわけじゃないわ」
あなたが嫌になって、と、真っ直ぐ言葉を出さなかったのは、幽霊の相応の行いを知っていたからだった。
「……そう、……そう、だね」
「幽霊、」
悪魔がなにか気遣う言葉をかけようとして、それを人魚が遮った。
「マアナはスウといっしょだから、ここ。おにも、ここがいいならかえってくる。おうちにかえってくるなら、かえってくるよ」
いやに真っ直ぐな目だった。それに頷いた悪魔は、改めて幽霊に向き直る。
「きっと大丈夫だ、鬼を信じようぜ。……まあ、帰ってくるかどうかは、お前次第かもしれねえけどよ」
「……あれ?」
ふと、天使が声を上げた。その視線の先には、彼が元いたという、孤児院がある。
その庭に、一人のシスターが立っている。その向こうに、見知った影があった。
幽霊が必死になって探している人だった。
「っ、祈!」
そう叫んで走り出す。息が苦しくても構わなかった。
その声でこちらに気づいた鬼は、シスターに別れを告げた後、教会の出口で立ち止まって幽霊を待った。その顔には、驚く程に、表情が無かった。
ああ、あれは本気で怒っている。
他の全員はそれを肌で感じ取ったが、幽霊には、そんなことに構っていられる余裕はないようだった。
「……っはあ、はあ、……よ、かった、生きてるね!? 怪我は、……どこも、」
「……なんで?」
冷たい音が、落ちる。
どこまでも冷えきった目に射抜かれて、流石の幽霊も何も言えなくなった。
「何、今更父親面すんのやめてよ。俺のこと、置いていける程どうでも良かったんでしょ。何?形だけでもみたいな? ……別にそういうの、いらないけどな。」
「鬼殿、」
鋭い言葉が放たれる。正しく言葉のナイフだった。狼が止めかけたのを、鬼は視線だけで制した。
「……、祈、」
「無事だよ。ご心配どーも。でも組織には帰らない、これは裏切りだと捉えてもらっても良いよ。申し訳ないけど、」
すう、と鬼は息を吸った。
「アンタの居ない組織には帰らない。たとえそれが、可能性の話だとしても」
鬼は、そう言って真っ直ぐ幽霊を見つめた後、あっさりと踵を返した。
話し合いの余地なんてなかった。ハッキリと傷つけられた幽霊は、その後しばらく何も喋らなかった。
・
・
「幽霊さん。」
「……入ってくるなと、言ったはずだけれど」
呆然としていた幽霊が魔女を睨む。その視線を受け流して、魔女は部屋へとズカズカと入り込んだ。
「お邪魔するわね。いえ、鬼くんがあんまりにも言い過ぎるものだから。……私、実は最初から全部知ってるの」
「……は、」
目を白黒とさせている幽霊を他所に、魔女は話を続ける。
「あんまりにあなたが可哀想なものだから、さすがに手を出しておこうかしら、ってね。彼も、貴方が傷ついたままなのは、本望じゃないでしょうから」
「……どういうこと」
「彼がなぜ怒っていたか分かる? 分からないかもしれないわね。貴方があまりに自分を大事にしないものだから、よ。」
「……」
「貴方、早とちりで鬼くんを庇ったでしょう。彼は避ける体制をとっていたし、言ってしまえば必要のない援護だったわ。それで大怪我を負った貴方は、『鬼を守れるなら安い犠牲だった』と言った。合ってるかしら。」
何も言えなくなった幽霊は黙って頷いた。
「その後、鬼くんは私に連絡を寄越した。とある依頼と一緒にね。……彼がなんて言ってたか、教えてあげるから、ヒントにでもしなさい」
どこから話せば良いのかしら、と、呆れたように魔女は頬に手を当てた。
・
「失踪したいの?」
「そう。」
「それはまた、どうして。」
とあるカフェ。たまたま出会った鬼と魔女は、2人でカフェに入り、オシャレなメニューとともに話をする。
「幽霊がさ、自分の命の価値を分かってないみたいだから。……分かってほしくて」
それには同意するけれど、と、魔女は困った顔をした。あまりにも、情報が足りていなかった。
「……幽霊、今大怪我してるでしょ。あれ、必要な犠牲だったと思う? ……安い犠牲だったかな。」
「いいえ。あれは必要な犠牲ではなかったわ、幽霊さん、貴方のこととなると周りが見えなくなっちゃうから」
「うん。」
「……安い犠牲、っていうのは、幽霊さんが?」
「そう」
なるほど、と魔女は頷いた。
「それがどうして失踪に繋がるのかしら。」
「……」
一息置く。底に残ったコーヒーを飲み干して、鬼は続けた。
「幽霊は、俺のことが一番大事でしょ?幽霊の命の価値がどうしても軽いって言うなら、俺の命も足して考えてもらおうと思ってさ。」
「……なるほど」
「まあ、実際どうするかは別として、だよ。……いざお前が死んだら、俺だって追いかけるかもしれないんだぞ、って脅しておきたい。少なくとも、1度死ぬ覚悟を決めた身だし、俺はそれくらい簡単に出来る。っていうのを、嫌でも分かってもらえるかなって」
「危ない目にわざと合うってこと?」
魔女は眉を顰めた。それなら乗る訳にはいかない。断りを入れようとしたあたりで、鬼が遮る。
「いや、俺はプチ旅行でも楽しんでくるつもりだよ。危ない目には合わない。だから、見つからないように隠して欲しいんだ。最悪、幽霊にバレないんだったら誰に話しても良いから。」
心配されるだろうしね、と眉を下げて鬼は笑ったが、決意は固いようだった。依頼料がいるなら払うよ、と付け足されて、魔女は少し考えた。
確かに、それなら幽霊にも少しは分かってもらえるかもしれない。
「仕方ないわね……止めても聞かないのでしょうし。それなら、依頼料の話をしましょうか。」
「はは、ありがとう」
そう言って、安心したように鬼は笑った。
・
「……これが、この事件の真相。ここから貴方がどんな答えを出して、どんなふうに彼と接するかは、自分で決めなさい。連絡は私が間に入るから。」
「……」
それじゃあ、と出ていった魔女の背中を眺めながら、鬼の言葉を反芻する。
『俺のこと、置いていける程どうでも良かったんでしょ。』
彼は、そう言っていた。
「まさか、」
僕は、もしかしなくても、あの子を、傷つけた?
幽霊は、真っ青になって顔を上げた。慌てて魔女の端末に連絡を入れ、繋がった瞬間に相手を確認することも無く捲し立てる。
「っ、魔女!頼む、鬼と……祈と話をさせて欲しい。今度は、ちゃんと彼の話も聞くから」
だから、と続く言葉の間に、魔女は呆れたようにため息をついた。
『貸し、ってことにしといてあげるわ。』
・
・
・
狼と悪魔と顔を合わせ、天使とマアナと顔を合わせ、迷惑と心配をかけてごめんね、と謝罪してから、鬼はようやく幽霊の元へと向かうことにした。
久々に会った幽霊は、なんだかやつれていた。……それだけ俺の心配が出来て、俺を大切に出来るのだから、同じように自分のことを大切にしてくらたら良いのに、と、すこしのやるせなさが湧いて出る。
「……とりあえず、入ってよ」
「ここじゃダメなわけ?」
「逃げられたら困る」
「アンタの態度次第だよ」
ぐ、と黙りこんだ幽霊は、諦めて鬼の方へと向き直った。
そのまま頭を下げる。
「ごめん。……置いていけるほど、なんて、そんなことないんだ。ただ、僕は……君が死ぬ瞬間なんて、どうしても見たくなかった、ただそれだけなんだ。」
「うん、知ってるよ。……で?」
どこまでも声は冷たかった。
「だから、安い犠牲だったんだっけ?」
「っ違う!」
顔を上げた幽霊は、鬼の肩を掴んだ。鬼は、振り払うこともせずに、ただまっすぐ幽霊を見ている。
「……ごめん、分からなかった。僕は、1度君を捨てた身だ。僕を恨んでいる、と言われた方が余程しっくりくるくらい、酷い人間だ。だから、だから、君の大切な組織の中に、僕が入ってるだなんて、夢にも思わなかったんだ」
「……はあ。まあ、それも知ってる。んで?」
だけど、と幽霊は必死になって言葉を紡ぐ。
「だけど、君は言っただろう。僕の居ない組織には帰らない、と。……たとえそれが、可能性の話だとしても」
「……」
一気に喋って上がってしまった息を整えて、それでも幽霊は続けた。
「僕が生きてさえいれば、君はこの組織で、生きて、くれるのかな」
「まだ分かってないの?」
「違う、確認だ。認識の擦り合わせがしたいんだ、頼むよ……。今度は絶対に、ないがしろになんてしないから」
「……ふうん。」
鬼は、少し態度を和らげ、対話に応じた。
「そうだね。アンタが生きる、って意思を見せてくれるんだったら、ひとまずは生きてあげようかな?」
「……そうかい」
幽霊は息を吸い込んだ。酷く緊張しているようだった。鬼はその様子を見ながら目を細め、言葉を待つ。
「それなら、僕はできる限り生きてみせよう。なるべく死なないよう努力すると誓うよ、僕の命にはどうやら、君の命も乗っているらしいからね……」
「……」
ひとつ、瞬きをして、鬼は、仕方がねえな、と笑った。
「俺も、分かって欲しかったとはいえめちゃくちゃ言ったしな。やっぱ傷ついた?」
「そりゃもちろん、しばらく何も考えられないくらいには……」
「はは、ごめんな。」
「いや、もう……良いさ、君が無事でいてくれたんなら、それで」
良かった、と呟く幽霊は、ようやっと安心できる場所を見つけた子供のようだった。思わず頭を撫でてやれば、馬鹿にしてるのかと睨まれた。
それを遠くから眺めていた仲間たちも、ようやく息をついてそれに混じる。
まあ、そんなこんなで今回の件も、これにて一件落着ってことで。
どこまでも突き抜けた晴天は、彼らの目の色をして、
それを見ながら幽霊は、眩しいなあ、と少し目を細めた。
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ろくでもない
幽世常世の満天下ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:燈実 / NPC
拝啓、両親へ。
金がないからと言って愛する息子を売るのは、どうかと思います。
「ほら、お前はまだ動けるだろう。買ってもらえたんだから、働きなさい。」
それに近しい…… いや、もうちょっと荒々しい言葉だったと記憶している。その子どもは大人しく従うばかりで、文句ひとつ垂れなかったが、その足ではもうしばらくしたら歩けなくなるのだろう、というのは一目瞭然だった。
何度も売られて、捨てられた。だからここに来たのだと、先日の夜に語っていた。
ああ、ろくでもないところに来てしまった。
死ぬわけにはいかない。だから、あの子どもを助けてやる訳にも行かなかった。
どうにかして。
どうにかしてこの檻から逃げなければ、人権などは無いに等しい。 ……そんな扱いは、両親だって望んでいないだろう。
不思議と、そんなふうに思った。確証はなかった。それでも、
死にたくなかった。
だから、理由はなんでも良かったのだ。
売人と取引した。どうやらここは地下のようだった。地上の知識はあまり重宝されないが、たまに物好きもいた。なので、地上の知識と引き換えに定期的に檻の外の空気を吸わせてもらうことにした。もちろん、その売人の見張り付きだ。
俺の知ってる範囲。学校で習ったこと。本で読んだこと。たまに空想も織りまぜて、そいつに話して聞かせた。顔も良くないし、筋力も体力もなかったので、決行の日まで誰かに売られることもなかった。
そろそろお前も処分だな。売人はそう言った。
そうだな、清々する。俺はそう返した。
そう、返して、売人を殴りつけた。ちょうど手枷が嵌っていたので、それで頭を重点的に。
生意気なガキだったと自分でも思う。それでも、その売人は俺にそれなりに情が出来てしまっていたらしかった。
その人は、意地でも声をあげなかった。人を殺すすべなんて知らない、筋力もない無力な子供の精一杯の打撃に、苦しそうにのた打ち回り、長い時間をかけて、息を止めた。
苦しめたかったわけじゃなかった。だけど、そうでもしないとお互いに救われなかった。
この人が生まれ変わったら、地上で、搾取なんてされず、穏やかに暮らせますように。そんな、意味があるかもわからない祈りだけを捧げて、その人の懐から手枷の鍵を盗み出し、そのまま、ゆく宛もなく走った。
誰かにバレたのだろうか。大人たちの怒号が遠くで鳴っていた。でも、それも遠くだったから、獣の鳴き声に聞こえた。
それが恐ろしくてまた走った。走って走って、気づけばネオン街の、どことも言えぬ街だった。
知らない。こんなところは、知らない。
帰らなければならない。どこにだろう? もう分からなかった。
その場で、生きていく理由が無くなった。死にたくない理由も、無くなった。だって、帰れないのだ。
だから、街の隅っこに蹲って、時間が来るのを待った。
飲まず食わずでいれば、いずれ人は死ぬことを知っていた。人攫いにあっても良かった。苦しんで死ぬのだろうな、と悲観しながら、それでもぼう、と虚空を眺めていた。
ふいに、
視界に影がさえぎった。
若い男だった。
「なあお前さん、名前は? こんなところで何をしている。」
「……、知らない人に名前を教えちゃいけないんだ」
「そうか。じゃあ俺から。俺の名前は柳。ほら、名乗ったんだから知らない人じゃないだろ?」
「……、」
わざと生意気な対応をしたのに、その男は困ったように頭をガシガシとかいた。
「ああもう、それなら良いさ。……お前、俺の家に来ないか。」
「……は?」
「ああ、目的なんかは聞いてくれるなよ。気分だ。お前さんを拾いたい。捨てられたんだろう?」
「……、好きにしたらいい」
その男は頷いて、手を差し伸べた。ほら、と伸ばされた手を、俺は取った。
気付けば、それが生きる意味になっていた。そして、
死なない理由も、じきに増えていくことに、なる。
拝啓、両親へ。
愛する息子を売るなんてどうなんだ、とは、思ったが。
なんだかんだ、俺は生きてるから、
気に病むことなく、幸せに暮らしてくれ。
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命令
幽世常世の満天下ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:燈実 / 暁蕾
「暁蕾!」
ガキン。暁蕾の背後でそんな音が鳴って、燈実の薙刀が敵のナイフを弾き飛ばし、そのまままっすぐ追撃。相手は倒れていく。
九朧城で暴れるこまったさんたちの鎮圧。今回の任務は達成した、さあ帰ろう。そんな時のことだった。
「どうもありがとなあ、燈実ちゃん。これは貸し?」
暁蕾は、いつもと変わらぬ笑顔で、そんなことを抜かす。燈実はため息をついた。
「……いや、それは別にいい。それより暁蕾、怪我を見せろ」
「……それは命令?」
「はあ……、命令だ。」
再びのため息。そうしながら、ぴくり、瞼が動いたのを燈実は見逃さなかった。
どうやらこの男はどうにも、この組織でさえ誰のことも信用出来ないらしいかった。
それならそれで好きにしたらいい。お願いを聞かないなら命令をするまでだ。それはそうと、勝手に心配はさせてもらうし、勝手に助けさせてもらう。
半分くらい意地だった。そうしていつか、それが彼のためになると、信じていた。
少し間を開けて、燈実は付け加えた。
「別に、見せるのは俺でなくともいいさ。俺は治療はそんなに得意じゃない。自分で治療できるというならそれでも良いし、他の奴に治療して貰ってもいい。」
「……、どうも。そしたら自分でやるわあ」
「但し、条件がある。」
暁蕾は、警戒するようにこちらを見た。実際は目が合うことはなく、そんな気がするだけだったが。
「その怪我が、来週までに治ってなかったら。強制的に俺が治療をする。分かったな?」
「……なんやの、そんなに心配してくれるん?」
「嫌か?」
暁蕾は黙った。別にこちらの機嫌をめちゃくちゃに損ねてやりたい、なんてつもりではないらしかった。
下手くそな男だ。
何が要因かまでは知らないので、ただぼんやりそう思った。それが彼に対する感想だった。
「お前の周りに今までどんな環境があったのか、俺は全くもって知らないし、お前のことだ。別に話したくもないだろうから、きっとこれからも知らない。だが……、郷に入っては郷に従えだ。俺はお前に対して好きにさせてもらうし、お前も好きにしたらいい。」
すう、と息をつく。
「ただ、必要な命令はする。命令であれば聞くと言ったな? ……その言葉、違えるなよ。」
「……」
それ以上に声は掛けなかった。彼の中で、今贈った言葉が、どんなふうに解釈されて、どんな想定が生まれているのか。燈実にはそんなこと、全く想像もつかなかったが、それでも良いのだ。
1度懐に入れた人間を相手に、気は長い方だった。
だから、分かるまでいくらでも待つつもりであったし、いくらでも伝えるつもりであったし、それまでそばにいる予定であった。この、当時から。
時は流れ、今。
星歩会での暁蕾の言葉をきっかけに、そんなこともあった、とふと思い出して、
長かったなあ、としみじみと実感しながら、それでも少しだけ喜びに浸った。
大きな争いの気配を感じながら、その道中だけはずっと穏やかだった。
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許容範囲と嫌がらせ
主な人物:燈実 / 暁蕾
二次創作 無い話です
「……そういえば」
なんでもない時間。なんでもない日常の、延長線。だらだらとソファで寛ぎながら、ふと、燈実は言葉を漏らした。
「暁蕾は、俺が命令だと言ったらどこまで許すんだ」
「……ええ?」
唐突にぶつけられた疑問に、暁蕾は首を傾げた。どこまで許す。なにを? どこまで、許す……。
「……それは、身体を?」
「……、それでも別に構わないが……」
燈実としては、そういうつもりでは無く、ただ彼の許容範囲を知っておきたいだけだった。だけれど、基本的にガードの固い彼が……身体を? どこまで許してくれるのか否か、だなんて。
面白い話題だと思ってしまった。
それが暁蕾の運の尽きだった。
「……ふむ。じゃあ、どこまで許すんだ?」
「ええ……ってことは、手を繋ぐ、とか、……ハグ、とかやんな……?」
暁蕾は少し動揺した様子でこちらを伺っている。燈実はわざと表情の変化が分からないように光の方向に首を傾げた。
「そうだな? そういうことになる」
「……へえ、燈実ちゃん、そういう趣味あったんや?」
「いや? 全く無い」
「……?」
暁蕾は、ますますわけがわからない、と言った顔でこちらを見ていた。少しだけ自身の口角が上がっているのを感じながら、その後の言葉を促す。
「……、それこそ、今更やない? 知りたいなら、やってみたらええやん。」
「……ほう?」
それは、命令を、ということか。こいつ、墓穴を掘ったな。楽しくなってきてしまった燈実は、少し考える素振りをして、……そうだ、少しだけ意地悪をしよう。
「では、先程言った通り手を繋いだり、ハグをしたりするのを、今ここで出来るか?」
「ええ……ほんとにやんの……? まあええけどな。ほら。」
そ、と手を握り、ぎゅ、と抱きついてくる。じんわりとした体温に混ざって聞こえる心音は、少し緊張しているように思えた。
なるほど、あまり得意では無さそうだ。
「ふむ、ありがとう。それじゃあ……、……いつも撫でられてばかりだから、撫でさせろ、と言ったら?」
「……なんやの? ええけど」
「わかった。」
なるべく彼が怖がらないように、頬を撫でてからそっと手を頭に載せる。よしよし、とそのまま撫でてみれば、少し不服そうな顔をしているのが見えた。なるほど、これは中々。
「……ふ、ありがとう。」
「なあ燈実ちゃん、これなんの時間?」
「なんだと思う?」
変わらずこちらを伺う暁蕾は、それになんの答えも得られないようだった。
「……では、キスをしろ、と言ったら?」
「ええ? なに、どうしたん? ほんとにそういう趣味が……?」
「いや、今回はそういう目的では無いな」
「ええ、……はあ、燈実ちゃんのお遊びには付き合ってられへんなあ」
ため息をついて、燈実の身体を少し押す。そうして部屋を出ていこうとした暁蕾の袖を、「待て」と、ぐい、引っ張った。
「……は、なに」
「暁蕾」
抱き締める。そうして、彼が全く抵抗できないようにしてから、ぐ、と顔を近付ける。目を見開いてこちらを見ていた暁蕾は、自体を察したのか、ぐ、と目を瞑った。
鼻先が当たる。1秒、2秒、……3秒。
少しの怯え。動揺、それと、……覚悟、だろうか。
まじまじと観察していれば、ようやく不思議に思ったのか、暁蕾が目を開いた。
「……せんの?」
「して欲しかったか?」
黙って解放すれば、警戒したようにす、と距離を取られる。それについ笑いが漏れて、それに刺々しくなんや、と返答。
「……いや? 少し意地悪をしたかっただけだ。すまない、実はお前の許容出来る範囲が知りたくてな。こういったもの関連の任務は苦手と見たから、今後は割り振らないようにしよう。他のことについては……、文章にでもまとめて柳さんに渡しておけ。それでは。」
「……は、」
ぱちくり、事態を飲み込むのに時間がかかっているようで、暁蕾はその場で何度か瞬きをした。
その間の燈実といえば、しれっとその場から居なくなっているものだから、暁蕾はその場にある怒りやら、羞恥やら、安堵やら、そんなたくさんの感情を持て余して一日を過ごすこととなるのだった。
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宝物の送り主
主な人物:エルティス・二グリア / ルーカス
どん。
人とぶつかった。まだ小さな、入学してきたばかりの1年生。もちろんこちらからわざわざ注目なんてしていないような、(それぞれの個性の強い子の学園では特に)あまり目立たない女の子だった。
「っあ、」
「……ああ、」
彼女の持っていた小さな袋からバサバサと色々なものが落ちた。
色々なもの――――例えば、年季の入った小さな靴、もう使うこともないような子供向けの指輪、その辺で拾ってきたと言われても納得できる石ころ。
そんなものだ。
「ご、ごめんなさい!」
慌ててそれらを拾い集め始めた彼女に、こちらこそごめん、手伝うよ、なんて在り来りな言葉を掛けてひとつひとつ拾っていく。
きっとこの小さな袋は、彼女にとっての、宝箱だったのだ。
ひとつ。ふたつ。みっつ。
それほど数は多くない、最後のひとつ――――手紙を拾い上げて、その既視感に首を傾げた。
見覚えがある。どこかで。
よくある普通の手紙だ。普通の封筒に、普通に封がされている。
裏を返す。少し汚い字で住所が書いてある。送り主の名前は――――ルーカス。
「あ、あの……?」
そこまで見てから、声を掛けてきた彼女に改めて向き直る。
上から下までまじまじと眺める。その後、手紙を見て、また彼女の顔を見る。彼女は困ったような顔をして首を傾げた。
「それ、返して貰えませんか?」
「……ああ、ごめんね」
彼女に手紙と、その他拾った宝物たちを渡す。ありがとうございました、と頭を下げかけた彼女を引き止めた。
「あのさ、」
息を吸う。すこし、緊張していた。
「その手紙、知らない人から間違いで届かなかった……?」
「……え?」
手紙の送り主は、僕だった。
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今日の分
主な人物:ルスティス・二グリア / ルーカス
「ほらルス、昼ご飯前に "" 今日の分 "" 、終わらせようよ」
ルーカスはそう言って、ポケットから一枚のコインを持ち出した。いやに使い古された、入学時はもっと、ピカピカだったそれ。
「いいだろう」
ルスはそれにこくりと頷いてみせた。
"" 今日の分 "" ――――今日の分の彼らの昼ご飯を、どちらが奢るか。
入学式からしばらく経ち、お互いに友人も少なかった頃。そんな時に気まぐれで持ち掛けたギャンブルが、なんだかんだ、一年も半分以上は過ぎた今日に至るまで続いている。
「今日は負けないぞ〜」
「どうかな、現状で勝ち負けの回数は全部合わせて引き分けなわけだ。どちらが勝ってもおかしくない。勝率は十分にある」
「君、なんだかんだこれを毎日楽しみにしてるよな?」
ピン。綺麗な動作で弾かれたコインは、くるくると宙を舞ってルーカスの手の甲へと落ちる。
「さて、どっちにする?」
「……表」
「よしきた、俺が裏ね」
ごくり。どちらかが息を飲んだ音を合図に、ルーカスはその手を開いて見せた。
――――表。
「あ〜〜!!」
「ふん、これで二百十六勝二百十五敗だな」
「毎回言うけどよく覚えてられるよね〜」
「楽しみにしているからな」
「いや、これは負けたからなんだと思うけど釈然としねえ〜〜」
ともあれ、負けは負けだとルーカスは唸った。
ルスはといえば、そんな軽口を叩きながらも最近お金がピンチなのだと嘆く友人のため、なるべく安く多く食べることの出来るメニューを頭に浮かべているのであった。
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一日目¦隣で眠るあなたの鼓動まで聞こえそう
主な人物:飛鳥井慎也・鬼良稀雷
起きた。伸びをして、欠伸をひとつ、ふと隣にあるぬくもりに気づいて、そちらに目をやる。ああ、そういえば、昨日はホラー映画を見て、それを口実に一緒に寝ようと誘って。
そんな雑な理由でも、仕方がないなと一緒に寝てくれる恋人のことが、ぐうと愛おしくなった。きっとあの時、考えていることは一緒だった。
もう一度横になってみる。その整った顔を眺めていれば、ふと瞼があいた。半分しか開かない瞼、おそらくは薄い視界に自分を捉えた彼は、少し不思議そうな顔をして、そのまま腕が伸びて。ぎゅう、と抱き枕みたいに抱きしめられた。
何事かと問うても、彼はどうやらゆめうつつのようで唸るような返事しか返ってこない。
突然のことでばくばくと心臓が鳴るものだから、それで起こしてしまいそうで、慌てて抑えようと思考を散らす。隣で眠る彼の鼓動まで聞こえそうだった。
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二日目¦今日は君の全てが欲しい
主な人物:和歌月泉・欠月牙狼
「今日はさあ、おうち泊まっても良い?」
いつも通り学校に行って、生徒会の仕事を終えて、帰り道。いつも通り仕事が終わるのを待ってくれた牙狼くんと歩きながら、他愛のない話をする。
「ああ……別に構わない、俺の部屋はちょっと散らかってるかもしれん」
「とか言って、いつも綺麗だと思うけどな」
少し前に同じことを言われて、好奇心で覗いた部屋を思い出す。別に、男子高校生にしては、大変綺麗な部屋だったと思う。そういうとこも好きだけどな、とぼんやり思って、次に出てきた言葉に、あ、と自覚した。
「そう、最近はあまり2人だけの時間を取れていなかったからさ。……今日は牙狼くんの全てが欲しくて」
「……な、」
こんな小っ恥ずかしいラブソングでも歌わないようなことを、バカ正直に思ったのだから仕方がない。
動揺する恋人の手をゆっくり繋いで、ぎゅ、とちからをこめて、しばらく堪能して、それから、上目遣いで一言、「ダメなの?」と言ってしまえば、牙狼くんはなんだかんだ頷いてしまうのだから、本当に優しい人だな、と思う。
「……ダメ、ではない」
「よし! 決まりだね」
赤く染まる彼の手を引っ張って家まで走ろうとすれば、「待て」と呼び止められる。
「なあに?」
首を傾げて問えば、真っ直ぐ俺を見据えて「俺にも欲しい。……泉の、ぜんぶ」なんて、小っ恥ずかしいことを宣うものだから、ああもう、俺まで赤くさせてどうするんだ!
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二日目②¦守られるだけというのは癪なので
主な人物:三角心・キク
「あ~、真っ当に行くとしたら、君を守るためとはいえ、多少の危険がつくモンだし……俺としても、君に危険が迫ることを良しとしたいわけじゃない。」
指をピンと立て、いたずらっぽくキクは笑う。
「だからね、ひとつ提案があるんだ」
「……提案、ですか」
真面目な顔で聞き返した三角にキクは苦笑を返した。
「うん。俺がぜんぶなんとかするから、君は家の中で待機すること。そりゃまあ真っ当な手段ではないんだが、ここまで来たら仕方ねえだろ」
「マネージャーさんを納得させてくれる手段でも考えて待っててくれれば、あっという間に終わる話だ。悪くないだろ?」
「……それは」
三角はぐう、と眉を寄せた。色々言いたいことはあったが、どうせ答えてくれやしないだろうし、それはそのまま飲み込んだ。
少しの沈黙、それでも、と声が落ちた。
「私はアイドルだから、そういうことに関与したってバレたらまずいんです。」
「証拠は残さねえよ」
「いいえ。世の中に完璧なんてないでしょう、それに、万が一バレた時にあなた一人が罪を被るというのなら、それも嫌ですし……」
「……私を守るために、私が戦わなくてどうするんですか?」
「私、何も出来ないお姫様じゃない。なんでもやってみせますよ、キクさん」
にい、と今までに無い表情で笑ってみせた三角の表情と、覚悟と。それに息を飲んで、キクは少し恥ずかしそうに笑った。
「はは、アンタってやっぱカッコ良いよ。」
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三日目¦お前のためにはしてやらない
主な人物:黒瀬愛海
「あ」
「……あ、」
困ったような声が響いた。それに、やってしまった、とでも言いたげな色が重なって、そのまま黒瀬は吸っていた煙草の火を消した。
「ど~も。良い夜ね」
「……そうだね」
会いたかった。それはもちろんそう。だけれど、だけれど、もう二度と会うつもりのない人だった。
「……ねえ、」
ああ、これはめんどくさいな。わざとそれを滲ませながら続きを促す。そうして促してしまうのが良くないのだと、少し昔の彼女の言葉を思い出した。
「私のためだったの」
黒瀬は少し目を伏せて、ふ、と息だけで笑った。
それに不服そうな顔をした彼女を見て、いつも通り、そう、いつも通り笑いながら、
「そんなわけないでしょ」
そう言った。
そう、あれは私のためだった。私の感情だった。決して、決してお前のためなんかでは無く、いや、絶対に、……絶対にお前のせいにはしてやらないのだ。
「あんたには、わかんなくて良いよ」
続けてそう言えば、彼女は諦めたように息をついた。
「愛海ってそればっかり、……私だって木偶の坊じゃないんだよ」
へえ、と大して興味もなさげに言えば、一瞬、悔しそうな表情をした彼女は隠すように黒瀬に背を向けた。
「……私、あなたのことが好きだったよ」
そう言い残して立ち去った。彼女を追うことすらしない黒瀬はそんな出来損ないみたいな告白を、ただ鼻で笑って流した。
「それが何になるって言うんだよ」
どこまでも愚直で、どこまでもお馬鹿で、どこまでも賢い私の大切な君。
私もあなたが大好きだった。そのために、世界が滅んでも良いと思える程。
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四日目¦ただあなたの心をすこし和らげたい
主な人物:箒星蛍
「あ。」
休日。ちょっとしたメイクと帽子で変装をして、ウィンドウショッピングをしていた、帰り道。
たまたま目に止まった雑貨屋の、シックな色の髪飾りを手に取ってまじまじと眺める。
少しくすんだ青から水色の花々たち、アクセントに黄色が入っていて、それはまるで夜空に蛍の光が浮かんでいるような色をしていた。
あまり派手なものは嫌がるかもしれない。いや、これも少し派手だけれど、きっとこれは似合うだろうし、……夏夜さんは、あたしからのプレゼントは無碍には出来ないでしょ。ひとりで勝手に頷いて、それをレジに持ち込んだ。
たまたま、似合いそうだったから買っただけだし、要らなかったら飾ってもらおう。
ついでにお菓子とか買っていったら怒られるかな。最近はあんまり動いていないから、食べないようにしてるけど、今日だけ特別に。
今日は、ちょっとステキなプレゼントを持って会いに行くね。しばらく退屈な毎日だろうしさ。
ステージなんかじゃない、普通の日常で、上機嫌に走っていく彼女は、まるでただ一人の女の子のようで。
暗くなってきた空がひとつ、星を零したことにも気づかずに。ただ、真っ直ぐな想いを抱えていた。
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五日目¦運命とかじゃなくて良い
主な人物:満見葉月
別に俺じゃなくても良いんだろ、とかいうめんどくさい女みたいな言葉に、それはそうだろを返したら、才川が怒った。
そう、だってべつに、世の中の恋人だって最初はただの他人なわけだし、別にそこに居心地が良く収まった人が恋人になるだけで、変わりはいくらでもいるもので。だけど、それはお前にだって言えることで、俺だってお前じゃなくて良いし、お前だって俺じゃなくて良いのだから、そこに理不尽もクソもなくないか?
そんなことをつらつらと喋ったら呆れられた。
だって別に、もうそんな運命だなんてロマンティックなものが信じられるほど子供じゃないし、なにより、そうだからこそ今はお前が良いってとこあるんだけど、それじゃダメなのか。
そう首を傾げたら才川は少し唸って、何かを諦めたように首を横に振られた。
それなりにこいつには色々な感情を置いてると思うんだけど、それはどうしたら伝わるんだろうか。
どれだけ考えても出ないだろうし、一先ずそこは休戦してアイスを食べることにした。
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六日目¦嬉しいな〜って思ったんだよ
主な人物:箒星蛍
世界の全てに忘れ去られる夢をみた。
そう、夢。ただの夢だ。ただ、嫌な現実味に体をふるわせて、父親の元へと向かえばいつも通り。名前を呼んで、おはよう、と声がかかる。
それにおはよう、と返すと、どうした、と首を傾げられた。
「何も無いよ。嫌な夢を見ただけ」
「……そうか」
それ以上は深入りしてこなかった。
父が、蛍に罪悪感と不安を抱いてるのは知っている。色々なことがあったのだし、それは仕方がないと思う。
だから、だけど、あなただってあたしのことを1番に思ってくれていたのに、罪悪感なんて抱く必要はないのに、それをぶつけた日には、親というのはそういうものなのだと言われた。
「……世界から、忘れられる夢だったんだ」
「……」
「ま、ありえない話だけど。嫌な夢見た後って、なんか嫌な感じあるよね」
そう言って笑えば、父は少し難しい顔をしながら、
「……世界から忘れられる夢、」
そう呟いて、顔を上げた。
「……きっとお前程の人間であるのなら、誰もが同じ言葉で口を揃えるんじゃないのか。父さんもそれと同じで、忘れてなんかやらない」
「だから、心配しなくて良い。忘れてもどこかで残るものはあるさ」
「……」
父は、蛍の周りにある非日常のことなんか知らないし、蛍も話す気もないけれど。けれど、だと言うのに、まっすぐそんなことを言ってくるもんだから、蛍は少し気が抜けたように笑った。
「……あたしってやっぱりちゃんとお父さんの元に産まれたんだね」
「どういう意味だ」
チン、とトーストが焼ける音がする。それをお皿に移しながら、とびきりの笑顔で蛍は笑った。
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七日目¦へんなやつ
主な人物:上空明日翔・天海深月
「なあ、お前。ほんとうに神様なの?」
ずっと気になっていたことだった。同じクラスのへんなやつ。聞けば、彼に願ったことは全て叶うらしく、だから神様と呼ばれている。
「……なあに、願い事?」
返事は間を置いて返ってきた。面倒くさそうにこちらを見るその瞳は、普通の人間と同じ。
「いや? 別に。残念だけど、自分の願いは自分で叶えられるのさ」
好奇心だよ、と付け加えると、そいつはぱちくり、と目を瞬かせた。
「なんだその反応」
「いや、別に……。俺に話しかけてくるのなんて、僕の力を宛にしているやつらばかりだから。なんというか……物珍しくて?」
「ふーん。そういうモン?」
「そういうもんだよ、僕の周りはね。」
そうだなあ、と少し考える素振りを見せて、そいつは言う。
「神様とは、ちょっとちがう。」
「へえ。じゃあ何?」
「なんだと思う?」
はぐらかされたな、と思った。別に深入りするほどでもないか、とそれには特に追求せず、少し考える。
どう見ても、人間と同じ身体、人間と同じ言語。そいつの不思議な力を体感したこともなく、体感する予定もない俺にはそこに人間以外の答えも出るはずもなく、首を傾げた。
「俺と同じじゃないか?」
「は?」
「ああ、いや。俺と同じ、普通の人間。男子高校生。アンタの持ってる力のことは知らないけど、だから俺にはそう見えるよ。」
「……ふうん」
へえ、と頷きながらそいつはこちらを見て、
「じゃあ、そういうことだよ。」
そう言った。
「……ふうん。そっか、良かった。」
「良かった?」
俺の言葉に首を傾げたそいつに、今度は俺が上機嫌に人差し指を突き立て、
「俺の友達百人目! 神様はさすがに友達になれないなって思うけど、お前は人間なら俺の友達になれるだろ?」
しばらく俺の立てた指を見て、キョトン、という顔をしたそいつは、ええ、と困惑したような声を上げて、
「君、実は変なやつだろ……?」
「お前それは失礼なやつだろ!」
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八日目¦はじめてのおくりもの
ラブレターフロムロランネタバレあり 現行未通過×
主な人物:晴間翔と天使
「ほら見ろ、これ!」
そう言いながらアユムがドヤ顔で出てきたのは、所謂赤ちゃんとかの名前を決める時に使う名付け辞典。
少し前にその話題になった時の壊滅的な名前のセンスを思い出して、真面目に考えるつもりのアユムを見て、思わず笑みがこぼれた。
真面目だな、この人。
「ふふ、俺は太郎なんじゃなかった?」
「おまえ太郎って雰囲気じゃねーしなあ、オレがかっけーの決めてやるよ~」
「お、そしたら楽しみにしちゃおっかな。天使様に似合うやつにしてね」
いつも絵を描く時みたいに、向かいに座って考え始めたアユムを眺める。
天使は、そういう時間が好きだった。アユムが、真面目に、想いを込めて創作物を生み出す。そういう場所に立ち会えるのは光栄なことだ、と思っているし、そうして出来上がった創作物のことも、全部気に入っていた。
「はれま……はれまに続く名前だろ? なんかいい感じのやつ……」
それに天使はぱちくり、と目を瞬かせた。
「……俺って晴間なの」
「えっ」
きょとんとした顔でこちらを見たアユムは、まるでそれが当然であるかのように首を傾げた。
「晴間以外にあるのか?」
「……いや」
いや、べつに、アユムが良いなら良いけれど。苗字が同じっていうのは、家族とかそういう人たちだけのものじゃないのか。
そう思いながら、口にしなかった。別にそれが嬉しくないわけじゃないし、アユムは当然だと思ってるみたいだし、……口出すことじゃないか。
黙り込んた俺に不思議そうにしながら、アユムはまた本に目を落とす。しばらく目を落として、その視線は一つのところでピタリと止まった。
「はれま、……かける」
「うわ! 超天使っぽい。晴間翔だって、いいじゃん。やりぃ~~」
ハレマカケル。晴間、翔。悪くない響きだった。
「……へえ、アユムにしては良いセンスじゃん」
「オレは元々センスいいだろ??」
「ちょっと前の名付けのセンス思い出しなよ」
別に太郎でも良かったのだが、センスは無かっただろ。アユムはううんと唸った。
「太郎……もまあ、まあな。アリではあったしな」
「そう? まあでも、晴間翔、良いんじゃない? 貰ってくよ」
にい、とアユムは満面の笑みを浮かべた。
「そうだろ! これからよろしくな、翔」
「うん。よろしくね、アユム」
呼ばれた名前は初めての響きで、なんだかむず痒い気持ちになった。
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九日目¦寂しそうなやつ
主な人物:上空明日翔・天海深月
意味が分からない、と思う。
ちょっと不思議な力が使えるからって神様だなんて祀られて、周りがぜんぶ変な宗教みたいになっている僕の傍には、まともなやつは近寄らない。
僕だって近寄りたくない。神様なんか信じてないし、特別に僕が神様だとも思ってないし、じゃあ、だとしたら、やっぱりこいつはどこかおかしいんだろうなと思う。
「アンタさ」
「ん?」
友達なんか、沢山いるだろうに。今日もそいつは僕の傍まで平然と来ているし、そいつが喋りたいことを次から次に話していく。
今は、テストの点が悪かった、とか、そういう話だったと思う。一通り聞き終えてから、僕は口を開いた。
「……、友達、たくさんいるんじゃないの」
「? そりゃもちろん、たくさんいるぜ」
「じゃあそっちに行ったらいいじゃん。僕じゃなくて良いんじゃないの」
きょとん、とした顔をしたそいつは、
「友達が寂しそうにしてたら声掛けるだろ」
そんなことを、当然のように言ってのけた。
「寂しそうに見えるの」
「違うか?」
大きな溜め息が出た。
「ほっといてもらった方が、うるさくなくて助かるんだけどな」
「あ! 俺うるさいってよく言われる~! でもほら、やっぱり楽しいじゃん。人と喋るのってさ」
何も気にせず「でさ、」と話を変えたそいつに頭を抱えたくなる。ふい、と視線をそらして窓の外を見た。
寂しいのか。僕は。
それが否定できなかったことが悔しくて、見透かされていたみたいで腹立たしくて、しばらくそいつの顔を見れなかった。
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十日目¦普通とは
主な人物:上空明日翔・天海深月
「お前、なんでアイツに毎日話しかけてんの?」
友人にそう聞かれた。
なんで、と言われると友達になりたいから。それにもなんでと聞かれたら、……なんでだろう。首を傾げてしまった。
「神様だとかなんだとか、俺にはよくわかんねえけど、アイツの周り異常だよ。だから、程々にしとけよ」
好奇心は身を滅ぼすって言うだろ、とその友人は指を立てて俺に言った。
帰り道。特別近くに住む友達も居ない俺は、1人でその道を歩いていく。
別に。
別に、俺と何ら変わらない。本人は至って、普通の子供だろうに。
あいつの周りが異常だと言うのなら、俺の周りは異常では無く、普通だとでも言うのだろうか。
それを言うには、俺も、友人も、あいつも、お互いのことを知らなさすぎるんじゃないのか。
そんなことを思いながら、帰りたくもない家のドアを開け、ただいま、と親に声をかけるのだった。
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十一日目¦どうか祈りが届きますように
主な人物:曾根崎獅道・???
こつん、靴音がして、ちょうどコーヒーを飲み終えた曾根崎は顔を上げた。
一人の少女が立っていた。真っ直ぐ見据える視線は、あなたに用があるのだと訴えていた。
「こんにちは」
「……どうも」
ぺこ、と頭を軽く下げ、薄く残った既視感の糸を辿る。
「あのひとの……愛海が最期に出会った人だって聞いた」
その言葉を聞いて、ハッキリと思い出す。……ああ、黒瀬の。
「愛海、なんで死んじゃったの? 誰も私には教えてくれないの。……きっとそれも、愛海の意思なんだと思うけど」
中身の入ってないコーヒーを飲むふりをして、誤魔化す。……どうしたものだろうか。
何かを言おうか。何を言おうにも黒瀬の言葉が頭をよぎって、声が止まる。
そうして1人ぐるぐるとしている俺を怪訝そうに眺めた彼女は、なに、と少し固い声で言った。
「あなたも答えられないの」
「……黒瀬に言われた」
するり、と言葉が出た。そのまま、真っ直ぐ少女を見つめた。
「警察って言ったって、資料上で見る、極わずかな分しか分かってないんだって」
「俺は、あいつのことを何も知らない。だから、あんたになにか伝えても、全部お門違いな気がする」
「……そう、」
少女は目を伏せた。少し瞳が揺らいで、それでも、目を閉じ、気を強く保つようにまっすぐあなたを見る。
似ている。
「……そっか。確かに愛海が言いそうな事だよ。私も、愛海のこと、分かっていたつもりだったのかもね」
「悔しいな。……真実を掴み取りたくても、もう本人が居ないんだもの」
無意識のうちに、拳に力が入った。
「……まあ、あなたに言っても仕方ないのは、分かってる。独り言だから、全部忘れていいよ」
「……待て」
勝手に口が動いた。何かを、言わずにはいられなかった。
「これも、独り言だが。黒瀬はたぶん、あんたのことが大事だったんだと思う。いや、……わからん。俺には何も分からんのだろうが、……黒瀬が聞いたら怒りそうだな。聞かなかったことにしてくれ。」
驚いたような表情の少女は、安堵したように笑った。
「……そう、そうね」
「痛いくらいに大切にされていたことは、知ってるの。でも、ふふ、そうね。」
「最期に愛海が会ったのが貴方で良かった。」
「あの人が、そうして案じてもらえているなら、確かに誰かが、あの人の想いを、心の淵を少しでも知ってくれていたなら、良かった……。」
「……ごめんなさい。ありがとう。私も、彼女のことを大切にしていたから。引きずってでも生きていくことにするわ。」
綺麗に笑う彼女が、そう言って踵を返した。
持っていた缶コーヒーのゴミをゴミ箱に投げ入れて、大きな溜め息をついた。
それでも。
俺が彼女に何を思うにも、鼻で笑われて終わるんだろうな。
そんなことを考えながら、仕事へと戻ることにした。
畳む
十二日目¦天使も悪魔もいなかった
主な人物:???
赤いものを見ると、あなたのドレスを思い出す。
そう言えば、貴方はきっと呆れたように笑うのだろうと思う。
私には分からなくて良い。そう言った愛海の言葉通り、彼女の死のほとんどの概要は私に知らされることは無かった。
それがすごく悔しくて、自分の足で特定しようとしてみたけど、それも結局、何にもならなかった。
だけどね、愛海。もういいの。
墓に花を供えて、手を合わせる。
私、あなたが好きだった。私にはそれだけで十分だったのかもしれない。
あなたは、私を愛してくれていたけど、だけど、だから、踏み込まれたくなかったのね。
そっと目を伏せた。
だけど、そんなのは酷い話ではないかしら。
あなたがそういう人であったのは、知っていたつもりだった。知っていて、好きだった、つもりなのに。私もあなたと対等にはなれなかったのね。
ごめんなさい、愛しかったひと。
私、あなたを引き摺って歩くことにする。最大限幸せになってみせるわ。
あなたなら、そう言うのでしょうから。
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十三日目¦あなたの手を汚したかったわけじゃない
主な人物:鳥羽朔賭・鳥羽咲百合
教会。昔、自分が育った家は、今も大して変わらずそこに建っている。
扉を開けばいつも通り血を分けた姉が居るのだろうし、そこで姉は愛想でも振り撒いているのだろうと思う。
そんな大それた人間でもないくせに、やめてしまえば楽なのに。
「よう」
声をかければ、明らかに警戒した表情でこちらを振り向いた。
「……朔賭」
それに分かりやすくため息をついて、両手を上にあげながら近づく。
「まだ迷える子羊でも探して助けてんの? もう諦めたら良いのに。全部自己満だって分かってんだろ? それに、」
息をついた。
「どうせ無理だよ。全部救うなんてさ」
真っ直ぐこちらを見据えてくる姉の瞳に強く刻まれた警戒心。あーあ、嫌われてんな、と思いながらやれやれと肩を竦めた。
「……って、何度言ってもわかんねえのか。敬虔な信徒サマには」
姉は、無言でこちらを見、一言も声を発しようとしない。お人形遊びをしに来たわけじゃないんだけどな、と思いながらため息をついた。
「……はあ、何その態度。俺とは喋るだけ無駄ってこと? 悲しいな。こんなに心配してやってんのにさ」
そうして煽ってみても、こちらを探るような視線が返ってくるのみだった。
今回も、……いや、これは。もう、無理なのかもしれない。そんなことを冷静な自分が考えたが、とにかく機嫌は最高に悪かった。物分りの悪い、馬鹿な姉。そう頭で悪態を着くことでそれを発散しようとしたが、それもうまくいかなかった。
「……そうかよ」
そのまま視線を逸らして出口に向かっていく。
それでも姉は、最後まで俺と喋ろうとはしなかった。
「……ほんとうは、」
ぽつり。誰もいなくなった教会に声が響いた。
声は、続く。
神様なんて信じてない。だから、全部私が救えたら、と思ってる。
……だからね、私が神様になるって決めたの。
あなたにとってはそんな柄でも無いかもしれないけど。あなただって、私を全部知ってるわけじゃないでしょ。
目を伏せた。
馬鹿馬鹿しいと思うなら思えば良いよ。でも、
声が詰まった。息を吐いて、決意するように音を吐き出す。
わたしは。
あなたの事も救うつもりよ。
……朔賭。
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十四日目¦面倒な事に変わりは無いけど
主な人物:和歌月泉・欠月牙狼
たまたま夜遅くまで勉強していたものだから、何もかもをほっぽり出して寝てしまった。
そうして、朝起きたら髪の毛がとんでもないことになっている、なんて日が、立て続けに続いた。
どうしたもんかな、とあくびを噛み殺しながら思案する。別に伸ばしているのは頻繁に切らなきゃいけないのが面倒だからというだけだし、いっそテスト期間中は短めに切ってもらおうかな。
思い立ったが吉日、休みのうちに美容院の予約をして、ぱぱっと短くしたのが、昨日。
月曜日。学校に行くために支度をして、いつも通り恋人を迎えに行ったら、髪を見るなり眉をひそめられた。
「……何かあったのか?」
「なんでそんな反応なのさ……」
髪なんか短くても長くてもそんな変わらないだろうに。短くても似合うって言ってくれるかと思った、と少しむくれてみた。
「あ~、いや、似合うとは思うんだが……、ううん」
「……でしょ、似合うなら良くない?」
「いや、泉が良いなら良いんだが……」
「何、はっきり言いなよ。」
うぐ。もにょもにょと言葉を選ぶ様子の恋人に、今度がこちらが眉をしかめると、ガシガシと頭をかいた牙狼くんは「笑うなよ」と前置いてから、
「綺麗な髪だったから、勿体無いなと思っただけだ!」
きょとん。ぱちくり。そんな音が響いたような、予想外の言葉に、時間をかけてその言葉を噛み砕いて、笑わずにはいられなかった。
「あはは!」
「あ、おい! 笑うなっ」
「だって、そっか、そんなに俺の髪好きだったんだ?」
「……」
「じゃあ、また伸ばそっかな。」
もとよりテスト期間の間だけだしね。とつけ加えて、軽く理由を話せば、牙狼くんはそんなことだったのかと項垂れた。
心配をかけているなあ、と思いながら自分の髪を触る。
いつもより軽くて楽な髪を、初めて少し惜しく思った。
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十五日目¦十九日目、夜、暗闇
塔葬の国ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:猫田心音
俺が決めたことだから。
誰よりも先に俺が決めた。こうなることも予測した上で、彼らを見捨てることを選択したのは、俺だった。
だから、俺が一番に、腹を括るべきだった。
「選んだのは俺たちだ、……行こっか!」
そう言った時の声は震えていなかっただろうか。作った笑顔は上手くできていただろうか。今の俺に確かめる術はなく、確かめたところで何にもならない。
どれだけ慣れがあったとしても、人の命を、自分の手で。何度考えても恐ろしいことだ。
それでも。……それでも。
それをやらねば、この島に居るほとんどの人間の命は無いものとなる。
くそったれだ。
それでも、誰かがやらねばやらないことなのだ。
「嫌な島ですね」
不意に、そんな声が落ちた。
「……そうだね」
それに同意を示しながら、だけど、と、思考を巡らせる。
俺で良かった。
あの子を指名するのも、あの子を殺すのも、全部、俺ができることで良かった。
俺でさえ。俺でさえ、あの子を指名する表情はきっと固まっていたし、俺でさえ、注射器を持つ手は震えていたし、ミツオさんが乱入するまで、注射を打てなかった。
優しい、一時的でも世帯となった彼らに、そんなことをさせなくて、良かった。それが出来る俺で良かった。
それだけが今、俺の誇りだった。
本当は、と、そこまで思考が動き始めて、慌てて止めた。
俺がここで折れてどうするんだ。
まだやるべきことは残っている。こんな、こんなことを、もう二度とさせないために、この島を。
そんなことを考えながら目を閉じた。
二人に気を使ってやれるほどの気力は、残っていなかった。
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ここから散文
キュートアグレッション
主な人物:特になし
「私を殺したいの?」
そう言って、不気味なほど綺麗に笑った彼女は、ぐいと距離を詰めた。そのまま俺が手に持っている銃を左胸に当てて、「どうぞ」と囁いてみせた。
「な……っ」
「殺したいんでしょう?」
まさか撃てないだなんて言わないわよね。変わらず綺麗に微笑むその人を、そう、確かにその人を殺すことは、悲願で、喉から手が出るほど、喜ばしいことなのに、どうして、
どうしてこの人は、こんなに動じないんだ。
「ほら、早くしないと、私の愛しい番犬たちがあなたを殺しても知らないわ」
ゾッと背筋が凍った。恐ろしい。人間であるはずのその人が、なにか別の、化け物のように思えた。
ああ、ここまでしても、自分はこの人に傷一つ付けられない。
それを悟った時、頭に鈍い衝撃が届いて、そのまま俺の視界は閉ざされた。
最期に認識できたのは、その人の、薄く細められた美しく光る瞳と、その口が、「だから言ったのに、」と動いたことだった。
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なんだか違う人みたいだった
主な人物:上空明日翔、天海深月
「……い、おい」
控えめな声。揺さぶられて目が覚めた。
呆れたような顔をしたそいつと目が合う。いつの間に寝ていたんだろうか。
「……次、移動教室だけど。」
「ああ……おはよう、起こしてくれたの」
「誰も起こしてやんないみたいだったからね。友達100人作ったんじゃなかったの」
ふい、とそっぽを向き、じゃあ、と歩き出したそいつの腕を掴む。
何故かは、分からない。ただ、そういう気分だっただけ、で。
「午後、サボんねえ?」
「……は?」
ぱちくり、と大きな目を瞬かせて、そいつは思考を巡らせているみたいだったから、
「だめか?」
と、ひと押し。
「……優等生の肩書きに傷がついたらどうしてくれんの。」
「え〜、困るな。俺も一応優等生なんだけど……まあ、そしたら全部俺のせいにしていいからさ。」
「……」
そうすれば、簡単に押されてくれるのだから、優しいのかちょろいのか、分からない。
「1時間だけなら」
と言ったそいつににんまりと笑って、よし、と立ち上がり手を引く。
ただ、普通の子供みたいに遊びたかった。
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やがて鬼と成る
かいぶつたちとマホラカルトネタバレあり 現行未通過×
主な人物:沙華祈
ほら、歩けるだろう。そう言って急かしてくる大人の声を聞きながら、せめてゆっくり歩いていく。
俺は、死刑囚だ。死刑囚、だった。
世界の全部が嫌になった。だから、全部壊した。そしたら世界の外の大人たちは、あんまりにも俺が黙っているものだから、全部を俺が悪いということにした。
ざまあみろ、と思う。お前たちも結局は人間で、正しいことなんてひとつも行えやしない。
結局は、同じ穴の狢だ。
ドアを開け、扉の向こうを見る。
そこに立っていたのは、痩せた、今にも死にそうな雰囲気の男性。
「この方が、お前を引き取るんだそうだ。」
「……そう」
興味も無かったので、視線を逸らした。睨む警察様をその人は制して、そこからは淡々と手続きが進んでいるようだった。
死刑囚であるので、表向きは死んでいることにしてください。だとか、そういう話を半ば無理矢理聞かされて、難しい(お互いに良い感情は持っていないのだろう)会話が眼前で行われて、そうして、気づけば引き渡されていた。
「ねえ」
「なにかな。」
帰り道、と言っていいのかも定かじゃない。車でどこかに連れていかれながら、その人が特に何も喋らないもんだから、声をかけた。
「俺が、さ。今ここであんたを殺すとか、思わないの」
「おや。そんな元気が君にあるとも思えないけどな、そのつもりなの?」
別にそんなつもりでは無いので首を横に振った。そうしたら、そうだろ? と一言返されて、そのまま沈黙が続いた。
ただ、不思議な時間だった。
そうして、静かな時間をしばらく過ごし、車はどこかの店の駐車場に停められた。
「そうだ。君は今日からその名前じゃなくなる。具体的に言うと、君を組織に入れます。その間は、コードネームで生活してもらうよ。」
「コードネーム」
「そう。君のことは、戦力担当として連れてきたから。『鬼』だなんてどう? かっこいいでしょ」
「……」
あんまり真面目にそう思ってもなさそうな口調で言うもんだから、適当な言葉を吐いているようにも思えた。
「ま、だからそうやって名乗ってね。別に偽名であればなんでもいいけれど……そうだ、プライベートは君が好きなように動けるよう手配しよう。それでいいね?」
「……別に、なんでもいい。」
「そう?」
「……」
じ、とその人を見た。その人はじ、とこちらを見返してくるから、嫌になって視線を逸らした。
「俺は、その……組織? とやらに、入るなんて決めてないけど」
「ああ、そうだったね。まあゆっくり考えてくれればいいさ、最も、君に拒否権はないのだけど。でもほら、悩む時間は与えてあげられる……予定、だから。ゆっくり覚悟を決めてよ」
「……」
じゃあ早速、組織のメンバーに挨拶に行こう、と、幽霊を名乗るその人は言った。
とりあえず車から降りて、店の扉のドアに手をかけた幽霊の方を見て、再び声をかける。
「……ただの戦力担当なら、死刑囚だった身じゃなくても良かったんじゃない。わざわざこうやって引き抜く程、俺が必要なの?」
うーん、と困ったように笑った幽霊は、改めてこちらを見やった。
「まあ、そうだね。君が必要だ。」
「……君でなくても良かった、なんて嘘は良くないね。君だから引き抜いたんだ。」
そう言ってから、幽霊は改めてドアを開く。
特になんの変哲もない、俺にとっての日常の続きだと言うのに、何かが変わるような気がして、少し落ち着かない気持ちでドアの向こうに歩みを進めた。
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夢心地
主な人物:椿・楸
「ヒサギ、なんてどう?」
「はあ?」
ある日、ある時、ある任務で。自分に復讐すると息巻いて機会を狙い続けている彼を連れ回していた時。ふと思い出したように椿は言った。
「名前だよ名前、君、本名だって教えてくれないだろ? まあ知りたい訳でもないから良いのだけど、そのまま何も無いのは僕にとってとても不便だ。だからさ、どう?」
「……どうって」
得意げな顔をして、ついさっき人の命を奪った得物――――ナイフを手持ち無沙汰に回しながら、椿は続ける。
「木へんに秋で楸。花言葉は澄んだ心! あははっ、ほら、君にピッタリだろ?」
「……バカにしてるのか」
「やだなあ、褒めたじゃないか。心が綺麗なのは良いことだと思うけれど?」
「……お前に褒められたって嬉しくない。」
不機嫌さを隠さずそう言っても、特に、椿には怯む理由がなかった。
はは、といつも通りを崩さず笑っているのに腹立って舌打ちを一つ。それでもそんなことお構い無しと言わんばかりだ。
「そりゃそうだろうね。……ま、君がどれだけ嫌だと言っても、もう僕が決めたことだ。君には今度から楸と名乗ってもらうよ、分かったね。楸?」
「……」
ぎろ、と椿を睨みつけて、たった今楸と呼ばれた青年は、震える手を握りしめその場を立ち去ることを選んだらしい。
どうせ逆らえず従うのに、椿の言葉にいちいち反抗してみせるその姿勢がお気に入りだった。随分と、可愛らしいことだ。
ひとまず、と自分の足元を見る。白の面積が多い自身の服は特に汚れなかったが、床に落ちた死体やその痕跡は片付けねばならなかった。
痛ましいことだけれど、必要な犠牲だった。
テキパキとその場を片付けて、さっさとその場を後にすることにした。
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全部無駄になれば良い
主な人物:椿・楸
「殺してやる!」
そう言って知らない少年はナイフを椿に向けた。それを軽々と交わせば、そのまま地面へと倒れ込む。
あーあ、面倒だなあ。そんなことを思いながら、椿はにこやかな笑顔を彼に向けた。
「……君は誰? 残念だけれど、僕は殺した人間の顔なんかわざわざ覚えていないものでね。復讐だと言うのなら、愚かなことはやめた方が良いよ。」
「なっ……うるさい! 死ね!」
また交わす。はあ、とため息をついて椿は体制を崩したその人へと距離を詰めた。少年は、それにぎょっとして目を瞑った。自分も殺されるのかと勘違いしたのだろうか、全く馬鹿馬鹿しい。
その人の手を掴み、ナイフを自分の首筋へと持ってくる。そのタイミングで、恐る恐ると目を開けた彼は、愕然とした顔でこちらを見た。
「どうしたんだい。僕を殺したいのだろう?ほら、この手に少し力を込めれば僕は死ぬよ。――まさか、本当は殺す覚悟なんてありませんでした〜……なんて、言わないよね?」
はくり。少年の口が動く。
よく、知った色をしていた。彼の瞳に覚悟の色なんて無く、ただそこにあるのは恐怖と動揺だった。
「あはは、ほら、愚かだったと思わない?人は感情のままに動くべきじゃない、覚えておくと良いさ」
正義のために人を殺してきた。覚悟を決めたのは、もう覚えていない程過去の話だ。だから、椿にはもう、理解ができない。
「ほら、最後のチャンスだよ。僕を殺してみる?」
君なんかにできるとは到底思えないけれど。心の中でそう呟いて、震える手を感じながら、そっと目を瞑った。
――――銃声。
目の前の少年がばたりと倒れた。代わりに楸が現れたと思えば、そのまま照準をこちらに合わせる。どうやら随分頭に血が上っているようだった。
「あれ、楸くん。顔色が悪いよ、どうしちゃったの? ……ああ、僕が本当に死ぬとでも思ってビックリしちゃった?」
椿がわざとらしく問えば、楸は照準を合わせたまま叫んだ。
「お前っ、俺以外の誰かに殺されたら絶対許さないからな!」
「……ふふっ、あはは!」
「なにがおかしい……!」
睨みつけても怯みもしない。本当に引き金を引いてやろうかと楸は思ったが、結局指先に力は入れなかった。
「許すも許さないもないだろ、僕の命はずっと僕の手中にあるわけで、生きるのも死ぬのも、選択権はず〜っと、僕の手にある。」
そう、君が弱いから。心底楽しそうに付け足さられた言葉にイラついて、でも結局殺せていないのは事実だった。
「君だって、彼だって、奪う側に立つ覚悟どころか、人を殺す覚悟だってま〜ったく決まってないだろうに! あはは! 今の君を見たらご家族はなんて言うのかな〜! せっかく唯一生き伸びたというのにね。可哀想に!」
そう喋るのと同時、距離を詰められたと思えば銃を足で蹴り飛ばされ、それを椿は奪い取った。
別に今更物珍しくもないだろうに、まじまじと銃を観察するのを、楸は黙って見ていることしかできなかった。
「僕が先に他の誰かに殺されないように。もしくは、殺されても良いように? あははっ、せいぜい頑張ってくれよ、楸くん。」
椿は終始楽しそうな口調を崩さぬまま、銃を投げ返し、その場を立ち去った。
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これからのために、話をしよう
かいぶつたちとマホラカルトネタバレあり 現行未通過×
主な人物:NPC・鬼・魔女を中心に組織の全員
「仕方ないじゃないか。おかげで君は守れたのだし、そう思うと、安い犠牲だっただろう?」
だから、納得しなさい。
それを聞いた瞬間、鬼の中の何かが切れる音がした。
「分かった。アンタがそこまで言うんだったら俺にだって考えがあるよ。……せいぜい爪でも噛みながら、自分の命の重さでも思い知ればいいんじゃない?」
その時、自分はどんな表情を浮かべていたのか。
呆れたような顔をしたままの幽霊が少し目を見開いたのを見たがらただそれだけを伝えた後、外へと飛び出し、しばらく走った。
その場にあったのが、穏やかな感情でなかったのは確かだった。
・
・
・
「……それからずっと、鬼殿が行方不明、と」
「そう。」
簡潔にまとめた狼の言葉に、幽霊が頷く。不安そうな天使が幽霊を見た。
「鬼くんは無事なのでしょうか?」
「まあ、あの子ならどこかで元気にやってそうだとは思うけど? 悪魔さんの件もあるし、裏切りと断定するには早いんじゃないかしら。」
あなたの子供でしょう、と付け足された魔女の言葉に苦い顔をした幽霊は、だからこそだよ、と全員を見た。
「必ず、あの子を見つけ出して欲しいんだ。僕の見てないところで、危険な目にあってたらと思うと……」
そう肩を落とした幽霊の顔は確かにやつれていて、目の隈を化粧で隠しているのも、組織の誰も――――特に初期メンバー3人――――が察していた。
「いつ助けを求めてくるんだとは思ってたけどよ、こんな早ェとは思わなんだ、なあ? えーっと……狼。」
「アナタはそろそろ慣れてくださいよ。……でもまあ、そうですね。考えたくもありませんが、億が一裏切りであった場合が怖いので。捜索するのはワタクシも賛成ですよ。」
「僕も賛成なのです! 鬼くんが危険な目にあってたら大変! そうですよね、人魚ちゃん!」
「……おに、ゆうれい、けんか? ……マアナ、なかなおり、てつだう」
「……だそうよ、良いんじゃないかしら」
全員の意見が出揃ってようやく安心したような顔をした幽霊は、テキパキと指示を出し、よろしく頼むよ、と言ってその場を解散とした。
・
それからしばらく、狼のツテを使っても、魔女のハッキング技術を使っても鬼は見つからなかった。
ここまで掴めなくなるものだろうか。まさか、本当に……と、幽霊は焦りに焦っていたが、時間は刻々とすぎていく。
普段は指揮をする立場の幽霊が、自身も前線に出て積極的に探そうとするものだから、組織の全員はそのサポートに回ることにした。
「今日も、見つかりませんでしたね」
「なんの痕跡もなかったのです……」
「……スゥ、」
不安そうな天使の手をマアナが握る。それを眺めてから、魔女は幽霊の方を見た。
「そろそろ打ち切っても良いんじゃないかしら。ここまで姿を表さないんだから、組織が嫌になって逃げている、なんて可能性も無いわけじゃないわ」
あなたが嫌になって、と、真っ直ぐ言葉を出さなかったのは、幽霊の相応の行いを知っていたからだった。
「……そう、……そう、だね」
「幽霊、」
悪魔がなにか気遣う言葉をかけようとして、それを人魚が遮った。
「マアナはスウといっしょだから、ここ。おにも、ここがいいならかえってくる。おうちにかえってくるなら、かえってくるよ」
いやに真っ直ぐな目だった。それに頷いた悪魔は、改めて幽霊に向き直る。
「きっと大丈夫だ、鬼を信じようぜ。……まあ、帰ってくるかどうかは、お前次第かもしれねえけどよ」
「……あれ?」
ふと、天使が声を上げた。その視線の先には、彼が元いたという、孤児院がある。
その庭に、一人のシスターが立っている。その向こうに、見知った影があった。
幽霊が必死になって探している人だった。
「っ、祈!」
そう叫んで走り出す。息が苦しくても構わなかった。
その声でこちらに気づいた鬼は、シスターに別れを告げた後、教会の出口で立ち止まって幽霊を待った。その顔には、驚く程に、表情が無かった。
ああ、あれは本気で怒っている。
他の全員はそれを肌で感じ取ったが、幽霊には、そんなことに構っていられる余裕はないようだった。
「……っはあ、はあ、……よ、かった、生きてるね!? 怪我は、……どこも、」
「……なんで?」
冷たい音が、落ちる。
どこまでも冷えきった目に射抜かれて、流石の幽霊も何も言えなくなった。
「何、今更父親面すんのやめてよ。俺のこと、置いていける程どうでも良かったんでしょ。何?形だけでもみたいな? ……別にそういうの、いらないけどな。」
「鬼殿、」
鋭い言葉が放たれる。正しく言葉のナイフだった。狼が止めかけたのを、鬼は視線だけで制した。
「……、祈、」
「無事だよ。ご心配どーも。でも組織には帰らない、これは裏切りだと捉えてもらっても良いよ。申し訳ないけど、」
すう、と鬼は息を吸った。
「アンタの居ない組織には帰らない。たとえそれが、可能性の話だとしても」
鬼は、そう言って真っ直ぐ幽霊を見つめた後、あっさりと踵を返した。
話し合いの余地なんてなかった。ハッキリと傷つけられた幽霊は、その後しばらく何も喋らなかった。
・
・
「幽霊さん。」
「……入ってくるなと、言ったはずだけれど」
呆然としていた幽霊が魔女を睨む。その視線を受け流して、魔女は部屋へとズカズカと入り込んだ。
「お邪魔するわね。いえ、鬼くんがあんまりにも言い過ぎるものだから。……私、実は最初から全部知ってるの」
「……は、」
目を白黒とさせている幽霊を他所に、魔女は話を続ける。
「あんまりにあなたが可哀想なものだから、さすがに手を出しておこうかしら、ってね。彼も、貴方が傷ついたままなのは、本望じゃないでしょうから」
「……どういうこと」
「彼がなぜ怒っていたか分かる? 分からないかもしれないわね。貴方があまりに自分を大事にしないものだから、よ。」
「……」
「貴方、早とちりで鬼くんを庇ったでしょう。彼は避ける体制をとっていたし、言ってしまえば必要のない援護だったわ。それで大怪我を負った貴方は、『鬼を守れるなら安い犠牲だった』と言った。合ってるかしら。」
何も言えなくなった幽霊は黙って頷いた。
「その後、鬼くんは私に連絡を寄越した。とある依頼と一緒にね。……彼がなんて言ってたか、教えてあげるから、ヒントにでもしなさい」
どこから話せば良いのかしら、と、呆れたように魔女は頬に手を当てた。
・
「失踪したいの?」
「そう。」
「それはまた、どうして。」
とあるカフェ。たまたま出会った鬼と魔女は、2人でカフェに入り、オシャレなメニューとともに話をする。
「幽霊がさ、自分の命の価値を分かってないみたいだから。……分かってほしくて」
それには同意するけれど、と、魔女は困った顔をした。あまりにも、情報が足りていなかった。
「……幽霊、今大怪我してるでしょ。あれ、必要な犠牲だったと思う? ……安い犠牲だったかな。」
「いいえ。あれは必要な犠牲ではなかったわ、幽霊さん、貴方のこととなると周りが見えなくなっちゃうから」
「うん。」
「……安い犠牲、っていうのは、幽霊さんが?」
「そう」
なるほど、と魔女は頷いた。
「それがどうして失踪に繋がるのかしら。」
「……」
一息置く。底に残ったコーヒーを飲み干して、鬼は続けた。
「幽霊は、俺のことが一番大事でしょ?幽霊の命の価値がどうしても軽いって言うなら、俺の命も足して考えてもらおうと思ってさ。」
「……なるほど」
「まあ、実際どうするかは別として、だよ。……いざお前が死んだら、俺だって追いかけるかもしれないんだぞ、って脅しておきたい。少なくとも、1度死ぬ覚悟を決めた身だし、俺はそれくらい簡単に出来る。っていうのを、嫌でも分かってもらえるかなって」
「危ない目にわざと合うってこと?」
魔女は眉を顰めた。それなら乗る訳にはいかない。断りを入れようとしたあたりで、鬼が遮る。
「いや、俺はプチ旅行でも楽しんでくるつもりだよ。危ない目には合わない。だから、見つからないように隠して欲しいんだ。最悪、幽霊にバレないんだったら誰に話しても良いから。」
心配されるだろうしね、と眉を下げて鬼は笑ったが、決意は固いようだった。依頼料がいるなら払うよ、と付け足されて、魔女は少し考えた。
確かに、それなら幽霊にも少しは分かってもらえるかもしれない。
「仕方ないわね……止めても聞かないのでしょうし。それなら、依頼料の話をしましょうか。」
「はは、ありがとう」
そう言って、安心したように鬼は笑った。
・
「……これが、この事件の真相。ここから貴方がどんな答えを出して、どんなふうに彼と接するかは、自分で決めなさい。連絡は私が間に入るから。」
「……」
それじゃあ、と出ていった魔女の背中を眺めながら、鬼の言葉を反芻する。
『俺のこと、置いていける程どうでも良かったんでしょ。』
彼は、そう言っていた。
「まさか、」
僕は、もしかしなくても、あの子を、傷つけた?
幽霊は、真っ青になって顔を上げた。慌てて魔女の端末に連絡を入れ、繋がった瞬間に相手を確認することも無く捲し立てる。
「っ、魔女!頼む、鬼と……祈と話をさせて欲しい。今度は、ちゃんと彼の話も聞くから」
だから、と続く言葉の間に、魔女は呆れたようにため息をついた。
『貸し、ってことにしといてあげるわ。』
・
・
・
狼と悪魔と顔を合わせ、天使とマアナと顔を合わせ、迷惑と心配をかけてごめんね、と謝罪してから、鬼はようやく幽霊の元へと向かうことにした。
久々に会った幽霊は、なんだかやつれていた。……それだけ俺の心配が出来て、俺を大切に出来るのだから、同じように自分のことを大切にしてくらたら良いのに、と、すこしのやるせなさが湧いて出る。
「……とりあえず、入ってよ」
「ここじゃダメなわけ?」
「逃げられたら困る」
「アンタの態度次第だよ」
ぐ、と黙りこんだ幽霊は、諦めて鬼の方へと向き直った。
そのまま頭を下げる。
「ごめん。……置いていけるほど、なんて、そんなことないんだ。ただ、僕は……君が死ぬ瞬間なんて、どうしても見たくなかった、ただそれだけなんだ。」
「うん、知ってるよ。……で?」
どこまでも声は冷たかった。
「だから、安い犠牲だったんだっけ?」
「っ違う!」
顔を上げた幽霊は、鬼の肩を掴んだ。鬼は、振り払うこともせずに、ただまっすぐ幽霊を見ている。
「……ごめん、分からなかった。僕は、1度君を捨てた身だ。僕を恨んでいる、と言われた方が余程しっくりくるくらい、酷い人間だ。だから、だから、君の大切な組織の中に、僕が入ってるだなんて、夢にも思わなかったんだ」
「……はあ。まあ、それも知ってる。んで?」
だけど、と幽霊は必死になって言葉を紡ぐ。
「だけど、君は言っただろう。僕の居ない組織には帰らない、と。……たとえそれが、可能性の話だとしても」
「……」
一気に喋って上がってしまった息を整えて、それでも幽霊は続けた。
「僕が生きてさえいれば、君はこの組織で、生きて、くれるのかな」
「まだ分かってないの?」
「違う、確認だ。認識の擦り合わせがしたいんだ、頼むよ……。今度は絶対に、ないがしろになんてしないから」
「……ふうん。」
鬼は、少し態度を和らげ、対話に応じた。
「そうだね。アンタが生きる、って意思を見せてくれるんだったら、ひとまずは生きてあげようかな?」
「……そうかい」
幽霊は息を吸い込んだ。酷く緊張しているようだった。鬼はその様子を見ながら目を細め、言葉を待つ。
「それなら、僕はできる限り生きてみせよう。なるべく死なないよう努力すると誓うよ、僕の命にはどうやら、君の命も乗っているらしいからね……」
「……」
ひとつ、瞬きをして、鬼は、仕方がねえな、と笑った。
「俺も、分かって欲しかったとはいえめちゃくちゃ言ったしな。やっぱ傷ついた?」
「そりゃもちろん、しばらく何も考えられないくらいには……」
「はは、ごめんな。」
「いや、もう……良いさ、君が無事でいてくれたんなら、それで」
良かった、と呟く幽霊は、ようやっと安心できる場所を見つけた子供のようだった。思わず頭を撫でてやれば、馬鹿にしてるのかと睨まれた。
それを遠くから眺めていた仲間たちも、ようやく息をついてそれに混じる。
まあ、そんなこんなで今回の件も、これにて一件落着ってことで。
どこまでも突き抜けた晴天は、彼らの目の色をして、
それを見ながら幽霊は、眩しいなあ、と少し目を細めた。
畳む
ろくでもない
幽世常世の満天下ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:燈実 / NPC
拝啓、両親へ。
金がないからと言って愛する息子を売るのは、どうかと思います。
「ほら、お前はまだ動けるだろう。買ってもらえたんだから、働きなさい。」
それに近しい…… いや、もうちょっと荒々しい言葉だったと記憶している。その子どもは大人しく従うばかりで、文句ひとつ垂れなかったが、その足ではもうしばらくしたら歩けなくなるのだろう、というのは一目瞭然だった。
何度も売られて、捨てられた。だからここに来たのだと、先日の夜に語っていた。
ああ、ろくでもないところに来てしまった。
死ぬわけにはいかない。だから、あの子どもを助けてやる訳にも行かなかった。
どうにかして。
どうにかしてこの檻から逃げなければ、人権などは無いに等しい。 ……そんな扱いは、両親だって望んでいないだろう。
不思議と、そんなふうに思った。確証はなかった。それでも、
死にたくなかった。
だから、理由はなんでも良かったのだ。
売人と取引した。どうやらここは地下のようだった。地上の知識はあまり重宝されないが、たまに物好きもいた。なので、地上の知識と引き換えに定期的に檻の外の空気を吸わせてもらうことにした。もちろん、その売人の見張り付きだ。
俺の知ってる範囲。学校で習ったこと。本で読んだこと。たまに空想も織りまぜて、そいつに話して聞かせた。顔も良くないし、筋力も体力もなかったので、決行の日まで誰かに売られることもなかった。
そろそろお前も処分だな。売人はそう言った。
そうだな、清々する。俺はそう返した。
そう、返して、売人を殴りつけた。ちょうど手枷が嵌っていたので、それで頭を重点的に。
生意気なガキだったと自分でも思う。それでも、その売人は俺にそれなりに情が出来てしまっていたらしかった。
その人は、意地でも声をあげなかった。人を殺すすべなんて知らない、筋力もない無力な子供の精一杯の打撃に、苦しそうにのた打ち回り、長い時間をかけて、息を止めた。
苦しめたかったわけじゃなかった。だけど、そうでもしないとお互いに救われなかった。
この人が生まれ変わったら、地上で、搾取なんてされず、穏やかに暮らせますように。そんな、意味があるかもわからない祈りだけを捧げて、その人の懐から手枷の鍵を盗み出し、そのまま、ゆく宛もなく走った。
誰かにバレたのだろうか。大人たちの怒号が遠くで鳴っていた。でも、それも遠くだったから、獣の鳴き声に聞こえた。
それが恐ろしくてまた走った。走って走って、気づけばネオン街の、どことも言えぬ街だった。
知らない。こんなところは、知らない。
帰らなければならない。どこにだろう? もう分からなかった。
その場で、生きていく理由が無くなった。死にたくない理由も、無くなった。だって、帰れないのだ。
だから、街の隅っこに蹲って、時間が来るのを待った。
飲まず食わずでいれば、いずれ人は死ぬことを知っていた。人攫いにあっても良かった。苦しんで死ぬのだろうな、と悲観しながら、それでもぼう、と虚空を眺めていた。
ふいに、
視界に影がさえぎった。
若い男だった。
「なあお前さん、名前は? こんなところで何をしている。」
「……、知らない人に名前を教えちゃいけないんだ」
「そうか。じゃあ俺から。俺の名前は柳。ほら、名乗ったんだから知らない人じゃないだろ?」
「……、」
わざと生意気な対応をしたのに、その男は困ったように頭をガシガシとかいた。
「ああもう、それなら良いさ。……お前、俺の家に来ないか。」
「……は?」
「ああ、目的なんかは聞いてくれるなよ。気分だ。お前さんを拾いたい。捨てられたんだろう?」
「……、好きにしたらいい」
その男は頷いて、手を差し伸べた。ほら、と伸ばされた手を、俺は取った。
気付けば、それが生きる意味になっていた。そして、
死なない理由も、じきに増えていくことに、なる。
拝啓、両親へ。
愛する息子を売るなんてどうなんだ、とは、思ったが。
なんだかんだ、俺は生きてるから、
気に病むことなく、幸せに暮らしてくれ。
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命令
幽世常世の満天下ネタバレあり 現行未通過×
主な人物:燈実 / 暁蕾
「暁蕾!」
ガキン。暁蕾の背後でそんな音が鳴って、燈実の薙刀が敵のナイフを弾き飛ばし、そのまままっすぐ追撃。相手は倒れていく。
九朧城で暴れるこまったさんたちの鎮圧。今回の任務は達成した、さあ帰ろう。そんな時のことだった。
「どうもありがとなあ、燈実ちゃん。これは貸し?」
暁蕾は、いつもと変わらぬ笑顔で、そんなことを抜かす。燈実はため息をついた。
「……いや、それは別にいい。それより暁蕾、怪我を見せろ」
「……それは命令?」
「はあ……、命令だ。」
再びのため息。そうしながら、ぴくり、瞼が動いたのを燈実は見逃さなかった。
どうやらこの男はどうにも、この組織でさえ誰のことも信用出来ないらしいかった。
それならそれで好きにしたらいい。お願いを聞かないなら命令をするまでだ。それはそうと、勝手に心配はさせてもらうし、勝手に助けさせてもらう。
半分くらい意地だった。そうしていつか、それが彼のためになると、信じていた。
少し間を開けて、燈実は付け加えた。
「別に、見せるのは俺でなくともいいさ。俺は治療はそんなに得意じゃない。自分で治療できるというならそれでも良いし、他の奴に治療して貰ってもいい。」
「……、どうも。そしたら自分でやるわあ」
「但し、条件がある。」
暁蕾は、警戒するようにこちらを見た。実際は目が合うことはなく、そんな気がするだけだったが。
「その怪我が、来週までに治ってなかったら。強制的に俺が治療をする。分かったな?」
「……なんやの、そんなに心配してくれるん?」
「嫌か?」
暁蕾は黙った。別にこちらの機嫌をめちゃくちゃに損ねてやりたい、なんてつもりではないらしかった。
下手くそな男だ。
何が要因かまでは知らないので、ただぼんやりそう思った。それが彼に対する感想だった。
「お前の周りに今までどんな環境があったのか、俺は全くもって知らないし、お前のことだ。別に話したくもないだろうから、きっとこれからも知らない。だが……、郷に入っては郷に従えだ。俺はお前に対して好きにさせてもらうし、お前も好きにしたらいい。」
すう、と息をつく。
「ただ、必要な命令はする。命令であれば聞くと言ったな? ……その言葉、違えるなよ。」
「……」
それ以上に声は掛けなかった。彼の中で、今贈った言葉が、どんなふうに解釈されて、どんな想定が生まれているのか。燈実にはそんなこと、全く想像もつかなかったが、それでも良いのだ。
1度懐に入れた人間を相手に、気は長い方だった。
だから、分かるまでいくらでも待つつもりであったし、いくらでも伝えるつもりであったし、それまでそばにいる予定であった。この、当時から。
時は流れ、今。
星歩会での暁蕾の言葉をきっかけに、そんなこともあった、とふと思い出して、
長かったなあ、としみじみと実感しながら、それでも少しだけ喜びに浸った。
大きな争いの気配を感じながら、その道中だけはずっと穏やかだった。
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許容範囲と嫌がらせ
主な人物:燈実 / 暁蕾
二次創作 無い話です
「……そういえば」
なんでもない時間。なんでもない日常の、延長線。だらだらとソファで寛ぎながら、ふと、燈実は言葉を漏らした。
「暁蕾は、俺が命令だと言ったらどこまで許すんだ」
「……ええ?」
唐突にぶつけられた疑問に、暁蕾は首を傾げた。どこまで許す。なにを? どこまで、許す……。
「……それは、身体を?」
「……、それでも別に構わないが……」
燈実としては、そういうつもりでは無く、ただ彼の許容範囲を知っておきたいだけだった。だけれど、基本的にガードの固い彼が……身体を? どこまで許してくれるのか否か、だなんて。
面白い話題だと思ってしまった。
それが暁蕾の運の尽きだった。
「……ふむ。じゃあ、どこまで許すんだ?」
「ええ……ってことは、手を繋ぐ、とか、……ハグ、とかやんな……?」
暁蕾は少し動揺した様子でこちらを伺っている。燈実はわざと表情の変化が分からないように光の方向に首を傾げた。
「そうだな? そういうことになる」
「……へえ、燈実ちゃん、そういう趣味あったんや?」
「いや? 全く無い」
「……?」
暁蕾は、ますますわけがわからない、と言った顔でこちらを見ていた。少しだけ自身の口角が上がっているのを感じながら、その後の言葉を促す。
「……、それこそ、今更やない? 知りたいなら、やってみたらええやん。」
「……ほう?」
それは、命令を、ということか。こいつ、墓穴を掘ったな。楽しくなってきてしまった燈実は、少し考える素振りをして、……そうだ、少しだけ意地悪をしよう。
「では、先程言った通り手を繋いだり、ハグをしたりするのを、今ここで出来るか?」
「ええ……ほんとにやんの……? まあええけどな。ほら。」
そ、と手を握り、ぎゅ、と抱きついてくる。じんわりとした体温に混ざって聞こえる心音は、少し緊張しているように思えた。
なるほど、あまり得意では無さそうだ。
「ふむ、ありがとう。それじゃあ……、……いつも撫でられてばかりだから、撫でさせろ、と言ったら?」
「……なんやの? ええけど」
「わかった。」
なるべく彼が怖がらないように、頬を撫でてからそっと手を頭に載せる。よしよし、とそのまま撫でてみれば、少し不服そうな顔をしているのが見えた。なるほど、これは中々。
「……ふ、ありがとう。」
「なあ燈実ちゃん、これなんの時間?」
「なんだと思う?」
変わらずこちらを伺う暁蕾は、それになんの答えも得られないようだった。
「……では、キスをしろ、と言ったら?」
「ええ? なに、どうしたん? ほんとにそういう趣味が……?」
「いや、今回はそういう目的では無いな」
「ええ、……はあ、燈実ちゃんのお遊びには付き合ってられへんなあ」
ため息をついて、燈実の身体を少し押す。そうして部屋を出ていこうとした暁蕾の袖を、「待て」と、ぐい、引っ張った。
「……は、なに」
「暁蕾」
抱き締める。そうして、彼が全く抵抗できないようにしてから、ぐ、と顔を近付ける。目を見開いてこちらを見ていた暁蕾は、自体を察したのか、ぐ、と目を瞑った。
鼻先が当たる。1秒、2秒、……3秒。
少しの怯え。動揺、それと、……覚悟、だろうか。
まじまじと観察していれば、ようやく不思議に思ったのか、暁蕾が目を開いた。
「……せんの?」
「して欲しかったか?」
黙って解放すれば、警戒したようにす、と距離を取られる。それについ笑いが漏れて、それに刺々しくなんや、と返答。
「……いや? 少し意地悪をしたかっただけだ。すまない、実はお前の許容出来る範囲が知りたくてな。こういったもの関連の任務は苦手と見たから、今後は割り振らないようにしよう。他のことについては……、文章にでもまとめて柳さんに渡しておけ。それでは。」
「……は、」
ぱちくり、事態を飲み込むのに時間がかかっているようで、暁蕾はその場で何度か瞬きをした。
その間の燈実といえば、しれっとその場から居なくなっているものだから、暁蕾はその場にある怒りやら、羞恥やら、安堵やら、そんなたくさんの感情を持て余して一日を過ごすこととなるのだった。
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宝物の送り主
主な人物:エルティス・二グリア / ルーカス
どん。
人とぶつかった。まだ小さな、入学してきたばかりの1年生。もちろんこちらからわざわざ注目なんてしていないような、(それぞれの個性の強い子の学園では特に)あまり目立たない女の子だった。
「っあ、」
「……ああ、」
彼女の持っていた小さな袋からバサバサと色々なものが落ちた。
色々なもの――――例えば、年季の入った小さな靴、もう使うこともないような子供向けの指輪、その辺で拾ってきたと言われても納得できる石ころ。
そんなものだ。
「ご、ごめんなさい!」
慌ててそれらを拾い集め始めた彼女に、こちらこそごめん、手伝うよ、なんて在り来りな言葉を掛けてひとつひとつ拾っていく。
きっとこの小さな袋は、彼女にとっての、宝箱だったのだ。
ひとつ。ふたつ。みっつ。
それほど数は多くない、最後のひとつ――――手紙を拾い上げて、その既視感に首を傾げた。
見覚えがある。どこかで。
よくある普通の手紙だ。普通の封筒に、普通に封がされている。
裏を返す。少し汚い字で住所が書いてある。送り主の名前は――――ルーカス。
「あ、あの……?」
そこまで見てから、声を掛けてきた彼女に改めて向き直る。
上から下までまじまじと眺める。その後、手紙を見て、また彼女の顔を見る。彼女は困ったような顔をして首を傾げた。
「それ、返して貰えませんか?」
「……ああ、ごめんね」
彼女に手紙と、その他拾った宝物たちを渡す。ありがとうございました、と頭を下げかけた彼女を引き止めた。
「あのさ、」
息を吸う。すこし、緊張していた。
「その手紙、知らない人から間違いで届かなかった……?」
「……え?」
手紙の送り主は、僕だった。
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今日の分
主な人物:ルスティス・二グリア / ルーカス
「ほらルス、昼ご飯前に "" 今日の分 "" 、終わらせようよ」
ルーカスはそう言って、ポケットから一枚のコインを持ち出した。いやに使い古された、入学時はもっと、ピカピカだったそれ。
「いいだろう」
ルスはそれにこくりと頷いてみせた。
"" 今日の分 "" ――――今日の分の彼らの昼ご飯を、どちらが奢るか。
入学式からしばらく経ち、お互いに友人も少なかった頃。そんな時に気まぐれで持ち掛けたギャンブルが、なんだかんだ、一年も半分以上は過ぎた今日に至るまで続いている。
「今日は負けないぞ〜」
「どうかな、現状で勝ち負けの回数は全部合わせて引き分けなわけだ。どちらが勝ってもおかしくない。勝率は十分にある」
「君、なんだかんだこれを毎日楽しみにしてるよな?」
ピン。綺麗な動作で弾かれたコインは、くるくると宙を舞ってルーカスの手の甲へと落ちる。
「さて、どっちにする?」
「……表」
「よしきた、俺が裏ね」
ごくり。どちらかが息を飲んだ音を合図に、ルーカスはその手を開いて見せた。
――――表。
「あ〜〜!!」
「ふん、これで二百十六勝二百十五敗だな」
「毎回言うけどよく覚えてられるよね〜」
「楽しみにしているからな」
「いや、これは負けたからなんだと思うけど釈然としねえ〜〜」
ともあれ、負けは負けだとルーカスは唸った。
ルスはといえば、そんな軽口を叩きながらも最近お金がピンチなのだと嘆く友人のため、なるべく安く多く食べることの出来るメニューを頭に浮かべているのであった。
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2026年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
SS 帰り着く星
3336文字
私は、宇宙人だ。
――いや、正確には、君たちと同じく地球に住んでいる。地球も宇宙にあるといえばそうだけれど、宇宙という名称は地球のものであり、私が宇宙人を名乗るのは、変だ。
それでも、私は宇宙人なのだ。心の中にたった一つ、自分だけの星を持っている。
――だというのに。
「おや?」
「……な、」
「こんにちは。君、なんでこんな所にいるんだい」
「なんでこの星に私以外の人間がいるのよ――!!」
*
「落ち着いたかい」
「ええ……」
肩で息をする私を他所に、その男は平然とお茶なんかを差し出してくる。それをぶんどって口に含めば、思ったより苦くて思わず舌を出した。
「さて、……本題だが。この星は僕の星であるはずだよ。君はこの星にいるべきじゃない」
あくまで穏やかにその男は言った。ギ、と睨めば、きょとん、とした表情が返ってくる。
「この星は、私が作ったはずなんだけど」
「……、そうなのかい? すごいねえ」
呑気なものだ。すごいねえ、の言葉に拍手まで添えてくる。苛立ちがピークに来ている私は思わず用意された机をだん、と叩いた。
「あーもう! なんで私の星に知らない人がいるの! 勝手に入ってこないでよ!!」
「そうは言われても」
困った顔を微塵も見せずに優雅に苦いそのお茶を飲む男はまるで幼い頃夢見た王子様の様相だった。こんな状況でさえなければ。そう、ここに板が1枚挟まっていて、これがアニメや漫画の世界であれば。楽しく鑑賞でもなんでもできたかもしれないのに。
「この星を君が作ったのなら、確かに、ここは君の星でもあるんだろうな。でも、同時に、僕の星でもあるんだよ」
少しの間、ようやくこちらに視線を向けた男は、困ったように笑ってこう言った。
「帰る場所が無くなるのは、困るな」
少し、心臓がどきりとした。それでも、引く訳には行かなかった。
「それでも、ここは私の星よ」
「うーん……」
そしてここは、私の帰る場所でもあるのだから。知らない人になんか、踏み荒らされてたまるものか。負けじと睨めば、男は苦笑してからこう言った。
「でも君、地球人だろ」
「……」
「地球に君の家族や友人はいないのかい」
友人。
「居ないわけないでしょ」
「じゃ、帰らなくちゃならないよ」
あっけらかんとその男は言う。私は目を伏せる。帰らなくちゃならない。分かっている。
「それでも、ここは私の帰る場所なの」
「……」
「私の、私だけの……」
堂々巡りだと男がそのお茶を啜る。私は用意された椅子に行儀悪く体育座りをしてしばらく黙っていた。男は何も言わなかった。
「……君は、家族や友人は好きだよね」
「なによ」
男は言葉を紡ぐ。
「人の記憶や感情を見ることが出来るんだ」
びく、と私の肩が震えたのが分かった。恐る恐るその男を見上げる。涼しい顔をした男は、小さく小首を傾げてみせた。
「違った?」
「……違わ、ない、けど」
うんうん、と頷く。今、この男は、記憶や感情を見ることができる、と言った?
「それ以上は――」
「君には好きな子がいるよね」
私の言葉を遮るように男が言う。ああ、時すでに遅しだ。知られている。
「……だったら、なによ」
「その子のために帰りたいとは?」
「あの子は私なんか好きじゃないもの」
探るような視線がこちらを覗いている。居心地が悪くて膝に顔を埋めた。
「……そんなことは」
「ないって言う?」
「ないように思うけどねえ」
暗闇の中で、男の呑気な声だけがする。ああ、出来れば思い出させないで欲しかった。
「あの子のために、帰らないのよ」
言ってから、涙を堪えるように唇を噛み締める。涙は出なかった。
「あの子は、優しいから、私の相手もしてくれるけど――それが良くないの」
男は黙っている。
「どんどん、あの子のこと、好きになっちゃう。私、あの子の負担にはなりたくないの。――ともだち、だから」
男が小さく息を吐いたのが分かった。それに思わずむ、として顔をあげる。
「だからここまで来たの。それなのに私の星に勝手に住み着いて勝手に踏み荒らして、どういうつもり?」
「そんなこと言われてもなあ」
男は困ったように頬をかく。
「まあでも――自分の力じゃ、どうにもならないことがある、っていうのは、分かるよ。困ったね」
「一人でこの星に住んでるくせに?」
「僕にも『ともだち』がいたんだよ」
ふうん。私は喉が乾いた気がして改めてそのお茶に口をつけた。相変わらず苦い。美味しくない。
「君のこともどうにもならなさそうだな」
「そうよ。早く出ていって」
「それは出来ないよ。どうしてもって言うなら、君が僕の移住するための星を作らないと」
ぱちくり。私は瞳を瞬かせた。男は言う。
「僕はこの星と一緒に産まれたんだ。覚えてないかい」
「……どういうこと?」
「うーん、前途多難だなあ」
男は腕を組んで困った困ったというようなポーズをとった。それから、真っ直ぐな目でこちらを見やる。
「僕は君に作られたんだ。君の味方であるようにって」
「……作られた、って……、味方なんかじゃないくせに。信じられるわけないでしょ」
「そりゃまあ、君の意思だろ。僕は君に動かされているんだから、僕の知った事じゃないさ」
男はそんな意地悪を言う。思い出したくない。耳を塞ぐ。
「あんなこと言いながら、君自身が帰る理由を探してるんじゃないのか? 分かっているんだろう」
うるさい。
「だから、帰らなくちゃだめだよ」
「うるさい!」
ああ、ダメだ。
「作り物のお前に何が分かるんだよ! ああそうだよ、辛いことも苦しいこともほとんどないぬるま湯みたいな環境で、一人で勝手に自分の首を締めて動けなくなって、挙句の果てには宇宙まで逃げてきちゃった!」
男は静かにこちらを見ている。
「うるさいな、分かってるよ、分かってるけど帰りたいよ、死ぬのって怖いから! でも、帰りたくないよ、怖いんだもん、だって、仕方ないじゃん……」
涙が溢れて止まらない。男は静かにこちらを見ている。
「私の味方だって言うなら、ちゃんと助けてくれなきゃ嫌だよ、どうしてそんなに意地悪言うの……」
静かな宇宙に私一人のしゃっくりが木霊する。しばらく男は何も言わなかった。
「……君は僕で、僕は君だからだよ」
男がぽつり、と呟いた。それが『意地悪』の理由だとすぐに分かった。小さくため息を着いて男は続ける。
「助けて欲しい?」
男が聞く。
「君が望むなら、ここを君の星にしよう。ここは恒星だから、誰にも邪魔されないように惑星を作ってくれたら、僕が君に仇なす物は全部倒してあげる。でも、そこに君の友人がいても分からないかもね」
は、と目を開く。男を見る。私の答えなんか分かりきっている、と言わんばかりの顔をしていた。
「それでも、君が寂しい時に君を一人にはしない。名前を呼んでくれたらすぐに駆けつけるし、優しい言葉だけをかけ続けてあげよう。永遠に、二人だけの小さな箱庭で生きていくんだ」
それは確かに私が望んだことなのに、男の選ぶ言葉のせいで酷く恐ろしいものに思えた。
「どうする?」
ああ、それが答えだ。これが、帰る理由であり、言い訳だ。彼は言い訳を私にくれている。
帰って欲しいと、思っているのだろう。ああ、そうだ、そうだった。
「……わかった、よ」
震える手を握り締めて、私は彼に目を合わせた。
「私はこの星には残らない。けど、いつか絶対に帰ってくる場所はここ。それまで、貴方はこの星を守っていてくれるのね?」
だって私はあなたを、この星を守る王子様として作ったのだから。
「もちろんだとも、まかせて」
男は穏やかに微笑んだ。光の中で、私の名前を呼ぶ声がする。ぱちぱちと光が弾けた。
なにかを言おうとして、何も言えなかった私の代わりに、男が口を開く。
「あいしているよ、僕の主人、いつか、また会う時は――」
君の友だちも、紹介してね。
そんな声は光にかき消される。私の返事もきっと、その光に飲まれて、届かなかった。
――絶対に嫌だ!
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3336文字
私は、宇宙人だ。
――いや、正確には、君たちと同じく地球に住んでいる。地球も宇宙にあるといえばそうだけれど、宇宙という名称は地球のものであり、私が宇宙人を名乗るのは、変だ。
それでも、私は宇宙人なのだ。心の中にたった一つ、自分だけの星を持っている。
――だというのに。
「おや?」
「……な、」
「こんにちは。君、なんでこんな所にいるんだい」
「なんでこの星に私以外の人間がいるのよ――!!」
*
「落ち着いたかい」
「ええ……」
肩で息をする私を他所に、その男は平然とお茶なんかを差し出してくる。それをぶんどって口に含めば、思ったより苦くて思わず舌を出した。
「さて、……本題だが。この星は僕の星であるはずだよ。君はこの星にいるべきじゃない」
あくまで穏やかにその男は言った。ギ、と睨めば、きょとん、とした表情が返ってくる。
「この星は、私が作ったはずなんだけど」
「……、そうなのかい? すごいねえ」
呑気なものだ。すごいねえ、の言葉に拍手まで添えてくる。苛立ちがピークに来ている私は思わず用意された机をだん、と叩いた。
「あーもう! なんで私の星に知らない人がいるの! 勝手に入ってこないでよ!!」
「そうは言われても」
困った顔を微塵も見せずに優雅に苦いそのお茶を飲む男はまるで幼い頃夢見た王子様の様相だった。こんな状況でさえなければ。そう、ここに板が1枚挟まっていて、これがアニメや漫画の世界であれば。楽しく鑑賞でもなんでもできたかもしれないのに。
「この星を君が作ったのなら、確かに、ここは君の星でもあるんだろうな。でも、同時に、僕の星でもあるんだよ」
少しの間、ようやくこちらに視線を向けた男は、困ったように笑ってこう言った。
「帰る場所が無くなるのは、困るな」
少し、心臓がどきりとした。それでも、引く訳には行かなかった。
「それでも、ここは私の星よ」
「うーん……」
そしてここは、私の帰る場所でもあるのだから。知らない人になんか、踏み荒らされてたまるものか。負けじと睨めば、男は苦笑してからこう言った。
「でも君、地球人だろ」
「……」
「地球に君の家族や友人はいないのかい」
友人。
「居ないわけないでしょ」
「じゃ、帰らなくちゃならないよ」
あっけらかんとその男は言う。私は目を伏せる。帰らなくちゃならない。分かっている。
「それでも、ここは私の帰る場所なの」
「……」
「私の、私だけの……」
堂々巡りだと男がそのお茶を啜る。私は用意された椅子に行儀悪く体育座りをしてしばらく黙っていた。男は何も言わなかった。
「……君は、家族や友人は好きだよね」
「なによ」
男は言葉を紡ぐ。
「人の記憶や感情を見ることが出来るんだ」
びく、と私の肩が震えたのが分かった。恐る恐るその男を見上げる。涼しい顔をした男は、小さく小首を傾げてみせた。
「違った?」
「……違わ、ない、けど」
うんうん、と頷く。今、この男は、記憶や感情を見ることができる、と言った?
「それ以上は――」
「君には好きな子がいるよね」
私の言葉を遮るように男が言う。ああ、時すでに遅しだ。知られている。
「……だったら、なによ」
「その子のために帰りたいとは?」
「あの子は私なんか好きじゃないもの」
探るような視線がこちらを覗いている。居心地が悪くて膝に顔を埋めた。
「……そんなことは」
「ないって言う?」
「ないように思うけどねえ」
暗闇の中で、男の呑気な声だけがする。ああ、出来れば思い出させないで欲しかった。
「あの子のために、帰らないのよ」
言ってから、涙を堪えるように唇を噛み締める。涙は出なかった。
「あの子は、優しいから、私の相手もしてくれるけど――それが良くないの」
男は黙っている。
「どんどん、あの子のこと、好きになっちゃう。私、あの子の負担にはなりたくないの。――ともだち、だから」
男が小さく息を吐いたのが分かった。それに思わずむ、として顔をあげる。
「だからここまで来たの。それなのに私の星に勝手に住み着いて勝手に踏み荒らして、どういうつもり?」
「そんなこと言われてもなあ」
男は困ったように頬をかく。
「まあでも――自分の力じゃ、どうにもならないことがある、っていうのは、分かるよ。困ったね」
「一人でこの星に住んでるくせに?」
「僕にも『ともだち』がいたんだよ」
ふうん。私は喉が乾いた気がして改めてそのお茶に口をつけた。相変わらず苦い。美味しくない。
「君のこともどうにもならなさそうだな」
「そうよ。早く出ていって」
「それは出来ないよ。どうしてもって言うなら、君が僕の移住するための星を作らないと」
ぱちくり。私は瞳を瞬かせた。男は言う。
「僕はこの星と一緒に産まれたんだ。覚えてないかい」
「……どういうこと?」
「うーん、前途多難だなあ」
男は腕を組んで困った困ったというようなポーズをとった。それから、真っ直ぐな目でこちらを見やる。
「僕は君に作られたんだ。君の味方であるようにって」
「……作られた、って……、味方なんかじゃないくせに。信じられるわけないでしょ」
「そりゃまあ、君の意思だろ。僕は君に動かされているんだから、僕の知った事じゃないさ」
男はそんな意地悪を言う。思い出したくない。耳を塞ぐ。
「あんなこと言いながら、君自身が帰る理由を探してるんじゃないのか? 分かっているんだろう」
うるさい。
「だから、帰らなくちゃだめだよ」
「うるさい!」
ああ、ダメだ。
「作り物のお前に何が分かるんだよ! ああそうだよ、辛いことも苦しいこともほとんどないぬるま湯みたいな環境で、一人で勝手に自分の首を締めて動けなくなって、挙句の果てには宇宙まで逃げてきちゃった!」
男は静かにこちらを見ている。
「うるさいな、分かってるよ、分かってるけど帰りたいよ、死ぬのって怖いから! でも、帰りたくないよ、怖いんだもん、だって、仕方ないじゃん……」
涙が溢れて止まらない。男は静かにこちらを見ている。
「私の味方だって言うなら、ちゃんと助けてくれなきゃ嫌だよ、どうしてそんなに意地悪言うの……」
静かな宇宙に私一人のしゃっくりが木霊する。しばらく男は何も言わなかった。
「……君は僕で、僕は君だからだよ」
男がぽつり、と呟いた。それが『意地悪』の理由だとすぐに分かった。小さくため息を着いて男は続ける。
「助けて欲しい?」
男が聞く。
「君が望むなら、ここを君の星にしよう。ここは恒星だから、誰にも邪魔されないように惑星を作ってくれたら、僕が君に仇なす物は全部倒してあげる。でも、そこに君の友人がいても分からないかもね」
は、と目を開く。男を見る。私の答えなんか分かりきっている、と言わんばかりの顔をしていた。
「それでも、君が寂しい時に君を一人にはしない。名前を呼んでくれたらすぐに駆けつけるし、優しい言葉だけをかけ続けてあげよう。永遠に、二人だけの小さな箱庭で生きていくんだ」
それは確かに私が望んだことなのに、男の選ぶ言葉のせいで酷く恐ろしいものに思えた。
「どうする?」
ああ、それが答えだ。これが、帰る理由であり、言い訳だ。彼は言い訳を私にくれている。
帰って欲しいと、思っているのだろう。ああ、そうだ、そうだった。
「……わかった、よ」
震える手を握り締めて、私は彼に目を合わせた。
「私はこの星には残らない。けど、いつか絶対に帰ってくる場所はここ。それまで、貴方はこの星を守っていてくれるのね?」
だって私はあなたを、この星を守る王子様として作ったのだから。
「もちろんだとも、まかせて」
男は穏やかに微笑んだ。光の中で、私の名前を呼ぶ声がする。ぱちぱちと光が弾けた。
なにかを言おうとして、何も言えなかった私の代わりに、男が口を開く。
「あいしているよ、僕の主人、いつか、また会う時は――」
君の友だちも、紹介してね。
そんな声は光にかき消される。私の返事もきっと、その光に飲まれて、届かなかった。
――絶対に嫌だ!
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#TrendSync 四話
進捗 1155文字
「お祭り?」
「そう!」
学校の休み時間。地域のお祭りのポスターを見せつけながら、翼は二人に声を掛けた。
「お祭りのステージに立つトレンドシンカーを募集してるんだって! ボクはもう申し込んだんだけど、二人のステージも見れたらもっと嬉しいから」
朱希がふうん、と頷きながらスマホを操作する。開いたのはカレンダーアプリだ。何日? 再来週の土曜! いけるな、申し込むわ。ぽんぽんと二人の会話が続く。
「ももちゃんは?」
「えっ」
桃音はここしばらく、トレンドシンカーとしてステージに立つための覚悟を決めあぐねていた。翼と朱希は当然みたいに凄くて、自分が同じステージに立って見劣りするのが怖かったのもそうだ。
「私は……」
言葉に詰まる。翼は少しきょとんとしてから、仕方がないなというように笑って、話題を変えた。
「お母さんが、お姉ちゃんもお祭りに連れてきてくれるみたいなんだ」
「奏海さんが?」
「そう。ほら、お姉ちゃんって、ステージ好きでしょ。なにか変わったらいいなって」
「あ……」
夕空奏海。翼の姉である彼女は、不協和の影と呼ばれる人々のステージを見て、心を壊した。
それを見ることで心に不調を与えるステージをする人々をまとめて不協和の影と呼び、これは既に社会的な問題になっている。原因の早急な究明が急がれているが、進捗は芳しくはないらしかった。
「奏海さん元気?」
「うーん、変わらずかなあ」
「……そっか」
奏海が心を壊した日。翼にも、奏海にも、なにもできなかったことを、悔やんでいた。
「じゃあ、私も……ステージ、出る!」
「ええっ」
翼が首を傾げた。桃音は、翼と目を合わせて笑った。
「奏海お姉ちゃんに、見てほしいから」
そう言えば、翼も嬉しそうに、少しだけ申し訳なさそうに笑った。
*
「お姉ちゃん」
お祭り前日。練習から帰宅した翼は奏海の部屋へと向かった。奏海は変わらず外を見ている。
ぼんやりして、焦点の合わない瞳の中、彼女が何を考えているのかは、よく分からなかった。
「あのね、明日のお祭り、ボク、トレンドシンカーとして参加するんだ。朱希とももちゃんも一緒なの」
奏海から返事はない。
「お姉ちゃん、まだ、ステージのこと、好きかな」
奏海から返事はない。嫌というほど静かだった。
「楽しみにしてて、お姉ちゃん。最高のステージを届けるから」
奏海は窓の外を見ている。ぼうっとした瞳の奥に隠れている感情を探し当てようとして、諦める。
それからはしばらく今日あった面白いことや、楽しかったことの話をした。ある程度の話題が尽きたあたりで、翼は奏海の手を握る。
「……じゃあ、おやすみ、お姉ちゃん」
こうすると安心するでしょ、と、いつぞや奏海が教えてくれた仕草を返す。これも習慣だった。
自分の部屋に戻って、改めて窓の外を見た。星がきらきらと瞬いていて、こんな時まで能天気だなと思った。
*
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進捗 1155文字
「お祭り?」
「そう!」
学校の休み時間。地域のお祭りのポスターを見せつけながら、翼は二人に声を掛けた。
「お祭りのステージに立つトレンドシンカーを募集してるんだって! ボクはもう申し込んだんだけど、二人のステージも見れたらもっと嬉しいから」
朱希がふうん、と頷きながらスマホを操作する。開いたのはカレンダーアプリだ。何日? 再来週の土曜! いけるな、申し込むわ。ぽんぽんと二人の会話が続く。
「ももちゃんは?」
「えっ」
桃音はここしばらく、トレンドシンカーとしてステージに立つための覚悟を決めあぐねていた。翼と朱希は当然みたいに凄くて、自分が同じステージに立って見劣りするのが怖かったのもそうだ。
「私は……」
言葉に詰まる。翼は少しきょとんとしてから、仕方がないなというように笑って、話題を変えた。
「お母さんが、お姉ちゃんもお祭りに連れてきてくれるみたいなんだ」
「奏海さんが?」
「そう。ほら、お姉ちゃんって、ステージ好きでしょ。なにか変わったらいいなって」
「あ……」
夕空奏海。翼の姉である彼女は、不協和の影と呼ばれる人々のステージを見て、心を壊した。
それを見ることで心に不調を与えるステージをする人々をまとめて不協和の影と呼び、これは既に社会的な問題になっている。原因の早急な究明が急がれているが、進捗は芳しくはないらしかった。
「奏海さん元気?」
「うーん、変わらずかなあ」
「……そっか」
奏海が心を壊した日。翼にも、奏海にも、なにもできなかったことを、悔やんでいた。
「じゃあ、私も……ステージ、出る!」
「ええっ」
翼が首を傾げた。桃音は、翼と目を合わせて笑った。
「奏海お姉ちゃんに、見てほしいから」
そう言えば、翼も嬉しそうに、少しだけ申し訳なさそうに笑った。
*
「お姉ちゃん」
お祭り前日。練習から帰宅した翼は奏海の部屋へと向かった。奏海は変わらず外を見ている。
ぼんやりして、焦点の合わない瞳の中、彼女が何を考えているのかは、よく分からなかった。
「あのね、明日のお祭り、ボク、トレンドシンカーとして参加するんだ。朱希とももちゃんも一緒なの」
奏海から返事はない。
「お姉ちゃん、まだ、ステージのこと、好きかな」
奏海から返事はない。嫌というほど静かだった。
「楽しみにしてて、お姉ちゃん。最高のステージを届けるから」
奏海は窓の外を見ている。ぼうっとした瞳の奥に隠れている感情を探し当てようとして、諦める。
それからはしばらく今日あった面白いことや、楽しかったことの話をした。ある程度の話題が尽きたあたりで、翼は奏海の手を握る。
「……じゃあ、おやすみ、お姉ちゃん」
こうすると安心するでしょ、と、いつぞや奏海が教えてくれた仕草を返す。これも習慣だった。
自分の部屋に戻って、改めて窓の外を見た。星がきらきらと瞬いていて、こんな時まで能天気だなと思った。
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