No.345

#宇宙の箱、しあわせのかけら
1012文字


 兄は自分の前で無理しがちなところがある。ミラは嫌という程知っていた。
 ルイに手伝ってもらって、確証を得たことがある。人の心の正体は箱のようなものだ。そこから必要なものだけを抜き出し、別の箱に入れる。それだけなら、装置を作るのも簡単なことだった。
 長いこと見ていたから知っていた。兄が最近疲労していたこと。ため息が多くなって、笑顔に無理が滲むようになって、最終的に、彼は弱音を吐いた。
 お兄ちゃんは、やっぱり、幸せじゃなかった。
 これだけは、ミラの中で揺るぎのない真実だった。

 小人たちに手伝ってもらって、その装置を作る。小人たちは、ものを作る技術は高いが、設計するための技術はそこまで持っていないようだった。
 出来たものを迷いなく起動する。その場の誰も止めなかった。
 次の瞬間、ぐわん、と大きな振動がして、箱にそれが集まったことを確認して、立ち上がる。こんなところで留まっている訳にはいかなかった。

 次の星では、一人で起動した。どの星でも、周りのことはあまり見なかった。あの時、ちゃんと現実を見ていれば、こんなことにはならなかったのだろう。

 自分のせいでのたうち回る彼を見て、自分は何を思ったのだろう。心配? どの面を下げて。悔しさ? それはそうかもしれない。が、そんな場合ではなかっただろう。ひとつずつ感情を否定しては何も残らなくなる。

 兄を、幸せにしたかった。本当にそれだけだった。ほとんどの人々はミラを責めなかったが、遠くから刺すような視線を感じた。彼らにも、自身にとっての兄のように、大切な人がいたのだろう。

 考えることは好きだ。けれど、それは技術のことだけだった。それ以外は要らなかった。どちらかといえば、それは兄の得意分野だった。
 
「お兄ちゃん」
「なあに、ミラ」
 だから、兄に聞くのが早いと思った。
「お兄ちゃんにとって、昔の方が幸せだった?」
「……それは、」
 兄は少し黙って考えた。しばらくして、首を横に振った。
「それは、無いよ。星にミサイルが降ったから、今は、テオたちとも友達でいられるんだ。……でも、」
「いや、そもそも幸せって言うのはきっと、比べるものじゃないんだよ。きっといつだって、その時の幸せがあるものだからね」
 なんとなく納得のいく説だった。ミラは続けてこう聞いた。
「それで、納得してる?」
「うん、そうなるかな」
 ノアは頷いた。じゃあ、いいか。ミラも納得したので、それ以上のことは何も言わなかった。畳む


▼本編
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