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イロドリ☆リンク!
 誰かの部屋の隅で、描きかけの絵が眠っているみたいに。誰にも聞かせられなかった歌がある。言えなかった言葉がある。
 それでも、いつか、届けられると信じている。
 そんな明日を祈っている!

 闇に飲まれる前に、もう一度と、少年少女たちは、今日も色を重ねる。

「イロドリ☆リンク・オン!」
 ――――きっと私たちは、どこまでも自由だ。


作中用語
・世界観
 この世界では、絵・音楽・文章・その他諸々、自己表現の行為に心の色が宿るとされている。
 それは人の感情や想いから生まれたエネルギー――――カラリエと呼ばれる、奇跡の力。

 しかし、人の心には描けない、届かない、認められない、などの負の感情も存在する。
 それらが生み出す闇のエネルギーが、災厄の存在――――ノクスを生み出すのだ。
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・カラリエ
 カラリエは純粋な想いや、自己表現の熱から生まれるエネルギー。
 五感に干渉する力があり、視覚・聴覚・触覚を通じて人に影響を与える。
 カラリエを安定させるには、自分自身の気持ちに正直であることが重要。
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・ノクス
 創作者の負の感情や絶望が生み出す存在。作品や心を黒く染める闇。

 大昔、人類が初めて、伝わらないという絶望を経験したとき、最初のノクスが生まれた。
 ある伝説の創作者が、生涯をかけた作品を誰にも理解されないまま死んだ。その瞬間に溢れ出した永遠に届かなかった想いが凝縮し、原初のノクス、ヴォイドとなった。
 ヴォイドは今も世界の深部に眠っており、人々の負の感情を養分として活動を続けている。現代のノクスはすべてヴォイドのかけらが人の心の闇に宿って形を成したもの。
 つまり、ノクスは人間が生み出し、人間が育て続けている存在だ。

 ノクスに支配された存在はダークアートと呼ばれ、心の奥にある本当の声を暴走させてしまう。ダークアート化した存在は、その人の本当の声を叫びながら暴れる。救うには、創作を通じて相手の心に光を届けることが必要だ。
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・無彩色
むさいしき
 ヴォイドに侵され、創作を楽しめなくなった人々が集まる組織。ヴォイドに共鳴し、今日もノクスを生み出している。
 表現するということは自分をさらけ出すことだ。自分をさらけ出せば、傷つき、否定され、届かない絶望を味わう。
 だったら最初から描かない方がいい。歌わない方がいい。何も表現しない方が、人は傷つかずに済むだろう。
 無彩にとって、色は希望ではなく、痛みの種。世界から色を消すことこそが、本当の優しさであり救済だと考えている。
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・アトリエピース/リンクツール
 少年少女たちは「アトリエピース」をリンクツールに装填して変身する。
 リンクツールは個人の自己表現のスタイルに応じて形状・操作感が変化する。
 変身後の衣装や武器は「自分の本音」に忠実であり、無意識の理想や未練も反映される。
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・変身
 少年少女は自己表現に込めた想いをアトリエピースに宿し、リンクツールと共鳴することで変身する。武器・衣装・技は、それぞれのジャンルや心のテーマに応じて個性的に変化する。
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・イロドリ☆リンクス
 カラリエに選ばれ、創作の力でノクスと戦う少年少女たちの総称。

 通称リンクス。変身可能な者たちは、ごく限られている。
 カラリエとの共鳴には強い想いと、創作に向き合う覚悟が必要。
 ノクスと対峙するうちに、自分自身の闇とも向き合わざるを得なくなる。

 リンクスの中には心を保てず脱落した者や、変身できなくなった者も存在する。
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・組織「アトリエ」
 リンクスを支援する秘密組織。表向きは民間のアート支援団体として活動している。メンバーには元リンクス・研究者・芸術家などが含まれる。
 リンクスを発掘・保護し、アトリエピースを届ける役割を持つ。
 全員が善人とは限らない。組織内にもカラリエをもっと活用すべき、だったり、人間の感情を管理すべきなどという、過激派が存在する。
 本部の場所は非公開。各地に支部アトリエが隠れ家的に存在する。
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・アトリエフィールド
 ノクスとの戦闘は、現実空間から切り離されたアトリエフィールドで行われる。
 これは戦う者の心とリンクして生まれる精神世界+芸術空間。
 一般人には見えず、時間もほぼ静止する。

 フィールドはその時のノクスの感情のテーマによって風景が変わる。
 フィールドが崩壊すると強制退場。未浄化のノクスは現実に溢れ出す。
 リンクス同士の感情が対立していると、フィールドが不安定になる。
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・一般人の認識
 ノクスの被害は、突然の創作活動停止、理由不明の無気力、として現れるため、社会的にはスランプ、メンタルの不調、と思われている。アトリエフィールドの痕跡(色の残滓・空間の歪み)は、光の見え方がおかしかった、程度の記憶になって残る。
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・秘密保持のルール
 変身中の姿・名前・能力は明かしてはいけない。
 秘密を知った一般人が巻き込まれるケースもある。
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・変身口上
アトリエピース、(各自のアトリエピースの名前)、リンク―――
「イロドリ☆リンク・オン! 3、2、1! (変身名)!」
「(キャラごとの想いの一言)」
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・人為的なリンクス
 本来、リンクスは自然に発生した強い想いとカラリエが共鳴した者から選ばれる。
しかしアトリエ内のある大人が、才能ある子を待つのではなく、こちらで作ればいいと考え、人工的にカラリエを注入・強制共鳴させる技術を開発した。
 しかし、この技術には欠陥がある。自然発生のリンクスは自分の想いとピースが完全に一致しているが、人工的に作られた場合、想いとカラリエの結びつきが薄い・ズレている。

 結果、変身は出来ても自分の本当の声ではない部分が混ざってしまうことがあるだろう。自分の気持ちに正直であることが共鳴の安定条件だ。人工的に植え付けられた想いは本人の正直さとズレが生じやすい。

 自然な共鳴なら少しずつ心が慣れていくが、人工共鳴は急激にカラリエを注入するため、精神的な負荷が大きい。使った後しばらく、感情が誰のものか分からなくなる、といった副作用が出るかもしれない。
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登場人物
リンクスたち
・天川ひかり
 あまかわ ひかり
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 160cm
 創作ジャンル:歌、ダンス
 変身名:リンクス・フォルテ

 性格:
 エネルギッシュで人懐っこい少女。世界一のアイドルを目指している。紬や舞桜とは幼馴染。
 歌やダンスを好きでいたいという気持ちが強いがために、失敗が怖い。傷つくことはそう怖くないが、好きなものを嫌いになってしまうのが何よりも怖い。
 幼い頃から歌とダンスが好きで、地元のコンクールや発表会に出ていた。
 そんな中、ひかりの、一番のファンだった女の子がいた。年下の、かわいいかわいい、妹みたいな。ひかりを見て自分もと歌とダンスを始めた子。
 ある時、大切な本番で、声が出なくなった。その子と喧嘩した翌日のことだった。理由はもう覚えていないくらい、些細なことだった。ステージで固まって、泣いて、逃げた。しばらく上手く歌えなくなった。
 そうしてひかりが落ち込んでいるのに引っ張られたのだろうか、責任を感じたのだろうか。今となっては分からない。当時、ひかりはしばらくSNSを見ていられなくて、落ち着いた頃に、本当に久しぶりに、SNSを見た。
 その子のアカウントが消えていた。
  歌やダンスが好きだった。歌やダンスを好きな自分が好きだった。あの子は、どんな私が好きだっただろうか。もう分からない。分かりたくもなかった。
 歌とダンスをするのは好きだ。でも、そんな過去を思い出させる歌とダンスを、それそのものを、胸を張って好きだと言えるかどうかは――――もう、分からなかった。

「あたし、天川ひかり! アイドルになるんだ、絶対!」
「本当は、怖いよ。でも……諦める方がもっと怖い。 そうでしょ? だって、こんなに好きなんだもの!」
「うるさいっ、うるさい! だって、仕方ないじゃん、あたしだって完璧じゃない……っ」
「あたし、頑張る。傷ついても、完璧じゃなくても、もう手放さないって決めたんだ!」

 アトリエピース:星型のブローチ
 武器:リズムブレイド
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・華房 紬
 はなふさ つむぎ
 16歳 / 男 / 高校1年生 / 160cm
 創作ジャンル:詩歌、文章
 変身名:リンクス・インク

 性格:
 少しぶっきらぼうで素直じゃない男の子。ひかりと舞桜とは幼馴染だが、仲が良い訳ではないようだ。
 詩や歌などから文章まで。言葉を扱うことが好き。こんなにも言葉が好きなくせに、口から出る言葉が素直じゃないことを少しだけ気にしている。
 書いた言葉は、選べるから、好きだ。口から出る言葉は選べない。書かない言葉は、なんだか軽い気がしてならなかった。でもその分、書いた言葉を、大切にしたい気持ちを、雑に扱われることが何より怖いのだ。だから、信頼できる人にだけこっそり見せている。馬鹿にされたくないから。
 幼い頃から自然と書く方が自分らしかったのだ。でも、喋らなかったせいで周りには馴染めなかった。家族はそれを心配していた、愛情から、もっと話してみたらどう? と、何度も言っていた。このままの僕じゃダメだと思って喋ってみたが、どうにも上手くできなかった。
 気付けばまた、あまり喋らなくなった。家族に心配されているのは理解しているが、だからといって、どうしようもない。

「僕は紬。……よろしく。」
「あっ、おい、天川!  胡桃まで……!! ああもう、おい待て!」
「変なの……、それ、俺が書いたんだ。それでも綺麗に見える?」
「ああクソ、そうだよな、お前らはそういうやつだよ……! 俺も行く!」

 アトリエピース:羽根ペン
 武器:レイピア
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・胡桃 舞桜
 くるみ まお
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 156cm
 創作ジャンル:作曲
 変身名:リンクス・アウロラ

 性格:
 真面目でちょっと引っ込み思案な女の子。紬とひかりとは幼馴染だが、紬のことはちょっと怖いと思っている。常識人ポジション。
 本人は普通でいたいと思っているが、それは傷つかないための言い訳で、本当は普通じゃいたくない。
 昔はもっとはつらつな子供だった。だから、家族に大人しくしていなさい、と言われることが多く、怒られることも多かった。別に大きな失敗があった訳じゃない。ただ、怒られないための術として、言われた通りに本当におとなしくなってみたら、びっくりするほど怒られなくなった。
 何が悪くて怒られているのかは、舞桜もよく分からなかった。
 そんな中で、音楽だけは手放せなかった。耳コピから始めて、次第に作曲に手を出すようになった。誰かの音楽に踊り出しそうになったあの気持ちを、泣きわめきたくなった時のあのこころの動きを。自分も誰かに届けられるかもしれない。でも届かなかったら、またわかってもらえなかったときと同じように、傷つくのではないか。その怖さが、いつも隣にある。

「胡桃舞桜です、よろしくお願いします……っ!」
「いいなあって思ったの。わかんないけど……すごく、いいなあって。だから、音楽にしてみたんだけど……」
「わたしの音楽なんかじゃ、なんにも変わらないって思ってた。でも、もし届いたなら、それで……いいかも」
「わたしは、わたしにできることをやるよ。できることなんて、少ししかないけど、それでも」

 アトリエピース:音符の髪留め
 武器:指揮棒
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・藤枝菫
 ふじえだ すみれ
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 153cm
 創作ジャンル:絵・イラスト
 変身名:リンクス・シルエット

 クールで感情がなさそうに見えるが、実は一番激しい波を持っている女の子。

 透が重い病気で入院していたとき、菫はそばにいた。透は色んな話をしてくれた。病気のこと。窓から映る景色のこと。季節によって変わる空気の匂いのこと。それこら、自分の創作のこと。でも、ある日を境に彼は創作無気力になった。ノクスに侵されていたのだと知ったのは、後々のことだった。なんとかならないかと当時の彼の主治医だった猫田を待ち伏せして感情をぶつけた。
 猫田は少し困った顔をしてから、ひとつだけ方法がある、と零した。菫は、それに縋った。自分のことなどなんでも良かった。

 猫田は、リンクス、という存在の話をした。ノクスという存在のこと。ヴォイドが全ての元凶であること。そのうえで、君が戦うのなら、とアトリエピースとリンクツールを差し出した。

 それからずっと、菫は彼の元でリンクスとして功績を上げてきた。

「私は藤枝菫。よろしく」
「透。今日の体調は? ……そう、元気ならいいんだ」
「だって、私の声だって、絵だって、君には届かなかったじゃないか……! 君を失うよりマシだと思ったんだよ、ただそれだけだ、自分のことなんか、どうでも良いって思った!」
「猫田先生、私は……、あなたのことを恨んでなんかない。いつだって、創作は楽しいものですよ。思い出して、先生」

 アトリエピース:パレット
 武器:パレットナイフ
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・瀬川透
 せがわ とおる
 16歳 / 男 / 高校1年生 / 178cm
 創作ジャンル:演劇・脚本
 変身名:リンクス・ヴィータ

 性格:
 幼少期、重たい病気を抱えていた。必ず治る、とは言われていたけれど、しんどい日々だった。それでも、体が動かなくとも、頭の中で脚本を書き続けていた。自分が動き回れる自由な世界を書いていた。その脚本を今も持っている。
 ある日突然創作が出来なくなった時期があった。どれだけ考えて書いても書いても、現実の僕は病床にいる。こんな夢物語に縋って、もし、もし仮に、なにもかも上手くいかなかったら。
 病気が、治らなかったら?
 そう思ってしまって、しばらく何も書けなかった。それでも、菫は透の創作が好きだと言ってくれた。と、……思う。具体的なエピソードとしては残っていないが、そういうことを言われた記憶があるのだ。そしてそれは菫だったと、確信があった。それでも書くんだと思えるようになったことを彼女に伝えたら、彼女はわんわん泣き出してしまって大変だった。
 いまは病気は完治している。主治医の猫田には心から感謝している。

「僕は瀬川透。よろしく」
「菫、なんか隠してんだよなあ。なあ、あんたらなんか知らない? ……ふうん、あんたらも隠し事?」
「なんであいつにそんな危ないことさせるんだよ! ……くそ、そんなこと知ってたらちゃんと止めてたのに、なんで教えてくれなかったんだ!」

 アトリエピース:小さなランタン
 武器:ランタン
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大人たち
・猫田 心音
 ねこた こね
 27歳 / 男 / リンクスの研究者 / 174cm
 創作ジャンル:もうしてない

 性格:
 仕事が恋人。昔からお金を稼ぐために仕事をするのが好きで、コンビニのアルバイトからヒーローショーの敵役の仕事まで色々やった。全部楽しかったらしい。
 運動をすることが好きでその道の友人が何人か居る。よく色々なことを教えて貰っていたため動くのは上手い。

 映像を撮るのが好きだった。人を見るのが好きで、記録するのが好きだった。
 ある日、仲間の弱いところを無意識に切り取ってしまった映像が広まって、その人を深く傷つけた。悪意はなかったし、広めるつもりもなかったそれが、何故かSNSに投稿されてしまっていたのだ。
 結果的には、それはアトリエの過激派達の仕業だったのだが。
 大きな混乱の最中、ひとつ理解できたのは、自分がその映像を撮らなければこんなことにはなっていなかったということだった。自分を許せなくなって、カメラを持てなくなり、変身もできなくなり、リンクスを辞めた。その仲間――――陽菜とは、今もギリギリ繋がっているが、猫田から距離を置いている。
 その件をアトリエに握られており、人為的にリンクスを育成できるかを調べる研究をやらされている。本心ではやりたくないのだが、逆らえない。逆らったら、過激派たちが何をしでかすか分からないから。リンクスたちには秘密の研究だった。
 菫にそれを託したのは、それがちょうど良かったからだ。悪意ではなかったが、善意でもなかった。彼女を利用している自覚はある。それでも、そうするしか無かったのだ、お互いに。

「上から読んでも下から読んでもねこたこね! み〜んな大好き猫田先生だよ〜。好きに呼んでちょうだいね〜」
「うんうん、今日も怪我はないみたいだね、良かったよ。なんだかんだ君たちの身が一番大切だからね」
「―――……、ごめんね。あの時、俺にはそれしか出来なかったんだよ」
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・花咲 陽菜
 はなさき ひな
 27歳 / 女 / 舞台役者 / 156cm
 創作ジャンル:演劇

 性格:
 現役の舞台役者さん。猫田と律とは元々仲間だった。
 憧れの役者に近づきたくて演技を始めた。認められたくて、舞台の上の自分を見てほしかった。舞台の上の自分だけで良かったのだ。
 でも猫田の撮ったドキュメンタリーが、舞台裏の弱い自分――――悔しがって、不安で、うまくいかない自分を広めてしまった。見せたくない自分を、意図しない形で見られて、その時の反響は好意的なものが多かったが、それすら確認できないくらいに怖くて、傷ついた。今も、弱い自分を自分の意志で舞台に乗せることは、怖いのだ。強い自分は見せられる。でも弱さをちゃんと自分の手で差し出すことがまだできないのだ。
 それが怖くなって、一度演技をやめた。でも全部に負けたくなかったから戻ってきた。その強さは悔しさから生まれている。明るさは表面じゃなくて、ちゃんと戦って手に入れたものだ。

 猫田のことは許している。猫田が距離を置いているのを薄々感じながら、ずっと待っている。猫田の本来の姿を、楽しそうにしているときの顔を、誰より知っているから。いつか、また、戻って来てくれると信じて待っている。

「あの人、なんだかんだ強がりさんで、意地っ張りさんだからね〜。今も自分を許せてないんだろうな。分かってるよ」
「馬鹿! ほんと馬鹿、あんたっていっつも人のこと頼らないよね! あたしが言えたことじゃないかもしれないけどさっ」
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・灰島 律
 はいじま りつ
 27歳 / 女 / 舞台演出家 / 160cm
 創作ジャンル:舞台美術・装飾

 性格:
 猫田と陽菜の共通の友人。淡々としていて、自分の感情は行動で示す子。猫田と陽菜の緩衝材だったが、それを苦にも思っていなかった。三人がちゃんと話せる場所を自然に作っていたのは律だった。

 学校で、自己表現のつながりで出会い、律が二人をつないだ。律と猫田は、律の舞台セットを猫田がドキュメンタリーとして撮ったのがきっかけに。律と陽菜は、最初は普通のクラスメイトとして仲良くなり、やがて演劇と舞台美術で関わるようになった。三人でいた時間はわちゃわちゃしていた。猫田と陽菜がにぎやかで、律が淡々とそこにいる。
 猫田と陽菜の事件で三人の関係は壊れた。陽菜は傷ついたが乗り越えた。猫田は自分を許せなくて距離を置いた。律は何もできなかったから、今も二人から離れずにいる。三人とも、あの頃には戻れないとわかっている。でも律だけが、まだ諦めていないのだ。

 二人の間にいることが好きだった。それが自分の場所だった。でも一番大事な瞬間に何もできなかった。陽菜を慰めることも、猫田を引き止めることも。だから今はせめて、離れない。あのとき動けなかった分、せめて今はそこにいることを決めたのだ。

「私は律。君たち、心音のこと知らない? ああ……、いつも猫耳の帽子を被ってる、アトリエの研究者なんだけど」
「……陽菜、心音。私は、あなたたちがそばに居てくれたら、それが一番嬉しいんだよ」
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無彩色幹部たち
・漆戸 楓
 うるしど かえで
 30歳 / 女 / 無彩色幹部 / 171cm

 性格:
 元々はアトリエの研究員だった。感情もカラリエももっと管理・制御するべき、という思想を持っていたが、周囲には理想論・過激派としてまともに相手にされていなかった。
 自然な感情に任せていたら、いつか誰かが壊れる、という自説を、証明してみせるために事件を起こしたのだ。
 猫田、陽菜、律という、当時自然な絆で強く結びついていたグループを選び、無自覚の悪意のない映像をあえて拡散させた。
 結果、陽菜は深く傷つき、猫田は自分を許せなくなってリンクスを辞めた。彼女にとってこれは、管理していないから壊れるんだ、という自説の証明であり、成功体験となった。
 しかし、この一件は楓の主張を証明するどころか、アトリエから除籍される結果になった。
 アトリエは何も分かっていない。組織で動けないのであれば個人で動くのみだ。そうして動き出した楓を拾ったのが円だった。円は、無彩色で研究を進める手伝いを代わり、無彩色に情報を提供することを求めた。
 利用できるものは何でも利用したほうが良い。そうして楓は、無彩色に身を置いているうちにノクスに侵されていった。今では立派に無彩色の幹部である。

「馬鹿ね、感情も表現もそれから生まれる力さえ、管理下に置かないからこうなるのよ」
「円は私のことを手伝ってくれると約束してくれた。それだけよ」
「私の目的はアトリエの解体と新しい組織の設立よ。邪魔しないで頂戴」
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・白瀬 このみ
 しらせ このみ
 16歳 / 女 / 無彩色幹部 / 157cm

 性格:
 ひかりに憧れて歌とダンスを始めた、あの消えたアカウントの子。
 ひかりと喧嘩した後、自分も声が出せなくなった。誰にも理解されないまま、一人で抱え込み続けた。そのうち、ノクスに侵され、無彩色に拾われた。表現をやめれば、もう傷つかない、という理念に心から救われたと、本人は信じている。
 ひかりへの感情は恨みだけではなく、またあの子に嫌われたらどうしよう、という怖さが根底にある。無彩色は表現しなければ、その怖さごと消えると約束してくれた存在であり、それが救いに見えた。
 ひかりも早く楽になればいいと思っている。

「ひかりちゃん、久しぶり。私だよ、このみ!」
「ひかりちゃんも早く楽になればいいの。こんなこと、もうやめよう?」
「わ、私、違う! また踊りたいなんて、歌いたいなんて、思ったことない!!」
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・有ヶ谷 円
 ありがや まどか
 27歳 / 男 / 無彩色幹部 / 181cm

 性格:
 無彩色の理念を心から信じているわけではなく、無彩色の、表現をやめれば救われる、という言葉を、人を引き込むための良い言葉、として使っている側面が強い。
 人を見る目に長けていて、この人は今、社会や組織からはみ出しかけているというタイミングを逃さない。楓を拾った時のように、優しい言葉と実利をセットで差し出している。冷たいわけではなく、むしろ物腰は柔らかい方。ただしその優しさは、相手を無彩色に定着させるための手段でもある――――本人の中でその境界が曖昧になっている。

 かつての円は、リンクスだった。
 自然な共鳴でリンクスに選ばれた一人だった。創作ジャンルは、様々なものの演出・企画。
 アトリエの中でも特に優秀で、戦闘力よりも仲間をまとめる力、才能を見抜く力で評価されていた。
ある時期、アトリエ上層部から有望なリンクスたちを集めて、精鋭チームを作れという指示を受ける。円は、自分の目利きに自信があったし、期待に応えたい気持ちもあった。だから、迷いながらも懸命に人を選び、集め、まとめ上げた。

 しかし、そのチームはアトリエ内の過激派が、カラリエの力を試すための実験的な部隊として利用するためのものだった。円は、それを知らずに人を集めてしまっていた。
 結果、無理な戦闘や実験まがいの任務を繰り返した仲間たちの中から、心を壊す者、リンクスとして再起不能になる者が出た。円がこれは良い才能だと見込んで誘った人たちが、次々と壊れていった。
 円は抗議したが、組織の中ではすでに決まったこととして処理された。円自身は有望な人材を集めた功労者として評価される一方、壊れていった仲間たちは記録からも静かに消されていった。
 円にとって一番堪えたのは、自分の見る目が、誰かを守るためではなく、利用されるために使われていたという事実だった。

 才能は、放っておいても誰かに利用される。それなら、自分が先に見つけて、自分の手元に置いた方が、まだマシだ。これは正義感でも復讐でもなく、一種の諦めと防衛。円は、もう誰にも良かれと思って人を差し出したくない。だから、自分がコントロールできる場所に、自分の意思で人を集めている。
 無彩色の理念を、円自身は半分信じ、半分は利用されるくらいなら、何も持たない方がいいという自分の傷から出た結論として受け入れている。

「僕は有ヶ谷円。君、困ってるだろ。力を貸すよ」
「僕は見る目があるからね。君の才能は確かなものだ」
「君たちにとっても、アトリエなんて、悩みの種なんて――――無い方が良いんじゃないか?」
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イロドリ☆リンク!,文章

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