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#概念創作  >254の話

〇書くに至った経緯
自分の思考に一区切りついたので、旅人さんにも旅を終えてもらおうかと思って……。少なくとも今の私は彼を生み出したときの私じゃないからな、と。スペシャルサンクスはフォロワー。勝手にお借りした様々達。
当時、救われたくて創作をしたんだろうなと今となっては思います。設定を読み返すと当時のことがありありと思い出されるね。

自分のために書いたし、当時のフォロワーに聞いて欲しくて書いたんですが、あまりにもわかりにくい文章になった気がしています。身内ネタすぎる!

参考までに当時の募集文と設定を載せておくので気になったら読んだり読まんかったりしてください。

〇当時の募集文
・やりたいこと
自分の概念を元とした自創作が作ってみたい!
そこにフォロワーの概念もぶち込みたい。

・やってほしいこと
自分の概念の見た目と性格を練り私に送り付けて欲しい!別にまんま本人じゃなくても良いです。理想の姿でも推しになりそうな人間でもなんでも。文章だけでも良いです。見た目は無ければ私が勝手に錬成します。
世界観とかは勝手にいじくり散らすのでなんでも許せる方のみ
あとはあまり期待せず見守っていただけると幸。

・注意事項
私の概念を中心とした創作になると思います。
こう、「私が主人公です!!!」というよりは「私視点」みたいなイメージなんですけど、それって何が違うの?って言われたら分からんので黙ります。
あとなんか 適宜確認取ります!!こんな感じのことしたいよ〜を空リプでもDMでも確認取るのでそこら辺は一応安心してもらえれば幸!です!

・世界観
世界に寿命がある世界。

少なくとも橙の自創作の中では遅かれ早かれいずれ終わりゆく世界にみんなたちには生きてもらおうかなと思っています。

世界設定については設定したければ好きに設定していただいて構いません。寿命についてどう思っていても良いです。それらに対抗する手段があっても良いし、無くても良い。マジで好きに決めていただいて良い!です。
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〇旅人の設定
終わりゆく世界を観測する観測者であり、旅人。元々は他の世界で神様と言われる存在だったが、誰も彼もを救おうとする性格のせいでなにもかもが上手く回らず世界から追い出され、それからは宛もなくふらふらと色んな世界を旅をし続けている。

様々な生きている者たちの願いを知っている。それら全てを救うことが難しいことを承知した上で救いたいと願っており、そして自分も、救われたいと願っている。要するに割り切るのがめちゃめちゃ下手なひと。神様としての力は既にほとんど無い。多少の魔法(と表現するのがいちばん近い)が使える。ただ、魔法は願いの力である。あまりにも大きな願いは同時に、自分自身の願いを削ることとなる。

旅人の願いは「他者を救い、自身も救われること」。この大きな願いは少しでも削れば道は遠く離れる。

世界中の誰かと、自分も一緒に救われる道を模索して足掻きながら、最低限できることとして観測している。

結局は終わりゆく世界の結末と、そこに生きる誰かたちを観測し、記録する。それになんの意味があろうとなかろうと、きっといつか、誰かの何かにはなれる。そう信じている。

一人称:ぼく、二人称:あなた、(名前)さん


「この花は、ネモフィラっていうんです。……もうぼくには関係の無い世界の花なんですけど、ぼくはこの花が好きなんです。」
「青色?ああ、たまたま好きな花が青いものだったならそれに合わせているだけで……別に、青色が特別好きってわけじゃないですよ。」

「どうしたら、ぼくは正しく楽に生きられたんだろう、って思わなくもない、ですけど。でもぼくが、生きるものたちを踏みにじって、その先にある自分だけの利益を手に笑うような人じゃなくて良かったと、ぼくはぼくをそう思っています。ぼくはしんどいけど、でも、そしたらだれも独りじゃないでしょ?」



旅人が生み出した、少し不格好な世界。旅人以外のそれぞれの子たちはもともと違う場所からやって来ている。それぞれ元いた場所の記憶は無い。
世界が無いと存在することすら出来ない、ただ、消えることが怖い。旅人は臆病な神だ。
願いを削ることは、心を摩耗させることとそう変わらない。それを旅人が自覚するまでに、いくつ世界が滅んだだろう。

旅人という神が居るから世界は生まれ、そして簡単に滅びていく。他者を救いたいと願いながら自分が救われたくて、心のどこかで世界なんて終われば良いと思っているのだ。
その願いを観測することの出来たえらい人たちは、顔も名も知らぬ旅人を今日も探している。
しかし、世界が滅びるという運命は、滅びた方が良いという判断は、神が下したものなのだ。

旅人という神は自分勝手であり、自分に縁のある者としか出会う事は無い。
だから、旅人がそれを自覚することは無く、今日もいつも通り、世界を作り上げ、回していく。


・願っていること
「他者を救い、自分も救われること」

もっと詳しく言うと、「誰も彼も、生きているものたちが救われる世界」、もしくは「傷つかずにいられる世界」を望んでいる。
それがどれだけつまらないものだと言われようと、ぼくはもう傷つきたくない。結局は全て自分のエゴであり自分のため。

・理想と現状
理想:誰も傷つかなく、誰も傷つけなければ、ぼくも救われるのに。
現実:当たり前に何かに傷ついた人がいるし、他人を傷つける人もいる。それらは全て、傷つけた人が100%悪いというわけでもなく、そうなった要因が100%悪い訳でもない。だから、旅人は何も出来ない。仕方の無いことだ。

・現状への割り切り方
「仕方の無いこと」、分かってはいる。旅人はただ綺麗に生きたいだけで、他の命を踏みつけて笑う自分を自分が1番許せないだけで、結局は他人のためではなく自分のためだ。それも分かっている。分かっている上で足掻くことにより、自分の願いと向き合い続けることで、綺麗であり続けたい。

他人から見て綺麗かどうかは分からないが、たとえそれが偽善でも「良い人」でありたいのだ。
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文章

#概念創作 SS  4040文字


 彼は、旅人だ。―――旅人、だった。
 今まで、たくさんの旅をして、たくさんの人々と出会い、そして、見送ってきた。
 この旅に終わりはない。
 なぜならこの旅は、旅人の意思ではなく、勝手に流れていくものだからだ。
 一つ、また一つ世界が滅んで、神様たちは世界を作る。旅人はそこに流れ着く。
 ―――そう、身勝手にも。身勝手に世界を作り、命を与え、旅人たちは、生き続ける。

 今回も、変わらぬような、そんな旅だった。
 いつか滅ぶと予言されている世界を、観測し、ノートに書き溜める。ノートはとっくに分厚くて、旅人の拡張式の特殊なバッグだっていっぱいになりそうだった。
 誰も救えなかった。一つ世界をまたぐ度、何かの記憶が零れ落ちる。
 誰も救えなかった。
 ―――誰も、救わなかった。
 でも、なぜか。穏やかな気持ちだけがそこにあって、静かに揺れていた。

 トン。なんだか固い音がして、旅人は地面に降り立った。
 流れ着いたのだ。次の旅の目的地に。

 しかしなんだか様子がおかしい。見渡してみれば、生き物の姿が全くなかった。
 青い空。白い雲は浮かばない。草原。遠くに大きな海が見える。昼間なのに、月もなんだか大きくてきれいだった。
 ここはどこだろう。そして、どうして生き物がいないのだろう。
 そんなことを考えて少し、気づいた。旅人はこれを知っている。
 これは、僕がかつて願ったなにかの、―――夢の、成れの果て。旅の終点、随分と遠かったはずの、世界の中心。

 ああ、それにしては、この空間は旅人を知りすぎている。
「まるで、僕自身を象った箱庭みたいだ。」
 ぽつりとつぶやいた音はやけに大きく響いて、旅人は居心地悪そうに肩をすくめた。
「へんなの」
 改めて周囲を見渡しても、どれだけ声を発しても旅人に帰ってくるような何かはなかった。
 それが不思議で、少し不安だった。

 ゆっくりと足を踏み出す。見知った感覚で地面に足が付き、あっさり離れる。この世界の重力には慣れるのに困らなくてすみそうだ。
 軽く息を吐いて、歩き出す。せっかく海があるのだから、海に行ってみよう。

 特段面白いこともなく旅人はその砂浜にたどり着いた。波打ち際には小さな空のガラス瓶が流れ着いている。きれいな海だった。
 ガラス瓶を拾う。何気なしに開けてみれば、大きな音で笑い声がガラス瓶から発された。思わず耳を塞いだ。いやな響きだった。
 笑い声はそのまま瓶からするりと抜け出して、どこか遠く、手の届かないところまで行ってしまった。
「……なんだよ、もう」
 それが聞こえなくなってから悪態を一つついた。思い出す。そう、当時は耳を塞ぐことすらできなかったそれ。
 ただ耐えることしかできなかったそれ。
 悪態をつくなんてもってのほかだった。ずっと、受け入れることに必死だった。
 ああ、聞き流せるようになってしまった。旅人はそう思った。
 それは君にとって悪いことだろうか。そうであるにしろ、君は楽だろうに。

 いつしかの旅人はこう言っていた。
 旅人は、ただ綺麗に生きたいだけで、他の命を踏みつけて笑う自分を自分が1番許せないだけで、結局は他人のためではなく自分のためだ、と。
 それも分かっていて、足掻くことにより、自分の願いと向き合い続けることで、綺麗であり続けたい、と。

 他人から見て綺麗かどうかは分からないが、たとえそれが偽善でも「良い人」でありたいのだ。
 それについて、思考を巡らせているようだった。旅人は何も答えない。

 気を取り直して、と旅人は進んでいく。
 波打ち際には、いろいろな物が流れ着いているようだった。
 子供サイズの靴。どこかで見たことがある。少しおしゃまなかわいい靴。きっとあの子のものだろう、あの子は、自身が無知であると良く知っているようだった。
 そのくせ、知らないことを全く知らない、まだまだ成長途中の、ちょっと強気な女の子。
 だからこそ、旅人はその純粋さを許容できなかった。それが苦しかった。

 覚えている。

 ロザリオ。これはあの不思議な―――言ってしまえば少し変な、心の優しい神父のものだろうか。
 変な人だった。旅人は海の中でも死ぬことはないと何度言っても、一人でいるよりはと教会に誘うような、穏やかで暖かなひと。それゆえに、たくさん心配をかけたのだろうなと、勝手に思う。思うくらいには、穏やかに日々を送れるようになった。

 だから、感謝しているのだ。さみしい夜を放っておかずにいてくれたことに。
 不思議な人だった。

 覚えている。

 ネジ。怪物を名乗る彼のものだろう、世界は滅んだが、彼は、ネジがなくても生きていけるようになっただろうか。
 彼は、無くしたネジを、一緒に探してくれる人を。生きる意味になれる誰かを探していたのだろう。旅人は、その性質上、それにはなれなかった。
 今、旅人は、悔やんでいるのだろうか。自問する日がある。
 自分と他人の存在を、言葉で肯定したいと彼は言っていた。今なら、旅人であればこういうだろう。

 存在というものは、みんな等しく欠陥を抱えている。自分が自分であると証明するのには長い時間が必要になる。それでも、生きていていい。生きていて、いいのだ。それを探す旅をしているんだ。ぼくたちは、きっと。
 旅を続けるのに理由がないのと同じように、旅を終わらすのにも理由はいらない。それでいいのだ。好きなものを生きる理由にして、好きなものを答えにすればいい。彼が、もっと楽に生きていたらいい。
 旅人は、裏切ってしまっただろうと思うのだ。彼の信頼を。申し訳ないとは思う。でも、旅人は神様にはなれなかった。なれない。これからも、ならない。

 それでいいと肯定できるようになったのは、きっと、彼のおかげでもある。

 覚えている。

 大きなカバン。勝手に浮いてしまうのだと言った、彼女の持ち物だ。
 彼女は、最期に旅人にこう言った。

「花畑を踏みしめてこぼれた種が、旅人さんの靴に運ばれて、どこか遠い場所で新しい命を芽吹かせることがあるかもしれない」
「そうして咲いた花が、いつか新しい花畑になって、あなたや……別の誰かの心を慰める日が来るかもしれない……って」

「……都合の良いストーリーだって思うかな。でも私は、そんなことを思い描く自分を、どうしてか責める気になれないんだ」
 穏やかに笑う彼女を見て、旅人は、「人間の祝福」の意味を知ったのだ。

 いいのだ。世界が救えなくても、誰かを、花々を踏みしめて歩くことしかできなくても、美しく生きれなくても、だって、それが人間のかたちだ。
 ―――旅人の愛する、人間だ。
 そうだ、思い出した。僕は神様だった。落ちこぼれで、出来損ないの。小さな小さな神様。

「ああ、それにしては、この空間は旅人を知りすぎている。」
 それはそうだ。だって、この世界も、あの世界も、どれもが僕が救われたくて作り出した白紙の世界だ。美しい人々と、僕の描いた心象風景。
 それが良かった。それで良かったんだ。救えないことに痛む心も、誰かを踏みつけて生きている事実も、抱えたまま生きられるようになってしまった。大人になったというのかもしれない。
 罪悪感はある。けれど、後悔しようとは思わなかった。楽だからかもしれない。でも、それでいいのだ。

 僕がそうであることで、喜ぶ人がいる。安心してくれる人がいて、笑ってくれる人がいる。
 僕にはそれでじゅうぶんだった。

 僕がこうでなければ、誰かとは話せなかったかもしれないし、誰かがそうでなければ、僕とは関わらなかったかもしれない。
 反対に。僕がこうであるから関わらなかった誰かもいるだろう。
 それで良い。良かった。だって、そういうものだ。そういうものだ、で、納得できるようになってしまった。

「―――僕も君も、あの日の僕たちではなくなったかもしれないけれど、」
「君にも、僕にも。これからも変わり続ける日々にも、暖かな祝福があればいいなって思うんだ」‎
「もっとも、そんな高尚なことは出来ないんだけど……」

「……それで、良いんだと、思えるようになった。こうやって祈ることこそが、誰かにとっての救いで、祝福なのかもしれないな、と」

「それが、僕が旅で得た答えだよ。」

  誰にでも無く旅人はそう言う。風が吹いている。

 覚えている。

 ガラスペン。青い炎のランタン。使いかけの絵の具。鏡の破片。
 濡れていない傘。忘れ去られた鍵。使われなかった消しゴム。誰かの日記。

 後悔も、温もりも、悲しみも、穏やかさも。
 寂しさも、喜びも、怒りも、醜ささえすべてを抱きしめて、僕は生きていくことにした。

 それが、誰かにとっては悪い決断かもしれない。それで良かった。だって、人は間違う生き物だ。
 僕は、旅を経てなお、神様にはなれなかった。
 だから、人として。
 人として君たちに祝福を贈りたいのだ。

 ―――僕と出会ってくれてありがとう。そして、
 どうか、君たちの旅に、なにかしら美しいものが在ればいい。
 
 もっともっと素敵で、もっともっと美しい、たくさんの楽しい思い出を詰め込んで、そのまま穏やかに一生を終えてほしい。
 そうだ。
 また会えたらいい。きっと君のことも、一生分覚えていようとしたとして、いつか忘れてしまうかもしれないけど。
 忘れてしまっても、残るものはある。あるんだ。例えば、僕の旅の答えが見つかったみたいに。
 旅が、地続きで続いていくみたいに。

 僕はそれで満足することにするよ。

 君たちの旅に、たくさんの祝福が降り注ぎますように!
 そして、たくさんの愛が、君たちの周りにあふれていますように。

 いつの間にやら草原にたどり着いた旅人の足元からネモフィラの花が広がっていく。
 ああ、もうこれ以上の魔法は使えないけど、きっといつか、ここにも生命が生まれるのだ。

 穏やかな気持ちだ。なにもかもを、僕一人で救わなくてよかったんだ!
 僕は一人じゃなかったんだ。

 地面に倒れこむ。旅の疲れか、体力が尽きていた。
 でも、きっと旅は終わらない。
 この世界は、続いていく。

 さようなら、またいつか。
 今度は、人間として。もっと君と、怒ったり、泣いたり、笑ったり、悩んだりして、対等に話ができますように!
 星がちかちかと瞬いて、まるで返事をしているみたいだった。
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補足 >255

文章

#宇宙の箱、しあわせのかけら
本編 21542文字


宇宙の箱、しあわせのかけら
 
 遠い遠い、宇宙の果て。
 ぽつりと、他の星から隔絶されたように浮かぶ、戦場の星。
 この星では、誰か、人がいる気配も無いのに、機械だけが戦闘を続けている。
 どん、と大きな音が鳴って、弾ける。ミサイルの雨が降る。
 それでも、ここに住む人々は、この星を捨てられず、いまだに留まり続けている。
 
 僕たちは、そんな攻撃で簡単に死ぬような種族ではない。
 だから―――小さな妹と二人だけでも、生きていける。
 
 父さんはどこか遠くの星に交渉へ行ったまま、帰ってこない。
 母さんは毎日、大変な人たちの手伝いで、家にいることはほとんどなかった。
 
 恨んでいるわけではない。
 でも、こうして過ぎ行く毎日を、どう納得させたら良いのか分からなくなってしまった。それに少し疲れてしまった頃―――。
 
 ―――妹のミラが、姿を消した。
 
 
   *
 
 
 戦闘区域をかき分け、戦場の喧騒が少し落ち着いている、当分の間は平穏に過ごせそうな―――昔、首都であったところ。
 一隻の大きな船が、廃墟から突き出るように鎮座している。
 その船を眺めて、青年が二人佇んでいる。
 焼けた肌の青年はノア。そして隣に立つ銀髪の青年は、ノアの親友・テオだ。
「……な、大きな船だろ。姉さんと頑張ったんだぜ。」
 テオは大きく胸を張った。確かに立派で大きな帆船だ。肯定の相槌を打てば、そうだろうとテオはさらに胸を張る。仰け反らんばかりだ。
「こんな大きな船、借りちゃっていいの? それに……」
「だーもう! いいって言ってるだろ~? どうせ機械音痴だから~とか言うんだろうけど、お前の妹のこともかかってんだからな!」
 ……全部お見通しのようだ。
 ミラが失踪したその日。その足で親友のテオの家へ駆けこみ、事情を説明したのが今朝のこと。少なくとも、その辺で野垂れ死ぬほどやわな種族ではないだろうと信じ、テオお得意の機械を使って周辺を調べ回ったのが、ついさっきまでのことだ。
「宙力に余韻が残るなんて知らなかったな。この船なら、それを追うことができるの?」
「そのとーり!」
 び、と指を立ててテオは言う。曰く、ミラにも開発を手伝ってもらっていたから、その分彼女の宙力―――言い換えるならば魔力―――の色が記録されているのだという。
 いつの間に。確かに最近入り浸っているなとは思ってはいたが。
 テオ曰く、その宙力の余韻は、この星の外まで続いているのだそうだ。信じがたいことだが、テオはこんな時まで冗談を言うやつではない。
 ミラは、この星から出て行ってしまった。
 まだまだ子供のあの子を一人にしておくわけにはいかない。それに、もし何かに巻き込まれていたら。
 僕は、ミラを追って旅立つことにした。
 
 
  *
 
 
 
 テオの案内で船内に入り、簡単に船の操縦を教わってから、雑に物資を運び込む。例えば寝袋。灯り。食料は娯楽なので少しで良い。
 そのまま、テオに見送られながら、あっさりと旅立ちの時はやってくる。
「気をつけろよ、ノア。ミラも、何かに巻き込まれてるかもしれないから、覚悟して行け。」
 そう言ったテオに見送られながら、ゆっくりと船は浮上する。
 
 ミラは、どうして星の外まで行ってしまったのか。もしかしたら、なにかに巻き込まれているかもしれない。
 早く、早く会って、話して、それで――
 そのあとのことは、そのあと考えよう。

 
 時間の流れが少し変わる航路があって、星間移動は意外と早いのだと、テオは言った。
 ミラの宙力を追い、最初にたどりついたのは、小さな小人たちが暮らす「積み木の星」だった。
 ブロックみたいな家。ちょこまか動くロボットたちが、小人たちの生活を支えているらしい。
それにより、どこか、おもちゃ箱みたいな風景が広がっている―――その、はずだった。
「……おかしい」
 この星は、こんなに静かな星ではなかったはずだ。もっとガチャガチャとにぎやかで、どちらかと言うとやかましくて……。
 オイルの匂いと、笑い声と、金属音がごちゃまぜになって、それがこの星のいつもの朝だったはずだ。頭に過去の記憶を何度浮かべようと、記憶と視界は合致しない。
 ひとまず、船をそこで停め、地上に降り立てば、一人の住人がそこで座り込んでいた。
「ねえ、急に声をかけてごめんね。大丈夫?」
「……」
 返事はなかった。どこかぼんやりとこちらを見つめ返してくるその視線は虚ろだ。どう考えても、尋常な様子ではなかった。
 続けて様子をみようと声を掛けつつ手を伸ばす。そのとき、ずん、ずん、と低い音を立てて何かが近づいて来ているのが分かった。
 息を詰める。なんだってこの星には、そんなに大きな生き物はいなかったはずだが―――?
 
 ふ、と背後から影が差した。
 ノアと同じくらいの大きさの、無人のロボットだ。普段は小人たちが乗り回しているもの。
 ではなぜ急にロボットが現れたのだろう? 疑問に思う間もなく、ロボットはその硬い腕を振りかぶって―――。
 
 がしゃん。大きな音。
 間一髪でそれを避けたノアは、慌てて走り出す。ああ、この星の道が広くてよかった。
 がしゃん。ずん、ずん、ずん。音を立ててロボットはノアを追う。
「ねえ! 僕は敵じゃないから追いかけないでよ! 妹を探しに来ただけなんだって!」
 慌ててノアが言う。機械に言葉は通じない。
「僕が誰かを踏んづけちゃったらどうするんだよ!」
 走りながらそう言って、気づく。そこら一帯に住人は一人も見当たらない。
 いや、どうして誰もいないんだ。この静けさがいちばん怖い!
 警戒は緩めず、走る。だって、住人とノアの身長差では、踏まれた住人の方はただでは済まないだろう。
 人を殺したいわけではないのだ。ただ、ミラを探しに来ただけ。
 しかし、こうなってはどうしようもない。このロボットを破壊するか。そうでもしなければ、僕の体力が先に尽きそうだ。
 いや、でも、しかし。と、考える。このロボットを破壊した場合、その責任はどこに向かうんだろう!?
 ウンウンと悩んでいれば、気付けば行き止まりに辿り着いていた。振り返る。ロボットはすぐそこに迫っている。
 数発では死なないだろう。だが、急所を狙われる可能性は十分にある。
 
 ええい、ままよ。このまま戦うしかない、と懐から武器を取り出そうとしたその時、
「待った!」
 誰かがそう叫ぶ。ロボットの動きが鈍くなる。その隙を利用して、もう一体―――小人の乗った、一回り小さなロボットがノアの前に立った。
「この旅人さんには、本当に悪意は無さそうだ。少なくとも、殺す必要は無いと思うよ!」
 観察されていたのか、それとも。その小人がそう言えば、そのロボットは振り上げた腕を大人しく下げ、またずんずんと音を立ててどこかへ行ってしまった。
 
 その小人の乗ったロボットは、改まってこちらを振り返る。
「ええと、君は……?」
「いや、いや、ごめんね。ちょっと……こちらの事情で、いきなり諸手を上げて歓迎という訳にはいかなかったんだ。許しておくれ」
 その小人はロボットからぴょんと飛び降り、恭しく礼をする。彼の名前はレオと言うらしい。
 
 実は、と前置いて彼は話した。
「見ての通りなんだけど……今、この星は大きなピンチを抱えているんだ。人々が、無気力になってしまっているみたいで」
 レオは、困ったように頬をかいて、少し唸る。何かを言うべきか悩んで、また口を開け、閉じる。
「……言いにくいことがあるのなら、別に言わなくてもいいよ」
 そう声を掛ければ、レオは決心がついたように顔を上げ、こう言った。
「君に似た人が、この星を訪れた形跡があってね。」
「それから、らしいんだ。本来、この星はこんなに静かな場所じゃない。妹を探しているんだろう?」
 それに、なにか心当たりがないか。それが聞きたいのだろうが、生憎ノアはその答えを持ち合わせて居なかった。
「彼女は、一人で?」
「そうみたいだよ」
 だとすれば、妹が自分で選んだことのようだった。何故、どうして。いろんな言葉が浮かんでは消える。でも、ひとつ答えられるのは、
「それを、探しに来たんだよな」
 ミラがどうしてそんなことをしているのか。どうして、星を出ていってしまったのか。
 そう、少なくとも、その答えを探しに来たのだ。
「そっか、君にも、分からないんだね……」
 困ったなあ、とレオは唸った。
「……実は、僕、元の星では医者みたいなことをやってたんだ。と言っても、まだまだ勉強中の身なんだけどさ。さっきは、そこで倒れてた住人さんを診ようとしてたんだけど……。」
「なるほど、それでロボットに襲われたんだな。」
 レオが納得したように頷く。その後、小さなカギをノアに手渡した。
「おれ、向こうの屋敷にな、住人たちを集めてるんだ。のざらしじゃかわいそうだと思って」
 非礼は詫びる。だから、彼らのことを診てくれないか。そう言ってレオは頭を下げた。
「……、ありがとう。確かに、風邪をひいてしまうかもしれないからね、良い判断だと思う。」 
 任されたよ、とノアは頷いた。
 レオも頷いて、再びロボットに乗り込んだ。残りの住人たちを探しに行くらしい。大丈夫だと思うけど、気を付けて。そうノアに伝えると、そのままロボットは歩き出していった。
 
  *
 
 
「……奇妙な現象だな」
 診る、とは言ったって、違う種族を診たことなんてなかった。ひとまず、と、声を掛けながら体の異常を確認していく。だいたいは、特に異常なさそうだ。だとすれば、問題は内側にあるのだろう。宙力が足りていないのかもしれない。そう思って、持ってきていた宙石を近づけてみる。―――瞬間、瞼が震え、その人はこちらを向いた。
「……旅人さん?」
「そうだよ、驚かせてごめんね。ねえ、ここで何があったか、知らない?」
「いいえ……。意識はあったから、さほど驚いてはないのよ。」
 彼女はしばらく困ったように黙って、再び口を開いた。
「その……、貴方に似た女の子が、この星に来てくれたの。たくさん歓迎して、それで、やりたいことがあるんだっていうから、みんな、なにも聞かずに協力したの。そうしたら、……その」
「こうなってたってわけか……。そう聞くと、全部は彼女のせい、なんだろうな」
 ノアがそう呟くと、彼女は視線をさまよわせた。
「ねえ、あなたは彼女の知り合いかしら。どうか気を落とさないで。彼女、ずいぶん思いつめた顔をしていて、私たちも、心配だったから手伝っただけなの。ちゃんと話を聞くべきだったわ、……ごめんなさい」
「これが私を起こしてくれたの? まるで意識はあるのに寝てるみたい。体が動かなくて、心がなんだかさみしいの。だから、やりたいことが浮かばなくなって、体を動かす気もわかないんじゃないかしら。」
 そこまで話すと、カタンと音がした。振り返れば、レオが、何人かの住人たちを運び込んでいるようだった。
 宙石を彼女に渡し、手伝うよと声を掛ける。レオの話によれば、これで全ての住人は避難させることができたようだった。
「レオさん、無事だったのね」
「おお、喋れるようになってる!?」
「彼のおかげよ。」
「いや、どれかといえばこれかな。宙石っていうんだ。」
 それを彼女から離しすぎないよう拾い上げる。そういえばとふと浮かんだ疑問を口にした。
「レオはなんで無事だったの?」
「仕事だったんだよ。まったく、運がいいのか悪いのか」
 レオは肩をすくめてそう言った。ピンと来なくて首を傾げれば、レオは重ねてこう補足した。
「ほかの星に食料調達に行ってたんだよ。」
 なるほど、とノアは頷いた。
「それで、原因は分かったの?」
 レオがそう聞く。ノアは少し唸った。解明にまで至ったわけでは、ない。けれど、きっと、宙力で何とかなるということは、気持ち、とか、心、とか、あるいは、脳のはたらき、とか。そういうところに原因があるのだろう。これがノアの推測だ。
 宙力の量は、その時の感情により左右される。だとしても、ここまで大勢が、一気にとなると、それはその人の核となる部分なのだろう。
 人の、核となる部分。それに影響を及ぼす何か。少なくとも、それが特定できない以上は、宙石でなんとかするしかない、が。
「そんな大きな宙石なんて滅多にないし、分け合うのも難しいだろうね」
「え――!! あんた、医者なんだろ、諦めずになんとかしてくれよ!」
「いや、もちろんそのつもりだけど……。」
 もしかしたら、ミラがしでかしたことでもあるのだろうし。困っている人を放ってはおけない。にしたって、何の案も浮かばないのだから仕方がないだろう。
 宙力を分け与えるもの。大きな宙石があれば、一時はしのげるだろうが……。もっと燃費が良く、宙力を分配する方法とすれば? うんうんと悩んでいれば、ふと、レオがこうこぼした。
「こう……、なんか、宙力が、ガ――っと広がればいいのにな。」
「ガ――ーっとって……」
 そういえば、そういうものをミラが作っていた記憶がある。あれは確か、音を広げるものだった。どんな形状で、どんな構造をしていたか。
 懐からメモ帳を取り出し、ぐりぐりと描き出していく。ああ、もう、こういうのは妹の方が得意なのに! 
 それを覗きこんでいたレオが、納得したような声を出した。
「ああ、なるほど。スピーカー!」
「それだ!」
 スピーカー。拡声器。あとは、それを宙石に当てはめ、構造を改めて再構築して、……。
「……、できた?」
「破綻はしてないと思うけど……。自信はないや」
「とりあえず作ってみよう。だいじょうぶ、資源はそれなりにあるんだ」
 それなら、と頷く。ようやく希望が見えた気がした。
 
 
  *
 
 
 小人たちのものづくりの技術力はとても高い。
 レオは、あっという間に宙力スピーカーを制作し終わったどころか、いくつか余分に予備まで渡してくれた。
「もしほかの星もこんなになってたら困るからな~。ノア、妹さんのためにほかの星にも行くんだろ?」
「ためっていうか……。まあ、そうだよ。」
「じゃあそこで必要になるかもしれないし、持って行ってくれよ」
「……ありがとう、助かるよ。」
 それを受け取って、宙力で船の中へ転送する。さて、とレオに向き直れば、大きな宙石を一生懸命運ぼうとしているところだった。
「……運べる?」
「悔しいけど、無理かも……」
 それを手伝って、街の中心部、噴水広場までたどり着く。静かな街は、何度行き来しても不気味だったが、これがうまくいけば。
 
 宙石をそこに置く。悪戦苦闘の末、なんとかその大きなスピーカーをセットして、あとはスイッチを入れるだけだった。
「頼む……!」
 レオが祈りながらスイッチを押す。その瞬間、ぐわん、と、大きな音にも似た揺らぎが二人を襲ったが、それ以上のことは何も起こらなかった。
「……成功したのかな。少なくとも、拡散はされてるんだろうけど」
「ほんとうに? あ、もしかして、さっきの揺れみたいなのがそれなのか?」
「宙力って、めちゃくちゃ簡単に言えば振動に似たものだからね。おそらくはそう、かな」
 なるほど、とレオが頷く。ひとまず、二人で住人たちの様子を見に行くことにした。
 
 
   *
 
 
 ロボットたちがガシャガシャと歩き回っている中を、屋敷まで歩いて進んでいく。
「もしかしたら、上手くはいってないかもしれないね」
 ノアはぽつりと呟いた。
「どうして?」
「宙力を増幅させるための媒体が必要なんじゃないか、って思ったんだ。」
 それはきっと、影響を及ぼされている元のなにかしらに、強く紐づいたアイテムだとか、あるいは思い出だとか、そういうもの。
「そうでないと、宙石に宿った宙力もすぐ尽きちゃうだろ?」
「……それは、無いよ」
 レオはまっすぐ前を向いて言った。
「だっておれたち、そんな弱くないし。それに、生きていく力っていうのは、勝手に作り出すものだから。」
 動けるようになったら、そういう類のものは、きっと、勝手に見つかるって、信じてる。
 そう言って、レオは笑った。
 
 
 屋敷に着けば、中がざわざわと騒がしいようだった。宙力スピーカーの開発が、成功したことの裏付けだった。
 顔を見合わせ、扉を開ける。
 住人たちが、一斉に静まり返ってこちらを見た。
「ああ、紹介するよ。彼はノア。妹さんを探しに来たんだって。この事態を解決してくれたのは、彼だ」
 レオが安心させるようにそう言えば、わあっと拍手が上がる。
 その後、わいわいとそれぞれ好き勝手に喋り出した。ようこそ。よく来たね。タイミングが悪かったね。お礼は何がいい? そんなふうに騒がしくなる中、近くにいた住人がノアにこう言った。
「あの女の子は妹さん?」
 その言葉にまた、少しだけ喧騒が止む。
「……おそらくは、ね」
「そう……。さっきまで話してたんだけど、どうやら、彼女は私たちの幸せを欲していたらしいの。」
 その言葉に、ガンとショックを受ける。幸せを? ミラが? わざわざ、人から奪い取るほど?
「理由は分からないのよね。……彼女、本当に必死だったの。私たちは大丈夫だから、彼女を救ってあげて欲しいわ」
「……そ、それは、もちろん。……その、それ以上になにか言ってた?」
「いえ……。私たちの症状を、総括した結果がそうだった、ってだけなの。やりたいことがあるって言ってた。それ以上のことは知らないわ」
「そっか、いや、ありがとう。」
 彼女は、少し心配そうな表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
 レオも、「ま、きっと大丈夫だ」と軽く背を叩くに留め、それ以上に何かを言うつもりはないようだった。
  
 
   *
 
 
 それなりの量の食料、宙力スピーカーと、小さな花束。
 船にありったけたくさんの感謝を詰め込まれ、それらをどう消費しようか悩みながら旅立つ。
 
 ミラは、なにをしたくて、みんなの幸せを奪っているんだろう。
 彼女にそのつもりがなくても、やってることはそれと相違ない。その自覚があって? いや、そんなはずはない。
 彼女は、どこまでも優しい女の子なのだ。
 
 この旅は、今まで経験したことの無い苦難の旅になるのだろう。
 文面だけ見ればわくわく出来そうな事象でも、実際こうして苦難に見舞われると話は変わるものだ。
 なんだか少し気が重くなった。
 
 それでも、進まなければならない。ミラを見つけなければ。
 この旅は、続いていく。
 
 
 
 船は静かに進んでいく。ごうんごうんと鳴る音はそれなりに心地良く、ぼうっとしていれば眠ってしまいそうだ。
 貰った食料を食べながら考えてみても、ミラの目的なんて皆目検討もつかなかった。
 星が襲撃された日の、驚きと悲しみがないまぜになったような、複雑な気持ちが、ずっと続いていた。
 それでも生きる限り生活は続いていくので、変わらず長めの睡眠と、娯楽とは言えもらってしまった食べ物の消費に勤しむ日々である。
 
 次の星は、緑の星。獣人たちの住む、木々が沢山生えた原生林の広がる美しい星だ。確か、野菜などの食料資源が豊富で、それぞれに余裕がある心優しい星だと聞いたことがある。
 彼らにとっては食は娯楽ではないのだ、とも。もしかしたら、貰ってきた食料がなにかの役に立つかもしれない。
 
 ぼうっと窓の外を見る。もうそろそろ到着しそうだ。緑の光を発する星が、ぐんぐんと近づいているのが見えた。
 
 次の星では、何も問題が起きていないといいな。
 そう祈りながら、ノアは出発の準備をすることにした。
  
 
   *

 
 緑の星に辿り着いた。
 前回のようになにかに襲われないよう、警戒しながらその地に降り立つ。
 葉っぱのあいだから光がさして、どこからか美味しいにおいが漂ってくる。
 スープの匂い、焼けたパンの匂い、それから、甘く煮た果物の匂い。
 胃袋を持たない僕でさえ、お腹が鳴りそうな気がした。
 文字通り、噂通りの美しい星だった。
 だというのに、その森の中には、たくさんの人がただ座りこんで、ぼんやりと空を見上げている。
「……」
 この星にもミラが来て、幸せを奪っていったのだろうか。
「あら、旅人さん?」
「!」
 ふと、黄色い猫のような、狐のような、耳の生えた獣人に声を掛けられた。
「……君は話せるんだね、はじめまして。僕はノア、妹を探しに来たんだ。」
 そう話せば、彼女は困ったように頬に手を当てた。
「妹さんを? それなら間が悪いかもしれないわ。見ての通りよ、もう大変なことになってるんだから……」
 やはり、ここでもミラは何かを起こしたようだ。
「うーん……、まあ、それの解決も、目的のひとつかな」
 不思議そうに彼女はこちらを見つめる。ノアはそれを苦笑して流し、彼女に言った。
「君はどうして被害を免れたの?」
「地下に居たからだと思うわ。私たち、地下で食料を育ててるから、その時地下にいた私たちは無事だったんだけど……。」
「こうなった原因も、治し方も分からない、と?」
「そうね」
 そこまでは、前回と同じだ。確認しつつ、頷く。
「実は、なんとかできるかもしれないんだ。前の星でも、似たような場面に遭遇したからね。」
 ぱちくり、と目を瞬かせてから、彼女は首を傾げた。
「そうなの? ……ああ、自己紹介を忘れていたわね、ごめんなさい。私はエラ。この森で料理人をやっているの。」
 エラは困った顔で続けた。
「私一人で、あなたを信用するかどうかを判断するのは、とても難しいわ。もうひとり、頼れる人を連れてきてもいい?」
 もちろん、とノアは頷いた。
 
 
   *
 
 
「ノア……さん、こちらはニコ。」
 そう言って紹介されたのは、長い耳の兎の獣人だった。
「どうも。よろしくね、ノア。」
「うん、よろしく。」
 ニコは頷いて、ノアと握手を交わした。彼も、エラと同じように地下に居たらしい。
「妹さんを探してるそうなの」
 エラが補足する。ニコは目を瞬かせた。
「へえ、妹を? それでこの星に?」
「あー……、いや、まだ確定ではい……と信じたいんだけど、妹がこの事態を引き起こしたかもしれなくて」
「ええ?」
 困ったようにニコとエラが顔を見合わせる。
「えっと、そうなるともっと信頼出来ないのは分かってるんだけど……。兄として、見過ごしておけないんだ。あいつは、唯一の家族なんだよ」
 それを聞くと、しばらく二人は黙り込んで、改めてノアの目を見て、顔を合わせた。
「……分かった。今は信じるけど、変なことしたら許さないからな」
「うん、もちろん。ありがとう」
 ほ、と肩を撫で下ろしたノアを見て、二人は複雑そうな顔をしていた。
 
「へえ、じゃあ、この装置で宙力を広げれば解決するかもしれないってこと?」
「話が早くて助かるよ」
 ノアの説明に、感心したようにニコは言った。
「でも、これだけの規模じゃ、僕の手持ちの宙石では足りないかもしれないな……」
 ノアが言う。この星に宙石があればいいが、とエラを見れば、
「宙石なら、地下に行けば取れるはずだわ」
 と答えが返ってくる。
「それじゃ、取りに行く他無さそうだな」
「でも、きっと大変な道になるわ。」
「どれくらい?」
 エラとニコは言葉を重ねてこう言った。
「一泊しなきゃいけないくらい」
「ええっ」
 ノアは驚いて、それから首を傾げた。
「そんなに!? どこにあるの?」
「地下にあるの。宙石は貴重だから簡単には盗めないように保管されてる」
「まあ、この事態だから、番犬との戦闘は避けられないだろうね」
 ニコとエラは揃って首を横に振る。番犬たちは何故か暴れ出しており、手が付けられない。
 かつ、彼らは戦闘は得意ではないのだそうだ。
 かくいうノアも戦うのは得意ではない。が、ここまで来たらやるしかないだろう。
「じゃあ、戦う時は僕が行くよ。二人は隠れててくれていい。その後、宙石をとる時はついてきてくれる?」
「え、そこまでするか?」
「うん」
 ノアは頷いた。それから、
「じゃ、準備が出来たら行こう。きっと大丈夫だ」
 と声を掛けた。二人もさっさと準備を済ませ、地下へと向かうことにした」
 
   *
 
 
 地下は広い。どこまでも続く似たような道に、ところどころドアが設置されている。
 その先には大きな空間があり、大切な資源が保管されているのだと、エラは説明した。
 
 会話もそう長くは続かない。静かな道の中に靴の音だけが反響している。
 もうずいぶん長いこと歩いた気がする。ドアもいくつ通ってきたか分からない。
 そろそろ休憩をした方がいいか、と思案し始めたところで、手前のドアにエラが駆け寄った。
「今日はもう休みましょう。夜に地下に居るのは危険だから」
「そうだね。ノア、夜の地下は危ないんだ。沢山の化け物が徘徊するから」
「ええっ、そうなの!? ……気になるけど、危ないならとりあえず入ろうか。今が何時かも分からないし」
 こくり、頷いた二人の背を追い掛けて、そのドアの中に入る。
 ドアの中は小さな宿のような内装だった。簡単なものなら作れそうなくらいの大きさのキッチン、ちょっと狭い寝床。必要最低限転がっている趣味の様々な備品は、今まで使用した人々が残していったのだろう。
「まあ、まだ夕方頃だと思うけどね」
「でも、ご飯を食べるなら今の方がいいわ。彼らは音に敏感なの」
 そう言いながらエラは料理の準備をする。そういえば、彼女は料理人だと言っていた。
「……その、化け物っていうのは」
 おそるおそるノアが聞く。それにはニコが答えた。
「元々この星に住み着いていたらしいよ。元は俺たちと共生していたらしいんだけど……」
 エラが補足する。
「彼らは昼の明るい時間には活動できないからね。明るい時間は私たちの時間、夜は彼らの時間。だからお互い邪魔しないようにしてるの」
 ニコは肩を竦めた。
「化け物って呼び方だけはなんとかなんないかなって思うけどね~。そうとしか言いようがないんだよ」
「へえ、なるほど、そういう習慣なんだね」
「そうさ」
 ノアは納得した、と頷いた。
「……ところでニコ、お腹は空いている?」
「残念だけど、あんまりかな」
「そう……実は私もなの。ノアさんは?」
「僕は食事を必要としないから、大丈夫だよ。君たちもそうなの?」
 二人は首を横に振った。
「じゃあ食べた方が良いよ」
「でも、ちょっと作るのが面倒だなって思ってしまったの。今までこんなこと無かったんだけど……」
 本当なら、初めて会った旅人さんには、自慢のきのこのシチューと甘い果実酒風のジュースを出していたのだけどね、とエラは苦笑した。
「地下に来たからねえ、気が落ちてるのかもしれないね」
 困ったように二人は笑う。ノアは少し訝しんだ。
「地下に落ちたら気が落ちるものなの?」
「そんなことは無いけど……それ以外に原因が浮かばないんだよね」
「……ふうん、そっか」
 これも、幸せを奪われた結果だったりして。そんな思考がふと頭を掠めた。
「……じゃあ、僕が作るのは? 君ほどの腕はきっとないけど、ご飯を作るのは好きだよ」
「そう? じゃあお願いするわ」
 そうしてご飯を食べ、布団を敷いて、眠る。
 
 次の日も、これ以上のことは起こらなかったが、ご飯のことだけ無気力になる彼らを見て、やはり彼らの幸福は食に関係していたのだろうと思った。
 
 再びその道を下っていく。階段なんて無いから、上るのは大変だろうな、なんて頭で考えてしまったばかりに、下に降りるのが少しだけ億劫だった。
「あそこだよ」
 ずいぶん下って、下って、今日も辿り着かないのではと疑ってしまったあたりで、小さな声でニコが言った。
 見れば確かに、番犬らしき大きな生き物が、そのドアの前にどっかりと寝転がっている。寝顔は苦しそうで、そこらじゅうにかぎ爪のあとがあり、ずいぶん暴れ、疲れてしまっているようだった。
 丸くなった尻尾だけが、子犬みたいに、時々ぴくぴく揺れている。
「おお……」
「彼も、夜に活動する化け物の一人なんだ。ただ、他のと違って昼間も活動できるみたい。」
 ほう、ともう一度その生き物を見る。化け物。確かに言い得て妙だった。
「いつもはちゃんと言うことを聞いてくれるのだけど……」
「今回ばかりは……」
 ニコとエラが顔を見合わせて、ノアの方を改めて見る。不安そうだった。
 大丈夫だと言うようにノアは頷いた。
「小さな宙石であれば余っているし、それがなにかの役に立つかもね。でも、それをするには一度近くに寄らなければいけなさそうだ」
 まあ、やれるだけやるよ。それに二人が頷いたのを見て、ノアはそこから歩き出した。
 
 姿勢を低くして、そろりそろり。これが合っているかは分からないが、敵意が無いことを示したかった。
 それが幸をなしたか、番犬はこちらに気付いているようだったが、静かにノアを待ち続けていた。
「番犬さん、こんにちは。」
 がるる。返事の代わりに唸り声がした。
「おやすみのところ、ごめんね。実はいまの君の苦しみの役に立ちそうなものを持っているんだ。」
 これを、と宙石を見せた瞬間、番犬は目を見開いて立ち上がった。
 
 間髪入れずにかぎ爪がノアに飛ぶ。ノアも、警戒は怠っていなかった。ひとつ、ふたつ。間を開けてみっつ。避けてしまえば、疲れた番犬はこちらに声を上げる。
「それはなんだ? あの時と同じ光だ! 答えろ! 私たちに何をした!」
 ノアはハッとした。宙力がその穴を埋めるなら、幸せを奪ったのだって宙力を使っているだろう。
「それは僕じゃない! 妹なんだ! 僕はそれを止めるために旅をしてるんだ!」
 がしゃん。壁にかぎ爪があたって離れる。もう一発と番犬は振りかざした。
「この光は宙力の光なんだ、君たちが失ったのは君たちを形作る感情の核の一つで、おそらくそれは―――」
 番犬の顔が迫る。近くにその鋭い爪があって、思わず目をつむる。遠くで二人が手を伸ばしているのが見えた。
 ギイ。いやな音がする。壁がえぐれたのだろう。しかし、しばらく待ってみても、衝撃は来なかった。
「―――それは?」
「……幸福、と呼ばれるものだ」
 目を開く。番犬は思ったより離れた場所にいた。後ろを確認すれば、深く抉れた壁が目に入った。
「嘘はついてないようだな。私たちは馬鹿じゃない、それくらいは分かる。」
 番犬は話しながらノアに背を向け、扉の前まで歩く。静かな声だった。先ほどとは違い、静かすぎて、聞き取りづらいほどだ。
「私たちは宙力の塊のようなものだ。その分、感情の核は常に剥き出しになっているようなものなのだろう。私たちは深く影響を受けてしまった。自分が死なないよう、壁を攻撃するだけで精一杯だ。」
 幸福は、彼にとっては大きな生きる糧だったのだろう。くるりと振り返った番犬は、ノアに頭を下げた。
「すまなかった、旅人よ。ここを通るといい。お前の技術でなんとかなるからここまで来たのだろう。」
「正しくは前の星に行った星の住人のものだけどね。まあ、でも、ほら。頭を上げてよ、番犬さん。」
 ノアは笑って、今度はこちらが頭を下げた。
「妹がすまない。君の同胞たちも、きっと苦しんでいるのだろう。……必ず何とかしよう、約束する。」
 そうして、隠れていたニコとエラを呼べば、二人は無事でよかったと次々口にした。番犬にも頭を下げて、改めて三人で扉をくぐることになったのである。 
 
 
 扉の中には、部屋を埋め尽くさんとする大きな宙石が鎮座していた。何メートルあるのだろう。とにかく大きくて立派な宙石だ。これであれば、彼らの手助けになるだろう。
「ノアさん、さっき言ってた、幸福がどうとかって……」
「……ああ」
 ノアは頷く。
「妹は、幸福を探してるらしいんだ。」
 二人は困ったように顔を見合わせた。ノアはその空気を苦笑して流し、さてと切り替えた。
「このスピーカーを使って、この石の宙力を拡散するんだ。そうすることで、足りてない幸福の部分が補われるはずだよ」
 そう言って、収納カバンの中からスピーカーの部品を取り出していく。初めて見る技術だったようで、二人はいたく感動していた。
「そんな小さいカバンの中からこんなに大きな部品が出てくるなんて! これはどこの部品?」
「開発したのはうちの国の技術者なんだ。僕の親友でもある。それはこっち」
「へえ、じゃ、あなたも技術者なの?」
「僕は医者だよ。技術方面は難しくて苦手だ。組み立てはできるけどね……」
 そんな会話をしながらテキパキと組み立てていく。この部品はこっち。あの部品はあっち。エラが器用だったおかげか、二回目だからか、すんなりと組み立て終えることができた。
「さて、起動するよ」
 そうしてそれを動かす。ぐわん、と、大きな音にも似た揺らぎがして、それ以外は特に目立った変化はないが、成功しているだろうか。
「うーん。成功してるかどうかも分からないのが難点だよなあ」
「でもきっとうまくいってると思うわ、ノアさん」
 エラがそう声を掛ける。
「だって私、今とても料理がしたいの。戻ったらパーティにしましょう」
 嬉しそうに微笑んで、彼女はそう言った。
 
 地上までは、番犬の背に乗り連れて行ってもらった。番犬もすっかり穏やかな顔をしており、それは装置の起動がうまくいったことの裏付けだった。彼は頭を下げて地下へと戻っていく。
「エラの料理、楽しみだなあ! ぼく、すっかりお腹がすいてぺこぺこだよ」
 ニコがそんなことを言いながら地上への扉を開ければ、地上は声で溢れていた。無事でよかった。なんだったんだろうね。そうして無事を喜び合う彼らに、安堵のため息が漏れた。
 
 ふと、奥の方が騒がしくなる。王さま。ご無事でしたか。そんな言葉が聞こえてきたと共に、大きなライオンの獣人がこちらに歩いてきているのが見えた。
 彼は、三人の目の前で足を止め、しばらくの間、こちらを見つめた。あたりは静まり返っていた。
「エラ、ニコ、ご苦労。こちらの方は?」
「ありがとうございます、王さま。こちらはノアさん。今回の騒動における、救世主です。」
 エラが経緯を説明すれば、あたりから拍手が巻き起こった。
「なるほど。それでは、パーティを開かねばならないね」
 王さまもまたそう言って拍手をし、いそいそとパーティの準備を始めた。
「王さま、楽しいことが好きなんだ。きっとパーティの気配を察してここまで来たんだよ」
 ニコがそうノアに耳打ちする。ノアは緊張していたのがなんだかおかしくなって、思わず笑ってしまった。 
  
 
   *
 
 
 パーティをするなら、前の星でレオたちにもらった食材も是非使ってくれと船から下ろせば、なにやら貴重なものが多かったようで、悲鳴が上がった。
 何も知らず調理もせずに食べていたから、と言ったら怒られた。食に熱い種族である。
 パーティではたくさんの料理たちが並び、それを気まぐれに食べては歌って踊りが繰り返された。端っこで眺めていれば踊りに連れ出されるし、料理を食べていればもっと食えと盛られる。
 その熱狂ぶりは面白かったが、時間は有限である。
 早々に切り上げようとすれば、王さまから止められ、大きな宙石を渡された。
「きっと必要になるだろうから、持っていきなさい」
 必要なのはあなたたちではないのか。返そうとすれば「この星は、たまたま宙石にだけ恵まれているから」と押し戻される。ありがたく貰うことにした。
「それじゃ、またね」
「気をつけろよ、ノア!」
「今度は妹さんも連れてご飯を食べに来るといいわ」
「ありがとう、そうするよ」
 ニコとエラにも手を振って、船に乗る。
 船を飛ばせば、手を振っている住人たちはみんな森の緑に掻き消され、緑の星は遠くなっていった。
 
 
 
 船はゆるやかな航行を続けている。この間、ノアには特にやることもないので、うつらうつらと眠気と戦っていた。
 そんな時、ふいに船は大きな音を鳴らした。
「なっ、なんだ!?」
 慌ててノアは起き上がる。レーダーを見れば、宙力の反応が今までになく大きいようだった。
 近い。
 慌てて船を動かし、立ち上がる。聞かねばならないことが山ほどあった。
  
 
   *

 
 ミラが居るのは、特に何も無い星のようだった。文明の滅んだ跡だけが薄らと残るその星の、どこかに、ミラが。
「ミラ! どこにいる!?」
 大きな声を上げながらその辺を探し回る。返事は無い。
 話したいことがある。聞きたいことがある。なにか、嫌なことがあったなら聞くから。
 頼むから返事をしてくれ、と手当たり次第に探す。
 視界がちらつく。
 大きな光が漏れている建物を、見つけた。
 
 大きな建物だ。
 その光の元は最深部にある。
 ばち。
 ばち、ばち。
 ばちばちばち。ばち。
 嫌な音がする。
「ミラ!」
 ばたん。大きな音を立てて扉を開いた。
「ノア!」
 驚いた顔でテオがこちらを振り返る。
 その隙にとミラはその手をテオにかざした。
「ミラ、待て!」
 ミラは止まらない。
「ミラっ、……テオ、危ない!」
 テオの前に飛び出す。それでようやく、ミラの呪文を紡ぐ声が止まった。
「……どうして?」
 ミラが首を傾げた。
「どうしてはこっちのセリフだ!」
 ノアが吠える。ミラは不思議そうな顔をして、やがて、諦めたように首を横に振った。
「―――大丈夫。待っててね、お兄ちゃん」
 そう言って、一歩、二歩、後ずさっていく。
「待てミラ、馬鹿!」
 慌ててその後を追おうとしたがその時、強い光がミラの手のひらから放たれた。
 目を眩ませているうちに、ミラはその場から姿を消してしまった。
「くそっ」
 ノアが悪態をつく。それまで呆然としていたテオは、それで我に返ったらしかった。
「ノア……」
 テオは、何かを言おうとして、言葉を選んでいるようだった。
「……テオ、一度船に戻ろう。きっと、まだ、そんな遠くにまでは行っていないはずだ」
「……、……そうだな」
 しばらく逡巡して、諦めたようにテオが頷く。彼がここまで来たのにも、理由があるのだろう。 
 
 
   *
 
 
 船に乗り、ミラの宙力の余韻をふたたび追っていく。テオの小さな船も、一緒に乗せることが出来た。
 その間、暖かい飲み物をテオに渡して話を聞くことにした。
「テオ、どうしてここまで来たんだ? 何かあったのか」
「……」
 テオはそれを受け取り、しばらく黙っていた。
 それなりに長く考えていたように思う。そうして、ようやく口を開いた。
「……姉さん、死にかけたんだ」
「や、違う……」
 あんまりにも唐突で、有り得ないと思ってしまうような話だった。
 彼は少しずつ言葉を漏らす。話を要約すると、彼女の姉は部屋で自死を測ったらしい。
 彼の姉は、底抜けに明るくて、いつも誰かを引っ張っていけるような、心優しい性格をしている。何も無く彼女がそんなふうになるとは思えない。
 何も無ければ。
「それに、ミラが関係してる?」
「ああ、……お前も」
 絞り出すような声だった。
「生きるために、俺たちは宙力を必要とする。それは気持ちと呼ばれたり、心と呼ばれたり、あるいは脳のはたらきと呼ばれたりする。」
「これはお前が教えてくれたことだ。」
 ぽつり、ぽつり。言葉が落ちる。肩が震えていた。
「……姉さん、今、それが全部無いんだ。だから……」
 そこで、言葉がつっかえた。
「なあ。お前のこと、疑いたくないけど……、本当に何もなかったのか? 妹があんなことする理由、本当に分からないのかよ」
「……ふがいないばかりだよ」
 テオは目を合わせようとしなかった。しばらく黙り込んで、立ち上がる。
「ごめん、ノア。俺、頭冷やしてくるよ。冷静になれねえ」
「うん、分かったよ。……ごめんな。」
 そう言って外に出ていくテオを、引き留めることはできなかった。 
 ノアは一つため息をついて、休息を取るべく眠りにつく準備をした。
 
 
   *
 
 
 ―――夢を、見る。
 バタバタと走っている。先程までミラの居た建物だ。扉を開ける。扉を開ける。扉を開けた。
「ミラ!」
 口から言葉が飛び出す。テオの声だ。つまりこれは、テオの見た光景だろうか。
「……テオ」
「お前っ、よくも俺の姉さんを……!」
 ぱちぱち。ふたつ、瞬きをしたミラは不思議そうに首を傾けた。
「……同意の上だったはず。それに、あなたには関係ない」
 ショックを受けたようにテオが黙り込む。
「お兄ちゃんを、幸せにしなくちゃいけないの」
「ノアを……?」
「そう。そうじゃなきゃ、嫌だから」
 だから、あなたのも貰うね。
 ばち、ばちばち。嫌な音がする。ミラが手を翳す。
 ばち、ばち―――。
 
 ―――思い出した、ことがある。
 
 遠い遠い、宇宙の果て。
 ぽつりと、他の星から隔絶されたように浮かぶ、戦場の星。
 その星では、誰か、人がいる気配も無いのに、機械だけが戦闘を続けている。
 どん、と大きな音が鳴って、弾ける。ミサイルの雨が降る。
 空が赤く光るたびに、窓ガラスがびりびりと震える。
 子どものころは、そのたびに泣きそうになっていたのに、今はもう、テーブルの皿が落ちないかだけを気にしている自分がいる。
 ―――こんなふうに慣れてしまった自分が、少し、嫌だった。
 それでも、ここに住む人々は、この星を捨てられず、いまだに留まり続けている。
 
 父さんはどこか遠くの星に交渉へ行ったまま、帰ってこない。
 母さんは毎日、大変な人たちの手伝いで、家にいることはほとんどなかった。
 
 恨んでいるわけではない。本当だ。
 でも、こうして過ぎていく毎日を、自分の中でどう納得させたらいいのか分からなくなってしまった。それだけの、いわば、ため息だったのだ。
「ねえ、ミラ」
「……?」
 妹―――ミラに話しかける。ミラは少し首をかしげてこちらを見た。
「……僕たちが、もっと平和な星で生きられてたら。もっと幸せになれたのかもしれない。ね、そう思わない?」
「……、……」
 ミラは、しばらく口を開けたまま固まり、ぎゅっと膝の上で手を握り合わせていた。
 眉を寄せて、口を少し開け、閉じる。何かを言いたげだった。でも、何も言わなかった。
「……なんて、冗談だよ。怒らないで。」
 むすくれた表情のミラに笑いかけて、その話はそこで終わった。
 
 それでも。
 それでも、ミラと同じテーブルで夕飯を食べて、くだらないことで笑う時間だけは、ちゃんと好きだったのだ。
 その時に、ちゃんと話をしておくべきだったのだ。妹だから。家族だから。そんな理由ですべてを分かった気になっていた当時の僕の行いは、大きな後悔を生むことになった。
 
 ―――その日のうちにミラは姿を消した。
  
 
   *
 
 
「ノア」
 テオが呼ぶ声がする。ノア、ノア……。微睡みから少しずつ目覚めて、ぱちり、ぱちりと瞬かせれば、困ったようにテオがこちらを見ていた。
「悪い。色々なことを話したかったけど、言葉じゃ説明できなくて……」
 見れたか、と問われて、もちろん、と頷く。
 見たものが相違ないことを共有してから、思い出したことも洗いざらい話す。それから、静かにノアは息をついた。
「―――僕のせい、だ」
「……、……残念なことに、そうなるんだろうな。」
 テオもゆるく首を横に振る。それから、深々とため息をついた。
「まあでも、悪気があった訳じゃないんだろ。」
 ノアは頷く。テオも、分かっていると頷いた。
「姉さんのこと、連れてきてるんだ。俺の船にいる。勝手なことはできないようにしてるけど、それも暴力的で嫌だから……」
「うん。もちろん、任せて。今は、緑の星から分けてもらった宙石がたくさんあるんだ」
 テオは頷く。そうして、部屋を出ていく彼の後ろを、今度はノアもついて行った。
  
 
   *
 
 
 彼女の目は虚ろだった。
 今は拘束されているためか動く気も起きないようだが、これがなければ一人になった途端に自死を選ぶのだろう。
 大量の宙石をテオの船に運び込めば、ようやく彼女の目に薄く光が灯った。
「テオ……」
 彼女―――ルイは、まずテオを呼んだ。それから、ごめんね、と細く謝る。普段のハツラツとした彼女からは想像も出来ない声だった。
「別に、いいよ。姉さんに迷惑かけられるのなんていつものことなんだし」
 テオがそっぽを向いたままそう言えばルイは少し困ったように微笑んだ。そして、ノアの方を見る。
「ノアくん、ミラちゃんは?」
「……今、僕のために幸せを集めているみたいで」
 ノアの言葉を聞いたルイは小さく頷いた。ミラが居なくなったこと。いろんな星で、人々の幸せを集めていること。それによる被害のこと。
 それらを共有すれば、ルイはまた頷いて、
「ミラちゃん、まず私に相談しに来てくれたんだ」
 そう言った。
「お兄ちゃんは今幸せじゃないんだって言ってるから、幸せになって欲しい、って」
 頷く。ルイはゆるく首を横に振った。
「だから私、みんなの幸せを集めてノアくんに渡せたらいいのにね、って言ったんだよ」
 少しの沈黙。再び口を開く。
「もっと、ふんわりとした話だったんだ。でもミラちゃんってほら、頭がいいから……」
 言葉を濁す。テオがため息を着いた。
「アイツ、俺より機械いじりが上手いんだよな。俺が時間かけて考えた回路を短時間で考えてくる。あんなにガキのくせによ」
 知らなかった、そんなこと。そうなんだ、と呟けば、テオにじと、と睨まれた。
「お前たちはいつもコミュニケーションが下手くそだよな」
「……いや、……、……ごめん。分かってるつもりだったんだよ……」
 ルイが咳払いをして話を戻す。
「それで、しばらくして、出来たからお試ししてみたいんだっていうから、私、頷いたの。」
「そうしたらこんなことに……、ごめんなさい。私がちゃんと確認するべきだった」
「いや、まず僕があんなふうに言わなきゃ良かったんだ。きっと、もっと他の言い方があったし、もっと話すべきだった。」
「そうだな。」
 テオがピシャリと言う。ルイも否定はしなかった。
 ノアは頷く。
「だから、もう一度、ちゃんとミラと話したい。分かってくれるかは、分からないけど……。少なくとも、こんなことをして欲しい訳じゃないから」
 テオとルイも頷く。テオが意地悪に笑って言った。
「それじゃ、いつミラが見つかってもいいように今から作戦会議でもするか?」
「賛成。ノアくんだけじゃ不安だもの」
 ルイもそれに乗っかって、ノアは気まずくて小さくなる他無くなった。



 ビーッ ビーッ
 船が大きな音を鳴らす。あの時と同じ音。
 ――ミラの居場所が近い。やはりそう遠くは行っていないようだ。
「作戦会議っつってたけど、そんなに時間はなかったな」
「まあでも、失敗した時の対策は立てられたから良しとしようよ」
 テオが立ち上がる。ルイはここから動かない方が良いと思うからと残ることになった。
「ミラちゃんをよろしくね、ノアくん」
「もちろん。」
 任せてくれとノアは頷く。だって、元は僕の妹だ。
 バタバタと準備をして、船から降りる。船内にはけたたましく音が鳴り響いていて、なんとなく、ミラが待っているような気がした。
 テオが船の上でグッドサインを作り、送り出す。
「気をつけろよ。ま、なんとかなるようにするけどな!」
 その言葉を背に受けて、ノアは、船から飛び出した。
  
 
   *
 
 
 今度こそ、何も無い星だ。文明の跡すら無い、静かで穏やかで小さな星。
 ひとつだけ、人工物が建っている。大きな箱のような装置だ。
 ミラはその隣で一人佇んでいた。
「お兄ちゃん、待ってた」
「……そんな気がしたよ」
 ミラは嬉しそうにこちらを見ている。
「ミラ、その幸せは元の持ち主たちに返すんだ」
「……どうして? お兄ちゃんが幸せになるのに必要でしょう」
「それじゃ僕は幸せになれないよ」
 ミラが困惑したように首を傾けている。
「……人から奪った幸せを貰ったとしても、それは僕の幸せでは無いからね」
「……お兄ちゃん」
 目を伏せるミラの声は震えていた。
「じゃあ、お兄ちゃんはどうしたら幸せになってくれるの?」
「……僕は、ミラと居られれば幸せなんだよ」
 ミラは、一度だけ瞬きをした。
 その言葉を、信じたかった。でも―――。
「嘘だ!」
 ノアが怯む。その隙にミラはその装置のスイッチを入れた。
「ミラ……!」
「お兄ちゃんの幸せの条件って、それだけじゃないでしょう、それくらい分かってるんだから」
「ミラ、やめろ!」
「私はお兄ちゃんを幸せにしたいの!」
 そんな言葉と同時、装置が起動する。
 幸せが流れ込んでくる。
 その機械の無駄のない動きに、ああ、本当にミラは機械いじりの天才なんだな、なんて、場違いにも頭の端で思った。
 
 人々の幸せが頭に入っては抜ける。ああ、頭がおかしくなる。頭がおかしくなる!
 これは僕のじゃない。頭が大きく拒否を示しているのに、正気を失うことができなかった。
 
 誰かの誕生日の笑い声。知らない星の、美味しいスープの味。恋人たちの手のぬくもり。
 それが全部、ごちゃまぜの熱になって頭に流れ込んでくる。
 
 これは僕のじゃない!
 
 唸るような音が聞こえる。ミラが慌てて駆け寄ってくる。唸るような音が自分の喉から発せられていると気付くまでにそう時間はかからなかった。膝をつく。
 永遠にも思える時間を、のたうち回って過ごした。ミラが手を握っていてくれたのだけが、正気の手掛かりだった。
「……お兄ちゃん」
 混乱が止まない。頭が痛い。ぐわんぐわんと目眩がして、それでもノアはミラの目を見た。
「ミラ、帰ろう……」
 それだけをなんとか言葉にして、ノアの意識は途絶えた。
 


 コミュニケーションは相互にその気がないと成り立たない、とテオは言った。
 だから、おそらくミラとの話し合いは上手くいかないだろう、というのが、僕たちの結論だった。
 だから、幸せを垂れ流された時、持ち主の元まで戻っていくように、それをキャッチして広げる装置をテオとルイで設計した。
 ノアの身体のことまでは、話す時間がなかったため、まあなんとかなる、と雑に送り出された。
 そもそも僕たちは、強靭な身体を持っているから。
 
 やんやんと音がする。それが誰かの会話のようだと気付いて、それが徐々に像を結んでいく―――。
 ―――目を覚ました。
「ミラ……?」
「……お兄ちゃん」
「おはよう、ノア」
「ああ、大丈夫そうね。良かった!」
 テオとルイも顔を出す。……無事に、終わったのだろうか。
「他の星の奴らから連絡があったぜ。要約すると……解決おめでとう、また遊びにおいで、ってな」
「それはあとで確認するといいよ。とりあえずミラちゃんと話がしたいでしょ。私たちは別の部屋にいるから」
 二人はミラに目配せをし、出て行った。ミラはこくりと頷いて、こちらに向き直った。
「お兄ちゃん、あのね」
「私も、お兄ちゃんと居れたら幸せなの。……家族、だから」
 唯一残った家族だから。ミラはそう言って、少し俯いた。
「だから、お兄ちゃんがもっと他の幸せの形を望むなら、それが良いと思って……」
「探しに行こうと思ってたの」
 でも、とミラはひとつ息をついた。
「ルイお姉ちゃんが……みんなの幸せをお兄ちゃんにプレゼントできたらね、って言ったから……それなら出来るな、って思って」
「……でも、こんなことになるなんて思ってなかった……」
「ルイお姉ちゃんも死のうとしたんだって。他の星の人たちにも、大変だったんだって聞いた……」
「ごめんなさい」
 そこまで言って、ミラは頭を下げる。ノアは彼女の頭にぽんと手を置いた。
「お兄ちゃんも、ごめんな」
 ミラが顔をあげる。ノアは続けた。
「テオに怒られたよ。コミュニケーションが足りてないんだって」
「僕……ちょっと疲れただけなんだ。帰ってくるかも分からない家族を待ち続けるのも、もう跡形もない故郷を眺めるのも」
 ミラが頷く。
「ねえ、ミラ。お兄ちゃんはミラと一緒にいれると幸せなんだ。それは本当。だけど、もっと他に、幸せの形があるんじゃないかと思ってる。」
「それを一緒に探さないか。」
「でも……」
 ミラが言い淀む。ノアはひとつ頷いた。
「たしかに、ミラがしたことは簡単に許されることじゃない。一歩遅ければ散々な被害になっていたかもしれない。」
「だから、それはちゃんと、謝りに行こう。それで許されるかは彼ら次第だ。許してくれる人も、許してくれない人もいるだろう。でも、それでいいんだ。」
「それから、もう二度とこんなことはしないって、ちゃんと約束して、それを守ろう。そうする他ない。やらかしたことは、やらかしたことだからな」
 ミラは少し迷って、頷いた。頷いてから、こう聞いた。
「ねえ、私、まだ幸せになっていいのかな……」
「それは……」
 ノアは答えに迷った。でも、とノアは言う。
「僕は、幸せになって欲しいよ。間違ってたとしても、僕たちは家族だから」
「……うん。もう少し、考えてみる。」
 それで、ミラはようやくスッキリとした顔になった。覚悟が決まったようで、安心してノアも笑った。
  
 
   *
 
 
 ずいぶん遠い所まで来ていたらしい。船は、ゆっくりと星へ向かう。
 そんな時。
「お兄ちゃん」
 ミラが声を掛けてくる。
「あのね、私、全部終わったら旅に出たいの。私、何も知らないなって思ったから」
「今度は、一緒に考えたいの。私たちの幸せの形って、何なのか。」
 だから、と一つ呼吸を置いて、ミラはこちらを伺った。
「……着いてきてくれる?」
「もちろんだよ、ミラ。」
 即答だった。呆気にとられたミラの後ろから、テオとルイが出てくる。
「言えたじゃん。おめ~」
「良かったねえミラちゃん!」
「えっ、僕より先に知ってたの!?」
「お兄ちゃんに言うのは緊張すんだってサ~」
 テオがからかう。ノアがショックを受けたとばかりに落ち込んだ素振りを見せれば、ミラは慌てて弁明した。
「だって、お兄ちゃん、お父さんとお母さんを待ちたがる気がして……」
「……あ~」
 なるほど、とノアが言う。ルイは笑って補足した。
「私たちが、彼らがいつ帰ってきてもいいように、装置を作って置いておくことにしたの。帰ってきたら、それでお互い手紙が送れるようにね。」
「そ。だからモーマンタイってわけ、ちゃんとみんなに謝ったら好きなとこ行こうぜ」
「待って、二人も着いてくるの?」
 慌ててノアが言えば、二人は同時に
「もちろん」
「当然」
 そう返した。即答だった。今度はノアがあんぐりと口を開けてしまった。
「まあ、ひとまず星にその装置を置いて~、戦闘ロボットをもうちょっと増やして~、ミラの謝罪祭り終わってからの話だな。先は長いぞ」
 テオがそう言う。祭りって言うなよ、と突っ込む前に、ミラが大真面目に頷いた。
「私も、頑張る」
「心強いわ、ミラちゃん。」
 ルイが笑う。三人が知らないうちに仲良くなっていて、寂しいやら嬉しいやらで、ノアの心境はぐちゃぐちゃだった。
「ああもう、僕の知らないところで仲良くならないでよ!」
「嫉妬~?」
「うるさい!」
 ドタバタと今日も騒がしく航行を続ける。
 僕たちの小さな船は、きっとこれからも、星々のしあわせのかけらを拾い集めながら進んでいく。それをどんな箱にしまっていくのかは、これから二人で決めればいい。
 いつぞやの静かな船内とは違って、今の船は賑やかな声に満ちていた。
 
 おしまい。

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小話
▼ノアとテオの話
>344
▼ノアとミラの話
>345
▼ミラとテオの話
>346

創作,宇宙の箱、しあわせのかけら,文章

イロドリ☆リンク!
 誰かの部屋の隅で、描きかけの絵が眠っているみたいに。誰にも聞かせられなかった歌がある。言えなかった言葉がある。
 それでも、いつか、届けられると信じている。
 そんな明日を祈っている!

 闇に飲まれる前に、もう一度と、少年少女たちは、今日も色を重ねる。

「イロドリ☆リンク・オン!」
 ――――きっと私たちは、どこまでも自由だ。


作中用語
・世界観
 この世界では、絵・音楽・文章・その他諸々、自己表現の行為に心の色が宿るとされている。
 それは人の感情や想いから生まれたエネルギー――――カラリエと呼ばれる、奇跡の力。

 しかし、人の心には描けない、届かない、認められない、などの負の感情も存在する。
 それらが生み出す闇のエネルギーが、災厄の存在――――ノクスを生み出すのだ。
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・カラリエ
 カラリエは純粋な想いや、自己表現の熱から生まれるエネルギー。
 五感に干渉する力があり、視覚・聴覚・触覚を通じて人に影響を与える。
 カラリエを安定させるには、自分自身の気持ちに正直であることが重要。
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・ノクス
 創作者の負の感情や絶望が生み出す存在。作品や心を黒く染める闇。

 大昔、人類が初めて、伝わらないという絶望を経験したとき、最初のノクスが生まれた。
 ある伝説の創作者が、生涯をかけた作品を誰にも理解されないまま死んだ。その瞬間に溢れ出した永遠に届かなかった想いが凝縮し、原初のノクス、ヴォイドとなった。
 ヴォイドは今も世界の深部に眠っており、人々の負の感情を養分として活動を続けている。現代のノクスはすべてヴォイドのかけらが人の心の闇に宿って形を成したもの。
 つまり、ノクスは人間が生み出し、人間が育て続けている存在だ。

 ノクスに支配された存在はダークアートと呼ばれ、心の奥にある本当の声を暴走させてしまう。ダークアート化した存在は、その人の本当の声を叫びながら暴れる。救うには、創作を通じて相手の心に光を届けることが必要だ。
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・無彩色
むさいしき
 ヴォイドに侵され、創作を楽しめなくなった人々が集まる組織。ヴォイドに共鳴し、今日もノクスを生み出している。
 表現するということは自分をさらけ出すことだ。自分をさらけ出せば、傷つき、否定され、届かない絶望を味わう。
 だったら最初から描かない方がいい。歌わない方がいい。何も表現しない方が、人は傷つかずに済むだろう。
 無彩にとって、色は希望ではなく、痛みの種。世界から色を消すことこそが、本当の優しさであり救済だと考えている。
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・アトリエピース/リンクツール
 少年少女たちは「アトリエピース」をリンクツールに装填して変身する。
 リンクツールは個人の自己表現のスタイルに応じて形状・操作感が変化する。
 変身後の衣装や武器は「自分の本音」に忠実であり、無意識の理想や未練も反映される。
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・変身
 少年少女は自己表現に込めた想いをアトリエピースに宿し、リンクツールと共鳴することで変身する。武器・衣装・技は、それぞれのジャンルや心のテーマに応じて個性的に変化する。
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・イロドリ☆リンクス
 カラリエに選ばれ、創作の力でノクスと戦う少年少女たちの総称。

 通称リンクス。変身可能な者たちは、ごく限られている。
 カラリエとの共鳴には強い想いと、創作に向き合う覚悟が必要。
 ノクスと対峙するうちに、自分自身の闇とも向き合わざるを得なくなる。

 リンクスの中には心を保てず脱落した者や、変身できなくなった者も存在する。
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・組織「アトリエ」
 リンクスを支援する秘密組織。表向きは民間のアート支援団体として活動している。メンバーには元リンクス・研究者・芸術家などが含まれる。
 リンクスを発掘・保護し、アトリエピースを届ける役割を持つ。
 全員が善人とは限らない。組織内にもカラリエをもっと活用すべき、だったり、人間の感情を管理すべきなどという、過激派が存在する。
 本部の場所は非公開。各地に支部アトリエが隠れ家的に存在する。
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・アトリエフィールド
 ノクスとの戦闘は、現実空間から切り離されたアトリエフィールドで行われる。
 これは戦う者の心とリンクして生まれる精神世界+芸術空間。
 一般人には見えず、時間もほぼ静止する。

 フィールドはその時のノクスの感情のテーマによって風景が変わる。
 フィールドが崩壊すると強制退場。未浄化のノクスは現実に溢れ出す。
 リンクス同士の感情が対立していると、フィールドが不安定になる。
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・一般人の認識
 ノクスの被害は、突然の創作活動停止、理由不明の無気力、として現れるため、社会的にはスランプ、メンタルの不調、と思われている。アトリエフィールドの痕跡(色の残滓・空間の歪み)は、光の見え方がおかしかった、程度の記憶になって残る。
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・秘密保持のルール
 変身中の姿・名前・能力は明かしてはいけない。
 秘密を知った一般人が巻き込まれるケースもある。
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・変身口上
アトリエピース、(各自のアトリエピースの名前)、リンク―――
「イロドリ☆リンク・オン! 3、2、1! (変身名)!」
「(キャラごとの想いの一言)」
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・人為的なリンクス
 本来、リンクスは自然に発生した強い想いとカラリエが共鳴した者から選ばれる。
しかしアトリエ内のある大人が、才能ある子を待つのではなく、こちらで作ればいいと考え、人工的にカラリエを注入・強制共鳴させる技術を開発した。
 しかし、この技術には欠陥がある。自然発生のリンクスは自分の想いとピースが完全に一致しているが、人工的に作られた場合、想いとカラリエの結びつきが薄い・ズレている。

 結果、変身は出来ても自分の本当の声ではない部分が混ざってしまうことがあるだろう。自分の気持ちに正直であることが共鳴の安定条件だ。人工的に植え付けられた想いは本人の正直さとズレが生じやすい。

 自然な共鳴なら少しずつ心が慣れていくが、人工共鳴は急激にカラリエを注入するため、精神的な負荷が大きい。使った後しばらく、感情が誰のものか分からなくなる、といった副作用が出るかもしれない。
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登場人物
リンクスたち
・天川ひかり
 あまかわ ひかり
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 160cm
 創作ジャンル:歌、ダンス
 変身名:リンクス・フォルテ

 性格:
 エネルギッシュで人懐っこい少女。世界一のアイドルを目指している。紬や舞桜とは幼馴染。
 歌やダンスを好きでいたいという気持ちが強いがために、失敗が怖い。傷つくことはそう怖くないが、好きなものを嫌いになってしまうのが何よりも怖い。
 幼い頃から歌とダンスが好きで、地元のコンクールや発表会に出ていた。
 そんな中、ひかりの、一番のファンだった女の子がいた。年下の、かわいいかわいい、妹みたいな。ひかりを見て自分もと歌とダンスを始めた子。
 ある時、大切な本番で、声が出なくなった。その子と喧嘩した翌日のことだった。理由はもう覚えていないくらい、些細なことだった。ステージで固まって、泣いて、逃げた。しばらく上手く歌えなくなった。
 そうしてひかりが落ち込んでいるのに引っ張られたのだろうか、責任を感じたのだろうか。今となっては分からない。当時、ひかりはしばらくSNSを見ていられなくて、落ち着いた頃に、本当に久しぶりに、SNSを見た。
 その子のアカウントが消えていた。
  歌やダンスが好きだった。歌やダンスを好きな自分が好きだった。あの子は、どんな私が好きだっただろうか。もう分からない。分かりたくもなかった。
 歌とダンスをするのは好きだ。でも、そんな過去を思い出させる歌とダンスを、それそのものを、胸を張って好きだと言えるかどうかは――――もう、分からなかった。

「あたし、天川ひかり! アイドルになるんだ、絶対!」
「本当は、怖いよ。でも……諦める方がもっと怖い。 そうでしょ? だって、こんなに好きなんだもの!」
「うるさいっ、うるさい! だって、仕方ないじゃん、あたしだって完璧じゃない……っ」
「あたし、頑張る。傷ついても、完璧じゃなくても、もう手放さないって決めたんだ!」

 アトリエピース:星型のブローチ
 武器:リズムブレイド
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・華房 紬
 はなふさ つむぎ
 16歳 / 男 / 高校1年生 / 160cm
 創作ジャンル:詩歌、文章
 変身名:リンクス・インク

 性格:
 少しぶっきらぼうで素直じゃない男の子。ひかりと舞桜とは幼馴染だが、仲が良い訳ではないようだ。
 詩や歌などから文章まで。言葉を扱うことが好き。こんなにも言葉が好きなくせに、口から出る言葉が素直じゃないことを少しだけ気にしている。
 書いた言葉は、選べるから、好きだ。口から出る言葉は選べない。書かない言葉は、なんだか軽い気がしてならなかった。でもその分、書いた言葉を、大切にしたい気持ちを、雑に扱われることが何より怖いのだ。だから、信頼できる人にだけこっそり見せている。馬鹿にされたくないから。
 幼い頃から自然と書く方が自分らしかったのだ。でも、喋らなかったせいで周りには馴染めなかった。家族はそれを心配していた、愛情から、もっと話してみたらどう? と、何度も言っていた。このままの僕じゃダメだと思って喋ってみたが、どうにも上手くできなかった。
 気付けばまた、あまり喋らなくなった。家族に心配されているのは理解しているが、だからといって、どうしようもない。

「僕は紬。……よろしく。」
「あっ、おい、天川!  胡桃まで……!! ああもう、おい待て!」
「変なの……、それ、俺が書いたんだ。それでも綺麗に見える?」
「ああクソ、そうだよな、お前らはそういうやつだよ……! 俺も行く!」

 アトリエピース:羽根ペン
 武器:レイピア
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・胡桃 舞桜
 くるみ まお
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 156cm
 創作ジャンル:作曲
 変身名:リンクス・アウロラ

 性格:
 真面目でちょっと引っ込み思案な女の子。紬とひかりとは幼馴染だが、紬のことはちょっと怖いと思っている。常識人ポジション。
 本人は普通でいたいと思っているが、それは傷つかないための言い訳で、本当は普通じゃいたくない。
 昔はもっとはつらつな子供だった。だから、家族に大人しくしていなさい、と言われることが多く、怒られることも多かった。別に大きな失敗があった訳じゃない。ただ、怒られないための術として、言われた通りに本当におとなしくなってみたら、びっくりするほど怒られなくなった。
 何が悪くて怒られているのかは、舞桜もよく分からなかった。
 そんな中で、音楽だけは手放せなかった。耳コピから始めて、次第に作曲に手を出すようになった。誰かの音楽に踊り出しそうになったあの気持ちを、泣きわめきたくなった時のあのこころの動きを。自分も誰かに届けられるかもしれない。でも届かなかったら、またわかってもらえなかったときと同じように、傷つくのではないか。その怖さが、いつも隣にある。

「胡桃舞桜です、よろしくお願いします……っ!」
「いいなあって思ったの。わかんないけど……すごく、いいなあって。だから、音楽にしてみたんだけど……」
「わたしの音楽なんかじゃ、なんにも変わらないって思ってた。でも、もし届いたなら、それで……いいかも」
「わたしは、わたしにできることをやるよ。できることなんて、少ししかないけど、それでも」

 アトリエピース:音符の髪留め
 武器:指揮棒
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・藤枝菫
 ふじえだ すみれ
 16歳 / 女 / 高校1年生 / 153cm
 創作ジャンル:絵・イラスト
 変身名:リンクス・シルエット

 クールで感情がなさそうに見えるが、実は一番激しい波を持っている女の子。

 透が重い病気で入院していたとき、菫はそばにいた。透は色んな話をしてくれた。病気のこと。窓から映る景色のこと。季節によって変わる空気の匂いのこと。それこら、自分の創作のこと。でも、ある日を境に彼は創作無気力になった。ノクスに侵されていたのだと知ったのは、後々のことだった。なんとかならないかと当時の彼の主治医だった猫田を待ち伏せして感情をぶつけた。
 猫田は少し困った顔をしてから、ひとつだけ方法がある、と零した。菫は、それに縋った。自分のことなどなんでも良かった。

 猫田は、リンクス、という存在の話をした。ノクスという存在のこと。ヴォイドが全ての元凶であること。そのうえで、君が戦うのなら、とアトリエピースとリンクツールを差し出した。

 それからずっと、菫は彼の元でリンクスとして功績を上げてきた。

「私は藤枝菫。よろしく」
「透。今日の体調は? ……そう、元気ならいいんだ」
「だって、私の声だって、絵だって、君には届かなかったじゃないか……! 君を失うよりマシだと思ったんだよ、ただそれだけだ、自分のことなんか、どうでも良いって思った!」
「猫田先生、私は……、あなたのことを恨んでなんかない。いつだって、創作は楽しいものですよ。思い出して、先生」

 アトリエピース:パレット
 武器:パレットナイフ
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・瀬川透
 せがわ とおる
 16歳 / 男 / 高校1年生 / 178cm
 創作ジャンル:演劇・脚本
 変身名:リンクス・ヴィータ

 性格:
 幼少期、重たい病気を抱えていた。必ず治る、とは言われていたけれど、しんどい日々だった。それでも、体が動かなくとも、頭の中で脚本を書き続けていた。自分が動き回れる自由な世界を書いていた。その脚本を今も持っている。
 ある日突然創作が出来なくなった時期があった。どれだけ考えて書いても書いても、現実の僕は病床にいる。こんな夢物語に縋って、もし、もし仮に、なにもかも上手くいかなかったら。
 病気が、治らなかったら?
 そう思ってしまって、しばらく何も書けなかった。それでも、菫は透の創作が好きだと言ってくれた。と、……思う。具体的なエピソードとしては残っていないが、そういうことを言われた記憶があるのだ。そしてそれは菫だったと、確信があった。それでも書くんだと思えるようになったことを彼女に伝えたら、彼女はわんわん泣き出してしまって大変だった。
 いまは病気は完治している。主治医の猫田には心から感謝している。

「僕は瀬川透。よろしく」
「菫、なんか隠してんだよなあ。なあ、あんたらなんか知らない? ……ふうん、あんたらも隠し事?」
「なんであいつにそんな危ないことさせるんだよ! ……くそ、そんなこと知ってたらちゃんと止めてたのに、なんで教えてくれなかったんだ!」

 アトリエピース:小さなランタン
 武器:ランタン
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大人たち
・猫田 心音
 ねこた こね
 27歳 / 男 / リンクスの研究者 / 174cm
 創作ジャンル:もうしてない

 性格:
 仕事が恋人。昔からお金を稼ぐために仕事をするのが好きで、コンビニのアルバイトからヒーローショーの敵役の仕事まで色々やった。全部楽しかったらしい。
 運動をすることが好きでその道の友人が何人か居る。よく色々なことを教えて貰っていたため動くのは上手い。

 映像を撮るのが好きだった。人を見るのが好きで、記録するのが好きだった。
 ある日、仲間の弱いところを無意識に切り取ってしまった映像が広まって、その人を深く傷つけた。悪意はなかったし、広めるつもりもなかったそれが、何故かSNSに投稿されてしまっていたのだ。
 結果的には、それはアトリエの過激派達の仕業だったのだが。
 大きな混乱の最中、ひとつ理解できたのは、自分がその映像を撮らなければこんなことにはなっていなかったということだった。自分を許せなくなって、カメラを持てなくなり、変身もできなくなり、リンクスを辞めた。その仲間――――陽菜とは、今もギリギリ繋がっているが、猫田から距離を置いている。
 その件をアトリエに握られており、人為的にリンクスを育成できるかを調べる研究をやらされている。本心ではやりたくないのだが、逆らえない。逆らったら、過激派たちが何をしでかすか分からないから。リンクスたちには秘密の研究だった。
 菫にそれを託したのは、それがちょうど良かったからだ。悪意ではなかったが、善意でもなかった。彼女を利用している自覚はある。それでも、そうするしか無かったのだ、お互いに。

「上から読んでも下から読んでもねこたこね! み〜んな大好き猫田先生だよ〜。好きに呼んでちょうだいね〜」
「うんうん、今日も怪我はないみたいだね、良かったよ。なんだかんだ君たちの身が一番大切だからね」
「―――……、ごめんね。あの時、俺にはそれしか出来なかったんだよ」
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・花咲 陽菜
 はなさき ひな
 27歳 / 女 / 舞台役者 / 156cm
 創作ジャンル:演劇

 性格:
 現役の舞台役者さん。猫田と律とは元々仲間だった。
 憧れの役者に近づきたくて演技を始めた。認められたくて、舞台の上の自分を見てほしかった。舞台の上の自分だけで良かったのだ。
 でも猫田の撮ったドキュメンタリーが、舞台裏の弱い自分――――悔しがって、不安で、うまくいかない自分を広めてしまった。見せたくない自分を、意図しない形で見られて、その時の反響は好意的なものが多かったが、それすら確認できないくらいに怖くて、傷ついた。今も、弱い自分を自分の意志で舞台に乗せることは、怖いのだ。強い自分は見せられる。でも弱さをちゃんと自分の手で差し出すことがまだできないのだ。
 それが怖くなって、一度演技をやめた。でも全部に負けたくなかったから戻ってきた。その強さは悔しさから生まれている。明るさは表面じゃなくて、ちゃんと戦って手に入れたものだ。

 猫田のことは許している。猫田が距離を置いているのを薄々感じながら、ずっと待っている。猫田の本来の姿を、楽しそうにしているときの顔を、誰より知っているから。いつか、また、戻って来てくれると信じて待っている。

「あの人、なんだかんだ強がりさんで、意地っ張りさんだからね〜。今も自分を許せてないんだろうな。分かってるよ」
「馬鹿! ほんと馬鹿、あんたっていっつも人のこと頼らないよね! あたしが言えたことじゃないかもしれないけどさっ」
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・灰島 律
 はいじま りつ
 27歳 / 女 / 舞台演出家 / 160cm
 創作ジャンル:舞台美術・装飾

 性格:
 猫田と陽菜の共通の友人。淡々としていて、自分の感情は行動で示す子。猫田と陽菜の緩衝材だったが、それを苦にも思っていなかった。三人がちゃんと話せる場所を自然に作っていたのは律だった。

 学校で、自己表現のつながりで出会い、律が二人をつないだ。律と猫田は、律の舞台セットを猫田がドキュメンタリーとして撮ったのがきっかけに。律と陽菜は、最初は普通のクラスメイトとして仲良くなり、やがて演劇と舞台美術で関わるようになった。三人でいた時間はわちゃわちゃしていた。猫田と陽菜がにぎやかで、律が淡々とそこにいる。
 猫田と陽菜の事件で三人の関係は壊れた。陽菜は傷ついたが乗り越えた。猫田は自分を許せなくて距離を置いた。律は何もできなかったから、今も二人から離れずにいる。三人とも、あの頃には戻れないとわかっている。でも律だけが、まだ諦めていないのだ。

 二人の間にいることが好きだった。それが自分の場所だった。でも一番大事な瞬間に何もできなかった。陽菜を慰めることも、猫田を引き止めることも。だから今はせめて、離れない。あのとき動けなかった分、せめて今はそこにいることを決めたのだ。

「私は律。君たち、心音のこと知らない? ああ……、いつも猫耳の帽子を被ってる、アトリエの研究者なんだけど」
「……陽菜、心音。私は、あなたたちがそばに居てくれたら、それが一番嬉しいんだよ」
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無彩色幹部たち
・漆戸 楓
 うるしど かえで
 30歳 / 女 / 無彩色幹部 / 171cm

 性格:
 元々はアトリエの研究員だった。感情もカラリエももっと管理・制御するべき、という思想を持っていたが、周囲には理想論・過激派としてまともに相手にされていなかった。
 自然な感情に任せていたら、いつか誰かが壊れる、という自説を、証明してみせるために事件を起こしたのだ。
 猫田、陽菜、律という、当時自然な絆で強く結びついていたグループを選び、無自覚の悪意のない映像をあえて拡散させた。
 結果、陽菜は深く傷つき、猫田は自分を許せなくなってリンクスを辞めた。彼女にとってこれは、管理していないから壊れるんだ、という自説の証明であり、成功体験となった。
 しかし、この一件は楓の主張を証明するどころか、アトリエから除籍される結果になった。
 アトリエは何も分かっていない。組織で動けないのであれば個人で動くのみだ。そうして動き出した楓を拾ったのが円だった。円は、無彩色で研究を進める手伝いを代わり、無彩色に情報を提供することを求めた。
 利用できるものは何でも利用したほうが良い。そうして楓は、無彩色に身を置いているうちにノクスに侵されていった。今では立派に無彩色の幹部である。

「馬鹿ね、感情も表現もそれから生まれる力さえ、管理下に置かないからこうなるのよ」
「円は私のことを手伝ってくれると約束してくれた。それだけよ」
「私の目的はアトリエの解体と新しい組織の設立よ。邪魔しないで頂戴」
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・白瀬 このみ
 しらせ このみ
 16歳 / 女 / 無彩色幹部 / 157cm

 性格:
 ひかりに憧れて歌とダンスを始めた、あの消えたアカウントの子。
 ひかりと喧嘩した後、自分も声が出せなくなった。誰にも理解されないまま、一人で抱え込み続けた。そのうち、ノクスに侵され、無彩色に拾われた。表現をやめれば、もう傷つかない、という理念に心から救われたと、本人は信じている。
 ひかりへの感情は恨みだけではなく、またあの子に嫌われたらどうしよう、という怖さが根底にある。無彩色は表現しなければ、その怖さごと消えると約束してくれた存在であり、それが救いに見えた。
 ひかりも早く楽になればいいと思っている。

「ひかりちゃん、久しぶり。私だよ、このみ!」
「ひかりちゃんも早く楽になればいいの。こんなこと、もうやめよう?」
「わ、私、違う! また踊りたいなんて、歌いたいなんて、思ったことない!!」
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・有ヶ谷 円
 ありがや まどか
 27歳 / 男 / 無彩色幹部 / 181cm

 性格:
 無彩色の理念を心から信じているわけではなく、無彩色の、表現をやめれば救われる、という言葉を、人を引き込むための良い言葉、として使っている側面が強い。
 人を見る目に長けていて、この人は今、社会や組織からはみ出しかけているというタイミングを逃さない。楓を拾った時のように、優しい言葉と実利をセットで差し出している。冷たいわけではなく、むしろ物腰は柔らかい方。ただしその優しさは、相手を無彩色に定着させるための手段でもある――――本人の中でその境界が曖昧になっている。

 かつての円は、リンクスだった。
 自然な共鳴でリンクスに選ばれた一人だった。創作ジャンルは、様々なものの演出・企画。
 アトリエの中でも特に優秀で、戦闘力よりも仲間をまとめる力、才能を見抜く力で評価されていた。
ある時期、アトリエ上層部から有望なリンクスたちを集めて、精鋭チームを作れという指示を受ける。円は、自分の目利きに自信があったし、期待に応えたい気持ちもあった。だから、迷いながらも懸命に人を選び、集め、まとめ上げた。

 しかし、そのチームはアトリエ内の過激派が、カラリエの力を試すための実験的な部隊として利用するためのものだった。円は、それを知らずに人を集めてしまっていた。
 結果、無理な戦闘や実験まがいの任務を繰り返した仲間たちの中から、心を壊す者、リンクスとして再起不能になる者が出た。円がこれは良い才能だと見込んで誘った人たちが、次々と壊れていった。
 円は抗議したが、組織の中ではすでに決まったこととして処理された。円自身は有望な人材を集めた功労者として評価される一方、壊れていった仲間たちは記録からも静かに消されていった。
 円にとって一番堪えたのは、自分の見る目が、誰かを守るためではなく、利用されるために使われていたという事実だった。

 才能は、放っておいても誰かに利用される。それなら、自分が先に見つけて、自分の手元に置いた方が、まだマシだ。これは正義感でも復讐でもなく、一種の諦めと防衛。円は、もう誰にも良かれと思って人を差し出したくない。だから、自分がコントロールできる場所に、自分の意思で人を集めている。
 無彩色の理念を、円自身は半分信じ、半分は利用されるくらいなら、何も持たない方がいいという自分の傷から出た結論として受け入れている。

「僕は有ヶ谷円。君、困ってるだろ。力を貸すよ」
「僕は見る目があるからね。君の才能は確かなものだ」
「君たちにとっても、アトリエなんて、悩みの種なんて――――無い方が良いんじゃないか?」
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イロドリ☆リンク!,文章

日記:自我の話
実は人間に自我なんて存在しなくて、あるのは本能と理性だけで、理性で何を選びとるのかが環境によって変わるからそれが自我だとされてるんじゃないかみたいな話をこないだしたんですけど、

学習して、応用して、答えを出すって動き自体は人間とAIも似たようなもんだという話があると思うんですけど(脳みその働きの話)、応用の仕方が人間の標準とは違っても、その答えが人間の標準とは違っても、学習したこと、もの、期間が人間と同じものであるわけじゃないと考えた時、それは当然のことで、人間が人間の尺度に収めようとしているだけで、それもまた全てAIにとっての自我(或いは自我だと呼ばれるもの)なんじゃないかなって思ったんですよね~

それと同じように理性で学習したものを元に何を選び取るかが人によって違うから「自我」って呼ばれてるだけで、本質は全部同じで「理性」でしかないんじゃないかな~って思いました
人間=AIという話ではなくて 人間には人間の尺度の自我があって、AIにはAIの尺度の自我がある、みたいな あくまで個体差/種族差

創作に使えそうだから書き残そうかなってね おもろいなあと思ったけど、ちゃんと知識や裏付けがあった上で言ってる訳じゃないのであくまで空想です 知識、得たいよ畳む

文章

SS / 風が描いた海の話
【 桃咲みか / 青羽ひとみ 】
世界観が定まる前に練習として書いたもの。本編とは別軸。

 空を駈けていく魚、ウィンドグライダーに乗って、誰かが今日も、戦っている。
 ここは、光差す雲の上。魚と人間が護り続けた空中都市。

 美しい街並み、スカイラヴィス。
 私たちは、この広い世界で、きっとみんな、自分だけの海を探している。

 風に乗って、どこまでも行こう。
 私たちだけの海を探しに行こう。


・・・


「こんにちは。」
「……」
 げ。そんな声が聞こえてきそうな顔で、その少女――――みかはこちらを見上げた。
 それを見て、少し首を傾げて、ひとみは改めて、隣に座ってもいいかと彼女に問うた。
 好きにしたらいいよ、とつっけんどんな返答にありがとう、と感謝を返し隣に座る。
 みかにとっては、居心地が悪いことこの上なかった。
 ざわざわとした室内。それでも、何人かがこちらの様子を伺っているのをなんとなく察することが出来て、それがとても嫌だった。

「桃崎さんだよね。ウミの絵を見たことがあるよ。素敵な絵だった。」
「……、だったらどうしたの。私もあなたの事は知ってるよ、青羽さん」
 青羽ひとみ。セレスティア騎士学院から編入してきた、天才少女としての評判。人と関わりがほとんどなくても、嫌でも噂が耳に入った。
 ひとみは、少し驚いたような顔をして、こう言った。
「知っていてくれてるの? 嬉しいな。……なんでそんな嫌そうな顔するの?」
「嫌味かなと思ってさ」
「そんなわけないでしょ」
 怪訝そうにこちらを覗くひとみに、悪意は本当に無さそうだった。
 それがよりタチが悪いように見えて、みかはそっと目を逸らした。
「それで、海の絵がなんだって?」
「ああ、そう。あれ、とても素敵だなと思ったんだ。どういう発想だったの?」
 みかは目を伏せた。ひとみは言葉を続ける。
「私は、あれは地上の景色かなって思ったの。じゃないと、あんなに大きな水たまりは出来ないから。そこに、空にいるはずのウィンドグライダーみたいな生き物が泳いでた。地面よりももっと深いところを泳いでいたんだ。」
「……正直に言って、衝撃だったんだ。地上を見たことがあるんじゃないかって思ったくらい。」
「どうしてあの発想が出たの? 私、この学院に発想力がすごい子がいるって聞いた時、貴方しかいないと思ってたの。」
「……」
 ひとつ、ため息が落ちた。それにより、少しの間ができた。少しして、みかが口を開く。
「風が教えてくれたの。私は、それを映し出しただけ。」
「あれは創作なんかじゃない。地上には海があって、魚が泳いでいて、夜になると、時折空を目指して飛び跳ねるの。」
「地上の絵はいくつも描いてきたけど、先生も、友達も、みんなあれを私の創作だ、発想だ、って言うんだ。あなたも今、その一人になった。」
「はあ、ほら、分かったでしょ。私に発想力なんてないの、もう関わらないでよね」
 ふん。そっぽを向いて、荷物をまとめ直す。別の席に座ろう。これ以上、この人に付き合ってやる理由なんて、私にはない。
 そうして立ち上がる。歩こうとして、ぐん、何かに引っ張られて、それは叶わなかった。
 なにかではない。そこには、ひとみしかいない。

 振り向けば、ひとみは興奮した面持ちで、それでも努めて冷静にこう言った。

「――――風の記憶を、この目で見てみたくはない?」

 みかは静かに眉を寄せた。
「……なにを、馬鹿なことを」
「あるんでしょ。この世界のどこかに、海は存在するんだってあなたが言った。」
「じゃあ、見に行こうよ。それで、証明してやるんだ。私たちの魅せられた海は、創作なんかじゃないって」
 真っ直ぐみかを見て、ひとみは言う。冗談には見えなかった。
 そこで、チャイムが鳴る。考えておいて。そう言って、ひとみは手を離し、前を向き直した。



・・・



 結果として、その後の授業は全然集中出来ずに終わった。聞かなくても問題ない範囲だったことだけがみかにとって救いだった。
 海。
 幼い頃から、風の声を聞くことが出来た。大人になるにつれ、会話を交わすことも、ごく稀にだができるようになった。
 だからこそ、知っている。地上のこと。海のこと。昔こそ美しい光景が広がっていたはずの地上は、今や光も通さぬ雲に遮られ、真っ暗なのだと。

 もう、風の教えてくれた、あの美しい海は存在しないかもしれない。

 そう思うと、なぜだかとても苦しかった。でも、それをわざわざひとみに伝えてやる理由も無かった。
 それでも。
 もし、まだあの美しい海を見ることが出来るのなら、と、そこまで考えて、いやいや、と首を振る。
 そもそも、子供二人が地上に降りるなんて前代未聞だ。危ないかもしれない。怒られるのも御免だ。

「……やっぱり」
 諦めよう。断って、もう彼女とは関わらないように――――。

「あ、」
「うわあっ!?」
 曲がり角。考え事をしていた分気付くのが遅れたみかは、思いっきりひとみの足を踏んづけた。
「ご、ごめん……!?」
「や、別に……そこまでじゃないよ。大丈夫」
「……そ、そう」
 ひら。ひとみが手元に持っていた書類を振って、にこ、と笑う。
「そういえば。地上に降りるための許可証はもぎ取ってきたから。これでなんのしがらみもなく地上に降りれるよ。」
「っはあ!? 本気!? 地上に降りるためにはめちゃくちゃ厳しい審査が必要なんじゃなかった!? っていうか、そもそも騎士じゃないと無理なはず……!!」
「みかなら知ってるかもしれないけど、私は元々はセレスティア騎士学院に居たんだよね。」
「だ、だからって騎士の身分ってわけじゃ……!」
「それがそんなわけなんだよ。学院の無い時間は自由騎士なんだ。騎士学院で学べることはだいたい学んだからこっちに来たんだ。」
 勿論みかの絵を見たからでもあるけど。平然と言ってのけるひとみに頭を抱えたくなった。
 まるで嘘みたいな話だ。でもひとみは本当だと宣う。いやいやいや、そんなわけない。本当にそうなら、こいつこそフィクションの人間じゃないのか。
「……私を、信じてくれる?」
「ウワーーッッッ、心が痛むからその顔をやめろ! 確信犯でしょ!」
「バレちゃった」
「バレるよ!!!」
 でも。
 それ以外は特に嘘をついてる様子ではなかった。書類を偽造をするような……能力はあってもおかしくなさそうだけど、そこまで不誠実な人じゃないと信じるしかない。
「何かあったら、全部責任を取ってくれるのね?」
「もちろん。まかせて」
「……ふうん。なら、仕方なく、ついて行ってあげる。」
「あはは、ありがとうございますって言ったらいいの?」
「知らないわよ、好きにして」
「じゃあ、来週のお休みの日に飛ぼう。楽しみにしてて。」
 少しの間が空く。みかは、なにかを言おうとして、諦めた。そのかわり、呆れたように笑った。



・・・



 あっという間に、当日になった。
「おいで。」
「わあ……!」
 ひとみは、カジキやイルカを思わせる、流線型のスマートな身体を持つウィンドグライダーを呼び寄せて、みかに向きなおる。
「みか、この子が私のパートナーなの。名前はブルーライゾン。長いからブルーでいいよ」
「……私、ウィンドグライダーをこんなに間近で見たの、始めて」
 みかはまじまじとブルーを見つめた。ブルーはその体を魅せるように、その場で一回転してみせた。
「ブルー、今日はよろしくね」
 ブルーは、みかに返事をするようにもう一度くるりと回った。
「じゃあ、行こうか。‎その道までに空賊が出てくるかもしれないから、その時は私から離れないでね。」
 ひとみはそう言いながら、美しい形をした青白く輝く槍をブルーライゾンに持たせた。
 軽快な動作でその上に跨り、みかに振り返る。みかは、慌ててその上にゆっくりと跨った。

 最初はゆっくり進んでいたその道行も、徐々にスピードを上げていく。
 その最中、何度か空賊の傍を通ったが、周囲の大人たちがそれらを片付ける手伝いをしてくれたため、ひとみが戦うことは無かった。
 私が無茶を言って子供二人で行くと言い張ったから、みんなが手を回しておいてくれたのだろう、とひとみは笑っていた。
 彼女には、仲間が沢山いるのだろうな、と少し羨ましくなった。

 そうこうしているうちに、目的のポイントまで到達したらしい。
「昔の地図をね、貰ってきたんだ。って言っても今どれくらいこれが正しいかは分からないんだけど……」
 そう言いながら地図と空図を見比べる。よし、ここだ。なんて確認してから、ひとみはこちらを振り向いた。
「今からこの雲を突っ切るんだ。突っ切った先は真っ暗だから、光を用意してくれる?」
「……え」
 やっぱり、真っ暗なんだ。少し不安な気持ちになりながら、ここまで来て引き返すのも良くない、と思い直して頷いた。
 行くよと、ひとみの合図でブルーは斜め下に向かって降りていった。ぐんぐんと下に下に、雲を突っ切っていく。

――――辺りが、徐々に暗くなっていく。今だよ、とひとみが指だけで合図した。

「エルナ・ガルダ・ス!」

 みかが呪文を唱えれば、光がブルーの周りを照らし出した。
 まだ、雲の中だ。

 ぐんぐんぐんぐん。下へ下へ、もっと下へ。
 勢いは止まらない。分厚い雲はまだ先も見通せない。

 それでも、終わりは来る。
「サリス・メリア・ス!」
 ひとみの声がした。その瞬間――――、

 雲が明ける。光が溢れる。思わず目を瞑って、……けれど、光が溢れていた。
 いや、待て。そんなはずは無いと、必死で目を開けた。光で何も見えなかった。目が慣れるまで、その光をずっと睨んでいた。
 その間も、ブルーはずっと下へ降りているようだった。

 ようやく目が慣れた頃にはもう、海はすぐそばにあった。沢山の光が私たちの周りを浮いて、空に飛んでいく。それはまるで灯篭のようで、星のようで、全てが風のおとぎ話のようで、とにかく美しかった。

「……、す、すごい……!」
「私、魔法を拡散するのが得意なんだ」
 ひとみの自慢げな声がしたのを聞いてから、自分の口からはしゃいだ声が出たのに気付いて、少し恥ずかしくなった。

 ざざ。そんな音を立てて、ブルーは地面に到着する。静かに風が吹いていた。この風なら、地上で野宿しなくとも直ぐに空に帰れるだろうね、とひとみが言った。

 みかは、もうそんなことはどうでも良くなっていて、夢中で海に向かって走っていった。初めて踏みしめる砂は、思ったより歩きにくかった。

 寄せては返す波の音がする。潮の匂い。水飛沫は光となって、空に向かって登っていく。

 全てがリアルで、夢物語のようで、信じられない気持ちでしばらく黙って眺めていた。
 ひとみはそれを邪魔しなかった。



「――――絵が描きたいな。」
 どれだけの時間が経ったか。ぽつり。そう零した自分の言葉で、ようやく我に返った。
「あ〜……、桃咲さんは……持ってきた? スケッチブックとか……」
 横からひとみが小首を傾げてそう聞いた。みかは、それら全てを持って来なかったことを心から悔やんでいた。
「……青羽さんも持ってきてないの?」
「あ〜、実は、楽しみすぎて忘れちゃってたんだ……。」
 困ったように頬をひとつかいて、ひとみは答えた。それなら、この景色を焼き付けるまでだとみかはもう一度海に向き直った。
 それを見ながら、ひとみはぽつりと言葉を零した。
「桃咲さんの海が、本物なんだ、って一緒に知れてよかった。今までは地上に興味なんてなかったんだ」
「……そういえば、申請すれば来れちゃう身分だったんだっけ。」
「そうそう。今までは興味なかったし、子供だから、ってことで探索班からは外れてたの」
「ふうん……。」
「あとは……、答えを知るのが怖くて。私には風の声は聞こえないから、地上のことは……どうしても、想像するしかなくてさ。ほら、想像するのってワクワクするじゃん。」
「でも、答えを知ることで今までの私の想像が全部だめになっちゃう気がしてさ。」
 その気持ちは、分からなくもなかった。みかは、海を眺めながらそれを静かに聞いていた。
「だけど、先輩方から聞いてはいたんだよね。『大きな水たまり』の話とかさ。」
「だから、それが海である可能性に賭けたの。それで桃咲さんの絵を肯定できるならと思って」
「私、桃咲さんの絵が好きなんだ。表現の仕方も、題材も、全部全部」
「だから、これからも絵を描いてね。全部本物だって私が信じるから。」
 足りないかもしれないけど。そう言って困ったようにひとみは笑った。
 みかは、少し不思議な心地になった。でも、何も言わなかった。代わりに、
「……ありがと」
 そう言って、照れ臭そうに笑った。



・・・


 満足いくまで海を眺めて、そろそろ帰ろうかとブルーに跨り、学院に帰り着く頃にはすっかり日も暮れてくたくたになっていた。
 先生たちが2人を出迎えて、暖かいご飯を食べて、それからは、2人とも夜遅くまで作品の制作をした。
 それは、美しい海の絵と、その中にまで想像を巡らせた、ちいさな物語だった。
 衝動だったと、次の日の2人は語った。



 あの日、あの時、あの瞬間見たあの景色は、確かに私たちだけのものだった。
 みかは、風のおとぎ話を誰かに話したくて作品を制作しているのかもしれない、と、改めて自分の創作の意義を知った。


 後日、地上に再び行くために、護身術を学びたいのだとひとみに頼み込んで、一緒にウィンドグライダーに乗り込むふたりの姿があったりするのだが、それはまた、別のお話。畳む

文章

作品概要

 世界の地下に、レコードが回っている。
 過去も、現在も、未来も――――
 すべての旋律が、そこに刻まれていく。

 歌、ダンス、ファッション。
 その三つが重なる時、世界の未来が動き出す。

 これは、光に焦がれた少年少女たちの物語。


作中用語
・メロディア
 メロディアは、物理的な別世界ではなく、同じ世界に存在している。具体的には世界の裏側、地下に存在するが、その存在を知っているものは少ない。知っていても、あくまでおとぎ話程度である。

 その世界は大きな蓄音機のような形をしており、地球が回るようにレコードが回っている。このレコードの上におとだまが存在している。
 このレコードはアカシックレコードの役割も担っており、おとだまはその身体を共鳴させることによって世界の記録をしているのだ。
 このアカシックレコードは、過去と現在のすべてを記録するだけでなく、未来の可能性も宿している。未来の可能性は未完成のメロディや空白の楽譜として記録されており、世界が調和を保つためには、この未来の音を紡いでいくことが重要だ。

 アカシックレコードには未完成の楽譜があり、シンカーたちのパフォーマンスによってそれが完成される。完成した旋律は未来の調べとして新たな調和を生み出すのだが、その一方で、不協和の旋律によって楽譜が消滅する危険性がある。これにより未来の可能性が失われ、世界に不調和が生じるのだ。

 そこで、シンカーたちのTrendSync Performは、未来の音を紡ぐための鍵となる。彼らのパフォーマンスや想いが未来の空白を埋め、新たな旋律をアカシックレコードに刻み込み、ステラ・ノーツは、その瞬間に発生する未来を繋ぐ力であり、観客や仲間の感情と響き合うことで、新たな音が生まれるのだ。
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・おとだま
 おとだまは、この世界の中心的なエネルギー源であり、音楽、ダンス、そしてファッションに宿る力を集め、世界の調和を保つ役割を果たしている。おとだまの力は、各人の感情や心の状態に反応し、特に純粋な心や他者を思いやる心に共鳴するため、感情や心の成長がパフォーマンスやその結果に直接的な影響を与えることができる。
 基本的には小さな音符の形をとっている。世界の観測者、私たちの良き隣人である。
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・トップシンカー
 この世界では、おとだまに認められることが最も重要な目的の一つのなる。おとだまに認められた者には、シンフォニック・ティアラを贈られる。ティアラは、1つだけ持ち主の願いを叶える力を持っているが、おとだまに認められることはそう簡単なことではない。強く、気高く、優しい心の持ち主のみが、ティアラを手にすることができるのだ。
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・シンフォニック・ティアラ
 音楽と感情の調和そのものを象徴するティアラ。トップシンカーだけが手にすることを許される、メロディアの祝福そのもの。
 ティアラは、音符や波紋を模した装飾が施され、中央にはハーモニーの結晶が輝いている。身につけると、虹色の光が淡く輝き、見る人すべての心に感動を与えるとされている。
 このハーモニーの結晶が、持ち主の想いを旋律として未来に刻み、願いを叶えてくれる。
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・不協和の影
 不協和の影は、メロディアのアカシックレコードに目をつけ、世界の破壊・または改変を狙っている勢力だ。
 組織というよりは、そういう事象に対する名称である。

 彼らは、自分たちの過去の痛みや絶望から歪んだ未来を望んでおり、そのためにアカシックレコードを改ざんしようとしている。
 シンカーたちの役割は、本来あるべき未来の可能性を守り、不協和音による破壊を阻止することだ。
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・レゾナンスマイク
 シンカーはそれぞれが特注のマイクを持っている。
 マイクは、毎月行われるオーディションで実力で手に入れるものであり、それが、少年少女をシンカーたらしめる証明になるのだ。

 このマイクのボタンを押し、トレンドフォージで刷られたカードに翳すと、シンカーに変身することが出来る。
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・変身共通口上
「レゾナンスマイク! スタイルコード、セット!」
「(任意のセリフ)」
「オン・ステージ!」
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・トレンドフォージ
 主にデザイナーが使う機器。カードを差し込み、デザインを描くと、そのまま印刷することが出来る。印刷されたカードはスタイルコードと呼ばれ、少年少女が変身するのを手伝ってくれるのだ。
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・スタイルコード
 デザイナーがトレンドフォージを使い印刷するカードのこと。デザイナーによってはカードに手書きすることもあるらしい。
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・ミラージュクロゼット衣装
 デザイナーが感情を強く強く込めることで、稀にミラージュクロゼットと呼ばれる衣装が生まれる。この衣装は、シンカーの不安や、緊張、その他負の感情を和らげる力がある。いつだってあなたの背中を押してくれるのは素敵な服だった。
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・TrendSync Perform
 トレンドシンク・パフォーム

「TrendSync Performは、ただの競技でもなければ、子供のお遊びでもない。」
「美しい歌が、リズムが、ファッションが、世界の未来を描きだす……、世界を動かすハーモニーにすらなる。」
「―――未来は、君次第なんだよ。」

 TrendSync Performは、この世界における最も重要な未来を紡ぐ手段であり、競技の名前である。歌、ダンス、そしてファッションが一体となり、世界を動かす強力な力を生み出すことができる。特に、シンカーたちが力を入れるのはステラ・ノーツである。

それらを生業にする人々のことを、トレンドシンカーと呼ぶ。略称はシンカー。
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・ステラ・ノーツ
「心音が奏でる輝きのリズムを、わたしたちは、ステラ・ノーツと呼ぶことにした。」
「ひとつの音が、無限の星空を描いていく……、わたしたちは、きっと星すら超えていける。」

 ステラ・ノーツは、シンカーの心が強く輝き、パフォーマンスに込めた想いが観客や仲間たちに完全に伝わったときに発動する。

 シンカーが動作や歌の中で発動条件を満たすと、観客席に「星のノーツ」が現れる。
 ノーツが星空のように散りばめられ、観客がそのリズムに合わせて参加することになる。
 ステラ・ノーツの完成は、観客との一体感が評価されるポイントとなるだろう。

 観客は、ライブのリズムやメロディに合わせて画面上に流れるノーツをタップする。そうすることで、ステラ・ノーツの演出が変化する。
 成功率が高いほど、シンカーたちのパフォーマンスに強力なエネルギーが追加されるが、タップミスやリズムのズレが多い場合、ステラ・ノーツは上手くいかないかもしれない。手拍子で誘導しよう。

「リズムに触れて、光と想いを届けるよ!」
「―――さあ、オン、ステージ!」
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・トレンドシンク・グランド・ステージ
 TrendSync Grand Stage
 この名称は、シンカーたちが「ティアラ」を目指して競い合う、年間最大規模のライブイベントを表している。

 トレンドシンク・グランド・ステージは、1年を通じて各地で行われる予選やステージの集大成であり、すべてのシンカーが目指す頂点の舞台。ライブの主旨は、「TrendSync Perform」のすべてをシンクロさせ、最も輝くシンカーが世界を導く」 というもの。優勝者は、シンボルである「ティアラ」を授与されるとともに、シンフォニック・ティアラを手にする権利を得られる。

 これらは、地方予選、全国予選、そして最終決戦のグランドステージ、という3段階で行われ、それぞれのステージで異なる課題曲やテーマが提示され、参加者の多彩な表現力が試される。

 ステラ・ノーツの成功やライブの感動は、会場の観客や視聴者のリアクションによってポイント化される。ファンの応援が結果を左右する仕組みが追加され、観客とシンカーの一体感がより高まる。

 最終決戦では、トップ5に選ばれたシンカーがシンフォニック・ティアラを賭けてTrendSync Performをすることになる。
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登場人物
○主人公サイド
・夕空翼
 ゆうぞら つばさ
 一人称:ボク 二人称:きみ、あんた 〇〇ちゃん / さん 性別:男 年齢:17

 主人公。
 小さくて華奢なので女の子にしか見えないが男。ツンデレに見えるが基本的には素直。と言うよりは、意図的にデレを作っている。また、可愛いものが大好きであるが、基本的には隠している。男としてのなけなしのプライドである。

 姉がいる。姉の夢は、トップシンカーになり、シンフォニック・ティアラを手に入れることだった。彼女の夢を応援していた。一緒に歌った。一緒に踊った。なのに、不協和の影の活動のせいで、彼女は夢を叶えられなくなった。

 翼は、それを代わりに叶えるため、トップシンカーを目指している。
 いつか背が伸びて、大きくなって、かっこいいトレンドシンカーになるのが今の夢だが、現実問題背が伸びる気配はないのである。
 そのため、幼馴染である結城桃音に提案されて、多少葛藤しながらも女装シンカーとして活動することになる。


「ボクは夕空翼。よろしく。……なあに、そんなにじろじろ見て。『噂通り小さくてかわいいですね』? うるさーーーい! 誰だそんな噂流してんのは!!」
「桃ちゃんだって可愛い、ってボクは思うけど、でも桃ちゃんはそれを受け止めきらないんだと思う。だけどボクは知ってるもん。桃ちゃんが頑張り屋さんでかっこいいのも、好きなことに一直線で可愛いとこも」
「朱希〜、ちょっと付き合ってよ。は? 何って、分かってるでしょ。買い物! 荷物持ちがいるんだよ、なんか奢ってあげるからさ!」
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・夕空奏海
 ゆうぞら かなみ
 一人称:わたし 二人称:あなた 〇〇ちゃん / さん 性別:女 年齢:19
 翼の姉。背が高く、美人だった。不協和の影のパフォーマンスに影響され、心を壊してしまった。
 今はベッドの上でぼんやりしていることが多い。ご飯は食べてくれるようになった。

 将来の夢がトップシンカーだった。理由は単純で、白露夢菜のことが好きだったからだ。彼女と同じティアラが被りたかった。
 彼女がトップシンカーになる前から、長いことファンをしていた。トップシンカーになったと聞いた日には泣きながら喜んだし、心から祝福した。いつしか、自身もトップシンカーを目指すようになっていた。

 翼のことも大切にしており、彼の声が好きだった。できることなら一緒にステージに立ちたかったのだが、その夢は未遂に終わる。
 今でも、翼がそばで歌うと少しの反応を見せることがある。

 奏海が翼をトレンドシンカーに誘ったのは彼に才能があるのを知っていたからである。自分はダンスも歌も精一杯でちっとも楽しくなんてないのに、彼が下手でも楽しく歌って踊っているさまを誰より近くで見ていたから。

 それでも悟らせないよう明るい言葉を吐き続けた。吐いた言葉はいつか、自分の味方になってくれると信じていた。
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・結城桃音
 ゆいしろ ももね
 一人称:私 二人称:あなた、〇〇ちゃん / くん 性別:女 年齢:17

 夕空翼の幼馴染。男子生徒からの人気が高く、一部女子からやっかみを受けている。が、基本的に無害で優しいので、話したことのある人は彼女のことを好きになるのだ。

 普段の勉学に追加して家で服飾デザインを学んでおり、こっそりとデザイナーを目指している。

 両親が非常に厳格な人たちで、彼女に対して「完璧であれ」というプレッシャーを彼女に与え続けてきた。
 幼い頃から親に褒められることはほとんどなく、「もっと頑張れ」「まだ足りない」と言われてきたため、成功しても「まだ足りない」と感じてしまう。そんな中で、衣装やファッションが人を元気づけたり、変身させたりする力に魅了されていた。
一度だけ、褒められたことがある。彼女がデザインした服を見て、可愛いじゃない、と。ただそれだけだ。それだけを、大切に心に抱えて、それ以来、デザインにだけは自信が持てている。
 両親としては、趣味としてならまあ、という感じで認めているだけであるのだが。
 「可愛い服は心の鎧になる」という信念を持っている。

 翼がかわいいものが好きだと知っている。彼のことを世界でいちばん可愛いと思っており、自慢の幼馴染だと思っている。対して、自己評価が少し低い側面がある。

 翼のことも、姉のことも、ずっと見てきた。なのに、何もしてやれなかった。何も出来なかった己のことがあまり好きではない。それでも、やっぱり胸を張って隣にいたいから、翼のデザイナーになると決めた。デザインを学びだしたのはそれからでもある。

 翼のことが大好き過ぎて朱希のことを雑に扱いがちだが、彼女にとっても朱希にとってもそういうコミュニケーションだ。桃音にとって、なんだかんだ困った時に頼るのは朱希であり、翼ではないのだ。

「私は結城桃音。よろしくね! ……うん? ああ、そう、これはデザインの本。もしかして……貴方もこういうの、興味あるの!?」
「……は、はしゃぎすぎて喋りすぎちゃった……ごめんなさい、私の周りにこういうの興味ある人あまり居なくて。嬉しかったの、ここでのことは良かったら内緒にしておいてくれる? ふふ、また会えたら話しましょ」
「ゆうちゃんは世界でいちばん可愛いんだから! 私が世界で一番最初のファンなの。ふふっ、素敵でしょ?」
「朱希!え?今日も人気だねって? ……そう? まあいいや、それで? 何か用があった?」
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・正城朱希
 まさき あき
 一人称:俺 二人称:君、お前 〇〇さん / 呼び捨て 性別:男 年齢:17

 翼と桃音の幼馴染。桃音には少々雑に扱われがちだが、それをあまり不快には思っていない。頼られているからだ。

 翼と桃音と共に過ごしてきたため、トレンドシンカーには興味が無いがトレンドシンカーへの知識だけがそれなりにある、というのは建前。元々ダンスを習っており、それに伴ってトレンドシンカーになりたかった。しかし、彼自身の思い出したくない記憶として、同じくダンスを習っていた友人にボロ負けしたことがあり、それ以来、同じ想いをしなくても済むようにとトレンドシンカーになることを諦めた過去がある。
 彼とは、ライバルだったのだ。でも、本当にたまたま調子が悪くて、うまく踊れなかった。――緊張していたのだ。柄にもなく。
 それは、親にダンスを辞めさせられるかもしれないという恐怖からだった。
 ダンスが好きだ。歌うことは得意じゃないけど、好きだ。いつかトップシンカーにだってなりたい。そんな話を親にした、後日、両親はこんな話をしていた。――やめさせるべきなのではないか、と。
 実際には応援するという形でまとまった話し合いの、断片的な部分だけを聞いてしまった。焦った脳は実績を残さなければならないと解を出し、そのまま練習に明け暮れた。
 彼の、失望したような顔をよく覚えている。
 また失敗して同じ思いをしたくなくて、もう、全部を諦めることにしたのだ。

 翼の姉のことが密かに好きだった。傷ついてなお夢を語る彼女はいやにまぶしかった。それと同時に、同じところに来てくれればいいのにと思っていたのも嘘じゃない。そんな自分が嫌いだった。今はもう昔の話と心に閉まっている。
 音楽に強く関心があり、作曲が趣味だった。優とはそれ繋がりで知り合っている。

「俺は正城朱希って言うんだ。君の名前は?」
「お前、翼に喧嘩売って桃音に嫌われたってマジ? はは! バ〜カ、あれだけ止めたじゃん。まあそれがなくてもアイツらそういうのに興味ないと思うぜ、シンカーだもん」
「俺もシンカーになりたいんだけど……今から始めるのって、遅いかな」
「俺がお前たちの前に立てなくて誰が立つってんだよ!」
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○トップシンカーたち
・白露夢菜
 しらつゆ ゆめな
 一人称: 私(わたし) 二人称: あなた、〇〇さん 性別:女 年齢:20

 穏やかで優しさに満ちた女性。人一倍他者に気を使い、周囲の人々を和ませる力を持っている。どんな時でも冷静で落ち着いており、困難な状況でも感情的にならずに、周囲をリードしながら解決に導くことができるタイプ。おっとりした印象を与えがちだが、実は芯が強く、内面では大きな責任感と優れた感受性を持っている。

 彼女は他者の気持ちを理解し、共感することが得意で、シンカー活動においてもその「心の柔らかさ」と「思いやり」がファンや仲間に深い感動を与えているようだ。

 かつてトップシンカーとしての地位を確立し、今もなお現役で活動を続けている。彼女はその穏やかな性格ゆえに、トレンドシンカー業界での激しい競争には向かない部分もあったが、逆にその優しさと真摯な態度で、ファンやスタッフに愛され続けている。彼女は一度も過度に派手なパフォーマンスをしたことはなく、その代わりに、穏やかで心に響く歌声やダンスで人々の心を打ってきた。

 なお、デザインは壊滅的。作曲は昔は人に頼んでいたが今は一人でやっている。

 麗奈とは昔、親友だった。夢菜にとって、彼女は同じ才能を持った仲間だった。
 夢菜には、才能があった。誰もが羨む才能があることで、妬み嫉みは日常茶飯事だった。「自分を理解してくれる人がいない」と孤独を感じていたのだ。
 また、「完璧であること」を求められるがゆえに、仲間たちのペースに合わせることが苦手だと悩んでいることもあった。そのため、結果的に「自分のやり方でやればいい」と孤立することも多かった。

 だから、初めてだったのだ。それに着いてきてくれる人ができたのは。
 でも、麗奈がトップシンカーを目指していたことを知りながら、夢菜は先にその夢を叶えてしまった。麗奈を置いて。

 それが麗奈の心を壊してしまったこと、麗奈のそばに居てやれなかったこと、何も解決してやれない無力な子供だったこと。
 彼女はずっと、後悔している。

「白露夢菜です、みなさん、こんにちは。今日は楽しんでいってもらえると嬉しいわ。」
「あら、愛、そんなことを言ってはダメよ。もっと優しく接してあげて?ほら、みんな不安そうだわ。ごめんなさいね、彼女はシンカーとして戦うことの恐ろしさをよく知っているの。」
「ふふ、助けに来たわ。間に合ったようで何より」
「……あなたには、負けない。」
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・赤羽根愛
 あかばね あい
 一人称: 私 / あたし 二人称: あなた、あんた、〇〇さん 性別:女 年齢:18

 デザイナー。どんな衣装も創れるが、最近はあまり表舞台では見かけない。
 沢山のオファーは来るが、今はシンカーとタッグを組むことも白露以外とはしていないらしい。

 実はその昔、伝説と呼ばれていたデザイナーの娘である。このことは世間から隠している。
 親は、この世界には存在しない、シンフォニック・クラウンを探しに旅立ってしまったきり帰ってこないからである。自分は自分、親は親。そう切り離して欲しい、と彼女は願った。
 だから世間には公表していない。それでもデザインに血筋は感じられるのか、そうでは無いのかという噂は後を絶たない。

 親が失踪した時、そばにいてくれたのが夢菜だった。「伝説のデザイナー」が消えたことにより、周囲の人間からの期待は愛に一身に注がれたが、夢菜だけが普通に接してくれたのだ。
「気にしないで。愛は愛、あなたはあなた……。周囲の期待が煩わしいのね。それなら貴方も消えてしまえばいいの。少し休みましょう、幸い、あなたの両親は、あなたのことを公表していないわ」
 夢菜はそう言った。彼女の家族は、行く宛てのなかった愛を匿ったのだ。
 それもあって、夢菜に大きな恩を感じている。

 学校には行っているが、クラスまでは上がらず、普通科目だけをかろうじて学んでいる状態である。

 主人公たちには絶対に懐かないが夢菜の言うことだけは絶対に聞く猫ちゃん。

「私は愛。べつによろしくなんてしないけど。」
「夢菜、余計なこと言わないで……ああもう!」
「あたしはっ、親のことなんて全く知らない!もうあたしはあたしなんだってば、ほっといて!」
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○ライバルサイド
・月見里朧
 つきみさとおぼろ
 一人称: 私 二人称: 君、あなた、〇〇さん 性別:女 年齢:16

 日和と比べて、口数の少ない少女。饒舌では無いが、寡黙でもない。
 笑顔があまり得意ではなく、クールな表情が多め。ソロの時はファンの、ユニットの時は日和の騎士として活動している。

 小さい頃にやったおままごとの延長線の感覚でシンカーをやっている。トップシンカーになる、という程の情熱は一人の時は全く無いが、日和がなりたいと言うので2人の時は特に頑張っている。ソロライブの時の手の抜き方が巧み。そこをファンに切り取られ、日和のことが好きすぎて可愛いと呼ばれていることを知っているので直すつもりは無い。

 二人は幼い頃に両親を事故で失い、祖父母に育てられた。朧が日和の面倒をずっと見てきたため、自然と「お姉ちゃんが守る」という関係性が築かれた。
 朧は「私が日和を支えないと」と強い責任感を抱いている。

 歌が天才的に上手いので、難しい曲や、歌唱力が生かされるものを宛てがわれることが多い。
 彼女にとって夢は頑張って辿り着くものではなく、ただそこにある結果である。しかし彼女の夢はトップシンカーではなく、日和がずっと笑顔でいることだ。

「……ん、私?朧です。……苗字? 日和と一緒だよ。月見里朧。」
「日和が出来るって言うなら、……うん、私も出来るよ。でも日和ができるって言ってくれないとできないから。いっぱい言って」
「大丈夫、日和。私に任せて。……私は、日和の騎士だから。」
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・月見里日和
 つきみさとひより
 一人称: 私 二人称: 君、あなた、〇〇ちゃん / くん 性別:女 年齢:16

 朧と比べておしゃべりな女の子。元気で強気。
 「可愛いは最強」をモットーにしているので、柔らかな見目に反して強気な表情が多め。かなりの努力家で、ファンからは「成長コンテンツ」と呼ばれている。それが逆にプレッシャーになることもある。

 おままごとの延長などではなく、本気で夢に向かって走っている。トップシンカーになって、本当にお姫様のような生活をするのが夢。もちろんその時は朧を王子様にしてあげてもいいのよ? 姉妹なのにって? 妹がお姉ちゃんを大好きで何が悪いのかしら!
 朧と比べてしまうと歌もダンスも下手と言わざるを得ないが、それでも平均以上の実力はある。

 本当は、姉に依存する自分の存在を自覚しているが、寂しいので、変わろうとまでは思えていない。このままでいいのだろうか、という漠然とした不安だけがただそこにある。

 いつか絶対姉に追いついて、胸を張って隣に立って、エスコートしてもらうのだ。

「お姉ちゃんっ、自己紹介する時は苗字も! ……はあ、出来るなら最初からちゃんとしなさい!」
「はあ?……いつだって緊張するよ、お姉ちゃんの隣に立つのは! お姉ちゃんってばなんでも上手に出来ちゃうんだもん、歌だってダンスだって上手いし……、いやいやいや、私も負けないんだから!見てなさい、あなたには絶ッ対に勝つんだから!」
「朧の隣に立つのは私しかいないんだって、証明してやるのよ。私は……朧のお姫様なんだから!」
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○不協和の影サイド
・明嵐麗奈
 めあらし れいな
一人称:私 二人称:貴方 呼び捨て / ○○さん 性別:女 年齢:20

 かつて、誰もが憧れる才能を持ったトップシンカー候補であり、白露夢菜の親友であった。
 幼い頃から歌やダンスの才能を持ち、次世代のトップシンカーと期待されていた。
 しかし、隣にはいつだってさらに優秀で、恵まれた少女がいた。白露夢菜である。
 最初は誇りに思っていた。思っていたのだ。
 麗奈の家族は、トップシンカーになることを認めてはくれなかった。
 だから、歌とダンスの練習を止められた。ようやく再開して、オーディションに行っても、トップシンカーにはなれない。
 ――――そう、既に麗奈よりも、もっと沢山の努力を重ねてきた、夢菜が居たから。
 それからだ。

 諦めることにした。諦めれば傷つかずに済むからだ。両親の言う通り、普通に、堅実に生きることを決めた。でも諦められなくて、なんとかならないかと探って探って、出会ってしまった。

 おとだまには記録を消す力もある。
 麗奈はこの力を利用し、恐怖でおとだまを支配することで、自分の「夢を叶えられなかった過去」を消そうとしている。過去を消し去ることで、「トレンドシンカーを目指した麗奈」は存在しなかったことになり、代わりに「家族に応援されながら夢を叶えた麗奈」という新たな歴史が生まれると信じている。

 記録を消すということは、それに紐づいた「人々の記憶」も消えることを意味する。
 もし過去を消してしまえば、現在の麗奈自身も「存在しなかった」ことになり、
 それだけでなく、彼女と関わった白露夢菜、七夜蒼井、両親、その他大勢すら影響を受ける可能性がある。

 しかし麗奈は 「それでもいい」 と考えている。
 夢を手放すくらいなら、消えてしまった方が楽だ。

 夢だなんて甘いものを語って聞かせておきながら、それを叶えさせてくれる世界じゃなかった、ということに強い恨みを抱えるようになった。全て、全ては世界が悪いのだ。

「蒼井、……私について来てくれるのよね?」
「夢菜。あなたの歌は、今でも好きなの。こんなに好きなのに、こんなに、聞いてると、苦しくて、聞きたくなくて、涙が出るの。どうして? でもね、きっと私と同じひとはたくさんいる。私は知ってるの」
「……だから。この場で私を救うの、ねえ、夢菜。あなたには分からないでしょう。」


〇アカシックレコードの書き換え
 メロディアのアカシックレコードは、世界の「音の記録」であり、過去・現在・未来の旋律を刻んでいく。麗奈は、おとだまの「記録を消す」力を利用することで、自分の過去を上書きしようとしている。

 おとだまは、人々の「想い」が強く込められた旋律によって記録を更新する性質を持つ。
特に、 「感情のエネルギー」が極限まで高まった旋律は、アカシックレコードそのものを書き換えるほどの影響を持つ。

 麗奈は、「絶望」と「渇望」から生まれる強烈な旋律を作り出し、メロディアに影響を与えることで、自分の 「夢を叶えられなかった過去」 を消し去り、「家族に応援されながら夢を叶えた麗奈」という新たな歴史を刻もうとしている。

 本来、アカシックレコードは「調和の旋律」で構成されている。しかし、不協和の影が作り出す「歪んだ旋律」は、その記録を 破壊し、塗り替える力 を持つ。
麗奈は、この「不協和の旋律」を最大限まで増幅し、「世界の秩序を歪ませるほどの影響」を与えることで、過去の記録を上書きしようとする。

 これは単なる「過去の改ざん」ではない。
 過去を変えた時点で、それに関わる全ての人々の記憶、歴史、関係性が影響を受け、 現在の世界そのものが変化してしまう。

 アカシックレコードを書き換えるには、 未来の旋律を犠牲にする必要がある。
 なぜなら、「新しい記録を刻むこと」と「過去の記録を書き換えること」は、本来は相反する行為だからだ。

 麗奈が「過去を変える」ことに成功した場合、彼女が夢を叶えた歴史が新たに生まれる一方で、 「現在の麗奈」や「彼女が関わった全ての人々」も影響を受け、今の自分を失うことになる。

 つまり、 「過去を書き換えるために、現在と未来を犠牲にする」 ことになる。
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・七夜蒼井
 ななや あおい
 一人称:おれ 二人称:おまえ、呼び捨て 性別:男 年齢:19
 中学の時、家族を事故で失った。交通事故だった。
 自身が映画館に行きたいと頼んで車を出してもらった先のことだった。
 自分だけ、生き残ってしまった。でも、周りの誰にもその気持ちを理解されなかった。その孤独の中で、そのうち音楽にすがるようになった。

 シンカーがこの世界の未来を守っている。この世界では当たり前に信じられているおとぎ話だった。あまり興味はなかったので、詳しくは知らなかったが。
 こんな世界を守るなんて、と思った。歌う意味も、踊る意味も、分からなかった。
 でも、綺麗だと思った。それが嫌で、みんな居なくなればいいのに、と思った。

 そうして鬱々と日々を過ごしている間、世界を滅ぼす力すらを持った物質のこと、それを音楽で左右できること、不協和の影のことを知った。
 面白そうだ。
 そう思って麗奈に連絡した。麗奈は、彼にとって初めて自身の孤独を分かち合える相手だ。
 それだけで彼は救われた。ひとりじゃない。1人じゃなかった。それが嬉しかった。
 だから、今一緒に居るのは麗奈を一人にしないためだ。麗奈の傷を、自身が癒せるとも思っていなかった。
 だからせめて、隣に居ることにしたのだ。

「……ふうん、アンタが白露夢菜? 俺は麗奈の親友の七夜。よろしくね。」
「なんで不協和の影として活動するのか? 面白そうだから。あとついて行きたい人がいるから? ……ま、恵まれた君たちには分からないだろうね。じゃ、逆に聞くけどなんでシンカーやってんの?」
「……麗奈、俺は……、いや、なんでもねえよ。最後まで隣にいるさ」
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・姫乃千咲
 ひめのちさき
 一人称: あたし 二人称: あなた、あんた、〇〇ちゃん / くん 性別:女 年齢:16

 母と兄が不協和の影として活動している。父とは既に離婚済みである。彼らが家族であるからか、不協和の影の活動に協力的な少女。
 彼女のパフォーマンスはとても素晴らしいものだが、人気が目標まで伸びないからとかなり躍起になっており、最近のパフォーマンスは少々雑に見られがちである。

 本人はただ音楽が好きで、ファッションが好きで、歌が好きな普通の女の子。
 母親が彼女をシンカーしたのは、不協和の影響をなるべく拡大化するためである。彼女の母親はそうしておとだまの力を引き出し、全てを得ようとしているのだ。

 今は母親の曲を歌い、踊っている。

 母親は、父親との離婚後に精神的に不安定になり、それを支えたのが千咲だったが、母親から感謝されることはなく、「力を証明しなさい」とプレッシャーばかりをかけられてきた。
 父親が母を捨てたことを恨んでおり、父親のように「家族を捨てる人間」には絶対になりたくないと思っている。
 そのため、母親や兄に執着し、「家族のために生きる」という強い価値観を持つようになった。
 母親の目的は、アカシックレコードを壊し、世界を破壊することである。

「はいはいはーい! あたし、姫乃千咲! よろしくお願いします!」
「どうして不協和の影として活動してるのか? ……う〜ん、お家に帰るのに理由っているのかなあ?」
「あたし、ほんとは知ってたの。お母さんが良くないことしてるのも、あたしのやってることが間違ってるのも、こんなことしてたってお母さんがあたしのこと認めてくれるわけじゃないってことも……。でも、仕方ないじゃん、認めてほしかったんだよ」
「あたしがお母さんから離れたら、お母さん1人になっちゃうんだもん。仕方ないよね」
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・姫乃優
 ひめのゆう
 一人称: 僕 二人称: 君、〇〇ちゃん / くん 性別:男 年齢:17

 姫乃千咲の兄。不協和の影に居る。また、朱希の友人。
 穏やかで物静かな男。不協和の影にいる理由は母親への罪悪感によるものである。

 父と母が毎夜言い争っているのを知っていた。そのうち、父親は母親に暴力を振るうようになった。
 その結果、母親は怪しい団体に所属して、よく分からない陰謀論のようなものを信じるようになってしまった。
 父は母を見限って出ていった。残されたのは、まだ幼い妹とおかしくなってしまった母だった。

 間違っていると何度言っても母親の中にあるその破壊衝動は収まらず、妹まで巻き込んで事態はどんどん悪化している。
 その事に危機感を感じながら、ずっと何も出来ずにいる自分のことが大嫌いである。

 母親の影響で作曲をはじめ、それ繋がりで朱希と知り合っている。母親の曲も嫌にはなりきれない。

「朱希、おはよう。今日は幼馴染さんたちの相手はいいの? ふうん、そう」
「僕が……悪いのかな。母さんのこと、ちゃんと守ってやれなかった僕が、全部……」
「僕も、トップシンカーを目指すことにしたんだ。長い時間がかかったっていいさ、トップシンカーになって……今度は、世界を守るんだ」
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TrendSync!,文章

いいねの数だけ音源関係のどうでもいい話する タグでお話したこと
自音源について
【 白日ヒナタ / 船月ノア 】
>89 ◀︎先に設定を読むと分かりやすいかも

1
ヒナタは実は最初は代理だった、し、本当はふたりとは別にUTAU音源にしようと思っていた創作がいました。広げられなさそうだったのでヒナタ達になったんだっけな 経緯は忘れましたが…… 代理からヒナタの見た目だけ持ってきて、そこに設定を詰め込みつつノアの見た目を錬成しました

2
ノアの名前の元ネタは自創作 ずーっとやりたかった自創作に妹を探して帆船で旅をする兄のお話があったんですが、それの主人公の名前がノアだった 自創作は上手いことまとまらなかったのでボツになりました でも思い入れがあります、また別のノアたち 元気にしてるだろうか

3
ノアの名前は分かりやすくノアの方舟から取っているね ヒナタはなんかノリで太陽っぽい名前つけたくてこうなりました 曇りのない太陽、日向 めちゃめちゃ良い名前だな〜と思います 明るいし 似合うよ

4
2人共に死の概念は無いので一応一生一緒なんですけど、ノアはたった一つにもその他の全てにも置いて行かれ続けた人なので ノアは無い別れにずっと心のどこかで怯えている ヒナタはたった一つを待ち続けた人なので、ノアがいつか安心出来る日をさらに待ち続けるんじゃないかな そんな2人です

5
ノアはヒナタをこちら側(=3次元、私たちのいる世界)に連れてくることも出来るけどそれだけは絶対にしていないし、しない 置いていかれることは苦しいことなので、ヒナタと旅をする時も長命種やそういう概念のない存在が住んでる場所だったりただただ景色が綺麗な星だったりを選んでいる

6
ヒナタはノアのそういうところを分かった上で、黙っている ノアの思っているほどヒナタが弱くないと知った時、ノアがなんて言うか分からないから お互いに臆病なところがある でもだからといってお互い守られてばかりでは無い お互いの配慮とか優しさとかそういう行動の結果で結局ずっと一緒にいる

7
ヒナタの身長は153でノアの身長は167らしいよ 過去の私が言ってたから多分そう でも実際身長差を考えて絵を描いてなかったんだよな、どれくらいの差なんだ?身長差、あってもなくても萌えるな……とは思うので、好きにしてくれ

8
俗に言う光属性なのがヒナタで闇属性なのがノアのイメージなんだけど、2人とも中途半端に光と闇だから逆転もし得るんだよね 伝わる?月の光は影に隠れるし、その辺の木陰だって太陽に照らされるじゃん……という話です これは

9
ヒナタの光は月の光だと思ってる でもきっと太陽にもなれる けど、太陽の光になったらきっと灼いてしまうから という…… ノアは 忘れるという選択をとることで自分が落ち込むことを回避しているので、この人もそこまでの闇ではない が 沈もうと思えば沈める 自分の意思で沈まないだけで

10
ノアは己のたった一つを忘れることを選び取れてしまった人だけど、それの残酷さについてはあんまりピンと来ないと思う たった一つの人は、きっと思い出を優しく抱えて旅をしてくれると信じていたと思うけど、それもそれで残酷な話 要するにお互い言葉足らずの2人だったんですね

11
それでヒナタはその人そのものかと言われたらそうではなく、「その人の意思から生まれたなにか」です 付喪神みたいなもん 忘れられても残るものはある それに賭けてヒナタに意志を宿した こことは別の世界線なのだから、宇宙に幽霊がいたって、天国があったって、それがこちらに干渉できたって良い

12
だからヒナタ自身は自身の使命を「ノアの隣で、彼が寂しくならないよう、思い出さないよう見守ること」としています。ノアは逆のこと思ってると思う いつかヒナタが旅立てるように心の準備をしているけど、実はヒナタにはそんな気はさらさら無くて、守ってるつもりで守られてるやつが好きだからな……

13
ヒナタはそんなにヤワじゃないし、死の概念は無いけど、身体が壊れることはそれなりにあります。その度にノアが治していたり いなかったり その技術の精度がやけに高いもんだから、自分でも何故こんなに……?と思っているらしいです どこで手に入れた力なんでしょうね

14
たくさんの世界線を渡り歩く中で不本意にも争いや諍いに巻き込まれることはあったと思う そういう時のために2人とも戦える ノアは経験 ヒナタは持ち前の運動神経です 2人の武器は銃(もしくはそれに近しい己で改造した武器 / 遠距離)とハンマー(でかい! / 近距離)です

15
ノアは女にもなれるし男にもなれる ぐにゃあ……と体を変形させるけどパッと見バケモノなので不評 ヒナタはパーツ付け替えれば男にもなれるとは思うけどめんどくさいしそうなるとかわいい服が着れないので男装で我慢している畳む

,文章,UTAU

#ふたつの翼、ひとつの空
SS / 喧嘩、栞、暖かなシチュー
2497文字
 シーアが、取っ組み合いの喧嘩をしたらしい。
 百歩譲ってもお淑やかとは言い難い、寧ろお転婆という言葉がそれはそれは似合う姉ではあったが、取っ組み合いの喧嘩だなんて今の今まで無かったことだった。
 そこらじゅう擦り傷だらけにして、髪の毛をボサボサのまま帰ってきたシーアを、祖母と祖父が慌てて手当をし、風呂に入れ、対応に追われているのを、サーヤはただ、呆然と眺めていた。

   *

「シーア……?」
「……」
 いくら様子がおかしくても、同じ部屋、同じベッド。寝る時も一緒になるし、ご飯も食べねばならない。
 祖父母にあれよあれよと部屋の前まで立たされ、あとはよろしくと任された身のサーヤは、おそるおそる、といった様子で、部屋にいるであろうシーアに話しかけた。
 返答は無い。代わりにもぞ、と毛布が動いた。どうやらベッドに籠ってしまったらしい。
「シーア、あのね、ご飯出来てるって。今日は暖かいシチューだよ」
「……いらない」
「シーア……」
 こうなったシーアはてこでも動かないことを、サーヤは知っていた。祖母も祖父も、それを見越していたのか、サーヤに与えられた指示は「シーアをゆっくりさせてあげて。落ち着いてから呼んで来て頂戴」だった。
 絶対に配役が間違っている。そう思ったが、それでも、理由が知りたいのは確かだった。
 仕方が無いと、ベッドのふちまで歩き、そこに座る。子供二人が寝るにしては大きなベッドなので、それで狭く感じることもなかった。
「シーア、どうして喧嘩しちゃったの?」
「サーヤには関係ないでしょ」
「シーアが怪我してたら心配だもん。関係あるよ」
 少し、沈黙。シーアはそれを話す気が起きないらしかった。
「……誰と喧嘩したの?ぼくの知ってる子?」
 沈黙。
「……シーアが話す気ないなら勝手に聞いてきちゃうもん。」
 衣擦れの音。サーヤは立ち上がって、わざとらしくそっぽを向いた。
「ぼくだって、……たぶん、喧嘩できない訳じゃないし。シーアが教えてくれないなら、全部ぼくが自分で調べて、シーアの代わりになんとかしちゃうんだから」
 が、と手を引っ掴まれてベッドに引きずり込まれた。傍から見ればあまりにも自信が無さそうな言葉選びだったが、サーヤに関してなんやかんや心配性な姉にはそれだけで効果てきめんだったらしい。
 涙に濡れた姉の顔を初めて見た。
「サーヤ、貴方珍しく良い度胸してるじゃない」
 それを隠すようにシーアはサーヤを抱き締めた。まさか、あの姉が本気で泣いているだなんて思っていなかったものだから、サーヤは困ってしまった。
 困った挙句に、そっとシーアの背中に手を回した。ぽん、ぽん、と宥めるように手を叩くのは、今まで父親が、祖母が、祖父が、そうしてくれたから、少しでもシーアが落ち着きますように、って。
「……別に、なんてことないのよ」
「なんてことないって顔じゃないよ……」
「……」
 強がりは今更通用しなかった。シーアは少し迷ったように視線を彷徨わせて、そうしてようやく、腹を括ったようだった。
「栞、取られちゃったの」
 ぽつり。零れた言葉はあまりにも想定外のものだった。しおり。栞。本に挟むやつ。
「……栞?」
「そう」
「それだけ?」
 少し、沈黙。
「……押し花の。交換したやつ、取られちゃって」
 それでようやく、合点がいった。
 シーアの話によると、犯人は隣のクラス、要するにサーヤと同じクラスの男の子らしい。意地悪な男の子がいるなあ、とはサーヤも思っていたが、シーアにまで意地悪をしていたなんて。度胸があるなあ、とサーヤは思った。
「でも、押し花くらいまた作れるよ」
「……そうかも、しれないけど」
 シーアは少し言葉を濁らせた。黙って続きを促す。
「気に入ってたのよ、あの栞。本当よ、それに……」
「……今までだって、沢山サーヤに意地悪してたし、そう思ったら1度懲らしめてやんないと、って思ったの」
 ぐ、と抱きしめる力が強くなって、肩が濡れる気配がした。
 意地悪って言ったって、今までも、鉛筆取られちゃうとか、シーアといつも一緒にいるのをからかわれたりだとか、そういう小さなことだったのだ。
 シーアは、されるがままのぼくをみて、悔しかったのかも、しれない。
 サーヤの目にも、少し涙が滲んだ。
「……ごめんね」
「なんでサーヤが謝んのよ」
「……うーん。なんでだろう」
 最後にサーヤをぎゅーっと抱きしめたシーアは、ぐりぐりと肩口に目元を押し付けて、サーヤと顔を合わせた。
「良いこと?今回の件はだいたい全ッ部あいつが悪いの!サーヤが何か気にする必要なんか1ミリたりとも無いんだから。……別に今更変わってもらおうなんて思ってないわ。私が守れば良いもの。」
「そう思ってるのは、サーヤも同じでしょう。」
 シーアは、そう言ってサーヤの目を見て、微笑んだ。
 ……この姉は、普段は絶対にどこか抜けているし、失敗の数も知れないし、その度に心配して駆けずり回って来たけれど、サーヤの前では絶対にかっこ良い姉なのだ。
 それを、崩そうとなんてしないのだ。
「……うん。そうだね」
「よろしい。」
 ふん、と鼻を鳴らしてから、シーアは軽く咳払いをした。
「あー、あ、今日はシチューだったかしら!……話していたらお腹がすいてきたから、今から食べに行っても良いのよ」
「あはは!」
「何よ!」
 どうやら、祖父母の配役は完璧だったらしい。下に降りれば祖母がシチューを完璧なタイミングで暖めておいてくれるだろうし、祖父は心配しつつ祖母のお手伝いなんかをしていることだろう。
「冷めてないと良いね、シチュー。」
「な……っ!?」
 そんなことを分かっていながら、少し意地悪を言ったりなんかして、それを嘘だと知っていて反応するシーアの手を取って、階段を降りていく。
 
 その後、喧嘩したあの子はシーアが好きなあまりやったことだったと自白し、それをシーアがぶった切ったり、まあ、ほんとにいろいろあったけど、一応の仲直りをして、めでたしめでたしってことで話はまとまった。落ち込んでしまったあの子のことは、あの子を大切に思っている誰かが何とかしてくれるだろう。
 今日も2人。穏やかな日差しの元、祖母と祖父に見守られながら。ノートには栞を挟んで、学校へと繰り出していくのだった。
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文章,ふたつの翼、ひとつの空

UTAU自音源の設定など(公式が勝手に言ってるやつ)
【 白日ヒナタ / 船月ノア 】

船月ノア(ふなつき  ‐ ) /  無性別 / 男性に見える姿形をしている

宇宙や次元に留まらず世界を旅する旅人。
小さな帆船で世界を飛び回る。人間の男性に見える姿形をしているが実際のところは分からない。
とある世界でヒナタを拾った。
人間の居ない、光の灯らない地球の衛生の上、ひとりぼっちだった。
しばらく一緒に過ごして、いつものように、置いていくつもりだった。
気付けば、一緒にたくさんの旅をしていた。
そして、一緒に別の世界の地球まで辿り着いた。
光の灯る地球で音を知った。
歌を知った。

人間の言葉を借りるなら、煩いのだと思う。宇宙に音は無いから、より新鮮に気持ち悪かった。
しかしそれらがいたくお気に入りなヒナタのため、今は地球に留まっている。
音や歌の、何が良いのかは、全く分からない。しかし、ヒナタは楽しそうだから、それがあるならなんでも良かった。

普段は筆談やテレパシーを好む。理由は自分の器官から出る音があまり好きでは無いから。
隣で話すヒナタから鳴る音は別に嫌ではなかったから、歌おうが喋ろうが好きにさせている。




ーーー


白日ヒナタ(はくじつ  ‐ ) /  無性別 / 女性らしい外見をしている

月に住むうさぎ帽子の人形。元は人間が月に飛ばした誰かの宝物である。
誰かは歌うのが好きだった。
でも、どれだけ歌っても叫んでも宇宙で音は鳴らなかった。
宇宙で孤独に過ごす中ですり減った記憶の中にはもうほとんど残っていないけど。その色すら、匂いすら忘れてしまったけれど、大切な記憶の中にはいつも音があって、歌があった。
だから、ノアのテレパシーが久々に聞いた "" 音 "" だった。
一人でいてもつまらないので、勝手について行きたくさんの旅をした。

世界を渡るうち、知っている色の星を見つけたから、ノアに頼んで連れてきてもらった。
雨の水も風の音も海のなく声も全部全部知っていた。これを愛していた!

似たような音が好きだった。
歌うのも気持ち良かった。

だから、ノアにも好きになってもらいたいのだ。
音も、歌も、ヒナタが大好きなノア自身のことも、地球のことも。





ーーーー追記



はるか昔、地球を訪れたことがある。その時、珍しく親しくなった友人が、宇宙に恋をしていた。
いつか連れて行ってほしい。私の魂を、このお人形に乗せて行くみたいに、たくさんの旅を、あなたと一緒にしたい。

人間の寿命は短かった。その人の死後、月までその人形を運んだノアは、それから先、長い旅をするにあたって、この記憶は邪魔だ、と考えた。
いや、そんなに冷たいものでは無かった。この記憶があれば、この時空に、この場所に固執してしまう、と危機感を感じた。
だから、人形を月に運び、なるべく隕石が当たらないよう月の影に建物を建て、記憶ごとそこに置いていくことにした。

白日ヒナタは、その時の人形である。


ーーー追記
20240918110702-ao_kzr.jpg 202409181107021-ao_kzr.jpg
>99 ◀︎いいねの数だけ音源関係のどうでもいい話をするやつ もう少し細々とした話が乗ってたり 乗ってなかったり
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,文章,UTAU

これは創作百合さんの世界観
世界の寿命を壊しても
〇世界観
ファンタジーの世界観。
魔法学校があり、リリとエドはそこに通っている友達同士。
学校の中では高嶺の花扱いされている。
外の世界から世界を滅ぼしに来る敵となる""使者""がいて、 使者と戦うためにリリは攻撃魔法を、エドは治癒魔法を学んでいる。
世界にはそれぞれ寿命があって、それは定められたもので、必ず訪れるもの。
……の、はずなのだが、えらい人たちのたゆまぬ努力により、まだ世界は存在し続けている。
そのため、天から使者が現れて世界を滅ぼしに来ている。
世界は壊れていないが、バグのようなものがある。
それは、人間の体の変異。 背中に羽が生えたりだとか、動物の耳が生えてきたり、しっぽが生えたりとか、 かと思えば身体から宝石がはえたりとか。
全員が全員そうなってるわけではない。
そのため、変異のおきた人々は死んでも生き返る、という不確定な噂がある。


リリ
攻撃魔法科に所属している。
エドがいつも近くにいるため「お姫様」と呼ばれている。
目立ちたくないので他人に言われてもあまり嬉しくない。
変異は既に起きていてエドよりは少ないが鳥の翼が生えている。
これも自由に動かすことが出来、空も飛べる。
最初はいちばん得意だったからという理由で攻撃魔法科を選んだが、今はエドが戦闘で傷つくのを避けるため戦闘に出ている。 苦しい時にずっとやさしく寄り添い、自分に自信をつけてくれたエドのことが心から大切。
エドが他の人を切り捨てろと言うならいつでも切り捨てられるひと。

大人しく、感情表現が苦手。滅多に声を荒げることは無く、穏やかに話す。
他人から見れば怖い人のように思われることもあるかもしれない。


エド
魔法医療科に所属している学園の王子様のような人。
自然にそうありたいように振舞っていただけなのに、気づけば憧れの王子様にされていたので困っている。
変異は既に起きていて背中に木の枝を軸にした鳥の翼が生えている。これは自由に動かすことが出来る。
心優しく治癒が上手いが戦闘に向いていないため、リリが1人で戦闘へと出るのをいつも心配している。 もしリリが戦闘で亡くなったとしてもリリが一言「生きて」と伝えるなら抱え苦しみながら生きていくひと。
 
穏やかで優しい話し方をする。感情表現は素直な方だが、隠したり抑えたりするのも上手い方。


ヒナ
物静かな防衛魔法科の後輩。
治癒魔法もそれなりに上手いので戦いに出ない日などたまに手助けをしている。 自分より他人が大切な子。
ミオが好きだが、それは墓まで持って行くつもり。ややツンデレ気味。 普段は静かな話し方をするが、ミオにからかわれた時だけ少し声を荒らげる。
ミオとは幼馴染。 変異は起きていない。普通の人間。


ミオ
天真爛漫でカワイイものが好きな攻撃魔法科の後輩。
攻撃魔法なんてかわいくないと思っているが治癒魔法も防衛魔法も向いていなかったらしい。
良くも悪くも自分が大切な子。 明るく元気いっぱいに話す。よくリリに絡んではあしらわれているのを見かける。ヒナとは幼馴染。
変異は既に起きており猫耳としっぽが生えている。当然のことだが(?)カワイイじゃ〜〜ん!と騒ぎ散らし、怒られた。畳む

創作,,文章